帝国の罠
Side 帝国
はっはっは!
怠惰で馬鹿になってしまった皇帝陛下も、さすがに激怒していたわい!
これで戦争が始まるぞ!
あの国が手に入るぞ!!
王国に流れた自国民が、王国兵により殺されていると進言したのだ。
だが、死んでいった国民なぞ、我が帝国の貧民街の汚物だというのに!
それに殺したのは、ほかでもない!帝国兵だというのに!
はっはっは!
おかしくて笑いが止まらんの!!
死んだのを奴らのせいにできて、奴らに向ける顔がにやけそうになった。
とっさに悲しむふりをして、顔を伏せてにやけ顔を隠してしまったわい!
さあ、帝国の汚物をもっと送り込もう!
帝国兵が残虐に処分してくれようぞ!
たとえ帝国兵が捕まっても、毒で死ぬ!
帝国兵もお前たちが殺したのだ!と責める口実になる!
もう、この流れは止まらんぞ!!
互いに憎みあえ!恨みあえ!殺しあえ!
たとえ血が流れようとも、流れる血はお前たちの方が多いのだ!
はっはっは!
綿毛のような小さな白い鳥がジッと見ていることにも気づかずに…
帝国の大臣は笑い転げていた。
Side 王国
「父上!このままでは奴らの思うつぼ!どうにか手を打たねば!」
「アレクか。だが、どうしろというのだ。
奴らの兵を捕まえても死ぬ。奴らの民を保護しようとも、奴らに狙われ殺される。
命を何とも思わぬ奴らだぞ」
「ですが!このままでは一方的に戦争を仕掛けてきます!」
「戦争を止める流れには、もうならぬ。互いの国民ですら悪感情を抱き始めた。
兵もこのまま民に煽られ始めるだろう」
「このままでは、多くの血が流れるっ!
あの帝国の豚大臣めっ!ひたすらに皇帝の怒りに火をくべおってっ!」
「この話し合いもよくもった方じゃ。
奴らのが動くのは早いじゃろう。だが、我らも負けてはおらぬ」
「くそっ、こんなはずじゃなかった!こんなはずでは…
どうして、お前の初陣がこんな誇りもない戦いにっ!
…すまぬ、すまぬっ!コルネリウスっ!!」
そんな悲壮な決意を固めようとする彼らの前に、一人の人物が突然現れる。
優雅に、それでいて大胆で豪奢な赤いドレスを着た女性だ。
「状況はおおむね確認できています。密約により、国に手を差し伸べましょう。
流す血、流れる血は最小限に抑えてみせます。
このような無益な争いを楽しむ帝国の豚には鉄槌を…
怠惰に飲まれた皇帝も元に戻して見せましょう」
「アレクか?」
「いえ、まだ相談すらも持ちかけておりませぬ。どうして?」
「このままでは貴重な初陣で大切な弟が悲惨な目に合うと思いましてね?
私、これでも弟思いなのですよ?」
「そうか、助かるよ。ディーネ」
「それと、少々見ていて、聞いていて、不愉快でしたからね。あの豚大臣」
「む?お前、国同士の会議を覗いておったのか?」
「そちらも見させていただきましたが、別件です」
「もはや、お前たちの目や耳はどこにでもあるな…」
「ふふっ、可愛い綿毛鳥たちのおかげですわ。
お兄様にも少しお分けしましょうか?」
「それも妖精なのだろう?いいのか?」
「それが、私の設定ミスで大繁殖してしまったのです。
地下に溢れそうなので、現在、地上にかなりの数を放っているんですの」
「なるほど、それでか。ふふっ、私にも分けてもらえるのか?」
「ええ、ええ!助かります!ホントに助かります!」
「餌は別にいらぬのだろう?」
「ええ、別に食べずとも生きていけます。
嗜好品として、ナッツ類を与えていただければと思います」
「わかった。そのように調教しよう」
「別に、おしゃべりしてくれますわよ?」
「お前、どういう存在を創ったのだ…」
「ちょっと高性能な子が欲しいなって思っただけですわっ」
「まったく…」
こうして、密約により国を陰から手助けすることになった。
とは言っても、帝国には乗り込む気満々だけども。
皇帝陛下の病状も見ないとだし…
もう帝国の範囲まで余裕でコアの範囲なんだよなあ。
年々、地下から領土を広げてるんだよね、あのダンジョン。
どこまで広がるかな?惑星全域まで行けたら、旅行できるかな?
それはそれで楽しみだなーと考えて、二人の前を真面目な顔で去る。
戦争になったのは、この会話の数年後だ。
どちらの国も、限界まで溜めたものを一気に吐き出すという最悪の形になった。
最初に動いたのは、帝国だった。
帝国の出兵に合わせて、こちらも軍を展開。
その中には、最愛の弟コルネリウスの姿もあった。




