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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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79.乗船枠

 どこかの高級料亭の一室。

 ラフな格好の男性と高級そうなスーツを来た恰幅の良い老人が向かい合っていた。


「枠が確保出来たというのかね」

「ええ」


 老人の質問にラフな格好の男性が答える。

 年長者に対して敬意を払っている様子はないが老人は気にしていない。

 それよりラフな格好の男性の話したことに興味があるようだ。


「なら儂がもらうぞ」


 偉そうに断言する老人を見てラフな格好の男性は呆れた様子だ。


「現在の貢献度だと榊様はまだですね」

「ふざけるな、いくら注ぎ込んだと思っている!!」


 瞬間的に顔を真赤にして怒鳴り散らす榊と呼ばれた老人。

 きっと今まで思い通りにならなかったことがないのだろう。


「日本人だと佐藤様がトップですね」

「またあいつか!!」


 思想的に対立している男の名前を聞かされてさらにヒートアップする。

 榊と佐藤は与党内で次期総理の座を争う間柄だ。

 ライバルが優勢と聞いて対抗心に火がついたようで身を乗り出してくる。


「ミヤさん、どうすればあいつに勝てる?」

「佐藤様にはいろいろ準備を手伝っていただいていますからねぇ」


 これは事実だった。

 最初期からミヤを支援し環境を整えたのは佐藤である。

 ただしその時の佐藤は脅されて仕方なくであったが。


「それ以上の支援を約束する」

「誰の言葉でしたかな、『誠意とは言葉ではなく金額』とは」

「ふざ……」


 榊が怒鳴ろうとした口を閉じる。

 そんなことをしても目の前の男は折れないと知っている。

 それで佐藤に負けたら元も子もない。

 なにせこのままでは()()()()()()()()()()()


「わかった、10億だそう」

「話が早いようで助かります」


 さらさらと小切手に金額を記入して渡す。

 ミヤはそれを恭しく受け取ると懐に入れた。


「これで儂は佐藤を抜いたか?」

「ええ、抜きましたよ」


 金額はな。 とミヤは心のなかでつぶやく。

 貢献度というのは金以外の支援を含めてであり、ウェイトとしてはむしろ金以外の支援のほうが大きい。

 金は誰でも用意できるが環境や人脈は難しいからだ。

 まあなにより10億ぽっちの金で偉そうにされても困る。


「まだ期限まで時間はありますからどうなるか確約は出来ませんが」

「もっと人は集まらんのか」

「育成が大変でしてね」

「やり方が手ぬるいんじゃないのか?」

「天啓というのは本人の資質に左右されるものですから」


 ミヤのこの発言は嘘とは言えないが正鵠を突くものでもない。

 少なくても天啓をもらう条件は確定しているしやり方も理解している。

 制約などなく誰でも得られるものなので、本気で無理やり天啓を得ようとするなら可能だろう。


「儂が手助けすれば数倍の効率で枠が確保できると思うが?」

「そうかもしれませんね」


 榊の言葉に対して興味なさげに答えるミヤ。

 実際、全く興味を持っていない。


「もっと積極的になったらどうなんだ!!」

「先程も申し上げましたが、本人の資質によるものが大きいですから」


 どれだけ脅されても建前しか返さないミヤを見て苛立つ榊。

 下手に暴力で脅すと他の奴らが介入してくるのでたちが悪い。


「資質、資質、と言っても結局は数であろうが、なら儂が手助けすれば数になろう」


 ミヤがそれを教えればこの老人たちは自分たちで方舟の乗船券を独占しようとするであろう。

 ミヤは若者を排除し老人で固めても未来はないと考えている。

 老人は次世代への養分になるべきというのが内心で思っていることだ。

 そのために今は支援を引き出して少しでも方舟の乗船券獲得者を増やすことに尽力している。


「お気持ちはありがたく頂戴いたします」

「……ふん」


 とりあえず諦めたようだ。

 いや、無理なことが分かっていてうっぷん晴らしをしたかっただけかもしれない。

 榊からすれば今まで思い通りにならないことなんてそうそうなかったのだろう。


「状況が変わったら教えるように」

「滞りなく」


 もう用はないと言わんばかりに榊が席を立つ。

 それを座った状態で見送るミヤ。

 榊はミヤを一瞥すると床を踏み鳴らしながら部屋を出ていった。


「ふう」


 まるで癇癪持ちの子どもだな、ミヤはそう思いながら料理を見る。

 せっかく丹精込めて作ってくれた料理だがまったくの手つかずになっている。


「ブック……【成分鑑定】」


 世界書を取り出して魔法を使う。

 使った魔法は至ってシンプルな成分の鑑定魔法。


「ふんふん、お、これは隠し味にワサビが入っているのか、それは楽しみだ」


 料理に含まれる無数の成分表記で視界が埋め尽くされているはずなのに何も気にする様子はない。

 成分を見て危険なものが入っていないことを確認していく。


「【料理名検索スマホと連動】」


 スマホの画像認識で料理名を調べて先ほどの成分表と連動し記録する魔法。

 科学と魔法の融合という難易度の高い魔法であり使い方も簡単ではないが問題はない。

 理由は単純で《《ミヤが作らせた魔法だからだ》》。


「日本は各国の料理を手軽に食べられるのが良いが、やはり和食は特別だな」


 さっそく興味のある料理から手をつける。

 本来なら食べる順番があるはずだがそういうのは無視している。


「うまい、なんでこれを残して帰ろうとするのか理解に苦しむな」


 料理すら楽しめなくなった老い先短い人生に何の意味があるのか。

 まあ、養分になってくれればそれでいい。


・・・


 綺麗に平らげて空になった皿を見てミヤが深呼吸する。

 机に並べられていた皿はどれも同じぐらいに綺麗だ。


「ちょっと食べすぎたかな……」


 つい夢中になりすぎて許容限界まで腹に入れてしまったとミヤは思っている。

 こういう所で自制が聞かないのが悪い点だと自覚しつつも改善できていない。


 さすがに動くのもおっくうになったので電話で迎えを呼ぶ。


「若菜、済まないが迎えに来てくれないか?」

「分かりました」


 しばらくして若菜が運転手と共に到着する。

 若菜はミヤの顔を見ると顔をしかめて冷たい目つきになる。


「また食べ過ぎたんですか?」


 ジト目で睨んでくる。

 こういう仕草が年相応で可愛いんだと思いつつ、口では別のことを喋る。


「美味しいものを見るとつい、な」

「服、入らなくなりますよ」

「ずっと日本にいるとそうなりそうで怖いな」

「もう、帰ったらしばらく精進料理ですからね」

「それは興味深いな」


 そうだった、日本には精進料理なるヴィーガン御用達の料理があるとか。

 しかもあのヴィーガン料理と違って美味しいと聞くので楽しみだ。


「ならさっさと帰ろうじゃないか」

「帰っても今日は出しませんよ」

「残念だ」

「……一品ぐらいなら構いませんけど」

「若菜の優しさに涙がちょちょぎれるよ」

「よくそんな言葉知ってましたね」

「なに、今日は暇だったのでいろいろ調べていたからな」

「……ああ」


 この場で話すことではないと理解して帰り支度を始める若菜。

 こういう察しの良さは好みだ。


「あの……すみません」

「ん? どうしたんだい?」


 料亭の女将がミヤの元にやってきた。

 料理の感想でも聞きたいのだろうか?


「お代を頂いてませんので頂きたいのですが」

「………………若菜、支払いを」

「はい」


 カードで支払いを行う。

 あの野郎、覚えておけよ、JAPANで食い物の恨みは怖いんだからな。

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