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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第4章

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第10話 2人だけの部屋

 更に同時刻、MLOの大樹の1室。

 3人のペンタゴンが脱落して暫くが経ち、今やここはモエモエとネーヴェ専用の部屋となっていた。

 ダリアはともかく、ノイとエリスとはそれなりに仲の良かった2人は、寂しく感じている。

 それでも感傷に浸ることはなく、既に前を向いていた。

 更に言えば、多少なりとも嬉しいこともある。

 それは――


「ねぇ、先生。 そっちはどんな感じ?」

「中々難しいわね。 システム的には、不可能ではなさそうだけれど……」

「だよね。 あたしの方も、まだまだこれからって感じかな」

「とは言え、悠長に構えてはいられないわよ。 いつ、どこが攻めて来るかわからないのだから」

「はーい、先生」

「……2人きりだからと言って、少し気が抜け過ぎではないかしら?」

「良いじゃない。 先生の言う通り、今は2人きりなんだから。 部屋の外には聞こえないし、気にしない気にしない」

「そう言う問題ではないのだけれど……はぁ、まぁ良いわ」


 額に手を当てて嘆息するネーヴェと、そんな彼女をニコニコ見つめるモエモエ。

 2人は切り株の机に着いて、大量の魔導書を読み漁っている。

 今後の戦いに向けて新たな武器が必要だと判断したからだが、前述のように成果は芳しくない。

 しかし、彼女たちは全く諦めておらず、むしろやる気に満ち溢れていた。

 何よりモエモエは、ネーヴェと現実のように関われることが嬉しいのだろう。

 一方のネーヴェも、彼女と時間を共有出来ることの楽しさは、実感していた。

 モエモエとしては、他のプラーミャとも仲良くして欲しかったが、そこの線引きだけはネーヴェが譲らない。

 それゆえにこの部屋を貸し切って、秘密の研究を続けている。

 MLOは戦闘や使い魔同士の対戦も人気だが、メインコンテンツの1つが魔法の開発だ。

 その成果がモエモエの【インフェルノ】であり、ネーヴェの【フェンリル】でもある。

 ただし、現実で元バスケットボール部員だったモエモエは、どちらかと言うと体を動かす方が好きで、長時間の勉強は得意とは言えない。

 そこで、暫く研究を続けたら雑談タイムに入る癖があった。

 今のもその一環なのだが、彼女はまだ話足りないらしい。


「それで、モデルの話はどうなったの? そろそろ返事した?」

「またそれ? まだ保留中よ」

「えー、そうなの? 先生、綺麗でスタイルも良いんだから、絶対受けた方が良いってば」

「だから、そう単純な話ではないの。 軽い気持ちで飛び込んだら、必ず痛い目を見るわ」

「でも、興味はあるんだよね? 本当に嫌なら、とっくに断ってるだろうし」

「それは……」

「あ、図星?」

「うるさいわね。 だとしても、そう簡単に答えは出せないわ」


 モエモエからすれば最も気になっている話題の1つだが、ネーヴェは出来れば避けたいところ。

 実際問題として、ネーヴェはモデルと言う職業に関心はあった。

 だが、本人が口にしているように、安易に選ぶには厳しい選択だと思っている。

 それは間違いとは言い切れず、彼女らしいリスクを考えた慎重な思考だ。

 その反面、いろいろと御託を並べているだけで、問題を先送りにしているとも感じている。

 そんな自分をネーヴェは嫌になったが、教え子は輝くような笑みで言い放った。


「やっぱり先生は凄いね。 憧れちゃう」

「え……?」

「だってあたしだったら、たぶん浮かれてすぐにオッケーしちゃうもん。 そう言う人がきっと、先生の言う痛い目を見るんだろうね。 まぁ、現実のあたしはチンチクリンだから、その心配はないんだけど」

「そのようなことはないわ。 現実の貴女だって、とてもかわ……」

「かわ?」

「な、何でもないわ」


 思わず「可愛い」と言いそうになったネーヴェは、赤面して顔を背けた。

 彼女の様子にモエモエは小首を傾げたが、気にせず言いたいことを言う。


「あたし、先生なら大丈夫だと本当に思ってるんだよね。 見た目だけじゃなくて頭も良いし、冷たいようで優しいし、礼儀もきちんとしてるし。 芸能界でも、きっと上手くやって行ける」

「……買い被り過ぎよ。 わたしは、それほど大した人間ではないわ」

「あたしが買い被り過ぎなら、先生は自分を卑下し過ぎだよ。 少なくともあたしは、本気で信じてる。 それに……」


 そこで言葉を途切れさせたモエモエは、笑顔を深めて告げた。


「失敗したって、良いじゃない。 やらずに後悔するより、挑戦して駄目だった方がすっきりすると思うよ?」

「モエモエ……」

「比べるものじゃないかもしれないけどさ、あたしだってバスケの試合でどうしようって迷ったら、「えい!」って感じで取り敢えずやってみたよ。 上手く行くときもあれば失敗するときもあったけど、失敗してもそれはそれで思い出になったし、何より成長する材料になったんだよね」

「成長する材料、ね……」

「うんうん。 だから、先生が言うように簡単に決断出来ないのは仕方ないとしても、やってみる価値はあると思う。 どうしても怖いなら、あたしが背中を押してあげるからさ」

「……覚えておくわ」

「そうしてくれると嬉しいかも。 じゃあ、研究を再開しよっか。 今はBKOとTHOが優先だけど、CBOとSCOにも負けてられないからね」


 そう言って、魔導書に目を落とすモエモエ。

 教え子に諭された形のネーヴェだが、決して不快には思っていない。

 むしろ、胸のモヤモヤが少なからず晴れている。

 そのことにネーヴェは、心の中で感謝していた。

 ただし――


「わたしの心配をしてくれるのは有難いけれど、現実の勉強は大丈夫なんでしょうね? わたしがモデルになれたとしても、貴女が受験に落ちるようでは笑い話にもならないわ」

「う! だ、大丈夫だよ。 先生に勉強は見てもらってるし、順調だって。 ちょっとだけ、詰まってるところはあるけど……」

「はぁ……。 他人の心配をする暇があるなら、苦手をなくす努力をしなさい」

「ご、ごめんなさい……」

「まったく……。 今日はもう良いけれど、明日はそこを重点的にカバーして行くわよ。 研究ももう暫くしたら切り上げて、睡眠時間はしっかりと確保すること。 良いわね?」

「はい、先生!」

「よろしい」


 主導権は握り続けている。

 敬礼の真似事をするモエモエをよそに、ティーカップを口に運んで紅茶を飲むネーヴェ。

 その顔には無表情が張り付いているが、どことなく満足そうだ。

 こうして各陣営は、それぞれの道を進む。

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