第120話 『新たなダンジョン』
2025-12-23公開
〔王国歴378年 準陽神月 15日〕
「ダンジョンの創造主様自らのお出迎え、痛み入る。エリアス・エリクソンとその身内が3名、他にも同行者が27名だがお邪魔して構わないだろうか?」
今日はルクナ村の精霊、ルクナマクス様のところに居た妖精が開いたダンジョンの下見に来ている。
今はエレムを抱いた俺だけがダンジョン入口の結界を潜って入った状態だ。
旧グスタフソン騎士爵領(現レンホルム男爵領)に在ったダンジョンとの外見上の違いは、山裾の崖にぽっかりと口を開けている事と、その穴が大きい事だ。獣車が十分にすれ違えるくらいに横に大きい。
ダンジョン自体は昨日の夜には出来上がったらしいが、創造主の妖精が念の為に点検をしていたらしい。
その話をエレムから聞いた時に、ダンジョンを造る妖精にも、凝り性だったり適当だったりという個性が有る事にちょっとだけ親近感が湧いた。
「いいよ~」
「待ってたよ~」
「「そして、ゼアスキ%#*※Й様、よくぞ来てくれました。我ら」」
「アキ*@#」
「アケ≒Λ※」
「「心より歓迎致します」」
そう言って、透明な蝶の翅としか見えない2枚の翅を背中に生やした2体の妖精が、俺の手前、腕2本分ほどの距離で出迎えてくれた。
手のひらサイズで、大きさは昔、エレムと会話が出来なかった頃に近いか。
パッと見た感じ、「にほん」で観た創作の妖精に近いが、顔は無くて代わりに花の蕾が付いている。
パタパタと翅を動かしているが、それで飛んでいるという訳では無さそうだ。
『ふむ、ご苦労』
最近は白い仔猫の姿をして、モンソン姉妹の妹のクラーラと時には姉のエルサに抱えられている姿ばかり見ているせいか、偉大な存在という事を忘れがちだが、エレムは神様の一種、矮神と言って良い存在だ。
なかなか偉そうな口調で応えた。
入る許可も下りたので、一旦外に出て、固唾を飲んで待っているみんなに声を掛けた。
「ダンジョン主の許可が下りたので、決めた通りの順番で入ろう」
俺の後に続くのはリリーだ。
領主の妹として、2番目に入る事は決まっていた。
領主の身内枠として更にモンソン姉妹が続く。
この順番は領主としてのエリクソン家が最初に入る事で所有権を明確にする事が第一の理由だ。
それと、第二の理由として、リリーの世話係として雇っているにも拘らず、何故かエレムの世話係も兼ね始めたモンソン姉妹が領で独自の立場を得た事も示している。
まあ、姉妹は「異世界知識」の恩寵を賜った者同士という事も有り、俺とは特殊な距離感が築かれていた事も大きな要因だろう。
雇い主の貴族と雇われている平民という距離感では無いという空気が、どうしても周囲に伝わってしまうからな。
「エレム、思ったよりも明るくて広い気がするんだが? それに自然ぽさが無いんだが」
従士連中が入って来るのを待っている間に、入り口から続く洞窟を見渡したが、レンホルム男爵領のダンジョンと違って、広い上に人の手が入っているという加工感が半端ない。
『アキ*@#とアケ≒Λ※が頑張った』
「「はい、ゼアスキ%#*※Й様の仰る通り、頑張りました~」」
「頑張って貰えたのなら感謝しかないですね」
「「ありがとうなのです?」」
何故疑問形で首を傾げる?
それと今さらだが、耳から声が聞こえているんだが、どこから声を出しているんだ?
頭部に当たる蕾には口が無いんだが?
「おお、広い!」
「しかも明るい!」
「こんなダンジョンは初めて見るな」
「さすが、エレム様案件」
「これなら人だけでなく、獣車の行き来も楽に出来そう」
後ろから賑やかな声が聞こえて来た。
従士7人が思い思いの方向に視線を飛ばしながらやって来た。
「みんなは妖精を見るのは初めてだと思うが、こちらの2柱がこのダンジョンを造った妖精だ。名前は人類には発音出来ない音が有るので紹介出来ないが、敬意をもって接する様に」
俺の言葉に、みんなの目が俺の前で浮いている妖精2体に向く。
みんなの表情が驚きに変わり、慌てて片膝を付いた。
「お初に御目に掛かります。我らエリクソン家が従士7名で御座います。以後、お見知り置きを」
ディック・テイホフ筆頭従士が如才なく口上を述べた。
「いいよ~」
「よろしくね~」
うーん、ダンジョンの創造主はレンホルム男爵領のダンジョンを造ったゴダンしか知らんが、もっと尊大で堅苦しい面が有った。
だが、この2体はかなり軽いな。
人類が命懸けで右往左往する様が見たくてダンジョンを造るゴブリンモドキと、見た目からファンタジーな妖精モドキの差なんだろうか?
お読み頂き、誠に有難うございます。
年内にあと1話更新出来るかも?




