第二章 最初の覇者
アンデッド王バルマーと巨人王ガイラム。
世界最初の激突は、国境の平原を消し飛ばした。
ガイラムの拳が山を砕けば、バルマーの妖刀「喰魂」は大地そのものを切り裂く。
剣と拳が交わるたび、大地は悲鳴を上げ、空は黒く染まっていく。
「貴様……死んでも立つか。」
ガイラムが低く唸る。
バルマーは答えない。
ただ剣を振るう。
魂を喰らい、立ち続けるためだけに。
その頃――。
王都フォーリア。
瓦礫の城で若き王ジークは、生き残った騎士たちを前に静かに立っていた。
集まった兵は、わずか三百。
かつて大陸最強を誇った王国の面影はない。
それでもジークは剣を抜いた。
「王国は滅んでいない。」
誰も顔を上げない。
「王とは城ではない。」
兵が息を呑む。
「民がいる限り、フォーリアは生きている!」
静まり返っていた広間に、剣を掲げる音が一つ響く。
やがて二つ。
三つ。
そして全員が剣を掲げた。
その姿を、城の影から一人の男が見つめていた。
黒い外套。
仮面。
腰には一本の細剣。
「……面白い。」
男は静かに笑う。
「まだ舞台は終わっていない。」
名前を知る者はいない。
だが、その男は八つの勢力にも属さない存在だった。
一方、深き森ではエル=モアが精霊たちの声を聞いていた。
『八つでは終わらない』
風が囁く。
『九つ目が来る』
エル=モアの表情が初めて曇る。
「……何だと。」
その瞬間。
空が裂けた。
黒でも白でもない。
黄金の稲妻が天を貫き、大陸の中央へ落ちる。
八つの王すべてが同じ方向を見た。
バルマーは剣を止める。
クリムトは笑う。
ベルフレイムは翼を広げる。
シェルファは魔法陣を書き換える。
ガイラムは拳を下ろす。
バストラルは狂喜する。
ジークは空を見上げる。
そして、誰も知らなかった。
二千年前の戦いで、本当に封印されたはずの"何か"が、今まさに目を覚まそうとしていることを――。




