第8話 レベル150の古代兵器をモップで掃除したら、一撃で終わった
LV150。
普通なら戦う相手です。
でもレンのステータスには「清掃対象」と表示されています。
闇の中。
巨大な何かが動いた。
ズン。
ズン。
ズン。
一歩ごとに。
床が揺れる。
やがて。
その姿が見えた。
全身。
黒い鎧。
身長は3メートルを超えている。
両腕には巨大な刃。
赤い目。
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《古代殲滅兵・バルガス》
LV150
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「……でかいな」
ゼルガが俺の前へ出る。
「レン。下がれ」
「でも掃除対象って」
「忘れろ!」
無理だ。
表示されている。
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《清掃可能部位》
頭部
胴体
右腕
左腕
脚部
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全部。
掃除できる。
「かなり汚れてますよ」
「見れば分かる!」
バルガスの鎧には。
黒い泥。
赤黒い血。
何か分からない粘液。
確かに。
相当汚い。
『侵入者』
バルガスが喋った。
『排除する』
「来るぞ!」
ゼルガが大剣を構える。
バルガスが。
一瞬で距離を詰めた。
速い。
あの巨体で。
速すぎる。
巨大な刃が振り下ろされる。
「レン!」
俺は。
反射的に。
モップを振った。
シュッ。
刃と。
モップがぶつかる。
次の瞬間。
パキン。
「え?」
バルガスの刃が。
折れた。
沈黙。
ゼルガ。
ガルド。
バルガス。
俺。
全員。
止まった。
「……折れた?」
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《神魔清掃具・アブソリュートモップ》
攻撃力:12000
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そうだった。
これ。
強いんだった。
『損傷』
バルガスの赤い目が光る。
『脅威度再設定』
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《バルガス》
戦闘モード移行
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「レン!」
「大丈夫です」
俺は。
モップを構える。
というか。
普通に掃除する。
「広域清掃」
ブワッ!
光が広がった。
バルガスの全身を包む。
『――!?』
黒い泥が消える。
血が消える。
錆が消える。
汚れが。
全部。
落ちていく。
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《古代殲滅兵・バルガスを清掃》
《古代呪染を浄化》
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ピロロロロロロン!
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MP+120000
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「12万!?」
ピロリン!
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LV66 → LV78
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「12上がった!」
その瞬間。
バルガスが。
膝をついた。
ズズン!
「なっ!?」
ゼルガが驚く。
『呪染……解除』
バルガスの赤い目が。
青く変わる。
『戦闘命令……消失』
「え?」
俺はモップを止めた。
バルガスが。
完全に動きを止める。
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《清掃完了》
《古代殲滅兵・バルガス》
清掃率:100%
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さらに。
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《古代呪染を完全除去》
《封印個体を正常化しました》
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「倒してない?」
どうやら。
殺してはいないらしい。
汚れと一緒に。
呪いみたいなものまで落とした。
バルガスが。
ゆっくりと頭を下げる。
『清浄者』
「はい?」
『感謝する』
「どういたしまして?」
ゼルガが。
モップを落としそうな顔をしている。
「……お前」
「はい」
「レベル150を」
「はい」
「掃除したのか?」
「はい」
「……そうか」
ゼルガが。
遠い目をした。
ガルドが肩を叩く。
「分かります」
「お前は毎日これを見てるのか」
「だいたい」
「大変だな」
何だ。
急に仲良くなってる。
その時。
バルガスの胸が開いた。
カシュン。
中から。
光る球体が出てくる。
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《清掃達成報酬》
《古代魔導核》
等級:伝説級
効果:
全能力+300
魔力回復速度+500%
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「また報酬?」
俺は球体を受け取る。
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《装備可能》
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「装備しとくか」
「軽いな!?」
ゼルガが叫ぶ。
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《古代魔導核を装備しました》
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ピロリン!
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総合戦闘力が大幅に上昇しました。
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「総合戦闘力?」
新しい表示が出る。
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レン
LV78
総合戦闘力:182400
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「18万……」
多いのか?
少ないのか?
基準が分からない。
俺はゼルガを見る。
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ゼルガ・グランツ
LV82
総合戦闘力:42600
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「…………」
見なかったことにしよう。
「レン」
「はい」
「今、なんで目を逸らした」
「なんでもないです」
「絶対何か見たな?」
その時。
階段の上から。
兵士が走ってきた。
「ゼルガ様!」
「どうした」
「魔王陛下から緊急命令です!」
ゼルガの表情が変わる。
「陛下から?」
「はい!」
兵士が。
俺を見る。
「地下で異常魔力反応を発生させている人物を――」
一度。
息を飲む。
「直ちに玉座の間へ連れて来い、とのことです」
沈黙。
ゼルガ。
ガルド。
兵士。
全員が。
俺を見る。
「……俺?」
「お前以外に誰がいる」
ゼルガが即答した。
「でも」
俺は。
まだ汚れている封印区画を見る。
「掃除途中なんですけど」
「魔王陛下を待たせるな!」
「じゃあ、すぐ戻ってきます」
俺はモップを持つ。
魔王。
この城で一番偉い人。
どんな人なんだろう。
まあ。
怒られたら。
謝ればいいか。
俺はまだ。
知らなかった。
この時。
魔王城で。
俺のことを。
『地下に現れた正体不明の怪物』
と呼ぶ者が。
急激に増えていたことを。
お読みいただきありがとうございます!
LV150《古代殲滅兵・バルガス》。
戦闘ではなく、まさかの「清掃」で完全無力化。
レンのLVは78。
そして総合戦闘力は、LV82の魔王軍幹部をすでに大きく上回りました。
次回――
魔王に呼び出された清掃員、玉座の汚れが気になって仕方ない
いよいよ現魔王と対面です。




