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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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87.魔法の危険性

 それは突然の話だった。

 教室で雑談をしていた時江川がぽつりと言った。


「魔法って危ないんじゃないか?」

「どうしてだよ」


 それまでの俺達の魔法の話を聞いていたのに突然そんなことを言い出したので驚く。

 何があったんだ?


「だってさ、最近魔法を使ったと思われる事件が多すぎないか」

「それは……たしかに」


 それについては何も言い返せない。

 最近、犯罪は起きているのに容疑者不明で証拠も不在な事件が増えている。

 特に殺人や強盗などといった、本来容疑者も証拠も特定されやすい犯罪で増えているのが特徴だ。


「俺も魔法を使うことそれ自体が悪いとは思わないよ、でも使い方が悪いと思う」

「うん……それはそうだね」


 諭すように言われてしまうと返す言葉もない。

 使い方が悪いのは事実だからだ。

 ただそれは使う人の使い方が悪いんだと思う。


「みんな使うのをやめて昔に戻ったらいいじゃないか」

「はんたーい、せっかくの便利なものを失いたくなーい」 


 江川の話に言い返そうとしたらその前に桐谷が異議を唱えた。

 ある意味意外な反応だったので少し驚く。


「ちょっとした時に使えるのがいいじゃん」

「元々なかったものじゃないか」

「なら江川はスマホ捨てられるのか? 数十年前にはなかったらしいぞ」


 江川の返しに翔がツッコミを入れた。

 その言葉を聞いて江川は即答せず少し考えているようだ。


「それはもう社会インフラになってるから……」

「魔法もそうなろうとしてると思うが」


 どうやら図星だったらしく言い訳を考えていたようだ。

 でも既にちょっとしたことなら魔法で済ませていることも多い。

 タイマー・除菌・計測・検査・しおり・探し物探し、どれも便利に使っている。

 いまさら取り上げようとしてもかなりの不満になるだろう。


 さらに魔法と現代科学を組み合わせたものが普及し始めているのも逆風だ。

 例えば視覚入力やパワードスーツの操作などがあげられる。


 それらは目や脳の信号を読み取って機械に任意の動作をさせているが、現代科学では眼球動作確認用カメラや脳波計を装着してようやく自分の意思の数割が伝わるかもしれないと言ったレベル。

 だけど魔法を使えば、いとも容易く正確に自分の意思を電気信号に変換できる。

 後はその信号通りに動くようにプログラムするだけでいい。


「スマホと違って悪用出来すぎるのが問題なんだよ」

「それはそうよね」

「あ、私もそう思う」

「なんか便利すぎるんだよな」


 たまたま通りがかった和泉さん達が江川に賛同すると他にも続々と声が上がった。

 なんで他の人間が聞いてるんだと思わなくはないけど、それを言うと『声が大きいから聞こえた』と返ってきそうだ。

 増援に気をよくした江川が俺の方を向く。


「能見の意見はどうなんだ?」

「それは……」 

「魔法好きとして言わせてもらうと話にならないわね」

「……なんだと?」


 俺が答えられずにいると平川さんが返事をした。

 いつの間にか平川さんと透子も近くに来ていたようだ。

 ただ返事があまりにも喧嘩腰だったので江川も少し苛ついている。


「アタシが使うのをやめたら世界も使うのをやめるというならやめるけどそうじゃないでしょ」


 それは正しいけど江川を説得することは出来ない。

 江川もそれは知っていて、だからどうするかと思っているのだから。


「それはそうだが誰かが始めないと誰もついてこない」

「魔法を捨てるのが主流になったとして、魔法を使う人はゼロにならないわよ」

「全体の数が減れば絶対数も減る」

「悪用する人だけ残るんじゃないかしら」


 いや、理屈は分かるけどなんで言い方なんだよ!?

 あまりに喧嘩腰な平川さんの態度を見て周りも動いた。


「久美はなんでそこまで魔法を使おうと思うの?」


 和泉さんが江川に加勢した。

 どうやら理由を知りたいらしい。


「楽しいから」

「人が悲しむかもしれないのに?」

「使い方の問題ね」

「その使い方を考えようって言ってるんだよ」


 苛立ちのせいかとうとう江川が声を荒げた。

 これはまずい。


「え、えっと俺の意見だったよな」


 平川さんが何かを言う前に割り込む。

 これ以上いくと喧嘩になってしまう。


「みんな好きなようにすればいいんじゃないかな」

「はぁ?」


 江川が意味分からないといいたげな顔で返事した。

 チラリと平川さんの方を見ると同じように意味分からないという顔をしている。

 なんでこういう時だけシンクロするんだよ。


「世界書がここに存在する以上、どうやれ使う人は使うよ」

「でもなんとかしたいんだよ、せめてルールを決めるとかさあ」


 やっぱりそこに行き着くだろうと思っていた。

 ただそれをするには前提条件がある。


「《ルールを決めるためにも実体験すべきなんだよ》」

「はぁ?」

「アンチが一番ルールに詳しいって言葉を聞いたことない?」

「アンチって何?」


 よし、和泉さんが食いついた。

 俺に質問してるならともかく江川に質問してるからさすがにないがしろに出来ないはず。


「何かを否定する人のことだよ、今回なら魔法を使う人かな」

「悪用する人、ね」


 江川の答えに平川さんがツッコんだけど無視されている。

 なぜ黙っていないのか?という答えはきっと平川さんだからだろう。


「魔法が便利ってのは確かだよね?」

「まあな」

「そうね」


 よし、少なくても二人がその認識であるならなんとかなると思う。


「校則とかもそうだけど現実を知らない人が決めるルールって的外れだよね?」

「それはそう、夏場でも下にシャツ着用とか強制されてるの嫌なのよね」

「ほんと、ブラが透けるって言うけどブラトップなら別に透けてもいいよねー?」

「橘さん、そこのところ詳しく」

「真琴……」


 つい本音が出てしまったので平川さんがジト目で見られる。

 仕方ないじゃん、ブラ透けは男のロマンなんだよ?


「ま、魔法も同じで現実をよく知らないままルールを作ると誰も従ってくれないんだよ」

「ならその都度修正すればいい」

「経験してないのにどの意見が正しくてどのように修正すればいいか理解できるの?」

「それは……」


 そう、問題なのはそこだ。

 結果しか知らないような人間が規制を作ると大体は真っ当な人だけが割りを食う規制になる。

 規制にどんな穴があるか想像できないんだ。


「みんなが好きなように魔法を使っていけば自然とルールが出来てくると思うんだ」

「……希望的観測すぎやしないか?」

「一理あるわよ」

「和泉!?」


 まさかの和泉さんからの援護だった。

 江川も和泉さんがそんなことを言うとは考えてもみなかったようで動揺している。


「江川が問題視してるのは久美や普通に魔法を使う人じゃなくて悪用する人でしょう?」

「それはそうだ」

「なら悪用してることをみんなが理解できる環境にしてしまうのが一番いいわ」

「は?」

「銃を知らない人にとっては、目の前で拳銃を突き付けられても危険性が理解できない、仮に拳銃を規制してもライフルなら同じこと」


「さすがに拳銃とライフルなら同じ系統のものだと気づくのでは?」

「やめろ、話を混ぜ返すな」


 桐谷が余計なことを言おうとしたので止める。

 そうやって本筋からずれるからぐだぐだになるんだ。


「何が『悪用』なのかをみんなが理解しないと」

「でもそれは難しいし……」


 不満げな表情の江川。

 多分和泉さんが協調してくれなかったからだろう。

 それを見てさらに和泉さんが口を開こうとしたところで橘さんが割って入った。


「出来ないことを嘆くのは進化の妨げだよ、どのようにすれば出来るかを考えないと」


 橘さんの言葉で周りがシンと静まった。

 あまりに真っ当すぎてみんな動揺している。


「橘の言う通りだな」

「阿久津!?」


 今まで黙っていた阿久津が口を開いた。

 江川の横に座ってゆっくりと話し始める。


「まずは『理解』から始めよう」

「それは……」

「別に江川が何かをするのは止めない、でも人にお願いするなら『理解』してからにしよう」

「……分かった」


 どうやら納得したらしい。

 ただなんか美味しい所だけ持っていかれた気がする。


「さてじゃあこの話は終わりってことで」


 阿久津の一言でみんなが散らばり始めた。

 うん、やっぱり美味しい所だけ持っていきやがった。


「さて……ん? なんで睨んでるんだ?」

「漁夫の利か」

「何の話かさっぱり分からんぞ」


 笑いながら肩を叩いてくる。

 くそう、さわやかすぎる。


「ただやっぱり魔法が危険なのは確かだと思うぞ」

「まあそれはね」


 あの時は収めるためにああいったものの、実際は江川の言う通り危険なものだと思う。

 特に最初のころと違って制約であったり条件であったりで難易度の高い魔法が低レベルでも使えるようになっている。


「状況が変わればまた見解も変わるかもしれないな」

「そうだね、コーウェン君」

「ゲッター線が原因なんだね、ス、スティンガー君」


 なんとなくのボケで会話は終了した。

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