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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第4章

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第8話 破滅と排除

 四獣王の集合場所である、洞窟内。

 現在ここには、ナーガのみがいた。

 防衛が終わった白太は家族の世話をするべく現実に戻り、ミントは母親のご飯を用意しなければならずログアウト。

 ナーガもさほど夜中までプレイする訳ではない――美容に悪いと言う理由――ものの、今日は少しばかり用がある。

 最近はヒステリックになることが多い彼女だが、今は非常に機嫌が良さそうだ。

 もっとも、その顔には嗜虐的な笑みを浮かべており、蛇の長い舌を出している。

 どことなくウキウキした様子でウィンドウを操作した彼女は、表示された連絡先を見て愉悦に目を細めた。

 そして躊躇いなくタップすると、暫くしたのちに応答があり、画面に郡山の怯えた姿が映し出される。

 それこそ、蛇に睨まれた蛙のようだ。

 そんな彼女を見てニヤリと笑ったナーガは、居丈高に言い放つ。


「わたくしの連絡には、3コール以内に出るように言っていましたよね?」

『も、申し訳ありません! 少し立て込んでいたものでして……』

「言い訳は結構ですわ。 これは、罰が必要のようですわね。 そうですね……BKO運営をクビにしてあげましょうか。 それから、同業種には決して再就職出来ないよう、根回ししてあげますわ」

『ひ……! ど、どうかお許し下さい! で、出来ることなら何でもしますから!』


 恥も外聞もなく叫ぶ郡山。

 普通に考えれば、1人のプレイヤーにそのような権限などある訳ないが、松原グループの力をもってすれば、充分に可能である。

 そのことを認識している郡山は、本気で身の危険を感じて、先ほどのようなことを言い出した。

 ナーガの策略だとも知らずに。


「何でも、ですか。 でしたら、考えてあげなくもないですわ」

『ほ、本当ですか!?』

「あら、わたくしが嘘をついているとでも?」

『い、いえ! 決してそのようなつもりでは……』

「ふん、まぁ良いですわ。 貴女に、あることをやってもらいたいのですわ」

『あ、あること、ですか……?』

「そうです。 侵攻時間に合わせて、他の4大タイトルとCBOに、サーバー攻撃を仕掛けなさい。 それによって混乱しているところに、わたくしたちが乗り込んで落としますわ」

『な!? そ、そんなの無理です! CBOは不明ですけど、4大タイトルのプロテクトは極めて厳重なんですよ!? わたし1人の力でどうこう出来る訳がありませんし、逮捕されてしまいま――』

「また口答えしましたわね? そんなにも、わたくしを怒らせたいのですか?」

『ひぅ!?』

「決めましたわ。 BKOをクビにした挙句、同業種だけではなくあらゆる職業に就けないように、徹底的に潰してやりますわ。 そうすれば、貴女の人生は終わりですわね」

『そ、そんな!? お願いです、ナーガ様! それだけは! それだけは許して下さい!』

「でしたら、つべこべ言わずに言うことを聞きなさい。 なぁに、成功すれば、あとのことはわたくしが揉み消してやりますわ」

『か……かしこまりました……』

「あら、やっぱりやりたくないんですか? でしたら、人生終了させてやりますけど?」

『い、いえ! 是非、やらせて下さい! 必ずや成功させてみせます!』

「ふふふ、その意気ですわ。 じゃあ、具体的なタイミングはこちらから指示するので、今日は失せなさい。 あぁそれと、アップデートに関しても後ほど内容を指示するので、きちんと対応するように」

『は、はい……。 失礼致します……』


 顔面蒼白とさせた郡山が、ウィンドウごと消える。

 1人になったナーガはニヤリと笑い、心底楽しそうに声を発した。


「さぁて、どうなるでしょうね。 従っても破滅、逆らっても破滅。 人の人生を滅茶苦茶にする快感、たまりませんわ」


 控えめに言っても下種な考えだが、ナーガは本気でそう思っていた。

 まるで、誕生日やクリスマスが待ち遠しい少女のように、郡山が終わる日を待ち望んでいる。

 アップデート権だけは使おうとしている辺り、抜け目がない。

 こうして、ナーガの快楽と引き換えに、1人の人間が犯罪に手を染めようとしていた。











 同時刻、TETRAのチームルームに5人の姿があった。

 ZenithとEvol、EdenにNicole、そして笹本。

 いつもの会議のようだが、このような時間に集まるのは初めて。

 Zenithの発案であり、他のTETRAのメンバーは不思議に思いつつも、特に問題なく応じている。

 だが、笹本だけは不満いっぱいのようだ。


『ちょっとZenithくん、こんな時間に呼び出しとかマジで勘弁して下さいよー。 一応、時間外手当ては出るみたいですけど、本当なら飲みに行く予定だったんですからね?』


 ウィンドウの中でデスクに頬杖を突いて、明らかに面倒臭そうにしている。

 その様子にNicoleは苛立ちを募らせていたが、いつも通り無視を決め込んでいた。

 何より彼女も、Zenithの真意がわからないのは同じ。

 それはEvolとEdenも例外ではなく、揃って内心で不思議に思っている。

 そんな中、しばし沈黙を保っていたZenithが、重々しい口調で言い放った。


「笹本、お前は本気でTHOを勝たせるつもりがあるのか?」

『は? いや、別に? まぁ、THOがサービス終了したら給料は下がるかもなんで、それはやだなーって思いますけど。 でも、自分が頑張るくらいなら、負けても良いですよ』

「それは、運営全体の方針なのか?」

『まっさかー。 上の奴らは、何が何でも勝ちたいんじゃないですか? 俺には関係ないですけど』

「お前も運営である以上、尽力するべきじゃないのか?」

『Zenithくん、今日はやけに突っ掛かりますね? 何と言われようと、俺は今のスタンスを変えませんって。 橋渡し役を買って出たのだって、適当にやってサボる口実なんですから。 まぁ、上司たちは俺が真面目にやってるって、思い込んでるみたいですけど。 ホント、馬鹿ですよねー』

「なるほど、お前の考えは良くわかった」

『お、流石はTETRAのリーダー、話が早くて助かります。 てことで、今後は残業とか勘弁して下さいね?』

「あぁ、わかった。 今日はご苦労だった、帰って構わない」

『オッケーです。 ふぅ、とんだ無駄な時間でしたよ。 今からでも飲みに行けるかなー? 取り敢えず、ツレに連絡してみるか』


 遊びの話をしながら、笹本が通信を切る。

 そのときになって、Nicoleが爆発した。


「何なのよ、アイツ!? 最低にもほどがあるじゃん!」

「落ち着いて、Nicole。 俺も流石に、どうかと思うけど」

「Edenも相当イラついてんな。 まぁ、俺も正直腹が立ったけどよ」


 Nicoleに続いて、EdenとEvolも思いを口にする。

 対するZenithは黙って腕を組んでいたが、デスクに身を乗り出すようにしながら言葉を紡いだ。


「採決を取る」

「何の!?」

「アップデート権を放棄する代わりに笹本を切るかどうかだ、Nicole」

「Zenithさん、もしかして……」

「察しの通りだと思うぞ、Evol。 今の会話は、全て録音した。 これをTHO運営の上層部へ送り付ければ、笹本はただじゃすまないはずだ」

「やけに饒舌だと思ったら、そう言うことかい……。 だったら、俺たちには教えてくれていても良かったんじゃないか?」

「敵を騙すにはまず味方からだと言うだろう、Eden? 特にNicole、お前は態度に出易いからな」

「う……。 それは否定出来ないけど……。 て言うか、アップデート権を放棄するって何? 先に使ってからにすれば良いじゃん」

「お前の言うことももっともだが、笹本がまともなアップデートをすると思うか? こちらの要望を伝えたとしても、適当に処置されるのが関の山だ。 それなら、余計なことをする前に切るのもありだと判断した」

「なるほどね。 確かに、変なアップデートをされて、今までの戦法とかが使えなくなるのは困る」

「だな、Eden。 そうなるくらいなら、今のうちに不穏分子を始末するのも良いんじゃねぇか?」

「まぁ、そう言うのを抜きにしても、あたしはあいつ嫌いだし」

「もう聞くまでもなさそうだが、改めて採決を取る。 笹本を切ることに賛成の者は、挙手してくれ」


 Zenithが言い終わると同時に、TETRA全員の手が挙がった。

 それを確認したZenithは手を下ろし、無言でウィンドウを操作する。

 どうやら、先ほどの音声データを上層部に送っているらしい。

 大して時間を掛けることもなく終わったZenithは、メンバーを見渡して言い放った。


「これで、俺たちは運営の後ろ盾を失った。 その代わりに、邪魔されることもない」

「ふん! 初めから、運営なんか当てにしてないっての! 実力で勝てば良いだけじゃん!」

「Nicoleの言う通りだ。 現状、俺たちは決して悪い位置にはいない。 ここからの立ち回り次第で、充分に勝ち残る道はあるはずだよ」

「そう言うこったな、Eden。 こうなると、コースケを落とせたのはでかいぜ」

「確かにな。 とにかく、今はCBOだ。 BKOを利用して、なんとか奴らを落とす。 皆、頼んだぞ」


 Zenithの言葉にEvolたちは、はっきりと頷いてみせる。

 笹本を切る選択が正しかったかどうかは、現時点では判然としていない。

 それでも彼らは、後悔はしていなかった。

 しかし、決戦のときに向けて準備を続けているのは、彼らだけではない。

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