表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/12

第一章 八つの戦火

大陸バハムートは、静寂を知らない土地へと変わり果てていた。

かつて魔王クリムトが支配した時代があった。その終焉を告げたのは、フォーリア王家の誇り高き騎士たち——レイモンド卿とバルマー卿である。

二千年前。

世界はその戦いを「英雄譚」と呼び、未来永劫の平和が訪れると信じて疑わなかった。

しかし、それは幻想だった。


王都フォーリアは、一夜で滅びた。

崩れ落ちた城壁の上に立っていたのは、かつて英雄と呼ばれた男の亡骸であり、そして今はそれを超えた“存在”のアンデッド。

バルマー卿——妖刀「喰魂」に魂を吸われたまま、死を拒絶された騎士。

いや、もはや騎士ではない。

その身に纏う黒い鎧は、血と呪いで鍛え直されたもの。

兜の隙間から覗く眼光には、理性の光は一切なかった。

「……王都は、静かだ」

声は低く、湿った洞窟のように響いた。

崩れ落ちたフォーリアの旗が、その背後で風に揺れている。

「これでよい。世界は、再び沈黙する」

アンデッドの王、バルマーが最初の戦火を放った瞬間だった。


同時刻。

大陸北方の氷壁が、内側から砕け散った。

そこから現れたのは、山を歩く巨影。

巨人族——ガイラム。

かつてフォーリア王家と太古の戦争を繰り広げた存在。

巨人族は、ガイラムの指揮のもとドワーフどもを葬り去り、その地下王国を蹂躙した。

地面に足が触れるたび、大地が軋む。

「人間の城があると聞いた」

巨人はただそれだけを言った。

侵略でもなく、宣戦布告でもない。

そこにあるのは、ただ“存在する意思”。

その一歩が、都市を押し潰す。

さらに南の空では、翼が世界を裂いていた。


大龍ベルフレイム。

かつてクリムトと互いに焼き尽くし合った災厄の象徴。

空を赤く染めながら、龍は再び目を覚ました。

「……まだ燃えるか、この世界は」

炎が雲を蒸発させる。

その咆哮は、空そのものを引き裂いた。

そして、地下深く。

封印されていた魔導回廊が、静かに崩れた。

黒い魔力の渦の中から、男が立ち上がる。


魔王クリムト。

二千年の時を経てなお、世界を焼く存在。

「……また、始めるか」

それは復活ではない。

まるで最初からそこにいたかのような自然さだった。

混沌は止まらなかった。


砂漠の城塞都市では、各種の魔法陣を操る女魔法使いシェルファが、古代の魔法陣に契約を刻んでいた。

「この世界は均衡を知らない。ならば私が支配構造そのものを作る」

狂気にも似た理知が、その地に混沌を広げていく。


一方、深きエルフの森では、森を守るエルフたちを率いるエル=モア、エル=ウィンの兄弟たちが、静かに弓を手にしていた。

「この森は誰にも渡さない。たとえ世界すべてが敵になろうとも」

森の精霊たちはその呼びかけに応え、古き力を目覚めさせる。

その頃、戦場を求めて北へ駆ける影があった。


狂戦士バストラル。

斧を肩に担ぎ、笑いながら大地を裂く男。

「全部壊せば、平等だろうがよ!」


八つの勢力。

・アンデッド王バルマー

・巨人族ガイラム

・大龍ベルフレイム

・魔王クリムト

・魔女シェルファ

・狂戦士バストラル

・フォーリア王国(若き王ジーク)

・森の民エル=モア、エル=ウィン

そして、フォーリア王城の残骸。

若き王ジークは、瓦礫の玉座に剣を立てていた。

「……これが、平和の終わりか」

血に濡れた地図の上に、災厄の印が浮かぶ。

その背後で、森の使者エル=モアが静かに言った。

「終わりではありません。これは“選別”です」

「選別?」

「この大陸に残る価値のある未来を決める戦争です」

その瞬間、遠くで大地が裂けた。

最初の衝突。

アンデッド王バルマーと巨人ガイラムが、国境の平原でぶつかり合う。

光でも炎でもない。

ただ“存在の衝突”が、世界そのものを揺らした。

そして空では、ベルフレイムが笑った。

地下では、クリムトが目を細めた。

森では、シェルファが術式を完成させた。

戦場では、バストラルが吠えた。

八つの戦火が同時に燃え上がる。

誰も止めない。

誰も止められない。

そして誰もが思っていた。

——この戦争の終わりに、世界はまだ残っているのか、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ