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赤い悪魔と白い悪魔  作者: ぺんぎん


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5/7

夜番

翌朝、村の井戸の前に男たちが集まった。


誰かが呼び集めたわけではなかった。水を汲みに来た者が昨日の話を始め、そこへ別の家の者が加わり、やがて仕事へ出るには人数が多すぎるほどになった。


ステパンは少し離れたところに立っていた。


フェドートも来ていた。


片方の目のまわりが紫色に腫れ、唇の端が切れている。昨日までなら誰かがその顔を見て何か言っただろうが、今日は誰も聞かなかった。


リューバの姿はなかった。


朝、ダーリヤから「生きてる」とだけ聞いた。


それ以上はステパンも聞かなかった。


「次に来たら撃つ」


フェドートが言った。


井戸のまわりが静かになった。


村で一番年上の男が首を振った。


「六人を撃って、それで終わると思うか。仲間を連れて戻ってくるぞ」


「じゃあ、また家へ入れろっていうのか」


「そうは言ってない」


「同じだ」


フェドートの声が震えた。


怒っているのか、泣きそうなのか、聞いている側にも分からなかった。


パーヴェルが口を開いた。


「赤軍に知らせた方がいい。近くに部隊がいる。昨日の連中がまだこの辺りにいるなら、追えるかもしれない」


ミハイルがすぐに言った。


「それで赤が村に駐まったら、今度は残った麦を数え始めるぞ」


「またそれか」


「まただよ」


「白に好き放題させるよりましだ」


「お前にはな」


パーヴェルが何か言い返そうとした。


ステパンはその前に言った。


「今夜、また来たらどうする」


二人が黙った。


ステパンは井戸のまわりを見た。


「赤を呼ぶかどうかは、そのあと決めればいい。今夜ここへ来る奴を、誰が最初に見るんだ」


老人が顎を撫でた。


「見張りか」


「西の道と、川の方。二人ずついればいい」


「銃はどうする」


誰かが聞いた。


そこでまた静かになった。


昨日までなら、その質問のあとに誰も答えなかったかもしれない。


ミハイルがため息をついた。


「持ってる奴は出せ。全部じゃなくていい」


「誰が持ってる」


「それをここで大声で聞くな」


少し離れた家から、一人の男が無言で戻っていった。


しばらくして、麻袋に包んだ長い物を持ってきた。


別の家からも一本出てきた。


古い小銃だった。


錆びているところもあったが、どちらも銃の形をしている。


パーヴェルは自分の肩の銃を見た。


「やっぱりあったんじゃないか」


ミハイルが鼻を鳴らした。


「昨日言っただろ」


「こんな近くに?」


「村なんだから近いだろ」


「何で隠してた」


「持ってると知られたら、赤にも白にも取られるからだ」


パーヴェルは黙った。


その答えには、反論しにくかった。


フェドートが一本へ手を伸ばした。


老人が止めた。


「お前は駄目だ」


「何でだ」


「今のお前に持たせたら、影でも撃つ」


フェドートの顔が赤くなった。


「俺の家で何があったか知ってるだろ」


「知ってるから言ってる」


二人の間へ重い沈黙が落ちた。


ステパンはフェドートの手を見た。


拳が固く握られている。


昨日、自分も同じ手をしていた。


守れなかったあと、人は何かを握りたくなる。


斧でも、銃でも、誰かの喉でも。


「俺が持つ」


ステパンが言った。


自分の声なのに、少し遠く聞こえた。


パーヴェルが兄を見た。


「使えるのか」


「使えない」


「兄貴」


「だから教えろ」


ミハイルが笑いかけたが、途中でやめた。


「昨日まで家に入れるなって言ってた奴がな」


「昨日は昨日だ」


パーヴェルが吹き出した。


ステパンは睨んだ。


「何だ」


「いや。その言い方、昨日も聞いたなと思って」


「教えないならミハイルに聞く」


「教えるよ」


パーヴェルはまだ少し笑っていた。


久しぶりに、いつもの弟の顔だった。


その日の夕方、畑仕事を早く切り上げた。


パーヴェルは家の裏で小銃の持ち方を教えた。銃口を人へ向けるな、撃つつもりがないなら引き金に指を掛けるな、装填したまま子供の手が届くところへ置くな。


「お前、昨日まで撃ったことなかっただろ」


ステパンが言った。


「兵隊に教わった」


「一日で先生か」


「兄貴よりは一日先輩だ」


「偉そうにするな」


「銃を持ってる時くらい言うこと聞け」


ステパンは小銃を肩へ当てた。


思ったより硬かった。


照準の向こうに納屋の壁が見える。


「これで合ってるか」


「肩が違う。そこだと撃った時に痛い」


パーヴェルが後ろから直した。


昔、鎌の研ぎ方をステパンが弟へ教えた時は、立つ位置が逆だった。


今はパーヴェルが兄の腕を動かしている。


ステパンはそれが少し気に入らなかった。


「お前、これ撃ったのか」


パーヴェルの手が止まった。


「まだ」


「そうか」


「何だよ」


「何でもない」


パーヴェルは少し黙った。


「怖いよ」


ステパンは弟を見る。


パーヴェルは笑っていなかった。


「じゃあやめろ」


「怖くても、やらなきゃならないことはあるだろ」


ステパンは返事をしなかった。


その言葉を、どこかに置いておくように聞いた。


夜はミハイルと組んだ。


西へ続く道から少し外れた、畑の境の低い土手に二人で座った。


月は細く、遠くの家は屋根の形しか見えない。


犬が時々鳴いた。


そのたびにステパンは顔を上げた。


最初の一時間で三度。


二時間目には七度。


「それじゃ朝までに首が折れるぞ」


ミハイルが言った。


「お前はよく平気だな」


「平気じゃない」


「寝てるように見える」


「目を閉じてるだけだ」


「それを寝てるって言う」


「敵が来たら起こせ」


「撃つぞ」


「俺を?」


「寝てたら」


ミハイルが小さく笑った。


昼間の井戸では言い争っていたのに、暗い畑では昔と同じ話し方が戻った。


しばらくして、ミハイルが低い声で言った。


「フェドートには持たせなくて正解だ」


ステパンは道から目を離さなかった。


「ああ」


「お前にもまだ早いけどな」


「返すぞ」


「返したら俺が持つ」


「それが嫌だ」


「何でだ」


「お前はすぐ撃ちそうだから」


「失礼な奴だな」


また沈黙になった。


風が麦の穂を揺らす音がした。


ステパンは銃を膝に置いていた。


銃があるだけで安心すると思っていた。


実際には逆だった。


暗がりに何か動くたび、撃つかどうかを考えなければならなくなった。


持っていなければ、逃げるか隠れるかしかない。


持ってしまうと、その前に一つ選択が増える。


撃つ。


その選択が膝の上に載っていた。


真夜中を過ぎたころ、ミハイルの手がステパンの腕に触れた。


「いる」


ステパンも見た。


道の脇の黒い影が動いていた。


一人。


いや、二人かもしれない。


背の低い何かを連れている。


馬ではない。


人影が止まった。


こちらを見た気がした。


ステパンは小銃を持ち上げた。


肩へ当てる。


さっきパーヴェルに教えられた位置へ。


「誰だ」


返事がない。


「止まれ」


影が動いた。


ステパンの指が引き金の近くへ行った。


ミハイルが横で息を呑んだ。


「待て」


「止まれ!」


今度は声が返ってきた。


「撃たないで!」


子供の声だった。


ステパンの指が止まった。


影が月明かりへ出た。


ヤコフの息子だった。


十四歳の少年が、山羊の綱を引いている。


「何してる」


ステパンは銃を下ろさずに聞いた。


「山羊を隣の畑に隠してたんだ。昨日、牛を持っていかれたから」


「何で今戻る」


「昼に戻したら見つかるかもしれないって父ちゃんが」


少年の声が震えていた。


山羊も落ち着かず、綱を引いている。


ステパンはようやく銃口を地面へ向けた。


「先に名前を言え」


「え?」


「暗い時に歩くなら、誰だか先に言え」


少年は何度もうなずいた。


「分かった」


ミハイルが言った。


「もう行け。道の真ん中を歩け」


少年が通り過ぎる。


ステパンのそばまで来た時、顔が見えた。


泣いていた。


ステパンは何か言おうとしたが、言葉が出なかった。


少年が村へ消えてから、ミハイルが長く息を吐いた。


「危なかったな」


「ああ」


「撃つところだったか」


ステパンは答えなかった。


撃つつもりだったのか、自分でも分からない。


ただ、あと少し返事が遅ければ、指に力が入っていたかもしれない。


ミハイルが小銃を見た。


「持つと、守れる気がするだろ」


「ああ」


「同時に、間違えることもできる」


ステパンは横目で見た。


「急に賢そうなこと言うな」


「俺は昔から賢い」


「知らなかった」


ミハイルが笑った。


今度はステパンも少しだけ笑った。


それから銃を膝へ戻した。


朝まで白軍は来なかった。


東の空が白くなり始めたころ、交代の男たちが歩いてきた。


ステパンは家へ戻った。


ダーリヤはもう起きていて、竈に火を入れていた。


「何かあった?」


「ヤコフの息子が山羊を連れて帰ってきた」


「それだけ?」


ステパンは少し迷った。


「ああ」


銃を壁へ置いた。


コーリャが寝床から顔を出し、それを見た。


「お父ちゃん、それ持ってたの?」


「ああ」


「撃った?」


「撃ってない」


コーリャは残念そうな顔をした。


「なんで?」


ステパンは息子を見る。


答えようとして、やめた。


「撃たなくてよかったからだ」


コーリャには、それで十分だったらしい。


また毛布へ潜った。


その日から、オルロフカでは日が落ちてから村へ入る者は、姿が見える前に名前を言うようになった。

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