第122話 『第5層』
2025-12-31公開
〔王国歴378年 準陽神月 15日〕
「まさか、ここもとは・・・ ダンジョンならざるダンジョンとしか言いようが有りませんな」
第5層に降り立ったアルジャン・コラル・ミンシが思わず呟いた言葉はみんなの共通の感想だろう。
なんせ、第1層から第5層まで全て草原が広がって居たからだ。
第2層と第4層には森林、第3層には岩石で出来た小山も在ったが、それでも草原が主役だった。
ダンジョンと言えば洞窟、という位に普通は洞窟環境の方が多い。
勿論、階層によっては湖が大きな面積を占めているダンジョンも在ったり、雪原だったり、荒野だったり、砂漠だったりするダンジョンも少ないながらも存在するが、ここまで草原が主役のダンジョンは聞いた事が無い。
「エレム、もしかして避難先として考えているのか?」
『そうだ。ただし永住は無理だ。ダンジョンから影響を受けるし、最期は飲み込まれる』
「まあ、勿論永住は物資の吸収も有るから考えていないが、一時的にでも避難先が在ると計画が立て易くなるから助かる」
戦闘に参加しない女性、子供、老人をこのダンジョンに避難させるだけで、守るべき対象が激減する。
勿論、ここにも戦力を置かなくては、いざ魔獣が入り込んでしまった時に被害が出てしまう。
なんせ、階層間の往来は一般的な階段や亀裂ではなく、魔獣でも通れる様な坂道だったのだ。
物資の搬入や搬出には便利だが、魔獣の侵攻を防ぐどころか、むしろ助ける侵攻路になってしまう。
120名体制で発足する事にした領衛隊の一部と、低級の若い冒険者をこちらに配置して、避難民に被害が出ない様にしよう。
侵入を防ぐ準備をしっかりとしておけば、負担も少なくて済むだろうしな。
草原以外にも何かの地形が見えないかと見渡していると、リリーとモンソン姉妹の視線と合った。
後でも良いが、今、言っておく方が良い気がした。
「リリー、避難所の事を任せた。成人前とは言え、領主の一族は責任を負う事になる。周囲の意見を聞いて、みんなを上手く導いてくれ」
「はい、お兄様」
「うわ、スパルタ過ぎ」
エルサが思わず呟いたが、こちらでは『スパルタ』は通じない。
異世界の地名だからな。
「エレム様、念の為にお伺いしたいのですが、このダンジョンでは魔獣は1匹も出ないのでしょうか?」
ディック・テイホフ筆頭従士がエレムに尋ねた。
まあ、防衛方針を固める為にも必要なんだろうが、元冒険者としては不思議なんだろう。
『もう少ししてから出す。猪魔獣、剣角鹿魔獣、森林魔狼が主なところだ。第6層以降は更に強い魔獣が出る事になる』
「ありがとうございます。冒険者の練度と士気を保つには十分でしょう。それと種類を増やす事は可能でしょうか?」
『そうしよう』
「有難うございます、大氾濫までに出来るだけ色んな魔獣と戦う経験が必要ですから良かったです」
出来たばかりのダンジョン視察は有意義なものになった。
お読み頂き、誠に有難うございます。
今年最後の更新です。
頭痛がしてこれだけ書くのも大変でした(><;)
何はともあれ、
皆様の来年が良い年になります様に(*´꒳`*)/




