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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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69.天啓

 ビルの一室で大勢の人間が集まっている。

 みな高級そうな服やアクセサリーを身に着けており、かなり社会的地位が高いことが見て取れる。

 どうやら今は口々に自身の成果を披露しているようだ。

 披露の中心にいるのがラフな格好の男である。


「ほら、あっという間にランキング上位さ」

「お見事」

「民衆なんて馬鹿だからね、ちょっとそれっぽいことを言えばいくらでも誘導できる」


 クリエイターの男がラフな格好の男に答える。

 かなり失礼な態度で話しているが男は気にしていないようだ。

 どうやら著名人らしく他の人間も話を聞いて頷いている。


「女なんてみんな馬鹿だからね、ちょっと優しくすればすぐ落ちる」


 ラフな格好の男の後ろには若い女性が控えていたがクリエイターの男の眼中には入っていなかった。

 その後もひたすら彼の持論を話している。


「女を落として、それを使って男を落とす、ただこれだけさ」

「引き続き頼むよ」

「ん? ああ、任せてくれ」

「報酬増も出来高次第で考えよう」

「ミヤさんの要求目標は高いからなぁ」


 クリエイターは苦笑しながら答える。

 ミヤと呼ばれた男は笑いながら部屋を出ていくと、一転して真剣な顔になって後ろの女性に話しかける。


「若菜、後で彼への要求目標を教えてくれ」

「わかりました」


 ミヤが若菜に質問した内容から考えて、少なくても『女はみんな馬鹿』という意見に賛同していないのが分かる。

 それでもさっき何も言わなかったのは相手にする価値がないと思っているからだろう。


 次の場所に移動する。

 そこでは魔法についての研究が重ねられていた。


「ミヤさん、被検体が足りないんだが」


 白衣を着た男がミヤに話しかけてくる。

 以前光の収束を研究していた男だ。


「どのくらいだい?」

「あと20は欲しい」


 無茶な要求だと若菜は感じたようで顔をしかめているが、ミヤの表情には変化がない。


「ふむ、調達しよう」

「東洋人と西洋人及び男女で半々にして欲しい」

「なにか理由が?」

「人種性別で効果が変わるか検証したい」

「わかった、なんとかしよう」


 電話を取り出してどこかに連絡している。

 白衣の男はそれを確認した後、若菜の方に振り向く。


「君は何の魔法を作ってるのかね?」

「私ですか?」


 突然白衣の男に問われて驚く若菜。

 今まで声をかけられたこともないのに突然質問されたから当然のことだろう。

 しかも質問の内容が具体的に『何の魔法を作ってる』だったのも大きい。

 確かに若菜は魔法を作っているがそんなことを公言した覚えがないからだ。


「なに、人種性別で効果が変わるという話をした時に君の重心が前方寄りになったからね、興味がある証拠さ」 


 当たり前のことのように答える白衣の男。

 それを聞いて若菜は白衣の男に対する認識を改めどう答えるべきか思案する。

 少し考えた後、『正直に答えても良いが面倒なことになっても困る』という結論に達したようだ。


「何の、と言っても趣味レベルですが」 

「嘘だね」


 若菜の回答を嘘だといい切る。

 明らかに根拠のあるような口ぶりだ。


「一瞬目線が左下から右下にぶれた、話すかどうか悩んだんだろう?」


 若菜にとってまさにその通りであったが表情には出さない。

 無言で白衣の男を見据える。


「なるほど、かなり高レベルだね」

「そんなこと一言も言ってませんが?」


 若菜の反応を見て頷く白衣の男。

 それを見て若菜の目に力が入る。


「ふむ、君はもう少し負けん気を抑えたほうがいいな」

「……ご忠告恐れ入ります」


 若菜自身そう思っているのだが他人に言われると腹が立つ。

 元々激情家なのでこれでも抑えているのだと心の中で言い返す。


「カマをかけられてることに気づいてるのに、目は正直に全てを語ってしまっているからね」


 若菜はその言葉を聞いて一瞬目を閉じてしまったことに気づいたようだ。

 弟からは『お姉ちゃんは分かりやすい』と言われていたがそういうことだったのかと理解する。


「君から見て、魔法とは何かね?」

「なに……とは?」


 今度は一転して漠然とした質問が来た。

 先ほどまでのこともあり何を答えていいか分からないといった様子だ。


「非現実を現実にする手段と思うかね?」

「思いません」

「なら何だと思う?」


 白衣の男の質問の意図を理解したようで少し考えている。


「新しい世界の法則……でしょうか」

「なぜそう思う?」

「物理法則とかと同じで一定のルールがあると考えるからです」

「続けて」

「『出来ない』と『出来るけど消費MPが多い』の違いが存在するのが根拠の一つです」


 白衣の男が目で続きを促す。

 かなり興味を持っているようだ。


「ただの手段であるなら『出来ない』を作る必要はないと思います」

「面白い見解だ」


 何がよかったのかブツブツ呟きながら歩き回っている。

 考え事があると歩き回る癖がある人は多いんだなとは若菜の感想。


「非常に参考になった」

「はい」

「ん、何かあったのかい?」


 ちょうどミヤも戻ってきた。

 二人が話しているのを見て楽しそうに声を掛ける。


「なに、彼女に少し見解を聞いていてね」

「ほう、どうだった?」

「素晴らしいね、ミヤさんが秘書にするだけある」

「秘書じゃなくて部下なんだけどな」


 苦笑しながら答えるミヤ。

 秘書じゃないと言われて表情を輝かせる若菜を見て、こういう所がまだまだ子どもだなと思うミヤだが本人に指摘はしない。


「とりあえず調達できた、明後日には到着する」

「素晴らしい」


 それを聞いてキビキビと動き出す白衣の男。

 もうミヤ達に興味はないようで目もくれない。

 ミヤは邪魔をしないように声をかけずに外に出ていく。

 若菜は慌ててその後を追って外に出た。


「どうやってあの方達から助力を得られたのでしょうか?」


 ある程度距離が離れたところで若菜が意を決して質問する。

 若菜は常々疑問に感じていた。

 テレビで見かけるような有名人や特定の方面の専門家が大勢ミヤの元に集まっているがどういう縁なのか。

 元々の人脈と言うには幅が広すぎるし、集めてきたと言うには大物すぎる。


 ミヤは少し考えてからゆっくりと口を開く。


「天啓、と言ったら信じるかな?」

「天啓……ですか」


 若菜は必死に理解しようとしているが、質問したことと聞こえた言葉の差が大きくて難しい。

 天啓とは天から明かされる知識のようなものであり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 だがミヤがそれで助力を得たというなら事実だと考えている。

 それぐらい若菜はミヤを信頼している。


「いうなれば彼らと()()したんだよ」


「はい」


 若菜は表面上頷いているが目は明らかに納得していない。

 普段から他人を下に見るような発言をしている男達がミヤの思想に共感できているとは思えないからだ。


「天啓を得たら誰とでも共感できるようになるのさ」

「なるほど」



 若菜としては、あの男たちがミヤに共感したのではなくミヤがあの男たちに共感したというならまだ理解できるようだ。

 ただそれならミヤがあの男たちの思想に染まってしまわないか心配だと考えている様子。


「もちろん共感するからと言って思想まで変わるわけじゃないさ」

「安心しました」

「それに若菜ももうすぐ天啓を得るさ」

「そうなのですか?」


 驚いた様子で聞き返す若菜。

 そんな簡単な話だとは思っていなかったようだ。


「ああ、そうなったら計画の詳細を話してもいい」


 ミヤの言葉で若菜の表情が輝いた。

 若葉にとってそれは悲願と言ってもよい話だったからだ。


「詳細を聞いたらさらに忙しくなってしまうと思うけど」

「構いません」

「うん、頼むよ」


 ミヤの笑顔を見て決意を新たにする若菜。

 彼の笑顔には何か人を惹きつける魅力があると若菜は感じている。

 ただそれが意図的に作られたものであると気づくのはいつの日になるであろうか。

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