デート、最高の夜景
夕食を食べにと急いでドールの下に向かった俺たちだったが…
すでにそこには、店の前でドールが落ち込んでいた。
俺たちが来たことに気付いたドールの顔がパアッと明るくなる。
いや、ホントに、マジでごめん。
あんなにメダルゲームに夢中になるとは思わなかったんだ。
「遅くなって、ごめん!夕食を頼めるかい?」
『はい!はい!マスターカオル、もう、来てくれないのかと思いました…』
「いや、マジで、その、ごめんなさい…」
『いえ、きっと、私には言えない事情があったのでしょう。今温めますね』
やべええええ!メダルゲームに夢中でしたって言える空気じゃないよ!!
アカネも俺も冷や汗だらだら…
話題、話題、そうだ!料理の話題!
「たしか、鉄板料理に挑戦してくれたんだよな!
ど、どうだ?うまくできそうか?」
『はい、可能な限り、時間いっぱいまで練習していました!』
「うぅ、苦しい…」
「もう、食えない…」
「我々は、犠牲となったのだ…」
聞くんじゃなかったよ!健気!この子、超健気!俺泣いちゃう!!
しかも、例のダークエルフ三人組がはちきれんばかりの腹を抱えている…
す、すまん!お前らにまで被害を出してしまって…
今度、新作ゲーム作っておくから、許してくれ!
アカネがうわぁって言いたそうな目でこっちを見てくる。
やめて、今の俺にその精神攻撃は効くからぁ!!
と、とにかく会話を続けよう…
てか、個体差があるのかな?
このドールは、他のドールに比べてやたら身長が低いな。
ドールちゃんって感じだ。
ドールちゃんは鉄板が温まってきたのを確認している。
「そ、そうか!期待できそうだな!」
『はい!待っていてくださいね!!そろそろ温まってきたかな?』
そういって、牛脂をじゅううううと焼くドールちゃん。
「うわぁ、もう、この音だけでよだれ出る…」
『マスターアカネ、まだまだこんなものじゃないのですよ?』
『では、こちらに用意したお肉があります。塩コショウを両面にっと…』
「なっ、なにそれ!高級店でしか見ないような分厚いお肉!?」
『はい。こちらはマスターカオルに用意してもらいました!では、いきます!』
「絵面の暴力がやばい…!」
『両面がこんがりと焼けたとこで、弱火ゾーンに移動してフランベです!
そして、蓋をします』
「わぁお、これはすごく期待できそう…」
『ここで、私は脂がもったいないと思いました。
なので、この脂を使ってガーリックライスを作りたいと思います。
ちょっと重たいかもしれませんが対策は考えているので…、いきます!』
見事なへら捌きで、にんにくを刻み、焼く。
そこにライスを加え、綺麗に混ぜ合わせる。
脂っこそうって感じるけど、俺たちの身体は若い。
これくらいは平気だ。
ここで弱火ゾーンに置いていた肉が中まで火が通ったようだ。
専用の長ナイフ?でスパッスパッと切り分け、目の前の皿に置いてくれる。
『まずはお肉を堪能あれ!』
「お、おう…」
「こ、これは、よだれが…」
一口食べる。まず感じるのが、柔らかさだ。
なんだこれ、なんだこれ!?焼いた肉なのに、すごい柔らかい!
そして、噛んだ瞬間に肉汁がじゅわっと出てきた!
これがテレビで食べているようなお肉かーと感心する。
てか、フランベしたからか、その香りがとてもいい!
『二口目の前に、ガーリックライスも食べてみてください』
「ごくり!これも美味そうだったんだよな…」
「うん、あの調理を見てたら食べたくてたまらない…」
「うっま!?この脂っこさがいい!」
「ニンニクの香りが豊かでいいわね!」
『それでは、続けて二口目をどうぞ』
「あー、なんだろ?
ガーリックライスの脂っぽさが肉汁で流されて、ちょうどいい塩梅になる?」
「たしかに?なんだか不思議」
『ここで、出汁で淹れたほうじ茶があります!』
「ま、まさか!?」
「お茶漬けにするの!?」
「はい、お肉を少しだけ細かく切りますね」
「ぜ、贅沢なお茶漬けだー!」
「これはやばいわね…」
『では、ご賞味あれ!』
「ほうじ茶のおかげで、急にさっぱりして食べられる!」
「そうね。脂は摂取しているはずなのに、さっぱりしているわ…」
『…いかがでしたでしょうか?』
「美味しかったよ、満足だ!」
「ええ、とても美味しかったわ。
でも、量はもうちょっとあってもよかったんじゃ?」
「ああ。
それはこのあとの夜景見るためにペガサスに乗るからな。
それのせいで、セーブしておいた方がいいかもと思ってな」
「どういうこと?」
「ペガサスに乗って、空で酔ったら大変だなって」
「あぁね…」
『と、とりあえず、デザートをお出ししますね。
ちょっとこだわったヨーグルトです』
「あら、さっぱりしたものが出てきたわ」
「これにはどんな工夫がされているんだ?」
『食べてみたら、気づくかもしれないですよ?』
「ふむ。甘い!酸味がとても少ないわ!なにこれ!
ソフトクリームみたいな乳成分の甘さよ!」
「何か混ぜているのか?うむむ、わからん!」
『まあ、企業秘密なので教えられません。えへへ!』
「ええっ!?」
「ほほお、隠すことを覚えたドールか。これも成長、かな?」
「そこに喜びを見出すのね、父性が出ているわよ?」
「ああ。俺が生み出した子たちだからな、嬉しいさ」
そして、店を出てペガサスにある地点に連れていってもらう。
遠目でもわかる、光る花の群生地が見える。
「わあ、なにこれ!花が光っているわよ!?」
「光妖精が宿る花さ、これも作りだした」
「光妖精?」
「まあ、見ていればわかる」
『うぅ~ん、ふあぁあ。よく寝た』
『フカフカベッドだったあ~』
『香りがいいわよね、蜜も美味しいし!』
「か、可愛い!って、まさか、この辺り一面の花、全部に!?」
「ああ、そうだ。さあ、ペガサスに乗ろうか?」
『あなたが僕らのマスターだね?』
『どういう用件?』
『難しいことはできないわよ?』
「ふむ。年に一度でいい。ここで飛び回ってくれないか?」
『それくらいならお安い御用さ!』
『ついでにこの花の種を運んでくるね?』
『私たちの踊りを見ていなさいよ?』
「さあ、アカネ?これが俺の用意した夜景だ」
「わぁああ!」
それは幻想的な光景だった。
地上では光妖精が寝ていた花が光り、空中では光妖精が光りながら踊って回る。
どこを見ても、小さな光が優しく照らしている。
さあ、仕上げだ。
「さあ、アカネ。俺と一緒に、今だけ魔法使いになろう!
この杖を上空に向かって振りかぶってみろ!!」
俺は今回のために用意した特殊な杖をアカネに手渡した。
普段は周辺の魔力を吸うだけの杖だが…
「わかった!えい!!わぁああ!!」
この日だけはすべての魔力を使い切るまで、色とりどりの光の花を咲かす。
「これが正しい魔法の使い方さ!いやっふぅぅぅぅ!!」
「えい!えい!えぇい!!」
「どうだ!?アカネ、楽しいだろう?」
「うん、楽しい!私、今、魔法使いになってる!!」
「どうだ?こんな夜景は?」
「うん!最高!最高の思い出になる夜景だよ!!あははは!!」
この日は、杖の魔力がなくなるまで楽しんだ。
空には色とりどりの花が咲き、空中には光妖精の光が照らされた。
地下の住民たちの目を遠くから楽しませた。
地下の住民たちはあの光の花はなんだったのかと話していた。
そして、俺たちだけの秘密となった。
だが、大抵の人は俺たちが夜のデートでもしたのだろうと気付いていた。
翌日からは機嫌のいいアカネがいた。
ストレス発散ができてよかったなと思った。
その裏で、母上が父上に甘えていた。
俺たちにあてられたようだ。
父上は喜んでいいのか、微妙な表情をしていたよ。




