第1話 断罪と嘲笑と
お久しぶりです、はなむけです。
新しい「アルカナ・ビート」の世界が産まれました。
つまらない前書きはこれくらいにして、本編へどうぞ。
「イリアス様の魔力は――ゼロです」
女神官、ヴァイラス・ダアト・ヴォイド・オブスキュラは重々しくそう告げた。
場所は王宮、謁見の間。
神殿で行われるべき魔力測定。
しかし、このイリアス・ケセド・ヴァルハライトに関しては「例外」が適用された。
「あら、薄々感づいてはおりましたが、やはりそうなのですわね」
周囲の空気が凍り付くなか、その少女は一人優雅に笑っている。
濡れたように艶のある黒髪を掻き上げ、束ねた髪の後れ毛を耳にかける。
自信に満ちた水色の瞳。
赤をアクセントとして使用した黒い豪奢なドレス。
それはまるで一枚の絵画の様であった。
「イリアスっ! 分かっているのか!!」
と、実兄であるセオリス・ケテル・ヴァルハライトがその美貌を焦りに染めて叫ぶ。
「お兄様、そんなに大きな声をお出しにならなくても聞こえますわ。その程度のことは分かっておりまして、――後は国王陛下の勅令を待つだけですわ」
「……魔力のないものは」
セオリスは言葉を詰まらせた。
源書には「魔力のないものは、神の元へ還す」とある。
重苦しい空気の中、王は口を開く。
「まずは確認だヴァイラスよ。魔力のないものは『源書』にはどうせよと記されておる。改めて申してみよ」
「恐れながら申し上げます。源書には『穢れを払うために、神の元へ還す。これを称して環神の儀という』と記されております」
「で、あれば貴様はこの『イリアス・ケセド・ヴァルハライト』の処遇についてどう考える」
ヴァイラス・ダアト・オブスキュラは重々しく口を開く。
「イリアス様を『環神の儀』にかける事を具申いたします」
「あい、分かった。イリアス・ケセド・ヴァルハライトよ。貴様を『環神の儀』に処す事とする。――故に、これより家名を名乗ることを禁ずる」
「お待ちください父上! イリアスは、様々な魔道具の理論を構築し、発展させることで、我が国を豊かにしてきました! 民の中には確かに、『イリアス様のおかげで生活が楽になった』という者たちがおりますっ! それを加味して寛大なご処置を願います!」
セオリスはそう叫ぶ。
イリアスに魔力が無いことは察していた。
故に魔道具や薬品知識を叩き込んできた。
それは評価されるべき項目であると信じた。
しかし、王は残酷であった。
「ならぬ。穢れをもたらす魔力を持たぬものは、源書の記述に基づき『環神の儀』に処すものとする。これは、アスデウス・アクゼリュス・ヴァルハライトの王命である。これに反するのであればセオリスよ――貴様に覚悟はあるか?」
「…………っ!」
セオリスはうつむき、肩をふるわせ、拳を強く握りしめる。
その手からは、赤い涙がこぼれる。
「――お父様。いえ、家名を剥奪でしたわね。では、国王陛下。最期に一つだけよろしいでしょうか?」
重苦しい雰囲気を破るかのように、イリアスは優雅に告げる。
「なんだ、申してみよ」
ただ一つ、「魔力が無い」という理由だけで愛娘ですら切り捨てる。
そんな冷酷な王をイリアスは心の中で――軽蔑し、見限った。
「これが私のこの国への思いですわ」
そう言い捨て、少女は王へ向けて中指を立てる。
そのまま優雅な足取りで、謁見の間を後にした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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それではまた次回お会いいたしましょう。




