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第9話 魔王に呼び出された清掃員、話より先に玉座を掃除してしまう

ついに現魔王ヴァルグレンと対面。

レンは余計なことをしないよう言われました。

たぶん無理です。



魔王城。


最上階。


玉座の間。


俺は巨大な扉の前に立っていた。


「……でかいな」


扉だけで。


俺の身長の5倍くらいある。


両側には。


全身鎧の兵士。


その中央。


ゼルガが立っている。


「レン」


「はい」


「中に入ったら」


ゼルガが。


ものすごく真剣な顔で俺を見る。


「絶対に余計なことをするな」


「余計なこと?」


「掃除だ」


「掃除?」


「するな」


「でも俺、清掃員ですよ?」


「知ってる!」


なんで怒る。


ガルドも。


隣で苦笑していた。


「レン」


「はい」


「今回は本当にやめとけ」


「そんなに?」


「相手は魔王陛下だぞ」


そうだった。


この城で一番偉い人。


現魔王。


ヴァルグレン。


俺を呼び出した本人だ。


「分かりました」


「本当だな?」


「多分」


「多分!?」


扉が開いた。


ゴゴゴゴゴ……。


玉座の間。


広い。


めちゃくちゃ広い。


天井は高い。


巨大な柱。


赤い絨毯。


左右には。


何十人もの魔族。


その奥。


階段の上。


黒い玉座に。


1人の男が座っていた。


赤い瞳。


黒い角。


長い黒髪。


纏っている魔力。


他とは全然違う。


==========


《ヴァルグレン》


種族:魔王


LV:185


総合戦闘力:390000


==========


「185……」


強い。


今まで見た中で。


一番高い。


俺は。


==========


LV:78


総合戦闘力:182400


==========


まだ負けている。


ちょっと安心した。


「レン」


ゼルガが小声で言う。


「頭を下げろ」


「あ」


忘れてた。


俺は慌てて頭を下げる。


「清掃員のレンです」


玉座から。


低い声が響く。


「顔を上げろ」


俺は顔を上げた。


魔王ヴァルグレンが。


こちらを見ている。


「お前が」


一拍。


「地下の異常魔力反応を発生させていた者か」


「たぶん」


「たぶん?」


「掃除してただけなので」


玉座の間が。


ざわついた。


「掃除?」


「地下の反応が?」


「まさか」


魔王が手を上げる。


一瞬で静かになった。


「報告を聞いた」


ヴァルグレンが続ける。


「地下牢を清掃」


「はい」


「古代魔王の玉座を浄化」


「はい」


「秘宝庫を開放」


「はい」


「古代封印区画を発見」


「はい」


「LV150の古代殲滅兵を無力化」


「掃除しました」


また。


ざわついた。


「掃除だと?」


「古代殲滅兵を?」


「何を言っている?」


俺も。


そう言われると思った。


でも。


掃除しただけだ。


ヴァルグレンが。


俺をじっと見る。


「レン」


「はい」


「お前は何者だ」


来た。


最近。


よく聞かれる質問。


俺は答える。


「清掃員です」


沈黙。


長い。


ものすごく長い。


「……そうか」


魔王が。


なぜか。


少し疲れたような顔をした。


その時。


俺は気づいた。


玉座。


ヴァルグレンが座っている。


現魔王の玉座。


その。


右側。


肘掛けの下。


「……汚れてる」


俺は呟いた。


「ん?」


ヴァルグレンが眉を動かす。


「いえ」


気になる。


黒い染み。


小さい。


でも。


一度気づいたら。


もう。


ものすごく気になる。


「レン」


ゼルガが。


嫌な予感を察した顔をする。


「見るな」


「何をです?」


「玉座だ」


「でも」


「でもじゃない」


「汚れてます」


「言うと思った!」


ガルドが。


小さく頭を抱えた。


ヴァルグレンが。


自分の玉座を見る。


「汚れ?」


「右側です」


俺は指を差した。


「肘掛けの下」


魔王が。


少し身体をずらす。


「ああ」


あったらしい。


「確かに」


「掃除していいですか?」


「レン!」


ゼルガが叫ぶ。


でも。


ヴァルグレンは。


少し考えた。


そして。


「……やってみろ」


「陛下!?」


「地下で起きたことを」


ヴァルグレンが言う。


「この目で確認したい」


「分かりました」


俺は。


アブソリュートモップを持つ。


階段を上がる。


魔王の目の前。


玉座。


近くで見ると。


やっぱり。


かなり魔力が濃い。


==========


《清掃対象を確認》


《現魔王の玉座》


推奨清掃レベル:300


==========


「300?」


また増えた。


「どうした」


ヴァルグレンが聞く。


「なんでもないです」


俺は。


汚れにモップを当てる。


そして。


軽く。


ひと拭き。


シュッ。


ピロロロロロロロロン!


==========


《現魔王の玉座を清掃》


《魔王級残留魔力を吸収しました》


MP+180000


==========


「……18万?」


玉座の間。


空気が。


震えた。


ドンッ!


「なっ!?」


魔族たちが。


一斉に身構える。


ゼルガが。


目を見開く。


ヴァルグレンも。


玉座から立ち上がった。


ピロリン!


==========


《大量魔力吸収を確認》


LV78 → LV91


==========


「13上がった」


「今」


ゼルガの声が震える。


「何レベルだ」


「91です」


「……91?」


さっきまで78。


そして。


魔王。


185。


まだ遠い。


そう思った。


だが。


次の表示。


==========


《固有スキル獲得》


《王権耐性》


王・魔王・皇帝級存在からの威圧・支配・精神干渉を無効化。


==========


さらに。


==========


《現魔王の魔力を吸収したことにより》


《魔王威圧》が進化しました


==========


「進化?」


==========


《魔王威圧》


↓


《覇王威圧》


==========


その瞬間。


ドンッ!


俺を中心に。


何かが。


広がった。


「ぐっ!?」


左右の魔族が。


一斉に膝をつく。


「え?」


ゼルガも。


片膝をついた。


ガルドも。


壁に手をついている。


「なんで!?」


俺は。


何もしてない。


==========


《覇王威圧》


無意識発動中


==========


「止まれ止まれ!」


俺が慌てる。


「解除!」


ふっ。


空気が戻る。


魔族たちが。


荒い息をつく。


そして。


玉座の間。


全員が。


俺を見ていた。


魔王ヴァルグレンだけが。


立っている。


その顔から。


さっきまでの余裕が。


消えていた。


「レン」


「はい」


「お前」


一拍。


「本当に何者だ」


また聞かれた。


だから。


俺は。


また答えた。


「清掃員ですけど」


誰も。


納得してくれなかった。

お読みいただきありがとうございます!


魔王に呼び出されたレン。


そして当然のように、魔王の玉座まで掃除しました。


LV78 → LV91。


さらに《魔王威圧》が

《覇王威圧》へ進化。


次回――

魔王城中に「清掃員には逆らうな」という噂が広がりました


本人は何も知りません。

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