75.ご挨拶に伺いました
お読み頂きましてありがとうございます。
「何処に電話しているの?」
俺がスマートフォンを操作していると皆は不思議そうな顔をする。
「事実確認のため、校長先生に電話しているんだ『あっ。すみません。学校名で退学通知が届けられたのですが・・・そうですよね。はい。調査お願い出来ますか・・・はい。よろしくお願いします。』、出張中だったみたい。悪いことしちゃった。順子さん。後で謝っておいてくれないかな。」
「どうして校長先生の携帯番号なんか、知っているのよ!」
突っ込み役は陽子さん。せっかちだなあ。
「この間、ご挨拶に伺ったときに教えて頂いたんだ。」
その時のことを思い出したのかニヤニヤだらしない顔の女性が約1名、視界の端に映る。
「ご挨拶?」
「順子さんを下さいってね。凄く驚いていたなあ。」
まあ驚くわな。生徒が教師がそういう関係あると告白しただけでもスキャンダルなのにそれが校長先生の娘なのだ。真っ青になって、順子さんに向かって口をパクパクさせていたもの。
「えっ、順子先生のお父さんが校長先生なの?」
「うん。そうみたい。」
まあ自由過ぎるとは思っていたが、調査で判明したときは妙に納得したっけ。
退学通知には公序良俗を乱したと理由が添えられていたから、俺たちのことを知った誰かが、俺だけを取り除こうと画策したとみている。
出張中の学校印は教頭先生に預けているということなので、簡単に判明するだろう。
「これから、どうするの?」
「どうもしない。これは偽物だ。明日からは普通に学校へ行くよ。土日を挟んだけど、2日も休んだからね。取り戻すのが大変そう。あとは母さんへの言い訳だな。」
退学のことも伝えるとなると芋づる式に校長先生へ会ったことも話さなきゃいけない。順子さんとの関係も聞かれるだろうし、面倒だな。
「トモヒロ。母さんの説得は手伝わないぞ。」
親父に視線を向けるとすげない答が返ってきた。
「ふうん。浮気がバレてもいいんだね。陽子さん。親父が貢いだホステスはまだ銀座に居る?」
「居るわよ。どうするの?」
「買収できる女性「わかった。解ったよ。偽証までさせるなんて酷い息子だな。」」
余りにも時期がギリギリ過ぎるのだ。美人局から解放されたホステスと何も無かったとは思えない。双方から詳しく聞き出せば重なっている期間がありそうだと思ったのだ。
「偽証なんてさせようとは思ってないさ。詳しく聞きだすのに、お小遣いを弾むくらいのことは当たり前だよ。」
「解った。解ったよ。説得は任せろ。最悪、婚姻届の親権者欄にはオレが署名してやる。だから穿り返すのは止めてくれ。」
やっぱり後ろ暗いところがあるらしい。俺の母親から叩き出されたときに泣き付きにいったのだろう。このネタは当分使えそうだ。
☆
「やっと出て来たのね。貴方の居ない間に大変なことになっているわ。」
いきなり駅前で五代さんに捕まった。詳しく聞きだすとやはり上条さんのことだった。学校を辞めると言い出したらしい。
俺が倒れたことが自分の所為だと思い込んでいるらしい。
「そんなこと、一言だって言ってないのに。」
どちらかと言えば、実の父親と暮らすことになったとき、小さい頃にボディーガードの男性と暮らしていたことまで、過去のことをペラペラ喋った俺が悪いのだ。
それまで俺の父親の命を奪ってしまったと後悔していた彼女を安心させてしまったのだろう。もちろん父親同然に暮らしていたボディーガードのことを詰りたい気持ちはあった。
でも今の俺は『男気があって女性に優しいオネエ』だ。遠回しな表現で振ろうと画策することはあっても、面と向かって詰ることなどできるはずが無いのだ。
倒れるなんて醜態を演じてしまった俺だが彼女のことは受け入れると決めたのだ。裏に何があっても一度決めたことを撤回するなんてありえないのだ。
「やっぱりね。」
「アキエちゃん。上条さんの家は知っているよね。一緒に連れていってくれないかな。アタシが説得してみる。」




