第四章 王を狩る者
夜明け前。
荒野を進むフォーリア王国の一団は、誰一人として口を開かなかった。
王都を失い、家族を失い、それでも歩みだけは止めない。
先頭を歩く若き王ジークは、腰の聖剣エクシードを見つめていた。
「あの神兵は……なぜ私を狙う。」
誰も答えられない。
その時だった。
――ズン。
地面が揺れた。
二度。
三度。
兵士たちが一斉に槍を構える。
霧の向こうから現れたのは、一体の白銀の騎士。
「目標確認。」
「フォーリア王ジーク。」
「排除を開始。」
神兵ゼロ(タロス)。
ただ一体。
それだけなのに、数千の軍勢にも匹敵する威圧感が辺りを支配していた。
「王を守れ!」
騎士団長が叫び、十数人の騎士が突撃する。
剣が振り下ろされる。
しかし――。
キン。
神兵は片手で受け止めた。
次の瞬間。
閃光。
騎士たちの鎧が真っ二つに裂け、全員が地面へ崩れ落ちる。
「……弱い。」
感情のない声だった。
「戦闘能力、基準値以下。」
「排除完了。」
ジークは息をのむ。
一撃。
たった一撃だった。
「これが……二千年前の力。」
神兵ゼロがゆっくりと聖剣を構える。
「次。」
その切っ先が、ジークへ向く。
「対象、排除。」
神兵が踏み込んだ瞬間――。
ゴォォォォン!!
大地が爆発した。
巨大な斧が神兵の剣を弾き飛ばす。
「ハハハハハッ!」
豪快な笑い声が荒野に響く。
「面白ぇじゃねぇか!」
狂戦士バストラル。
肩に巨大な斧を担ぎ、獣のような笑みを浮かべて立っていた。
「強い奴は大歓迎だ!」
神兵は静かにバストラルを見る。
「新たな障害を確認。」
「優先順位変更。」
「対象追加。」
「狂戦士バストラル。」
「排除。」
「来いよ!」
バストラルは斧を振り上げ、神兵へ突撃する。
轟音。
衝撃。
荒野が陥没する。
その激突を遠くの丘から見つめる影があった。
黒いローブ。
長い銀髪。
魔女シェルファ。
彼女は静かに微笑む。
「なるほど……。」
「神兵は、八つの勢力すべてを敵と判断しているのね。」
彼女は地面に新たな魔法陣を描き始める。
「ならば利用できる。」
「世界が混乱するほど、私の理想に近づく。」
その頃――。
地下深くでは、魔王クリムトが玉座から立ち上がっていた。
「そろそろ私も動くか。」
その背後に、数え切れない魔族たちが跪く。
「命じる。」
「神兵ゼロを見つけろ。」
「生け捕りでも破壊でも構わん。」
「だが――」
クリムトは不敵に笑った。
「絶対に、ジークより先に接触しろ。」
魔王がついに動き出す。
一方、空の彼方では、大龍ベルフレイムが巨大な翼を広げ、神兵の気配を追っていた。
「面白い。」
「二千年ぶりに、本気で燃えられそうだ。」
世界最強たちが、一つの存在を目指して動き始める。
そして神兵ゼロは、なおも無表情のまま剣を構えていた。
「戦闘継続。」
「世界浄化計画――進行率一%。」




