74.魔法の宣伝
魔法の研究には情報収集が欠かせない。
そして情報収集をするならネットは非常に有用だ。
玉石混合というか石がほとんどではあるものの、たまに誰も知らない情報が落ちている。
でも午前中からずっと見てるのでさすがに疲れてきたなぁ。
ちょっと休憩して別の動画でも見よう。
「って、また魔法の宣伝か」
癒しを求めて猫動画を見ていたのになぜか魔法の宣伝が入っていた。
猫を見たいから見てるのに突然「この魔法を使えば綺麗に猫を撮影できます」とかの宣伝が入っても迷惑なんだけどなぁ……。
そんなことしても再生数が増えるわけじゃないのにあえて魔法の宣伝を入れるのは何なのか。
「あ、この人の動画もか、好きだったのになぁ」
別の人の動画では魔法の宣伝のせいで動画趣旨が変わっていた。
元々は本人のお勧めのお店を教えてくれる動画だったのに、魔法でお店の味を再現する動画になっている。
一応お勧めの店自体は出てくるっぽいんだけど、その後の魔法で味を再現する方法に力が入っていて紹介は雑だった。
ただ動画を見ても分かるけど魔法で自分が食べたことのない味を再現するのは非常に難しい。
お店が近くにないならともかく、近くにあるなら行ったほうが早いと思う。
「何のブームなんだろう?」
最近やけに魔法の宣伝を入れるyoutuberが増えている気がする。
世界書をもらってすぐのころは魔法の紹介とか解説がメインの動画であくまで再生数稼ぎのための手段という感じだった。
それならyoutuberが流行に乗るのは当たり前だし何もおかしくはない。
でも今は特定の魔法を使わせるような宣伝が多いんだよな。
「みんな高レベルを目指しているのかな?」
それなら一応理屈は通る。
ただ高レベルを目指す理由が分からない。
たしかにレベルが上がれば消費MPが高い魔法を使えるけど、それが労力に見合っているかと言われると疑問だ。
動画内容を変えてまでやることなのか?
「そういえばAIで動画を作れるらしいし、もしかして魔法でも同じことが出来たりする?」
例えば思い浮かべた内容を動画にしてくれる魔法が存在すればどうだろう。
資料の差し込みやレイアウト構成や音声・字幕入力といった作業は非常に手間なので、もし自動でやってくれれば作成の手間は激減すると思う。
もうちょっと機能が劣るものでもいいか。
ファイルを指定しイメージ通りに追加・修正できるとかで十分便利だよな。
完成後にちょっと追加・修正したいってことはよくあるけど、実際に行うのはかなり手間なんじゃないかな。
もし俺なら誤字脱字読み間違い程度なら気づいても修正しないと思う。
それが魔法を使えば一瞬にして修正されるとかなら効率爆上がりだと思う。
「試しに検索しているか」
動画編集で検索してみるとけっこういろいろ出てくる。
考えていたような動画編集の魔法も存在するようだ。
「これいいな、[動画簡易修正プロ]」
修正点を箇条書きにしておいて魔法使用時に読み込ませるとその通りに修正されるらしい。
ただSNSに書かれている利用者の感想を見ると、音声と音楽が被っている所がうまく修正されなかったり複雑な内容になると指示を書くのが面倒だったりするらしい。
あくまでそこら辺は簡易修正なんだろう。
ただ思ったより消費MPが少ない気がする。
消費MP100とか200とかになってもおかしくない気がするんだけど、消費MP10程度なのはちょっと気になるので調べてみよう。
「なるほど、実際の修正はAIを使っていることで省エネにしているのか」
動画ファイルを直接修正せずAIを間に挟んで修正させることで魔法は実質AIの出力の最適化をしているだけらしい。
試行回数を重ねて適切なプロンプトを探すだけだから消費MPが大した事ないらしい。
「この発想がすごいな……」
言われてみれば理解できるけど思いつく気がしない。
それに科学と魔法の融合みたいでカッコいいし俺もこういう魔法を作ってみたい。
「とはいえ動画制作とか詳しくないしなぁ」
魔法を作ること自体は出来ても二番煎じにしかならない。
もっとオンリーワンの個性を出せないと使われないんだよな。
とりあえず動画で宣伝されている魔法はきっと本人的に便利なんだろうしそれをアレンジして消費MPを下げてみたり便利にしてみたりを考えてみよう。
「ん、あれ? この魔法ってさっきの猫の動画でも出なかったっけ?」
そんなことを考えながらいろいろ動画を見ていると、いくつかの動画で魔法名が被っているのに気がついた。
翻訳による魔法名かぶりかと思ったけど、世界書で検索しても一つしか出てこない。
両方の動画の説明を見ても同じもののように思える。
「は? じゃあなんのためにやってるんだ?」
なおさら意味が分からない。
他人の魔法を宣伝しても自分のレベルは上がらない。
案件動画という可能性はあるけど、自分の動画スタイルを崩してまでやる案件って一体何なんだ?
「作成者はMichael・Hanks……聞いたことないな」
[真実の目]のMichael・Yatesなら知ってるけど、少なくても有名な魔法を持っている記憶はない。
ということは自身を高レベルにするためにわざわざ宣伝してるってこと?
どれだけ道楽者なんだよ、さすがにこんなのは珍しい事例だろうし……まてよ、本当に珍しいのか?
少し気になったので他の動画で宣伝されている魔法を調べてみると、同じように複数の動画で紹介されている魔法があった。
つまり自身を高レベルにするために他人に動画を作らせるような人が何人もいるってことだ。
魔法の宣伝が増えている理由は分かったけど迷惑極まりないな。
人工的に作られたブームとかやめてほしい。
数日後。
「うわ、とうとう週間人気ランキングの上位に入ってきたぞ」
人気ランキングの上位に入ると使用者がかなり増える。
人気がある=説明文通りの効果があると考えられるためだ。
日間ランキングならまだ突発的なランクインもあるけど、週間ランキングまでくるとそうそう変動しない。
一度人気になれば安定して使用してもらえるから宣伝も必要無くなるだろう。
「ただ他に魔法を作っている形跡がないのがいまいち謎なんだよな」
普通はレベルが上がれば魔法を作れる幅が広がるので喜んでいろいろ作ると思う。
だってそうじゃないならレベルを上げる必要がない。
ランクイン出来るくらいに宣伝するお金があるなら、そのお金で願いを叶えた方が良い。
もちろんお金で代用出来ない魔法もあるだろうけどそんなのどのレベルまで上げる必要があるんだよ。
「それで見ると[真実の目]も疑問だよな」
人気ランキングで常に上位だし魔法紹介でも有用な魔法として一番に紹介されるレベルだ。
でもこの魔法の作者は他の魔法を作っていない。
最初期から魔法を作ってるのだから魔法が好きなはずなのに……。
しかも[真実の目]にはどうしても違和感がある。
「【真実の目】」
使用すると常時ノイズが走る感覚がある。
これは俺が作った魔法の効果だ。
意図的・偶発的問わず精神に干渉を受けた時にノイズを感じるようにしている。
[対抗呪文]は受け入れたものに対して何の効果も発揮しないのでその対策のために作った。
特に精神干渉系は気づきようもないから保険になる。
すぐに世界書の効果一覧画面から[真実の目]を強制終了する。
ノイズがなくなった、やはり原因は[真実の目]だと思う。
「制約ぐらいしか考えられないよな……」
精神に干渉するような制約をつけているんだろうけど、そんな魔法を解禁後数日で作ってるってどんな頭をしてるんだ。
よほどの魔法好きじゃないとこんなこと出来ないと思う。
「魔法が人気になるなら魔法好きが作った魔法であってほしいな」
せっかくこんな面白いものが与えられたんだから悪用するより楽しく使って欲しい。
出来るだけそういう人が作った魔法を使うようにしようと心に決める。
さてもう寝ないと明日に響いてしまう。
明日も楽しい一日であればいいな。




