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【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
後日談、番外編

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声優執事育成計画

Side とある貴婦人


今日はどうしても必要なことがあり、貴族街から出て下町に来ています。

普段は店から店員が我が家へ訪れるのですが…

今日は物が物だけに確認にわざわざ下町に足を運んでいるのです。

相変わらず雑多な臭いがして、下町は好きになれそうにありません。


娘の教養のためと思い、音楽を学ばせることにしたのです。

そのための楽器を見繕いに来ました。

楽器は高い。とにかく高い。

音色が値段で全く違う程だ。

そのために今回は下町に来ている。


娘の感性も必要だと思い連れてこようとしたのですが、

「下町は臭いって聞いています。私はそんなとこにいきたくないです」

と、泣いて訴えるものだから、つい甘やかしてしまいました。


まあ、楽器を見るだけです。

私だけでも十分でしょう。私もホントはこんなところには来たくないですが…

店員がこちらはどうかという。最新の楽器のようだ。

ただ、最新だと言うのに、人気が出ないようだ。

パッと見では、白と黒の歯が並んだものに見える。



「音はいいんですが、何分場所をとるもので人気が出ないんですよ…」

「そう。値段はいくらになるの?」

「物はいいんで、このくらいかと…」


「…随分するのね。音を聞いてもいいかしら?」

「もちろん、いいですよ。それが購入判断になりますからね」

「この白と黒の歯を押せばいいのね?」


「はい。職人たちは『鍵盤』と呼んでいるものです」

「『鍵盤』ね。響きのいい名前ね」

「ええ。彼らも気に入っているそうです」



そんな話をしながら、私は『鍵盤』を押していく。

音色を一つずつ確認する。たしかに音色はいい。

だが、これを教える家庭教師が見つかるかがわからない。

値段のことも考えて、私は断念する。



「これを置く場所も問題ないし、音はいいのだけどね…」

「気に入りませんでしたか…?」

「これを教えられる人はいないんでしょう?そう考えるとね」


「そうですね。なにせ最新の楽器ですからね。

値段も値段ですし、これを習熟してる者はいませんでしょう」

「でしょうね。ほかのものを見せてちょうだい」

「はい、こちらなどはいかがでしょうか?」



私は娘が持てる楽器を探したが、どれも娘のイメージに合わない。

音ですら娘に合わないのだ。

本当はあの『鍵盤』がイメージに一番ぴったりなのだ。

だが、教える者がいないというのが痛い。

勢いで購入して、返品と言うことになったら目も当てられない。

裕福だと言っても、無駄な買い物はしたくないのだ。




結局、この店で購入することはなかった。

次の店へと向かおうと、馬車に乗る直前に見てしまったのだ。

歩いていたと思ったのに、前のめりに倒れる小さな子供の姿を。


その姿が私のイメージに引っかかってしまい、

「奥様!?」

と、止める声も振りきって、その子の下に向かう。


私はその子の下に移動していた。

よく見ると、獣の耳と尻尾が生えている。

この子は『獣人』だ。それも珍しい『紫狼族』だ。

『紫狼族』は手先がとても器用な一族だと聞いている。

しかし、随分とやせ細っている。

年齢は娘と同じか、一つくらい上だろうか?


私はその子を抱き起し、意識の確認をする。

こちらに目を向ける子供。

綺麗。とても綺麗な目をしている。

その瞳は濃く明るい紫色をしていた。

この子は、このままいけば美しく成長するわ。


だけど、今の状態では死んでしまうわ…

私はここであることを思いつく。

そのためには、確認することがある。



「あなた、大丈夫?」

「あ、俺、倒れたのか。アンタは誰だ…?」



合格だ。私の『耳』に間違いはない。

このままでもいい。

だが、きっと声変わりをしても、素晴らしい『声質』の持ち主だ。


私は彼を本格的に雇うことを決意した。

そのためには身綺麗にしてもらわなきゃね。

服も用意しましょうか。


しばらくは私付きにして、将来的には娘についていてもらいましょ。

娘を娶ってくれてもいいわよ?あなたにその覚悟があるのならね?

さあ、忙しくなるわよ!



「ピュレット。この子を雇うわ」

「は?今なんと?」

「この子を雇うと言ったのよ。

まずは連れ帰って、身綺麗にして栄養を与えて、健康状態の確認かしらね」


「本当にそのような者をですか?」

「ええ、この子は逸材だわ。きっと将来大きなことを成してくれるわ」

「わかりました。奥様がそこまでいうのであれば…」



どうも疑わし気な視線を向けているが、この子は可能性の塊よ?

あなたが気づけないほどのね。

まあ、私もまだ把握しきれていない才能があるかもしれないけどね。




その後、この少年を連れ帰り、身綺麗にさせて食事を与えた。

さすがにまだマナーをとやかく言うつもりはない。

健康になってくれなければ、今は困るのだ。



「あ、ありがとうございます。『奥様』こんなによくしてくれて…」

「あら、もう『奥様』だなんて言葉遣いができるのね?

誰かに教わったのかしら?」

「はい、あちらの方が…」


「ああ、ピュレットね。しばらくは彼について物事を教わりなさい」

「はい、奥様」

「私も時間が取れたら、あなたの様子を確認します」



旦那様が帰ってきたので、事情を説明する。

旦那様も少年のことを気にかけてくれるようだ。

子供に優しい旦那様で嬉しいわ。

私が育てて、娘が育てて、あなたにきっと恩返しさせてみせるわ!



二か月後、私はお茶会にあの子、レイトを連れていく。

ご婦人方が驚く。

それはそうだ、私がまだ少年の、

それも『獣人』の執事見習いを連れているからだ。

基本的に彼ら『獣人』は下に見られがちだ、特に貴族には。

だが、私は胸を張り堂々とこの場にレイトを連れて現れたのだ。


その様子にご婦人方の一部が何かに気付いたようだ。

そして、自身の考えと私の真意を確かめるように質問をする。



「ゼフィール伯爵夫人、なぜそのような子をこの場に?」

「この場に『こそ』、相応しいと思って連れてきたのですよ」

「それほどの逸材なのですか?」


「ええ。それほどです。まずは見てください、この子の瞳を」

「まあ、なんて美しい色なのでしょう」

「そうですわね。吸い込まれそうになるほど、濃い紫ですわ」

「その割には明るく主張していますわね、この子の瞳は」


「それから、この子の『声』ですわ。

みなさんに一曲歌ってあげなさい。レイト」

「はい、奥様。それでは、失礼して…」



『~♪』



「これは…」

「なんて綺麗、それでいて美しい」

「残念なのは、これを彩る音楽がないことですわね…」



レイトが一礼する。まだ所作や仕草に緊張が見られる。

それをご婦人方に気付かれ、指摘され修正される。

これで、彼はこのお茶会に『認められた』。

数々のご婦人方に指摘されて、顔を青くしているようだが、安心なさい。

彼女たちはあなたを認めて、上へと導こうとしているのです。

大丈夫。あなたの謙虚さなら、それを受け止められるわ。


そのとき、一人のご婦人が楽師を連れてきたという。

先ほどの歌をもう一度歌ってほしいという。

私はもう一度、レイトに歌わせた。

のだが、彼は途中で歌うのをやめてしまった。

皆が不思議そうな顔する中、

彼は楽師の下に向かい、驚くことに楽器の調律部分を弄り始めたのだ。



「こうですかね?あ、違った。こっちにかな?」

「な、何をするんだ!?この『獣人』!!」

「あ、ご、ごめんなさい…」


「お黙りなさい!今はレイトに任せるのです」

「奥様…」

「さあ、レイト。あなたの思ったようにしてごらんなさい」


「はい、奥様!…ええっと、ここはこのくらいかな?こっちはこの程度っと…」

「一体何をしているんですの、彼は…?」

「さあ、私にはわかりません」



レイトが突然楽師の楽器に触れ、調律しだしたときは驚きました。

彼は『獣人』。だからこその、音の違いに敏感に気づけたのかもしれない。



「これでどうかな?」



『~♪』



「レイト?!あなた、楽器が弾けるのですか?!」

「いえ、見様見真似ですけど…」

「まさか、そんな馬鹿な…」

「音を聞いて瞬時に調律、更には見様見真似で楽器を弾いて見せる能力」



「これは私が思った以上の拾い物だったのかもしれませんわね…」



「素晴らしいですわ!レイトさん!!うちの子になりませんか?」



ここで無粋な声があがる。

我が家とは、派閥的にやや敵対よりのジーニア伯爵夫人がレイトを欲しがる。



「あなたは執事見習いという立場に満足しているの?

我が家なら養子にしてあげてもよくってよ?」



「奥様…」

「レイト。あなたの意思を聞かせてあげなさい。私のことは気にせずに」



私はレイトを信じて、返答させることにした。

ここで彼が離れても、私が彼を拾ったというのは公然の事実となるからだ。

しかし、彼は…



「大変ありがたいお話ですが、お断りさせていただきます」

「なっ!?」

「私はまだ奥様に拾ってもらった大恩を返せていません。

そのため、今の私にそのような自由は必要ありません」


「レイト…」

「美しいですわ」

「ええ。なんという忠誠心」

「その心意気が気に入りました」


「それに比べて、ジーニア伯爵夫人の無粋さ」

「際立っていましたわね」

「浅ましいにもほどがありますわ」

「恥ずかしくないのかしら?」




「~!私はここで失礼させていただきますわ!!」




ジーニア伯爵夫人が出ていかれます。

これは帰ったらレイトには、ご褒美が必要かもしれませんわね。

いえ、それも必要ですが、これで『あれ』を購入する目途が立ちました。

娘のためにも、きっとなるでしょう。


そういえば、もうすぐ祭りがありましたわね?

ふふっ、二人で舞台に上がってもらいましょうか。

とても楽しみですわね…!

この後にたぶん三話ほど用意します。

まとめて投稿したいので、もう少しお待ちください。

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