第三章 眠れる神兵
黄金の光は、大陸の中央へと落ちた。
轟音はなかった。
爆発もない。
ただ、世界から音だけが消えた。
空を飛んでいた鳥が羽ばたきを止め、森の獣たちは一斉に身を伏せる。
誰もが本能で悟った。
**あれは、この世界のものではない。**
落下地点――古代都市アストラ跡地。
二千年前の戦争で滅び、地図からさえ消えた禁忌の遺跡。
黄金の柱は、その地下深くへと突き刺さっていた。
ひび割れた石畳が崩れ、巨大な扉がゆっくりと開く。
その奥にあったのは、玉座。
そして玉座に座る、一人の騎士。
全身を白銀の鎧に包み、膝の上には一本の聖剣。
まるで眠っているようだった。
だが、その瞳がゆっくりと開く。
「……起動を確認。」
感情のない声が響く。
「管理番号・ゼロ。」
「世界存続率を測定。」
無数の光文字が宙に浮かぶ。
**世界存続率 2.3%**
騎士は静かに立ち上がった。
「戦争規模……終末級。」
「管理者権限を行使。」
「世界浄化計画を開始する。」
その頃、魔王クリムトは遺跡の方角を見つめていた。
珍しく、その表情から笑みが消える。
「まだ残っていたか……。」
配下の魔族が尋ねる。
「魔王様、ご存じなのですか?」
「あれは魔物でも神でもない。」
クリムトは静かに答えた。
「二千年前、最も多くの命を奪った存在だ。」
一方、アンデッド王バルマーも戦いの手を止めていた。
喰魂が小さく震える。
まるで恐れているように。
「……敵。」
それだけを呟く。
妖刀が初めて、自ら危険を知らせていた。
森ではエル=モアとエル=ウィンが精霊の声を聞いていた。
『神兵が目覚めた。』
『裁きが始まる。』
『逃げよ。』
兄弟は顔を見合わせる。
「裁き……?」
「誰を裁くというんだ。」
精霊は答えた。
『すべてを。』
その頃、若き王ジークは生き残った騎士たちとともに王都を離れようとしていた。
だが、その前に一人の老人が現れる。
ぼろ布をまとい、一本の杖をついた老人。
「王よ。」
「……誰だ。」
老人は静かに笑う。
「お前が最後の王ならば、これを返そう。」
一本の剣が差し出される。
鞘は古び、柄は欠けている。
しかし、ジークが握った瞬間――。
眩い蒼い光が世界を照らした。
「これは……。」
老人は深く頭を下げる。
「初代国王レイモンドが残した聖剣。」
「その名は――『エクシード』。」
その名が告げられた瞬間、大陸各地の強者たちが一斉に空を見上げた。
魔王クリムトが笑う。
「なるほど……。」
バルマーが剣を握り直す。
ベルフレイムが大空へ舞い上がる。
シェルファは魔法陣を書き換え、バストラルは獰猛な笑みを浮かべる。
そして、白銀の神兵は静かに告げる。
「高エネルギー反応を確認。」
「優先排除対象を追加。」
「対象――フォーリア王ジーク。」
世界を懸けた戦いは、さらなる局面へと突入する。




