第4話 推奨清掃レベル100の玉座を掃除したら、レベルが一気に上がった
推奨清掃レベル100。
でも、汚れているなら掃除するしかない。
黒い扉の向こう。
そこには、巨大な玉座があった。
真っ黒な石で作られている。
背もたれには禍々しい角。
肘掛けには獣の頭。
どう見ても、普通の椅子じゃない。
そして。
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《古代魔王の玉座》
推奨清掃レベル:100
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「……100」
俺のレベルは6。
差は94。
普通に考えれば、触らない方がいい。
絶対に。
「レン」
後ろからガルドの声がする。
「近づくな」
「やっぱり危ないですか?」
「危ないなんてもんじゃねえ」
ガルドの顔は真剣だった。
「この魔力……俺でも近づくだけで気分が悪くなる」
確かに。
部屋の中には黒い霧のような魔力が漂っている。
でも。
俺には。
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《吸収可能》
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としか見えない。
「……掃除だけなら」
「するな」
「でも埃が」
「埃は今どうでもいい!」
ガルドが叫ぶ。
俺は玉座を見る。
確かに汚い。
座面には分厚い埃。
背もたれには黒い染み。
床にも灰のようなものが積もっている。
「これ、放置したらダメですよ」
「お前、清掃員として妙に真面目だな!?」
「仕事なんで」
俺はモップを持ち直した。
「レン!」
「ちょっとだけです」
「その言葉が一番信用できねえ!」
まず。
玉座の前の床。
ゴシッ。
ピロロロロン!
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《古代魔王級残留魔力を吸収しました》
MP+3120
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「……3120?」
いきなり。
昨日の総量を軽く超えた。
もう一度。
ゴシゴシ。
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MP+2874
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「待て待て待て」
おかしい。
完全におかしい。
ピロリン!
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《レベルが上がりました》
LV6 → LV8
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「2つ!?」
まだ床を2回拭いただけだぞ。
「レン、何が起きてる?」
「ちょっとレベルが」
「上がったのか!?」
「はい」
「掃除で!?」
「はい」
ガルドが頭を抱えた。
「もう何が普通なのか分からなくなってきた……」
俺もです。
でも。
まだ終わってない。
次。
玉座の肘掛け。
雑巾でひと拭き。
ピロロロロロン!
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《古代魔王の残留魔力を吸収しました》
MP+5210
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「5000!?」
ピロリン!
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LV8 → LV11
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「3つ上がった!」
ガルドが目を見開く。
「お前、今なんて言った?」
「なんでもないです」
「絶対なんでもなくねえだろ!」
俺は無視した。
次。
背もたれ。
ゴシゴシ。
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MP+6840
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ピロリン!
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LV11 → LV14
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「……やば」
もう。
完全に止まらない。
掃除すればするほど。
数字が跳ねる。
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MP+4912
LV14 → LV16
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MP+7330
LV16 → LV19
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MP+6021
LV19 → LV21
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「21……」
昨日まで。
俺はレベル1だった。
たった2日で。
21。
「レン」
「はい」
「さっきから何をブツブツ言ってる」
「数えてます」
「何を」
「レベルを」
「…………」
ガルドの顔が引きつった。
「今、いくつだ」
「21です」
「は?」
「21」
「朝は?」
「4でした」
「…………」
沈黙。
「嘘だろ」
「俺もそう思います」
「なんで掃除しただけで17も上がってるんだよ!」
「分かりません」
「お前、そればっかりだな!」
でも本当に分からない。
ただ。
ひとつだけ分かる。
「この玉座……まだ汚れてるな」
「お前、まだやるのか!?」
「途中でやめる方が気持ち悪いです」
「命より掃除を優先するな!」
俺は玉座を見る。
座面。
一番汚れている。
そこだけ。
黒い何かがこびりついていた。
血?
焦げ?
いや。
違う。
近づくと。
文字が出た。
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《古代魔王の呪血》
危険度:極大
《清浄化》使用推奨
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「極大?」
嫌な言葉だ。
でも。
清浄化推奨。
つまり。
掃除できる。
「清浄化」
俺が手を向ける。
淡い光が広がった。
黒い汚れが。
ジュウウウウ……。
音を立てて消えていく。
その瞬間。
部屋全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「な、なんだ!?」
ガルドが叫ぶ。
そして。
今までで一番大きな音。
ピロロロロロロロロロン!
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《古代魔王の呪血を完全浄化しました》
MP+30000
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「さん……」
俺は目をこする。
「3万!?」
ピロリン!
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《大量の魔力吸収を確認》
LV21 → LV30
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「30!?」
一気に9。
さらに。
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《特殊条件を達成しました》
《古代魔王の呪血を浄化》
《固有スキルを獲得します》
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来た。
まただ。
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《固有スキル》
《魔王威圧》
自身より大幅にレベルの低い対象を威圧する。
弱い魔物は戦闘不能になることがある。
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「魔王威圧……」
清掃員なのに。
どんどん清掃員から離れてる気がする。
いや。
元は全部掃除だ。
多分。
その時。
さらに表示が出た。
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《清掃完了率》
古代魔王の玉座
99%
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「99?」
あと1%。
どこだ?
俺は玉座を見る。
座面。
背もたれ。
肘掛け。
全部綺麗だ。
「……あ」
見つけた。
玉座の一番下。
脚の裏。
小さな黒い汚れ。
「ここか」
「レン?」
俺はしゃがみ込む。
雑巾で。
ひと拭き。
キュッ。
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《清掃完了》
古代魔王の玉座
100%
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次の瞬間。
ズズズズズズ……。
「え?」
玉座が。
動いた。
「レン、下がれ!」
床が割れる。
玉座の下から。
何かがせり上がってくる。
黒い。
巨大な。
宝箱。
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《隠し報酬を発見しました》
《古代魔王の秘宝庫》
清掃達成報酬
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「……掃除しただけで宝箱?」
ガルドが固まっている。
俺も固まった。
そして。
宝箱の蓋に。
また。
埃が積もっている。
俺はモップを見る。
「……これも掃除対象?」
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《YES》
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「だよな」
「何がだよ!?」
俺は宝箱へ近づいた。
掃除すれば。
レベルが上がる。
スキルが増える。
そして。
今度は。
宝まで出てきた。
清掃員。
思っていたより。
ずっといい職業かもしれない。
お読みいただきありがとうございます!
レベル6だったレン、玉座を掃除しただけでレベル30へ。
そして今度は、まさかの「清掃達成報酬」が出現しました。
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次回――
古代魔王の秘宝庫を掃除したら、伝説級アイテムが出てきた
清掃員、ついに装備までおかしくなります。




