表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
後日談、番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/132

掴み取る初恋:後編

Side とある貴族の娘


あの裏路地事件からレイトは身体を鍛え、戦闘用の隠し武器を作っている様子。

私を守ろうという気概は買うのだが、最近私に構ってくれない。

お礼もまだ言えていないのだ。それがちょっとだけ不満だ。

あの護衛に関しては、特に何も教えてもらえていない。

ジーニア伯爵家に関わっていたかもしれないという程度しか情報がない。

それにも不満を抱いている。

母に聞いても、何も教えてくれない。

確定した情報がないのか、隠しているのかもわからない。

だけど、レイトには情報が回っているようだ。私はとても不満だ。


今日は音楽の授業なのでレイトがそばにいてくれる。

だけど、母も来ているために甘えられない。

何かを見張るような動きがある。

私は不貞腐れた顔で、鍵盤を弾く。

その感情が音にも乗るのか、レイトは苦笑いだ。

母は呆れている。

と、ここで何かを思い出したように母が言う。



「そういえば、九十回目の音楽協奏祭があったわね。二人で出てみない?」

「音楽、協奏祭ですか?」

「なんですか、それは?」


「必ず二人以上で出場して、音色や歌を競い合う大会よ」

「それに私たちが出るのですか?」

「面白そうですけど、私は『獣人』なので、評価が必ず下がりますよ?」


「大丈夫。『その程度』のことを考えられないような舞台にすればいいのよ」

「私もレイトはきちんと評価されてもいいと思うわ」

「ですが、私は…」



なおも自信がなさそうなレイト。

私は彼が評価されないのが悔しい。

ただ『獣人』というだけで、評価を一段階、いえ。

何段階も下げるのは納得いかない。

彼はそこらの人よりも、音楽には強い。

なので、私は彼を奮起させようと声をかける。



「私のレイトはすごいんだからってところを、会場で見せてよ!」

「お嬢様…」

「私は誰よりもあなたを評価するわ。あなたには才能がある!

悔しいけれど、私では足元にも及ばないわ」


「そんなことありません!お嬢様も集中しているときに奏でる音色には、

包み込んでくれる優しさを感じます」

「レイト…」

「お嬢様…」


「はいはい。いちゃつくのはそこまで。大会には参加でいいのね?」

「い、いちゃついてなんていません!大会は参加します!!」

「す、すいません…」


「大会は三か月後。それまで音楽の授業は増やしてあげるわ。

そうね、出るからには優勝してきなさい。

あなたたちが誰よりも優れているところを見せてみなさい」

「任せてください。私とレイトならどんな苦境も乗り越えて、優勝してみせます」

「お、お嬢様…」


「ふふっ、まるで結婚の誘い言葉ね。期待しているわ。

それじゃあ、私は応募の手続きのために退室するわね」

「お、お母様!?」

「…」



私はどうやら随分と恥ずかしいことを言ってしまったらしい。

レイトが見事な赤面を晒している。




私たちはその日から、協奏祭に向けて練習した。

私の我儘というより気分で曲を変えたい、

という意見を採用してくれたレイトは三曲分の楽譜と歌詞を書き上げた。

楽譜から歌詞まで書き上げるレイトは、それはもうかっこよかった。

私は彼の隣で見劣りしないように、彼と共に上を目指すために必死に練習した。


一つ目は穏やかな曲。

これはありきたりだが、会場ウケは一番いいはずだ。

二つ目は明るい曲。

これは私の気分に合わせたレイトの作曲だ。

三つ目は…

たぶん一番ウケはよくない。貴族が弾くにはだいぶ激しい曲だからだ。

歌詞も少々荒々しい。

だが、レイトの声が映えるのだ。

その声につられてか、私にも感情が乗り、鍵盤のノリがとてもいい。

貴族らしくないとは言われるかもしれない。だが、私はこの曲が一番好き。

レイトと一体感を感じられるから…

そうして、私たちは本番までこの三曲を練習した。




音楽協奏祭の本番、当日になった。

この日のために私は赤い真っ赤なドレスを。

レイトは瞳に合わせた濃く明るい紫のタキシードを。

母が衣裳にも力を入れなきゃね?と用意してくれたのだ。

私はこの衣装を気に入っている。所々にだが、レイトの紫が混じっているのだ。

レイトの衣装にも私の赤が混じっている。

まるで婚約でもするのではないかと捉われかねない衣装だ。


舞台は三回ある。

それぞれに対戦相手がおり、

審査員からの獲得票が多い方が次の舞台へ上がる権利を得る。

私は控室で緊張していた。レイトは落ちついているように見える。

そこに現れたのが、ジーニア伯爵家の次男と長女だ。

二人は私たちを蔑むように声をかけてきた。



「あら、こんなところに『獣人』が。獣臭くてたまりませんわ」

「姉さま、あれはゼフィール家の『犬』ですよ。なぜ放し飼いに…」


「あなたたち、私の従者を馬鹿にしないでちょうだい!」

「お嬢様、落ち着いてください。私は気にしませんから」

「ダメよ、あんなのに好き勝手言われて、悔しくないの!?」

「私は、あのような小物に心は動かされません。

だから、お嬢様、落ちついてください。音色に響きます」


「私たちが小物ですって!?私たちが誰かわかって言っているのです?!」

「貴様ぁ!誰に向かって言っているのか、わかっているのか!?

我らは栄えある貴族ジーニア伯爵家ぞ!!」


「そうやって、自分のものでもない家名を振りかざすところが、

小物だと言っているのですよ。さっ、お嬢様こちらへ。

気分が落ち着く飲み物でも用意いたしましょう」

「あ、ありがとうレイト」



「あとで覚えてなさいよ!」

「お前たちが優勝することはない!僕たちが優勝するからな!」




「ふっ、捨て台詞まで小物くさいとは、笑えますね」



私の目に映るレイトがかっこよすぎる…

私はぽーっとしながら淹れてくれたハーブティーを飲む。

レイトを見ながら飲んでいると、冷静なレイトに言葉をかけられる。



「お嬢様。あのような小物は無視してください。

あなたは感情が音に乗りやすい。

私が先ほど言ったように、彼らは小物です。

心を動かされないように注意してください」

「は、はい…」

「お嬢様、大丈夫ですか?熱でもありますか?」


「ひゃう!な、ないわよ!大丈夫!ちょっと鍵盤に触れてきます!」

「私も同行しましょう。お嬢様一人のところに彼らが来てはいけませんから」

「(うぅ、さっきからかっこよすぎるよ~)」



私たちが鍵盤の下にたどり着くと、

レイトが鍵盤の音色を聞いて、不思議そうな顔をする。

音色がいつもと違う、怒りの感情ではないな、などと呟いている。

彼も自分の弦楽器の調子を見ている。

あれは母がご褒美だと言って買い与えたもの。

いつか、私が彼専用の楽器を買ってあげたい。

彼は私のものだという証を持ってほしい。

そんな風に彼の楽器を見つめてしまう。

そんな中、彼が楽器について話してくれる。



「今日の『彼』は私と同じように気分が高ぶっているようですね。

どこかで抑えないと、弦を切ってしまいそうです」

「『彼』、ですか?」

「ええ。奥様から頂いた『彼』は少々ヤンチャなのですよ。

気分屋とも言えるでしょう。

そんな『彼』がとてもやる気になっているのです。この大会、負けませんよ?」



彼がそんな風に楽器を語るなんて…

初めて聞いた。

彼の言葉に私は自分の楽器に触れる。

あなたはどんな『子』なのかしら?私にあなたの気持ちを教えてくれるかしら…

ポロンと鍵盤を弾いて鳴らしても、答えは返ってこない。

今はまだそのときではないようだ。



「お嬢様、気分は落ちつきましたか?」

「ええ。大丈夫よ、まずは最初の舞台。ここを突破しましょう」


「違いますよ、お嬢様。観客を意識してください。

観客を楽しませることができれば、自然と味方になってくれます」

「観客が味方に…?」


「はい。観客を味方につければ、評価を下げることは難しいのです。

我々は、観客を喜ばすことだけを意識すればいいのです。審査員は二の次です」

「ふふっ、レイトが言うと本当にそうなりそうね。わかったわ。

観客を楽しませましょう。なんて言ったって、今日はお祭りなのだから!」



「はい、お嬢様。私も力の限り、お手伝いさせていただきます」




最初の舞台。相手の演奏が終わる。

さすがに協奏祭と言われるだけあって、レベルが高い。

でも、私たちには及ばない。気持ちだけは少なくとも負けていない。

ここは、『私たちと観客』の舞台だということを教えてあげるわ!


舞台の上に二人で上がる。

中央にレイトが弦楽器を持ち、その美声で歌う。

後ろで、私が鍵盤を弾いて、歌声に音色を絡ませる。

私は落ち着いている。ちゃんと観客が見える。

私たちは観客を喜ばせるために、この楽器を鳴らすんだ。

レイトとの一体感をうっすらと感じた。

初めての感覚だ。心地いい。いつまでも続けと鍵盤に感情が乗る。

観客がうっとりしているのがわかる。

そして、最初の舞台は満場一致で、私たちが次の舞台の権利を手に入れた。



それを舞台袖で見ていたジーニア伯爵家の二人は悔しそうに小声で囁きあう。



「(姉さん、どうする?あんなの勝てっこないよ…)」

「(弱気になってどうするの!ニーア!)」

「(で、でも…)」

「(いいことを思いついたわ。

あいつらはあの『歌声』があってこその評価よ。そこを潰せばいいんだわ)」


「(な、なにをするんだい?姉さん…)」

「(ちょっと喉を傷める程度の毒をお母様から預かっているのよ。

この時のためだったのね?)」

「(毒って、姉さん。大丈夫なのかい?)」

「(ええ。死にまではしないそうよ。

ただ、喉が焼けてしまうだけ。二度と歌えなくなるくらいにね)」


「(じゃあ、それで僕らの優勝だね!)」

「(そうよ、ゼフィール家に優勝なんて渡さないんだから!)」



私たちの知らないところで、レイトの『歌声』が狙われていた。




二曲目も観客の心を鷲掴みにして、

苦々しそうな審査員たちが満場一致で私たちに札を上げる。

私はもう一度、一曲目でもいいのではないか?と考えた。

だが、事件が起こった。


私とレイトが休憩している控室に誰かが訪ねてくる。

扉を開くと、レイトのファンになったという子たちが来たのだ。

ファンになったという子たち。握手をしてくださいなどと言って、レイトを囲む。

差し入れですと言って飲み物をくれる。

お疲れでしょうと出されたお茶をレイトが飲んだ瞬間に、

レイトが激しくせき込み、血を吐く。

私は女の子たちに囲まれているレイトに嫉妬していたのも忘れて、

レイトに急いで近づく。

女の子たちも心配している。だが、人数が一人足りない。

やられた。毒でレイトの喉を潰しに来たようだ。

犯人はわからない。女の子たちもその場で意気投合して仲良くなっただけという。


私は念のためと思い、女の子たちを別室で監視してもらうことにする。

心配そうだった女の子たちも仕方がないと、指示に従ってくれる。

控室の中では、喉を押さえて、空気が漏れる音を口から出すレイトだけ。

どうしよう。このままじゃ…

レイトが私になにかを伝えるように口を開く。

私に歌えって…?

でも、私じゃ、レイトに遠く及ばない。

きっと観客も喜ばない。むしろ不満で会場の空気が悪くなる。

無理よ、とレイトに訴えるも、彼の力強い瞳が私に歌うように言う。


そんなときに、部屋にノックがされる。

私は警戒しながら声をかける。



「どちらさま?」

『『黄金商会』から来まシタ。

お客様がお困りのようなのでと、商会主が手を差し伸べよと仰せデス』




私は驚いた。あの『黄金商会』がこの危機に手助けしてくれる?!と。

だが、あまりに話がうますぎる。

もしや『黄金商会』の者が私のレイトを傷つけたのではないかと疑ってしまう。

だが、彼女はこちらの様子もすべて知っているようだ。

そして、驚愕的なことを言う。



『マスターは偶然見ていたこの祭りで、彼の『歌声』を楽しみにしていまシタ。

それを邪魔されて、大変不機嫌デス。犯人を吊るし上げるつもりのようデスヨ?』

「なっ!?あの『黄金商会』の商会主が犯人捜索に協力ですって!?」

『それとこちらの薬を届けよと仰せでシタ。必ず治るから、今は信じてトモ』

「そんなの、信用できるわけないじゃない。

あなたたちが犯人と共謀してるのかもしれないと疑うのが筋じゃない?」


『ですが、今はなりふり構っていられないはずデス。

少なくとも、『彼』はそのつもりのようデス』

「え?レイト?」

「ガっ、はあ、はあ、ぐすりを…」


『私どもが犯人を証拠とともにあなた方に届けマス。

それでいいでしょうか?『黄金商会』の名に懸けて』

「……わかったわ。でも、逃げたりしたら、

私の家の力を徹底的に使って『黄金商会』を潰してみせるわ。覚悟しなさい」

『その力は、必ずや犯人に向かうでショウ。

それでは、薬はこちらに置いていきマス。私どもは犯人を捕らえてきマス』



『黄金商会』の機械人形は、その場に出現した不思議な扉から去っていった。

あの商会主は今も会場で見ているのだろうか?

なぜ手助けを?そもそも、どうやってこの情報を…?とぼんやり考えてしまう。

っ!それよりも、今はレイトだ。



「レイトっ!大丈夫?!薬よ!!

でも、あなたが『黄金商会』を信じるのならば飲みなさい。

信じないのであれば、叩き割りなさい」

「…」



私はレイトを見つめる。

だが、決意は固いようだ。

レイトは薬瓶の蓋を開き、一気に飲む。レイトの身体がぼんやりと光る。

なに、これ…?

私はすぐにレイトの体調を確認する。



「レイト?レイト、大丈夫?!」

「あー、あー。はい、大丈夫みたいです。お嬢様。心配をかけてすいません」

「いいのよ、レイト。あなたの声がまた聴けてよかったわ…」

「お嬢様、そのことなのですが…」



レイトは私に相談する。私はその内容に驚くが、即座に頷いた。

そして、レイトは三曲目の楽譜を急いで修正することになった。

私はその間に気分を落ち着けるために鍵盤の下に来ていた。

先ほどの騒動で、母が信頼できる護衛をレイトにつけてくれた。

レイトの修行相手のお師匠様だ。


私は気分を落ちつけるために鍵盤に触る。

鍵盤を鳴らすと『違うでしょ』と言われているような気がした。

『あなた』も私と同じなのね?

私は『彼女』に確認するように、鍵盤を弾く。

そして、感情を乗せる。もはやかき鳴らすに近い。

『彼女』が慌てて私を止める。

その感情は本番にぶつけなさい、と言っているようだ。

私は『彼女』の言う通りにすることにした。

この感情は犯人にぶつけないといけない。




本番直前にだが、修正を入れた楽譜を渡される。

私はそれを確認し、彼に頷く。

大丈夫。今の私になら出来る。

『彼女』がいる。彼もリードしてくれる。

私は、私たちならきっと大丈夫。




そして、最後の舞台に上がる。

最後の相手は、ジーニア伯爵家の二人のようだ。

二人はどこか焦りを感じさせる演奏をしていた。

これなら余裕だ。

私とレイトなら…!


私たちは舞台に上がる。その横をすり抜ける彼ら。

「ざまあみろ」

と、小声で呟いてきた。


だが、私はその言葉に視線を向けるが…

レイトに言われた通りに『小物』の言葉を無視した。

私は私の演奏をするだけだ。『彼女』が引っ張ってくれる。

大丈夫。

私たちの舞台が始まる。


レイトが歌いだす。

最初は歌声だけ。観客がジッと聴いている。

そこへ、私が鍵盤をかき鳴らす!

始まる私たちの演奏。

私『たち』の激しい感情を操作するように、レイト『たち』が導いてくれる。


そして、二人で歌う。

レイトの美声を支えるように、寄り添うように私の声が重なる。

観客が見える。観客が手拍子を送っているほどだ。

ここでレイトが足で舞台を叩く。まるで観客に『乗れ』と言っているかのようだ。

観客もつられていく。会場が一体感に包まれる。

先ほどまで、苦々しい顔をしていた審査員ですら、手拍子を鳴らしている。

激しい演奏に耐えられなかったのか、レイトの弦楽器の弦が切れる。

それと同時に演奏は終わる。

ぴぃぃぃん、と余韻を残す弦が切れた音。それがまた趣きがあってよい。




観客が全員立ち上がっての拍手喝采。

審査員は待ち切れずに札を上げるほどだ。



私たちは優勝した。

ごめんなさい!時間が足りませんでした!

後ほど、改稿して、最終話を書き上げようと思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ