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第六章 最後の守護者

祭壇の奥。

ゆっくりと開いた巨大な扉の向こうは、光すら届かない空間だった。

少年は恐る恐る足を踏み入れる。

すると、壁一面に青白い炎が灯る。

そこに並んでいたのは、無数の石像。

剣士。

魔導士。

竜騎士。

神官。

誰もが戦う姿のまま石となっている。

「これは……。」

少年が息をのむ。

「歴代の守護者たちだ。」

低い声が響く。

玉座に座る一人の老人。

白い髭は胸元まで伸び、瞳だけが鋭く輝いている。

「お前が……最後の守護者?」

老人は静かに首を振った。

「いや。」

「私は最後の守護者ではない。」

「最後の守護者を待つ者だ。」

少年は困惑する。

「どういう意味だ?」

老人は立ち上がると、一本の古びた槍を指さした。

槍の穂先には、青い結晶が埋め込まれている。

「この世界は二千年前、三つの力によって救われた。」

「英雄。」

「魔王。」

「そして守護者。」

少年の目が見開く。

「魔王……?」

「ああ。」

老人は迷いなく答えた。

「クリムトは世界を滅ぼそうとした。」

「だが最後には、神兵を封じるため英雄と共に戦った。」

その言葉に少年は絶句する。

「そんな話……聞いたことがない。」

「歴史は勝者が書く。」

老人は苦く笑う。

「真実は、多くの場合、都合よく消される。」

その瞬間、遺跡全体が激しく揺れた。

天井から砂が降り注ぐ。

老人の表情が変わる。

「もう始まったか。」


一方、荒野。

神兵ゼロ、魔王クリムト、大龍ベルフレイム。

三者の激突は激しさを増していた。

ベルフレイムが吐き出す業火を、神兵は光の翼で切り裂く。

クリムトが放つ漆黒の魔法を、神兵は剣一本で打ち消した。

「戦闘データ更新。」

「対象の危険度、想定以上。」

神兵の背後に、七本の光の槍が現れる。

「殲滅開始。」

槍は音を超える速度で放たれた。

クリムトは魔法陣を展開して三本を防ぐ。

ベルフレイムは翼で二本を弾く。

だが残る二本は――。

遥か彼方の山脈を貫いた。

轟音とともに山が崩れ、大河の流れが変わる。

その光景を見たクリムトが顔をしかめた。

「……まずいな。」

ベルフレイムも笑みを消す。

「こいつ、本当に世界ごと壊す気か。」


その頃。

北方では、巨人王ガイラムとアンデッド王バルマーの戦いが続いていた。

ガイラムの拳がバルマーの胸を砕く。

しかし、黒い霧が傷口を覆い、骨と肉が瞬く間に再生する。

「死なぬか。」

ガイラムが低く呟く。

「……死ねぬ。」

バルマーは妖刀「喰魂」を構える。

「魂が……許さない。」

次の一撃で、巨人の肩が深く裂けた。

黒い霧が傷口へ入り込み、ガイラムは初めて苦痛の表情を浮かべる。

「呪いか……。」

戦況は互角。

だが、二人はほぼ同時に西の空を見た。

空が黒く染まり始めていた。


その黒雲の中心。

魔女シェルファは巨大な魔法陣の中央に立っていた。

足元には八つの紋章。

「神兵一体では足りない。」

「ならば……。」

彼女は両手を広げる。

「封印を解放する。」

地中から次々と光の柱が立ち上る。

一つ。

二つ。

三つ。

そして四つ目。

世界各地で眠っていた古代遺跡が、一斉に目覚め始めた。

神兵ゼロだけではない。

まだ眠る神兵たちが、この世界には存在していたのだ。

シェルファは静かに笑う。

「世界は混沌を望んでいる。」

「ならば、その願いを叶えてあげましょう。」

遠く離れた遺跡で、四つの石棺に亀裂が走る。

中から響く、機械のような声。

「起動確認。」

「神兵一号。」

「神兵二号。」

「神兵三号。」

「神兵四号。」

世界は今、一体ではなく――**五体の神兵タロス**が動き出そうとしていた。

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