第10話 魔王城中に「清掃員には逆らうな」という噂が広がりました
魔王との謁見翌日。
レンはいつも通り清掃へ向かいます。
城の住民は、もういつも通りではありません。
翌朝。
俺は。
普通に仕事へ向かっていた。
「おはようございます」
廊下にいた兵士へ挨拶する。
「ひっ!」
兵士が。
壁際に飛び退いた。
「……?」
俺は首を傾げた。
「おはようございます」
別の兵士。
「お、おはようございます!」
直立不動。
「なんで敬礼?」
「い、いえ!」
変だ。
さらに歩く。
厨房前。
魔族の料理人。
俺を見る。
包丁を落とした。
カラン。
「レン様!」
「様?」
「きょ、今日もお勤めご苦労様です!」
「どうも」
何なんだ。
俺は。
清掃部へ向かう。
すると。
廊下の角。
若い魔族が2人。
小声で話していた。
「来たぞ」
「本当にモップ持ってる」
「目を合わせるな」
「昨日、玉座の間で幹部全員を跪かせたらしい」
「魔王陛下にも威圧を?」
「いや、陛下だけは耐えたらしい」
「じゃあやっぱり魔王級じゃねえか」
「しかも本人は清掃員を名乗ってる」
「怖すぎるだろ」
俺は。
立ち止まった。
「……俺の話?」
2人が。
ビクッ!
「違います!」
「何も話してません!」
走って逃げた。
「なんなんだよ……」
清掃部。
ガルドが。
机に突っ伏していた。
「おはようございます」
「……おう」
「なんか今日、みんな変じゃないですか?」
「お前のせいだ」
「俺?」
「昨日の話が」
ガルドが顔を上げる。
「一晩で城中に広がった」
「昨日?」
「玉座の間だよ!」
ああ。
あれか。
「ちょっとスキルが暴発しただけですよ」
「その『ちょっと』で魔王軍幹部が膝ついたんだよ!」
「でも魔王は平気でした」
「比較対象が魔王陛下なのがおかしいんだ!」
また怒られた。
ガルドが。
紙の束を俺へ渡す。
「ほら」
「何です?」
「今日の清掃予定」
見る。
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本日の清掃区域
・西棟第2廊下
・武器庫前
・訓練場
・魔獣厩舎
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「結構ありますね」
「いつもなら4日分だ」
「今日やります」
「知ってた」
俺は。
アブソリュートモップを担いだ。
「じゃあ行ってきます」
「レン」
「はい?」
ガルドが。
妙に真剣な顔をする。
「頼むから」
一拍。
「城を壊すなよ」
「掃除するだけですよ」
「それが一番怖いんだよ!」
まず。
西棟第2廊下。
シュッ。
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《広域清掃》
MP+8420
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武器庫前。
シュッ。
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MP+11200
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ピロリン!
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LV91 → LV93
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「順調」
そして。
訓練場。
そこには。
何十人もの魔王軍兵士がいた。
俺が入った瞬間。
静かになった。
「……こんにちは」
「「「お疲れ様です!!」」」
声が揃った。
「なんでそんな緊張してるんです?」
誰も答えない。
俺は。
床を見る。
汚い。
泥。
汗。
武器の傷跡。
血。
「掃除しますね」
兵士たちの顔色が変わった。
「ぜ、全員退避!」
「急げ!」
「邪魔するな!」
「清掃が始まるぞ!」
一斉に。
端へ寄った。
「別にそこまでしなくても」
まあ。
やりやすいからいいか。
俺は。
モップを構える。
「広域清掃」
シュッ!
ブワアアアア!
訓練場全体に。
光が走る。
床。
壁。
武器ラック。
全部。
一瞬で綺麗になる。
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《魔王軍中央訓練場を完全清掃》
MP+64000
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ピロリン!
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LV93 → LV98
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「あと2か」
100。
なんとなく。
キリがいい。
その時。
訓練場の奥。
巨大な扉が開いた。
「ん?」
中から。
大きな魔獣が出てくる。
4本脚。
全身を黒い鱗が覆っている。
角。
牙。
背中には翼。
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《黒翼竜・グラディオス》
LV:120
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「ドラゴン?」
兵士が叫ぶ。
「まずい!」
「グラディオスが逃げた!」
「止めろ!」
竜が。
こちらを見る。
グルルルル……。
そして。
俺を見た瞬間。
動きを止めた。
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《覇王威圧》
自動判定
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「また?」
黒翼竜が。
ゆっくり。
頭を下げた。
そのまま。
地面に伏せる。
兵士たちが。
固まった。
「……服従?」
誰かが呟く。
俺は。
黒翼竜を見る。
背中。
泥だらけ。
鱗の隙間にも。
汚れ。
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《清掃対象を確認》
《黒翼竜・グラディオス》
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「あ」
ちょうどいい。
今日の予定。
最後。
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《魔獣厩舎》
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俺は。
竜へ近づく。
「ついでにお前も綺麗にするか」
兵士たちが。
ざわめいた。
「触るのか!?」
「グラディオスだぞ!」
「魔王軍でも上位騎士しか近づけないのに!」
俺は。
モップを。
背中に当てる。
シュッ。
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《黒翼竜・グラディオスを清掃》
《魔獣体内の残留瘴気を浄化》
MP+98000
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ピロリン!
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LV98 → LV105
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「100超えた」
さらに。
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《特殊条件達成》
《魔王級魔獣を服従・浄化》
《称号を獲得しました》
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《称号》
《魔獣王》
効果:
魔獣系モンスターからの好感度+500%
一定レベル以下の魔獣を自動服従。
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「……魔獣王?」
清掃員なのに。
また。
職業から離れた気がする。
その時。
黒翼竜が。
俺の足元へ。
頭を擦りつけてきた。
「おお」
意外と可愛い。
俺は頭を撫でる。
その光景を。
訓練場にいた。
数十人の兵士が。
無言で見ていた。
そして。
その日の午後。
魔王城内には。
新しい噂が追加された。
――清掃員レンには逆らうな。
――魔王軍幹部を跪かせる。
――古代兵器を一撃で止める。
――ドラゴンまで従わせる。
そして最後に。
なぜか。
こう付け加えられていた。
――機嫌を損ねると、モップで消される。
「誰がそんな噂流したんだよ!」
俺は。
初めて。
本気で否定した。
お読みいただきありがとうございます!
レン、ついにLV100を突破!
現在LV105。
さらに称号
《魔獣王》
まで獲得しました。
そして魔王城では、
「清掃員には逆らうな」
が完全に定着しつつあります。
次回――
勇者一行が魔王城へ侵入してきたので、清掃の邪魔になりました
いよいよ人間側が登場します。




