第121話 『第1層』
2025-12-27公開
〔王国歴378年 準陽神月 15日〕
「わあ、広くて明るい! あ、風も吹いている! うーん、気持ちいい!」
「まさか第1層に草原が広がっているとは思わんかったぞ」
「ああ、草原を持って来るとはな」
「これがダンジョンの中とは、自分の目で見ても信じられませんな」
「あ、あそこ、光ってる! もしかして池が在るかも?」
「水を引いて、この辺りを畑にしたいくらいですね」
人工的な通路を抜けた先には草原が広がっていた。
みんなの反応も意表を突かれた、というものだ。
文献で得た知識でしかないが、第1層が草原というダンジョンは無かった筈だ。
近い例は、竜種が居る場合に生態系を再現する為に自然環境を整えているダンジョンの最下層くらいだろう。
ゴダンが造ったレンホルム男爵領のダンジョンも、矮竜の群れが生きて行ける様に植生や生息する野獣も含めて自然が再現されていた。
そう言えば、ダドやファッグ達は元気にしているだろうか?
酒やジャーキーの「おそなえもの」はちゃんと誰かが献上してくれているんだろうか?
「ゼアスキ%#*※Й様の御力も借りたけど、頑張ったあ~」
「うん、頑張ったぁ~」
「頑張っただけあって、素晴らしい草原です」
一応、ここの2体の妖精とはゴダンと違って会ったばかりなので、軽く褒めておく。
まあ、すぐに慣れて、丁寧な言葉を使わなくなりそうな気もするが。
「人型、そんなに固くなくていいよ~。ゼアスキ%#*※Й様の童だから~」
「うん、許すぞ~」
あっさりと許可が出た。
「では、いつもの口調で。それとアキ様とアケ様と呼んでも?」
「アキでいいよ~」
「アケと呼ぶ事を許すぞ~」
「分かった」
妖精って、意外と高位の存在な筈だが、こんなに軽くて良いのか?
ま、良しとしよう。
『普人達が飼っている獣たちをここに逃がすが良い。ここならば魔脈の変動の影響は受けぬ故にな』
エレムが唐突に嬉しい提言をして来た。
クイーンを初めとする騎獣や、ホッグ、ウッグ鳥等の使役獣の扱いを悩んでいたが、ダンジョンの中で飼うという考えは一度も浮かばなかった。
まあ、新しいダンジョンの第1層が草原だという予想なんてしなかったしな。
第一、ダンジョンにとっての異物は長期的には吸収されるから、考慮もしていなかった。
「それは助かる。畜産をここで継続出来るなら、大氾濫中の食料供給が楽になる」
「確かにここなら、飼料も十分そうですし、理想的な避難場所と言えます」
大量の喜びを含んだ声でキアナ・アンバール殖産管理官が続いた。
「ならば、畜産業を営んでいる家族全員をここに呼ぶ方が良いな」
「そうですね、いっその事、この草原に畜産村を作ってしまいましょうか? 戻ったら、早速計画を立てます」
「普通のダンジョンと違って、出入り口が大きいのが幸いしたな」
「本当にツイていますね」
いや、むしろ、エレムが最初からそうする積りで2体に大きな出入り口を造らせたんだろう。
全く、脈略も無く『つんでれ』という言葉が脳裏を過ったが、無いな。
ああ、無い。
お読み頂き、誠に有難うございます。
うーん、もっとサクサクと書けて2000字くらいまで書く積りでしたが、無理でしたort




