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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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73.和泉さんの考え

「能見、ちょっといい?」

「いいけどどうしたの?」


 放課後、和泉さんから声をかけられた。

 いつも明るい和泉さんが深刻そうな顔をしてるのは珍しい。


「あんた、藤田さんと付き合ってるのよね?」

「……うん」


 改めて聞かれるとすごく嬉しいな。

 透子と付き合うことが出来たなんて一ヶ月前の俺に言っても信じなかっただろう。


「……相思相愛なの?」

「多分……違うんじゃないかな、俺が告白したからって言ってたし」

「そうなんだ」


 恐る恐るといった感じで聞いてきた。

 和泉さんも女の子だし恋愛事情には興味あるのかな?

 でもやけに具体的な質問だし……まさか。


「え、もしかして和泉さん、まさか「ないわね、まったく欠片も」 


 俺のことが好きなんじゃと言おうとしたら、言葉を遮られてあっさり拒否された。

 特に期待してなかったけどはっきり言い切られると悲しい。


「好きじゃないのに付き合うのってどうかなって思っただけよ」

「なるほど」


 もしかして江川が告白して、それで和泉さんが悩んでいるとか?

 あの野郎、上手いことやりやがって。

 ただ俺も今は気持ちに余裕があるし応援してやらんこともない。

 ついでに俺の代わりに私刑を食らってくれると嬉しい。


「なによ」

「いえ、なにも」


 鋭い目で見られたので口をつぐむ。

 和泉さんの性格を考えると突っ込んで聞くと怒られそうだ。


「久美は友達?」

「え、そりゃ友達だと思ってるよ」


 貴重な魔法好きの同士だし明るい美人で話しやすい。

 クラス内で俺が気兼ね無く喋れる女子は彼女くらいなものだろう。


「そう……」


 何か考え込んでいる様子。

 いったいどうしたんだろうか?

 しばらく待っていると和泉さんが口を開いた。


「いいわ、わかった」

「何が!?」


 でも和泉さんの口から出てきた言葉はよく分からない言葉だった。

 一体何が分かったんだ?


「あたしはあたしの考えで動く」

「えっと……動くって何を?」

「じゃあね」


 俺の質問に答えることなく去っていった。

 なんで俺の周りの人間はこんなに自由なんだ?


「それは能見が一番自由だからだな」

「思考に割り込むのやめてもらっていいすか?」

「思考を口に出すのをやめれば割り込まれないぞ」


 和泉さんがいなくなったと思ったら阿久津が来た。

 こいつは和泉さんと違ってぜったい暇だから来たんだろうな。


「能見が好き放題やってるからみんな自由になれるんだな」

「好き放題なんてしてないよ!?」

「それに反応いいしな」

「それはいじめの感想だよ!?」


 笑いながら俺が一番自由だと言う阿久津。

 これでもかなり気を使ってるんだけど……。


「和泉と話してるのを見て綾瀬がコメント言ってたぞ」

「え、名雪さんがなんで?」

「なんでも『心のケアが大事ですねぇ』だとか」

「それは俺に対してじゃないよね!?」


 和泉さんとの話でそんな内容はなかったと思う。

 なんていうか決意表明を聞かされただけだし。


「ふむ、能見の認識はそんなものか」

「認識も何も心について言われた覚えがないんだけど……」


 こいつも名雪さんもいつも意味深な発言しておいて詳しく聞くとどうでもいいことなんだよな。

 そういう所は幼馴染だと思う。


「まあ刺されないようにな」

「なんで修羅場になるんだよ!?」

「江川がチラチラお前を伺ってるぞ」

「え!?」


 言われて江川の席の方を見ると露骨に目を逸らされた。

 刺されるってそういうことかよ。


「俺、一方的に質問されただけなんだけど?」

「藤田が江川に同じようなことしていたらどうする?」

「江川を刺す」

「ということだ」

「お前たちはなんでそんなに物騒なんだよ」


 刺すだの刺されるだの言っていたのが聞こえたらしく、江川が近寄ってきた。

 一応両手に何も持ってないようだな。


「で、和泉と何話してたんだよ」

「恋愛相談だよ、江川君」

「うわっ、彼女出来たからって調子に乗ってやがる」

「ドヤァ」

「よく考えろ江川、能見に相談するか?」

「ド直球で悪口言うのやめてくれますか?」


 ちょっと軽い冗談を言っただけなのに、ひどいカウンターを食らってしまった。

 たしかに俺に相談する理由ないけどさぁ。


「じゃあ何だったんだよ?」

「いくつか質問されただけだよ」

「そうか」


 ちょっとうれしそうな江川。

 会話の内容がよほど気になっていたらしい。


「能見は和泉には興味ないから大丈夫だと思うぞ」

「そもそも彼女いるのに他の女性に手を出さないよ!?」

「こういう認識なのは困りものだがな」

「まったくだ」

「どういうことだよ!?」


 そう言い残して江川は席に戻っていった。

 なんとも自分勝手なやつだ。


「江川も必死なんだろうさ」

「なんで?」

「おいおい、もうすぐ学祭だから相手を探してるに決まってるだろ」

「あんなイベント燃やせばいい」

「まだ参加したことないのに過激派だな」

「何が悲しくて終日展示みたり模擬店回ったりしないと行けないんだよ」


 中三の時に見学も兼ねて翔と一緒にこの高校の文化祭に来たけど、見るものなさすぎて一時間ぐらいで帰ったんだよな。

 生徒だったら終日ずっと居ないといけないから暇すぎる。


 そういえばあの時は陽菜が「なんで私を連れて行かないの!?」って怒ってたな。

 時間があったら絶対あれも食べたいこれも食べたいって言って予算オーバーになるに決まってる。

 ……今回は土曜日だし確実に来るよな、少し予算確保しておこうか。


「お前は藤田がいるんじゃないのか?」

「え……あっ!?」


 でも阿久津の言葉で全てが吹っ飛んだ。

 そうだった、今までのイメージで考えていたけど今は透子がいるんだ。

 二人で仲良く模擬店とか展示とか見て、出来たら手なんかもつないで……。

 やばい、やりたいことが多すぎる。


「イベントは燃えた方がいいか?」

「それを燃やすなんてとんでもない」

「綺麗な手のひら返しだな」


 阿久津が笑ってるけどこっちは真剣なんだよ。

 そこで仲良くなってゆくゆくは……。


「よし、なら能見は参加っと」

「はい?」

「学祭は任意参加なんだよ」

「なんだよそれ、聞いてないぞ!?」

「人集めないといけないから大変でな」

「なんでそんなことする必要があるんだよ」

「おいおい、誰かが模擬店なり展示なりしないといけないだろう?」

「俺もするの!?」

「藤田とセットでいいか?」


 俺の話を無視して決定事項かのように答える阿久津。


「いやいやいや、俺はともかく透子は参加するかは」

「参加する」

「え?」

「真琴くんと一緒なら参加する」


 いつの間にか透子が俺の後ろにいた。

 ただそれより驚いたのは。


「なら藤田も参加っと」

「え、透子はいいの!?」


 そんなことをしていたら学祭を回る時間が短くなってしまう。

 出来れば朝から一緒にいろいろ周りたかったのに……。


「参加するの嫌?」

「参加したい!!」


 でも小首をかしげて訴えかけるような目でお願いされたらそれ以上優先されることはない。

 諸手を上げて参加するに決まってる。


「能見と藤田が参加、ペア希望っと」

「そんなのあるの!?」

「まあ本来要望通りにペアになるか分からないんだが、双方望んでるなら大丈夫だろう」


 え、え、つまり透子と一緒に何かするってこと?

 それなら全然構わない、むしろその方が良い。


「さて、じゃあ他の人の所にも交渉してくるか」

「大変だな」

「まあ仕方ない」


 肩をすくめてやれやれという仕草をしながら翔の方に歩いていった。

 無駄にカッコいいのがムカつく。

 イケメン死すべし、慈悲はない。


「友達は大事」

「また口に出てた!?」

「そんなに気にすることない」


 え、それはどっちの意味?

 口に出す方? カッコ悪いこと?

 それに悩んでとっさに次の句が出てこない。 


「じゃあね」

「あ、うん」


 透子が自分の席に戻っていった。

 そしてすぐ平川さんが話しかけているのが見える。

 もしかしたらさっきの学祭の話を聞きたいのかもしれないな。

 今までああいうイベントは全然楽しくなかったけど今回は楽しみだ。

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