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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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86/132

86.魔法による脅迫

 理による被害は傷害系が目立っているが、実際は脅迫が圧倒的に多い。

 みんな被害を届けないから発覚していないだけである。


とある国のスラム街


 タンクトップに短パン姿の茶髪の男がみすぼらしい恰好をしたひげぼさぼさの男性に絡んでいる。

 茶髪男がなにやら因縁をつけているようで、世界書を持ってひげ男の顔にピタピタと押し当てている。

 (※作者注 二人は英語で会話していますが、片側は訛りが強いのを表すために関西弁に変換しています)


「か、金なら持っていない、本当だ」

「嘘やな、あんたが金持っとるのは分かっとんや」


 傍目に見れば茶髪男の言っていることはおかしい。

 着古したシャツとボロボロのジーパン姿のひげ男にお金を持っている気配があるとは思えない。

 しかし茶髪男は確信を持っているように見える。

 ギロリと睨んで口を開く。


「どこに隠しとんや?」

「隠すも何も、そもそも持っていないんだから隠しようがないんだ」

「はい、ひっかかった、今【想像したな】?」

「!?」


 ひげ男が動揺するのを見届けた後、茶髪男がひげ男の上方辺りを眺めている。

 そこには何もないはずだが茶髪男には何かが見えているらしい。

 おそらく理の効果であろう。


「貸金庫っちゅうんか、ブルジョアやな」

「どうやってそれを!? あ……」


 とっさに口を紡いだがもう遅い。

 うんうんと頷きながら茶髪男が言葉を続ける。


「どこにあるんや?」

「言う訳ないだろうが!!」


 先ほどまでのオドオドした態度から一転して強い口調で反撃してくるひげ男。

 ホームレスと思えない態度を見るに、どうやらお金を持っていると言うのは事実のようだ。


「そうか、ほないくら入ってるん?」

「いくら……って言う訳ないだろ!!」

「【《《想像したな》》】?」

「そ、それがどうし、まさか!?」

「最近は魔法、なんちゅうええもんが流行ってくれて助かるわぁ」


 ひげ男の想像が正解であったことを証明するように、顔に世界書をさらに強く押し当てる。

 ひげ男はとっさに考えるのをやめたがもう遅い。


「現金で1万$、宝石・貴金属が200万$相当か、なかなかの当たりやん」

「ふ、ふざけるな、お前程度にくれてやるもんなんぞ!!」


 ひげ男が懐に手を入れると同時に、世界書で視界を遮られて殴り飛ばされた。

 そして銃を持った右手を思い切り踏まれる。


「ぎゃあああ」

「あかんなぁ、ホームレス仲間に迷惑やろ」


 茶髪男は慣れた様子で手を踏みつけたまま銃を取り上げて懐にしまう。

 明らかに素人の動きではない。


「といってもあんたは仲間と思っとらへんか、金持ちやもんな」

「ど、どうして?」


 ひげ男は困惑していた。

 見た目にしても金の流れにしても完全にホームレスになりきっていたはず。

 一切の資産を封印しているのだから、たまたま通りがかったような男が気づく訳がない。

 それに《《そもそも隠蔽魔法を使用しているから資産は隠せているはずだ》。

 これは昨今の襲撃事件の対策として、金持ち仲間でも流行っている魔法だから間違いない。

 ひげ男の表情を見て茶髪男の顔がにやける。


「簡単なことや、隠蔽魔法を使ったからやな》》」

「は?」

「あんたの資産は見えへんのや」

「隠してるんだから当たり前だろうが!?」

「つまり《《隠すだけの何かがある》》ちゅうことや」

「は?」

「そのみすぼらしい恰好で隠すような資産って何やろうなと思う訳や」


 ひげ男は理解した。

 目立たない場所に来たつもりがむしろ目立つ場所に来てしまったことを。


「考えが足らへんのに行動力はあるって最高やな」

「あ、ああ、あああ」


 本来なら存在していた身を守る術を全て手放している。

 ひげ男に抵抗する術はない。


**************


 理で出来ることの多くは現代科学でも再現できる。

 それだと理で行う意味がないように聞こえるが、誰でも実行出来るというのが違う。


「不倫は良くないなぁ」


 ストリートファッションの男と大人しそうな女性が会話している。

 明らかに他人同士の距離感であり仲が良い雰囲気ではない。


「……何が目的?」

「金」 


 男の答えが分かりやすいものだったので少し安心したようだ。


「1万$出すわ」

「なるほど、それを受け取りにほいほい来た所で口封じされる、と」

「……」


 わずかに女性が身じろいた。

 どうやらその通りだったらしい。


「今ここで出せるものを出せ」

「出せるものって言っても……」


 女性の態度を見て男が世界書を取り出す。


「【金額査定鑑定】」


 [金額査定鑑定]は、商品購入時の金額が世間一般の相場と比べて妥当だったかどうかを調べる理。

 差が大きいほど発光するようになる。

 購入後にしか確認できないし発光度合いで分からないが、どんな商品に対しても効果があるので購入後即座に使って返却する用途で使う人がいる。


「まずは危険物を出せ」


 しぶしぶといった様子でポケットの中から小型拳銃を出す。

 しかし男の目はポケットから離れていない。


「まだ危険物が残っているだろ」

「!?」


 驚いた様子でポケットからもう一丁取り出す。

 女性の手から少しはみ出る程度の大きさなので、見破られるとは思ってなかったらしい。


「面倒くせぇ」


 女性の方に近寄り鞄をひったくると、中を漁り始める。

 なぜか一部の化粧品を取り出したがすぐに放り投げた。

 一通り鞄をチェックし終えた後、なぜか女性の方を見て懐に隠していた緊急連絡用の小型送信機を取り上げられる。


「な、なんで?」


 本来見つかるはずのないものが次々と見つかっていくことに女性は困惑していた。

 特に懐に隠していた小型送信機は最後の切り札だったので取り上げられたことに動揺を隠せない。


「で、金になりそうなのは……このあたりか」


 男は女性の首にかかっているネックレスを指差す。

 青く輝く宝石が際立つ一品だ。


「いくらだ?」

「……500$」

「ふーん」


 その言葉で男は興味を失ったようで今度は指に視線がいく。


「その指輪は?」

「……300$」


 女性がそう答えた瞬間、手を押さえつけられた。


「へぇ、これが300$ねぇ、ならネックレスはやめて指輪にしておいてやるよ」


 なぜか女性の顔色が変わった。

 もがいて手を抜こうとするが男の手がそれを許さない。


「嘘なんだろ、分かってるって」


 暴れまわる女性の手から器用に指輪を引き抜く。


 男は明らかに女性の言葉を疑っているが、それには根拠があった。

 [金額査定鑑定]の理には本来想定していない仕様がある。

 《《他人の物品に対して使うと、持ち主が申告した金額と世間一般の相場の比較になる》》

 そのため、女性が嘘をついているとわかったのだ。


「これからは防犯グッズに金支払った方が良いぜ」


 さらに例外が存在する。

 お金を支払って入手していないものは、無条件で発光するというものだ。

 女性は銃やナイフに対価を支払っていない、厳密にはお金以外で支払っている。

 そのため発光していたのだ。

 ただ試供品の化粧品も発光していたので勘違いして取り出してしまったのだが。


「さて次のターゲットは……あいつだな」


 またターゲットを見つけたようだ。

 対象の視線移動を可視化する理と男の経験を合わせて不倫女を特定している。


 このように当人の技術と理を組み合わせたものが増えてきた。

 理の使い勝手がさらに上がり、かつ真似のできないものとなる。


 これにより理による被害の実体はますますわからないものとなった。

 ただ言えることとしては、被害が広がっていると言うことだ。

 今後世界がどうなっていくかは誰にもわからない。

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