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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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68/148

68.レベル上げ

「真琴くんは 「「真琴くん!?」」


 翔と平川さんが同時に驚く。

 こいつら仲良すぎじゃないか?


「いつからそんな呼び方になったんだ!?」

「お姉ちゃん、騙されてるよ!!」


 翔はともかく平川さんの「騙されてる」ってなんだよ。

 何をどうやったら騙すんだよ。


「そりゃ恋人になったら名前呼びが当然とか言ったんでしょ」

「あの……、心の中の声を読むのは……」

「恋人なら名前で呼ぶものって言われた」

「ほら、やっぱり!!」

「陽菜、陽菜が言ったんだよ!?」

「陽菜ちゃんが?」

「昨日透子との話の後に陽菜が来たんだ」

「「透子!?」」

「いちいちめんどいなお前ら!?」


 昨日起きたことを一通り説明する。

 しかし改めて説明するとなんでこんなことになったんだと思う。


「まだあの男来てたんだ、それならお姉ちゃんを一人で返すべきじゃなかった」

「いや、透子はきっぱり断ってたけど……」

「だからこそよ、暴力に訴えてきたんでしょ?」


 たしかに暴力を振るわれると女性には厳しい。

 ただそれは平川さんもだと思うけど……。


「平川も女だろ」

「なによ、あたしだってすこしぐらい心得あるのよ」

「ならオレのボディ全力で殴ってみろ」

「はい?」

「どれほどの実力か見てやる」

「上等」


 手を広げて準備OKの翔に平川さんがボディブローを入れる。

 脇腹付近に突き刺さってかなり痛そうだけど……。


「いったーい、なにこれ」


 声をだしたのは平川さんの方だった。

 手を振ってかなり痛そうにしている。


「もっと殴ってもいいんだぞ?」

「……上等」


 続けて何度もボディーブローを入れてるけど、最初ほどの迫力がない。

 自分に反動が来ないように手加減しているようだ。


「ふむ」

「きゃっ、何するの!?」


 翔がおもむろに平川さんの手首を掴む。

 平川さんは振り払おうとしているけど振り払えないようだ。


「悪くはないが男に勝てるかは微妙だな」

「なによ、これぐらい」

「よし、何かあればオレを呼べ、助けてやる」

「はい?」

「ほれ、番号言うからスマホに登録しとけ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ」


 平川さんは慌ててスマホを取り出した。

 もっと反抗的になるかと思ったけど意外と言う事聞くんだな。


「久美は強く押されると弱い」

「え、あの俺、何も言ってないんだけど」

「全部口に出てる」


 どこからどこまで口に出てるんだ?

 真剣にヤバい気がする。


「透子ちゃんは……真琴に言えばいいか」

「なんであんたもお姉ちゃんを名前呼びなのよ」

「前からそうだぞ」

「生意気」

「同級生を名前で呼んで何が悪い」

「ならあたしも名前で呼ぶ」

「好きにしろ、オレも名前で呼んでやる」

「で、あんたの名前なんだっけ?」

「覚えとけや!?」

「聞いてないわ!!」


 二人が顔を見合わせてにらみあっている。

 クラスメイトのあいつらといいなんで俺の周りの男女はこんなに仲いいんだ。


「仲良くない!!」

「そういう反応が仲良いって言ってんだよ!?」


 ったく、あんな美人と仲良くなるなんて翔がうらやまし、ん?

 肩を叩かれたので振り向くと見たことのないぐらい不機嫌な透子がいた。


「正座」

「はい……」


・・・


 地面に正座して透子から無言の圧力を受けてる間に二人の喧嘩も終わったようだ。


「ん? なんで真琴は地面で正座してるんだ?」

「反省中」

「何したんだ?」

「ちょっとね……」

「それじゃあ駄目ね、石をのせないと」

「石抱はやめて!?」

「ならワタシが乗る」

「え?」


 俺の正座した足の上にそっと横座りされた。

 ふおおお、透子のお尻の柔らかさがダイレクトに伝わってくる!?

 体重も全然軽くてちょっと心配になるレベルだ。

 そして透子の体が近いせいかすごくいい匂いがする。

 ただ平川さんと違って冷静に興奮する匂いって言えばいいのだろうか。

 とにかく抱きしめたくなる匂いだ。


「拷問になってる?」

「表情からしてご褒美にしか見えないな」

「だよね」

「イニシャルのMはマゾのMだったか」


 言い返したいけど実際気持ちよすぎる。

 それにこんなに近くで透子の顔を見れるのも最高だ。


「ちょっと恥ずかしい」

「俺も」

「お姉ちゃん、嫌なら離れればいいんだよ?」

「嫌じゃない」

「真琴も幸せそうだしほっとけばいいだろ」

「でも……」

「なんだ、久美もしたいのか?」

「違うわよ!! それになんで名前呼びなのよ!!」

「さっきの話をすっかり忘れてるね」

「久美がさっき了承してた」

「そうだっけ……」


 俺だけじゃなく透子にも言われたのでちょっと自信がなくなっているようだ。

 視線が斜め上を見ているので会話を思い出そうとしている様子。


「ほら、久美がショック受けてるぞ」

「主犯は翔では?」

「久美は強い子」

「お姉ちゃん……」


 透子が声をかけながら抱きしめるとあっという間に納得していた。

 こういうところも陽菜そっくりだな。


「で、本題は?」

「坂本の件?」

「違う、魔法の件よ」


 そういえばそうだった。

 なんか横道にそれまくったから本題をすっかり忘れてた。


「じゃあみんなで魔法使おうか」

「おう」

「いいわよ」

「ワタシはしなくていい」

「え、お姉ちゃんもしようよ」

「そこまでMPに困っていない」


 そう言われてしまうと返す言葉がない。

 俺が一緒にレベル上げしたかっただけだし。

 あ、平川さんもちょっとしょんぼりしている。


「ワタシの分は久美に使ってほしい」

「お姉ちゃん」


 平川さんが一転して目を輝かせた。

 感情がくるくる変わる所はすごくかわいいな。


「真琴くん、正座」

「はい……」


 また口に出していたらしい。

 今回は正座だけで許してくれるようだ。


「容赦ないな」

「……本気だね」


 本気ってヤキモチ的な? 

 透子から好きと言われたことはないからそれはそれで嬉しいな。


「続き」

「そうだよ、ほら魔法を使っていこう」

「あ、うん」

「真琴がいいって言うなら構わないだろ」


・・・


 数時間後。


「あっという間にレベル30超えって……」

「ちまちま稼ぐのが馬鹿らしくなるな」


 二人ともレベルはかなり上昇したようだ。

 俺も一応レベルは1あがった。

 せっかくだから100レベル目指してみたい。


「レベルが上がるとさらに効率が上がるのが楽しいわね」 

「わかる、筋トレに通じるものがあるな」

「あんたは何でも筋トレに例えないの」


 軽く笑いながら翔にツッコむ平川さん。

 だいぶ仲良くなっているようでよかった。


「久美はああ見えて人見知り」

「そうなの?」


 透子が小声でこっそり教えてくれた。

 たしかに最初に出会った時は壁みたいなのを感じた。

 でもあれは転校初日だったからで、それ以降は誰とでも仲良くしてる気がする。


「社交的に振る舞っているだけ」


 うーむ、区別がつかない。

 ただ透子が言うならそうなんだろう。


「あ、真琴とお姉ちゃんが密談してる」

「さっそく仲の良さを見せつけか?」

「二人の声が大きすぎて密談っぽくなっただけだよ!?」 


 まあ気の置けない友人が増えるのはいいことだ。

 余計なことを言って台無しにしないようにしよう。


・・・


「暗くなってきたし時間だな」

「あ……そうなの?」

「そうだね、そろそろ帰らないと」


 大分疲れてしまって結局雑談してたし、帰るにはちょうどいいだろう。

 平川さんがちょっと寂しそうな表情をしているけど……。


「それで次はいつやるんだ?」

「俺としては二人のやる気次第かなぁ」

「それなら明日もやるわよ」

「オレも構わないぞ」


 やる気を見せる平川さんと翔。

 平川さんはともかく翔がやる気になるとは思わなかったな。

 ある程度レベル上がったしもう満足だと思ってた。


「透子も一緒でいい?」

「いい」


 明日も透子と一緒にいられるのは嬉しいな。

 さてじゃあ帰る準備を、ん?


「これ」


 透子から腕を引っ張られたので振り向くと結構大きい本を渡された。

 タイトルは新世界より(上)?


「前に興味あったみたいだから」


 そういえばあの時に本のタイトル聞いた覚えがある。

 怒らせてしまったと思ってたけど違ったんだ。


「興味……ない?」

「ある、あります、あってみせます」


 どんな本かさっぱり知らないけど透子が勧めてくれるものなら絶対に読む。

 ただちょっと分厚い気がするけど……。


「返事がなんか陽菜ちゃんみたい」

「陽菜ちゃんが真琴の真似をしてるというのが正しいな」

「そうなの?」

「ある時期から『お兄ちゃんみたいになりたい』って言って真似してただろ」

「真琴みたいにって馬鹿っぽくなりたいとか?」

「いや、もっと明るくなりたいだったな」

「え、すごく明るいでしょ?」

「昔はものすごく暗かったな、今とは正反対だろ」

「嘘……」

「まあいろいろあってな、真琴を真似して明るく振る舞うようになったんだ」

「翔、あんまり余計なこと喋んなよ」 

「悪い悪い」


 幼馴染だけあって、翔はほぼすべての過去を知っている。

 陽菜がいじめられたことも知ってるから変に言いふらされると困る。


「陽菜ちゃんにはこれを返してほしい」


 そう言って透子から渡されたのは分厚い文庫二冊……ってレベルEじゃねぇか!?

 なんでこれが、いやそもそもどうやって渡したんだ!?


「昨日家に来た」

「判断が早すぎる!?」


 あいつ、友だちの所に行くって言ってたのに透子の所にも寄ってたのかよ!?

 しかもなんで幽白とかハンタじゃなくてレベルEなんだよ!?

 いや、俺も陽菜もレベルE大好きだけど絶対人を選ぶだろ!?


「カラーレンジャー楽しかった」

「だよね!!」

「バトルポカリ欲しい」

「あれ、魔法で再現できたんだけど無から有を作るのが意外とコスト重くってさ!!」 


 嘘だろ、透子もレベルE好きになってくれたのか。

 好きな子と好きな本の話を出来るなんて夢のようだ。


「レベルEとはなかなか渋いわね」

「久美も知ってるのか?」

「あたしは魔法の勉強の一環で知っただけよ」

「ほう……、なら普段はどんなの読むんだ?」

「……四月は君の嘘とか」

「アニメしか見たことないが良かったな」

「そうでしょ!! アニメの再現もすごく良くてね!!」


 なんかあっちでも盛り上がってるな。

 まあ趣味が合うって嬉しいもんだしな。


「他にもお薦めを貸してほしい」

「是非伝えておくよ」

「……真琴くんのお薦めも」


 少し視線をそらしつつも上目遣いでお願いされた。

 俺の彼女がかわいすぎて鼻血出そうな件。


「なんかいらっとする表情してるわね」 

「同感だろ」

「俺が青春したら悪いのかよ!?」

「真琴くん、かわいい」

「え、そ、そうかな」


 かわいいなんて言われたのは生まれてはじめ……陽菜に言われたことあるか。

 まあ妹はノーカンとしよう。


「楽しみ」 

「頑張って選ぶよ!!」

「なんてちょろい……」

「耐性がなさすぎだろ」


 うるさい、ちょろくて何が悪い。

 好きな子が楽しみにしてくれているってだけでどれだけ嬉しいか分からないのか。


「そろそろ帰る?」

「あ、送っていくよ」

「まだ用事があるから」


 そういうことなら残念。

 一緒に帰るのはまた今度にしよう。


「また明日」

「うん、また明日」

「二人だけの空間作ってるわね」

「帳下ろしてやってほしいだろ」

「あ、呪術好きなの?」

「多少はな」

「あたし五条先生好き」

「憧れるのは分かる、だがイチオシは乙骨と里香ちゃんだろ」

「あ、たしかに」


 お前らこそ帳下ろして二人で話せよ。

 楽しそうにしてさぁ、うらやま「正座」


「はい……」


 素直に正座すると膝の上にそっと腰掛けてきた。

 間近で見る透子は本当にかわいいな。

 でも今回は口に出してなかったはずなのになぜあんなベストタイミングで……。

 もしかして表情を読まれた?


「まるっとお見通し」

「TRICK!?」


 意外とドラマは好きだったらしい。

 それならドラマ化してない作品のほうが良いかな。


「ってまた真琴の膝の上にお姉ちゃんが乗ってる」

「既に定位置になってるな」


 俺も段々違和感がなくなってきた。

 手乗り猫みたいでめっちゃかわいいし、つい抱きしめたくなる。


「ただ外は真っ暗だし帰らないとまずいぞ」


 遅くなると心配するし、みんなのご飯も遅れるから迷惑になってしまう。

 うちはなぜか全員揃わないと食べないんだよな。

 小さいころ周りに話したら驚かれた記憶がある。


「透子、そろそろ帰らないといけないから」

「ん」


 透子がゆっくりと立ち上がる。

 膝の上の感触がなくなるのは名残惜しいけど仕方ない。


「うん、それじゃまた明日」

「久美も透子ちゃんを遅くまで居残りさせるなよ」

「アタシはそんなことしてないわよ!?」

「……また」


 二人に別れを告げて翔と一緒に家を出る。

 真っ暗だけど気分は明るい。


「真琴が思ったより透子ちゃんと仲良くてびっくりしただろ」

「え、そうかな」


 翔から見ても仲が良さそうに見えたらしい、嬉しいなぁ。

 それにしても今日の透子はほんとにかわいかった。

 二人がいなかったら間違いなく抱きしめてたと思う。

 もしかしたらそのままキスとかも。


「久美も元気そうだったな」

「あ、そうだね、後遺症とかなくてよかった」

「……まだ大分引きずってるみたいだがな」

「え、そうなの?」


 そんな感じ全然しなかったけどよく見てるな。

 体調悪いなら明日無理しない方がいいのでは?


「休んで何とかなるタイプじゃないから大丈夫だろ」

「そういうもんか」


 まあ翔がそう言うなら大丈夫だろう。

 陽菜の時もそうだったけどこいつの観察眼はすごいからなぁ。

 俺の目が節穴すぎるだけかもしれないけど。


「ようやく一歩だろ」

「ん? 何が?」

「まだ真琴と差があるということだろ」

「俺にはかわいいかわいい彼女がいるからな!!」

「既に尻に敷かれてたみたいだが?」

「最高でした」

「そうか、変態だったな」


 おかしい、好きな子の尻に敷かれるのを喜ばない男子なんているのだろうか、いやいない。

 翔だって彼女が出来れば……ってこいつは彼女いたことあるんだったか。

 尻に敷かれる喜びが分からないなんて残念な奴だ。


「じゃあまた明日な」

「おう、また明日」


 挨拶をして別れた直後。


「……可能性の目は出てきたな」


 今、何か小声で言っていたような。

 振り向いても翔はこちらを見ていないしひとりごとかな?

 俺の癖が移ったのかもしれないなぁ。

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