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第九章 神の降臨

空が割れる、という表現では足りなかった。

それは「空そのものがめくれ上がる」光景だった。

白き天空大陸の中心から、巨大な光の門が開く。

その奥から、神兵王アーク(ガーディアン)がゆっくりと降りてくる。

十二枚の翼は羽ばたくたびに、空間を削り取っていた。


大陸全土が沈黙した。

バルマーでさえ剣を止める。

ガイラムでさえ拳を握ったまま動かない。

ベルフレイムの炎が揺らぐ。

バストラルの笑みが消える。

シェルファは転移した先で膝をつく。

「……何なのよ、あれは。」

初めて彼女の声に恐怖が混じった。


魔王クリムトは空を見上げたまま、静かに言った。

「二千年前の戦いで、唯一“勝ち筋”が存在しなかった存在だ。」

ベルフレイムが低く唸る。

「じゃあ、どうやって生き延びた?」

クリムトは笑わない。

「運だ。」

「我々は……ただ生かされた。」

その言葉に、空気が凍る。


神兵王アーク(ガーディアン)は、地上へ完全に降り立った。

その瞬間。

世界の重力が変わった。

地面が沈み、海が逆流する。

空間そのものが、アークの存在に屈している。

アークは何も言わない。

ただ、五体の神兵タロスに命じる。

「進行状況報告。」

神兵ゼロ(タロス)が即座に答える。

「世界浄化計画、進行率:三十二パーセント。」

「抵抗勢力:八勢力、確認。」

「排除未完了。」

アーク(ガーディアン)は小さく頷く。

「遅い。」

その一言だけで、空がさらに沈んだ。


その圧力の中で、最初に動いたのはバルマーだった。

「……くだらぬ。」

妖刀「喰魂」が黒く鳴動する。

「静寂を乱す者は、全て斬る。」

彼はアークへ向かって踏み込んだ。

次の瞬間――。

消えた。

いや、正確には「存在をずらされた」。

アークは指先を軽く動かしただけだった。

バルマーの身体が数百メートル後方へ転移して地面に叩きつけられる。

「……っ!」

初めてバルマーが呻く。


ガイラムが低く言う。

「次は俺だ。」

巨人の拳が振り下ろされる。

山脈ごと叩き潰す一撃。

しかしアークは見もしない。

ただ手を上げる。

その瞬間。

ガイラムの拳が“停止”した。

空中で。

時間ごと固定されているかのように。

「……何だと?」

初めて巨人が動揺する。

アークは静かに言う。

「物理法則の再定義。」

拳が粉々に崩れた。


ベルフレイムが咆哮する。

「ならば燃え尽きろ!!」

世界を焼く炎が空を覆う。

しかしアークの周囲では炎が“存在しないもの”として消えていく。

「概念干渉……?」

クリムトが目を細める。

「違う。」

「現実そのものを書き換えている。」


その時だった。

ジークが立ち上がる。

「だったら……!」

彼は聖剣エクシードを構える。

「俺たちの“現実”をぶつけるしかない!」

エル=モアが叫ぶ。

「無茶です! あれは世界の理そのものです!」

しかしジークは前に出る。

その瞬間――。

聖剣が光を放った。

アークが初めてジークを見た。

「……レイモンドの系譜。」

その言葉に、空気が変わる。


遠く離れた遺跡で、老人が立ち上がる。

「ついに……来たか。」

彼こそ、最後の守護者。

そして、英雄レイモンドの“真実”を知る者。

彼は静かに呟いた。

「レイモンドの剣は、あれに届くためにあった。」

「そして今――」

「その剣は、再び選ばれた。」


神兵王アークが、ゆっくりと手を上げる。

「認識変更。」

「対象:フォーリア王ジーク。」

「優先度:最高危険対象。」

空間が軋む。

世界そのものが、ジークを“消去対象”として認識し始める。

そして――

神話級の戦いが、ついに始まろうとしていた。

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