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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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82.プール(後編)

 ばれた!?

 平川さんが慌てて脇固めを外して両手で胸を隠して睨んでいる。


「だいぶ堪能していたようだろ」

「無実だよ!?」

「嬉しそうな顔だったな」

「否定は難しそうですねぇ」


 やばい、証言者が増えていくぞ。

 ということは……。


「お兄ちゃん、椅子」

「なんで陽菜なんだよ!?」


 平川さんが怒ると思ったら恥ずかしそうに胸を隠しているだけで、なぜか陽菜が怒ってきた。


「透子さんに変わってお仕置き」

「せめて透子からのお仕置きにしてよ!?」

「変態だろ」 

「変態ね」

「変態だな」

「変態ですねぇ」

「違うよ!?」


 壮絶なツッコミを受けてしまった。

 どうせお仕置きされるなら好きな人がいいに決まってるけど理解してもらえないようだ。

 正座した状態で体を屈めるとその上に陽菜が座った。

 ぐおおお、結構な重さが。


「陽菜は激怒した。 必ず、かの無知蒙昧な兄を仕置せねばならぬと決意した」

「体重気にしてたのかよ!?」


 言葉での返答の代わりに俺の上に座った状態でジャンプし始めた。

 その容赦の無さから怒りが伝わってくる。


「陽菜は全然太ってないよ!?」

「Guilty」


 おかしい、擁護したはずなのにジャンプする強さは増している。


「自殺にもほどがあるだろ」

自殺志願(マインドレンデル)で叩けば治る」

「何とかは死んでも治らないっていいますねぇ」


 外野が好き勝手言ってる。


「そんなに胸好き?」

「え、あ、いや、そんなことは……」


 透子が悲しそうな顔で問いかけてきた。


「お姉ちゃんを泣かすやつは許さない」

「そっちが発端では!?」

「触ったやつが悪いだろ」

「触ってる時お兄ちゃんの顔がにやけてた」


 一を返すと周りから十返ってくる。

 俺に味方はいないのか。


「ワタシの胸じゃ駄目?」

「全然、全然、全然だよ!! 透子のおっぱい好き、大好き、いますぐにでも触りたい、揉みたい!! それさえあれば他に何もいらない」

「うわ、変態……」

「なるほど、あれが能見の素なのか」

「事案ですねぇ」

「むー」


 しまった、つい思いのままを叫んでしまった。

 こんなこと言ったら嫌われて……。


「わかった、なら許す」

「お姉ちゃん許すの!?」

「許す」


 透子が許してくれたことに平川さんが驚いている。


「ここが正念場ですからねぇ」

「感情に身を任せて選択を誤ると終わりだからな」


 また名雪さんと阿久津はよく分からないことを言っている。


「お兄ちゃん、私のは?」

「陽菜のも大好きだよ」

「うわぁ、妹のおっぱい大好きとか言ってるよ、お姉ちゃん?」

「家族なら普通」

「透子ちゃんの寛容さがオカン級だろ」


 なんとかこの場は収まった。


「いろいろあったけどとりあえず泳ごう」

「いろいろは大体真琴のせいだろ」

「過ぎたことは忘れよう」


 翔が何か言ってきてるけど俺のせいだけじゃないはず、多分、きっと、おそらく、メイビー。

 平川さんがプールに足をつけると不思議そうな顔をした。


「あれ、水が温かい?」

「温水プールだからな」


 平川さんの疑問に翔が答える。

 温かいプールは初めてらしく感心したような顔をしている。


「温かいんだって、真琴知ってた?」

「一応知ってたよ!?」


 ニヤニヤしながら俺の方に問いかけてきた。

 この猫っぽい笑い方がかわいいんだよな。


「あーわかった、温水の方が長くプールにいられるからここ選んだんでしょ」

「そもそも来ること知らなかったよ!?」

「お姉ちゃんの水着姿そんなに長く見たかったんだ」

「それは見たいに決まってる」


 そう答えると平川さんはキョトンとした顔をしている。

 陽菜に負けないぐらい表情がよく変わるよな。


「あんなこと言ってるけどいいの、お姉ちゃん?」

「ちょっと恥ずかしい」


 控えめに照れてる感じが非常にベネ!!

 もう存在自体がかわいい、抱きしめたい。


「真琴も認めるんだ」

「当たり前では?」

「てっきり誤魔化すと思ってた」

「なぜに」


 なぜ彼女なのに誤魔化さないといけないのか、これがわからない。

 むしろ『見たくない』とか言われて嬉しいものだろうか?


「じゃ、じゃあアタシの水着姿は見たい?」

「見たいに決まってる」


 この振りは『見たい』と答える一択。

 見せたくない相手にこんなことは聞かない。

 こういうのは陽菜で慣れてるからばっちりだ。


「お、お姉ちゃんより?」

「そこは譲れないけど2番目に見たい」


 だがいくらなんでもそれはYesと言えない。


「そうなんだ……」

「水の中だから全然勢いがないぞアタック!!」 

「げふっ」

「きゃっ」


 後ろから誰かに押されて思わず体勢を崩す。

 いたたたた、なんだったんだ?

 ん? なんか大きくてとても柔らかいものが顔に……。


「ま、まこ、まこと」

「……あ」


 視界は緑色に染まっている。

 つまりこれは緑色のなにかに顔を押し付けているわけで……。


「ご、ご、ご、ごめん!!」


 慌てて離れると脇固めの時より顔を真っ赤にした平川さんがいた。


「真琴の馬鹿、変態、おっぱい好き!!」

「無実だよ!?」

「自分からアタシの胸に飛び込んできたくせに」

「事故だよ!?」


 そう言って後ろにいた事故原因を指さす。


「てへぺろっ」


 陽菜がペコちゃんみたいな顔で誤魔化していた。

 つまり後ろから押されたせいで平川さんのおっぱいに飛び込む結果になっただけで決して故意ではない。


「陽菜ちゃん?」

「つい楽しそうな雰囲気を感じてやってしまった、反省はしていない」

「反省しろよ!?」

「お兄ちゃんはラッキースケベしたんだから感謝してね」

「ありがとう陽菜」

「どういたしまして」

「どういたしまして、じゃなくて」


 平川さんが腰に手を当てて怒っているポーズを取っている。

 こういうのって気の強そうな美人がやるとさまになるなぁ。


「言うことがあるでしょ?」

「ありがとうございます?」

「違うよお兄ちゃん、『ごっちゃんです』だよ」

「へえー、妹がいるとそういう態度とるんだ」


 あ、やばい。

 ゆっくり近寄ってきて腕を掴まれる。


「痛っ、なんかものすごく痛い!?」

「痛みってね、強さだけで決まるんじゃないのよ」

「お兄ちゃんに本物の暴力を教えてくれそうだね」

「森次さん!?」

「謝罪するまでやめないからね」


 おのれ、事故なのに何を謝るというんだ。

 主犯の陽菜ですら謝っていないというのに。


「陽菜ちゃん、後ろから押すのは危険だから駄目」

「久美ちゃんすみません!!」

「あっさり謝った!?」

「悪いことをしたら謝る、人間関係の基本だよ?」

「秒で手の平返しおって」


 平川さんに言われても気にしないのに透子に言われたらあっさり態度を翻すとは陽菜の人間関係の認識がよく分かるな。


「で、真琴は謝らないの?」

「……ごめんなさい」

「声が小さい」

「ごめんなさい」

「声が小さい! 何をしたかも付け加えて!」

「平川さんに飛びついてごめんなさい!」

「その時の心情も付け加えるだろ」

「最高だっt……って!?」

「透子ちゃんどう思う?」

「後でお仕置き」

「誘導尋問はひどい!?」


 平川さんに言われたと思ってつい答えてしまったじゃないか。


「口は災いの元ですねぇ」

「あれは自業自得じゃないか?」

「事故だって言ってるだろ!?」


 ひどい言われようだ。

 まあたしかにおっぱいは最高だったけど……。


「む」

「さてちょっと泳いでくるか、久美はどうする?」

「アタシも泳ごうかな」

「なら競争するか」

「上等」


 二人は泳ぐ人用のレーンに向かっていった。

 平川さんなら翔についていけそうだしちょうどいいか。


「それにしても久しぶりにプールに来ましたねぇ」


 名雪さんが伸びをすると水着がはち切れそうだ。

 パツンっと水着がはじけるのを一度は見てみたい。


「むぅ」


 陽菜がおっぱいを触っているけどさすがに相手が悪い。

 かわいさなら勝っているのだからそちらを突き詰めてほしい。


「執筆ばっかりか?」

「作画も多いですねぇ」


 今もちゃくちゃくとBL本の作成が進んでいるようだ。

 読んだら発狂しそうだし無視しておくのが無難かな。


「たまには外に出ないと不健康だぞ」

「だからこうして出てきてるんじゃないですかぁ」 

「名雪んの素肌はレアい!!」

「陽菜さんは元気いっぱいですねぇ」


 名雪さんが陽菜の頭を撫でると嬉しそうに眼を閉じている。

 やばい、陽菜が名雪さんに懐く前に引き離しておかないと。


「名雪さんはうちの妹に悪影響を与えるのを止めて頂けないでしょうか」

同気(どうき)(あい)求むと言いますからねぇ」

「どうきあい?」

「類は友を呼ぶって意味だよ、お兄ちゃん」

「うちの妹は変態じゃな……くもないか」

「変態じゃない、淑女だよ」

「淑女は下着姿でうろつかない」

「むう」


 ちょっと拗ねているが仕方ない。

 このままだと母さんみたいにフルオープンになりそうだしちゃんと言い含めておかないとな。


「陽菜さんの体は誇れるものですからねぇ」

「そうでしょー」


 名雪さんの擁護で威勢を取り戻しやがった!?

 これ以上変態成分を増やさないでほしい。


「陽菜ちゃんは体綺麗」

「自慢の体です!!」

「……うらやましい」

「透子さんの体も素敵ですよ!!」

「そんなことない」

「ほら、お兄ちゃん、何か言ってあげないと!!」


 え、いきなりそんなことを言われても!?

 でも透子が伺うような目でこちらを見てるし。


「あ、えっと、透子の体は頭のてっぺんからつま先の先まで全部好き」

「……恥ずかしい」

「おっぱいは?」

「大好き……はっ!?」

「お兄ちゃんは透子さんのおっぱいが大好きだそうですよ!!」

「……えっち」

「ぶほっ」


 かわいすぎて鼻血でそうだ。

 こんな幸せな時間があっていいのだろうか。


「青春ですねぇ」

「そう言いつつ手を動かしてるのはなんだ?」

「いろいろ参考になりますからねぇ」


 名雪さんの顔が変質者一歩手前の顔だ。

 プールの中じゃなかったら通報待ったなし。


「ところで能見たちは泳がないのか?」

「俺はちょっと……」

「……ここでいい」

「私は翔さんらに交じってきますね」


 陽菜が抜け出て翔たちの元に向かっていった。

 やはり脳筋族の血が騒ぐのだろう。


「ふう、綾瀬といい能見たちといいせっかくのプールなんだから泳ごう」

「個人の自由でしょう?」


 一気に周りの温度が下がるような声。

 最近気づいたけど、名雪さんは自身の行動を制限されそうになると素が出るんだな。

 それでも阿久津は何もひるまず言葉を続ける。


「少しは運動させてくれって頼まれてるんだ」

「母さんめ……」


 名雪さんが悔しそうな顔で目を伏せている。

 おお、なんか名雪さんの知らない一面が見えたぞ。


「ということで少し泳いでくる」

「勝手にきm……そうですねぇ、たまには泳ぎますかねぇ」


 は?

 何か言いたそうだったのに阿久津がアイコンタクトすると態度がガラッと変わった。

 一転して泳ぐ気になったらしい。


「では~」


 二人が離れていく。

 そして残っているのは……。


「ふ、二人きりだね」

「うん」


透子だけだった。

普段も教室で会話したりたまに一緒に帰ったりはしてるけど、こんな姿で二人きりなのは初めてだ。


「と、透子は今楽しい?」

「楽しい」

「良かった」


 二人きりと意識してしまうと会話が続かない。

 何か、何か喋らないと。


「無理、しなくていい」

「え?」

「一緒にいるだけで幸せ」


 あまりにも可愛らしい言葉に思わず透子を抱きしめてしまった。

 腕の中で俺に体を預けてくれる存在はとても愛おしい。


「大好きだ」

「……うん」


 俺の五感全てが透子に支配される。

 透子の姿、透子の声、透子の肌の柔らかさ、それはとても素晴らしいもので表現する言葉を持てない。

 だからずっと無言で抱きしめていた。

 少しでもこの想いが伝わるように。


 そしてしばらくしてようやく気持ちが落ち着いたころ。


「なんでずっと動かないのかしら?」

「真琴がへたれだからだろ」

「お兄ちゃんだからね」

「予想通りですねぇ」

「むしろ衆人環視の中で頑張ってる方じゃないか?」


 慌てて体を離して周りを見るとみんなが生温かい目で俺たちを見ていた。


「なんで見てるんだよ!?」

「真琴が見せてんのよ」

「むしろまだ見足りないぐらいだろ」

「そこでキスぐらいしないと駄目だよ、お兄ちゃん」


 言いたい放題言いやがって。

 そんなあっさりキスなんて出来るかよ。


「それは次回の課題ということで」

「報告を待ってるぞ」

「進捗があってもお前らにはぜってー報告しねぇーーーー!!!!」


 やっぱり最後はぐだぐだで終わってしまったのであった。

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