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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第4章

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第17話 覚悟

 2人で最初の通路に引き返した雪夜とゼロが魔法陣に乗ると、淡い光が発せられて転移した。

 飛ばされた場所は、この城のどこからしい。

 眼前には通路が続いているだけだが、先に何が待っているのだろう。

 などと思っていた雪夜に、ゼロが声を掛けた。


「これって、ケーキちゃんたちにも同じことが起こってんだよな?」

「断言は出来ないが、ほぼ間違いないだろう。 行き先は違うようだが」

「だよな。 取り敢えず進んでみるか」

「あぁ、それしかない。 ただ、マッピングはしておこう。 何かの役に立つかもしれない」

「おう、任せろよ。 そう言うことは、『隠密』の仕事だぜ!」

「まだ、そのロールプレイを続けていたのか」

「別に良いじゃねぇか。 それにこれは、全くの無意味でもねぇんだぜ? 俺がマッピングを担当することで、お前が戦闘に集中出来るだろ? てことで、しっかり守ってくれよな!」

「全力は尽くすが……お前に俺の助けが必要だとは思えない」

「そんなことねぇって。 まぁ、今のは半分冗談だけどよ、頼りにしてるぜ」


 快活な笑みを浮かべるゼロ。

 『隠密』を演じるには明る過ぎるように感じた雪夜だが、彼はそれで良いと思っている。

 苦笑を浮かべた雪夜は無言で了承し、通路を歩み始めた。

 天井は高くないが幅は広く、戦闘に不自由はしない造り。

 これまでと特に変わりないが、すぐに違いが現れる。

 彼らの前にあるのは、三叉路。

 いきなり構造が複雑化したことにゼロは驚いたが、雪夜は冷静に言葉を紡いだ。


「ようやく、ダンジョンらしくなって来たな」

「まぁ、そうとも言えるか。 それで、どの道にする?」

「左の道から順番に調べよう。 最終的には、全部踏破する必要があるが」

「オーケー。 んじゃまぁ、行ってみっか」


 ウィンドウを開いてマッピングしつつ、ゼロが雪夜の案に乗る。

 そんな彼を先導するように雪夜が足を踏み出し、しばしするとまたしても分かれ道。

 これは本格的に、マッピングが不可欠だと思った雪夜がゼロを見ると、彼は力強く頷いた。

 頼もしく感じた雪夜も頷き返し、引き続き足を進める。

 すると、ようやくして最初の突き当たりが見えて来たが――


「あれは……」

「宝箱、だな」


 雪夜たちの目に映ったのは、赤く大きな宝箱。

 異様な存在感を放っているが、これが何を意味するのかはわからない。

 だからと言って、スルーする訳には行かないと雪夜は判断する。

 ゼロに目配せした彼は、慎重な足取りで宝箱に近付いて行った。

 だが、あと少しと言うところで、それは引き起こる。


「……! やっと来たか」

「おいおい、まるで待ってたみたいな反応だな」

「そこまでは言わないが、ただ探索するだけなのも退屈じゃないか?」

「それもそうか。 良し、サッサと片付けるぜ!」


 2人を遮るように現れた、2体のモンスター。

 顔のない幽霊のような見た目で、両手は大きな鉤爪になっている。

 浮いたまま徐々に雪夜たちに近付いており、それを見た彼らもそれぞれの武器を構えた。

 そうして、両者の間に緊迫した空気が流れ――


「ふッ……!」


 仕掛けたのは雪夜。

 向かって左の敵に【瞬影】で瞬く間に接近し、片方の腕を斬り落とす。

 呆気なく片腕となったモンスターは、大ダメージを受けた上に戦力も下が――らない。

 HPゲージは全く減っておらず、腕は即座に回復していた。

 思わぬ事態に雪夜が片眉を跳ね上げていると、もう1体が彼に襲い掛かる。

 振り上げた右の鉤爪を雪夜に叩き付け、斬り裂こうとした。

 しかし、既に立ち直っていた雪夜は軽くバックステップすることで、難なく窮地を脱する。

 そこに今度は、ゼロが攻撃を仕掛けた。


「おらよ!」


 【放たれる暗器】によって、数多の手裏剣が右のモンスターに突き立つ。

 ところが、やはり効果はなく、全くのノーダメージ。

 その事実にゼロは、大きく舌打ちしていた。

 今の攻防だけで結論付けるのは早計かもしれないが、敵の強さ自体は苦にするほどではない。

 ただし、この生存能力の高さは厄介である。

 そう思考を巡らせた雪夜は、ゼロに鋭い声で告げた。


「アンデッド系だからと言って、絶対に倒せない敵だとは思えない。 どこかに弱点、もしくはコアとなるものがあるはずだ」

「俺もそう思うけどよ、パッと見た限りそれっぽいのはねぇよな? となると、頭か胸ってところか」

「セオリーで言えばその辺りだろう。 俺は胸を狙ってみるから、お前は頭を攻撃してくれ」

「了解だぜ。 しくじるなよ?」

「こちらのセリフだ」


 軽口を叩き合った2人は、不敵な笑みを交換してから行動に移る。

 雪夜は【瞬影】で急接近しつつモンスターの胸元を断ち、ゼロは【放たれる暗器】を頭部に集中させた。

 彼らの攻撃に反応することすら出来ず、モンスターたちは無防備で受ける。

 すると、両方のHPゲージが削り取られ、撃破に成功した。

 結果だけ見れば無傷の勝利で、雪夜たちは喜ぶべき場面だが、2人の表情は硬い。

 むしろ、面倒事を突き付けられたとすら言える。

 ゼロも同じ考えだと察した雪夜は安心しつつ、確認するように声を発した。


「敵の弱点部位は頭と胸……と、安易に考えるのは甘いだろうな」

「おう。 そうだったら楽だけどよ、違うと思うぜ」

「そうなると考えられるのは、弱点部位が個体によって違う可能性だ。 完全ランダムもあり得なくはないが、流石に理不尽過ぎる気がする」

「だよなぁ。 GENESISの奴ら、メチャクチャなようでルールには厳しいと言うか、律儀なところもあるからな」

「同感だ。 取り敢えず、今の敵の弱点部位はメモしておこう。 確か――」

「左に出た奴が胸で、右が頭だぜ」

「……流石だな」

「へ! この程度で大袈裟だぜ。 きっちりメモに取ったから、どんどん行くぞ」

「そうだな。 だが、その前にあれを開けよう」


 そう言って雪夜が視線を向けたのは、未だ鎮座する宝箱。

 当然ながらゼロも忘れておらず、そのつもりにしている。

 罠を警戒しながら雪夜が宝箱に近付き、開くと同時に後方に跳躍して刀に手を掛けた。

 一方のゼロも、すぐに対応出来るよう備えている。

 そのとき――


『スコア500を獲得しました』


 機械音声が流れた。

 突然のことに2人は驚いたものの、瞬時に落ち着きを取り戻す。

 ひとまず危険はないと判断し、戦闘態勢を解除した雪夜が口を開いた。


「どうやら、単にクリアするだけではなく、宝箱もリザルトに関係して来るらしい」

「みたいだな。 つーことは、ひとまず宝箱を片っ端から開ける感じか?」

「最初はそうだが、充分に気を付けよう。 宝箱には罠があるのが相場だ」

「違いねぇ。 今わかってるだけでも、マッピングしながら宝箱の場所もチェックして、どれが当たりでどれがハズレかもメモして、出て来た敵の弱点部位も覚えなきゃならねぇのか……」

「中々大変な作業だとは思うが、だからこそ何度でも挑戦出来るんだろう。 徹底的に調べ尽くして、今日は可能な限り情報を持ち帰るぞ」

「へいへい、わかってるって」


 ウンザリとした様子で肩を落としたゼロだが、それに反してやる気が漲っている。

 そのことを知っている雪夜は苦笑をこぼし、次いで表情を引き締めた。

 その後、2人は少しずつマッピングしながら、出て来た敵を片付けつつ、攻略を続けていたが――


「それで、どっちにすんだ?」

「そうだな、次は……」

「道のことじゃねぇよ」

「何?」


 唐突に立ち止まったゼロに問われて、同じく足を止めた雪夜は振り返った。

 腕を組んだゼロからは極めて真剣な空気が漂っており、雪夜でさえ気圧されるほど。

 そんな彼に容赦することなく、ゼロは鋭い言葉を突き付ける。


「ケーキちゃんとAliceちゃん、どっちにするんだって聞いてんだよ」

「……! ……お前には関係ないだろう」

「いつまで逃げるつもりだ? さっきだってそうだ。 今回は手を貸したけどよ、本当ならお前が自分で選ばないといけねぇ場面だったんだぜ?」

「……わかっている」

「いいや、わかってねぇ。 お前がそうやって迷っている間も、あの2人は必死なんだよ。 なんとか自分を選んで欲しいってな」

「だからと言って、簡単に決断は出来ない。 真剣だからこそ、慎重に答えを出すべきじゃないのか?」

「真剣だとか慎重だとか、そんな言葉を免罪符にすんなよ。 本当はお前も、答えを出してるんじゃねぇか? 足りてねぇのは、覚悟だ」

「覚悟……?」

「選んだ子を大切にするのは当然だが、選ばなかった子を傷付ける覚悟だよ。 こればかりは、逃れられない現実だからな」

「……確かにそうかもしれない。 もっと言えば、EGOISTSが崩壊するんじゃないかと恐れている。 俺は、折角手に入れた自分の居場所を、また失いたくはないんだ……」

「気持ちはわかる……なんて、軽々しくは言わねぇよ。 けどよ、だからって問題を先延ばしにして良い、理由にはならねぇだろ? 甘えてんじゃねぇよ」


 弱音を吐いて、苦悶の表情を浮かべる雪夜。

 だが、ゼロはあくまでも厳しいスタンスを貫き、強い言葉を叩き付ける。

 それを受けた雪夜は歯を食い縛り、大きく深呼吸してから想いを述べた。


「お前の言う通りだ。 俺は、彼女たちの優しさに甘えていた。 必ず近いうちに決着を付けると約束する」

「近いうちっていつだよ?」

「このGENESISクエストが、終わってからだ。 お前に言わせれば逃げているだけかもしれないが、それでも今は集中するべきだと思う。 生き残る為に」


 睨む勢いのゼロの眼差しを、雪夜は真っ向から受け止めて言い放った。

 しばしの沈黙が落ち、周囲の空気が張り詰め――


「まぁ、良いんじゃねぇか? お前が腹を括ったのは、嘘じゃなさそうだしな」


 後頭部をガリガリと掻きながら、ゼロがいつもの雰囲気で告げる。

 緊張した空気が霧散し、雪夜は内心で安堵していた。

 ただし、ゼロにはまだ言いたいことがある。


「その代わり、約束は絶対に守れよ? 反故にするようなら、今度こそ俺はお前を見限るぜ」

「……わかった、肝に銘じる」

「おっし! そうと決まれば、この話は終わりだ! ダンジョン攻略に戻ろうぜ!」


 一転して笑みを浮かべたゼロが、雪夜の肩をポンと叩いて前を行く。

 彼の本質がどこにあるのか、雪夜には判断出来なかったが、自分たちのことを考えてくれているのは間違いないと感じた。

 同時に、言われた通り覚悟を固め、胸に秘める。

 宣言通り、このクエストが終わったあと、気持ちを伝える為に。

 そしてこの頃、ケーキとAliceも同じことを話題に挙げていた。

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