第16話 王都が呪われているらしいので、出張清掃することになりました
初めての出張清掃。
行き先は人間王国の王都です。
魔王城。
会議室。
俺は。
ガルドの隣に座っていた。
「……なんで俺まで」
「原因を見つけたのがお前だからだ」
「掃除してただけですよ?」
「もうそれで全部済ませるのやめろ」
向かい。
王国調査団。
その隣。
魔王ヴァルグレン。
ゼルガ。
結構。
大ごとになっている。
テーブルの中央。
地図。
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《王都地下・封印聖堂》
汚染度:87%
推奨清掃レベル:500
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俺にだけ。
表示されている。
「封印聖堂について説明します」
大神官ローデル。
顔が。
重い。
「今から約800年前」
長そう。
「王国建国以前、この地には――」
「あの」
「何ですかな」
「掃除したら駄目なんですか?」
沈黙。
ガルド。
額を押さえた。
「レン」
「はい」
「話くらい聞け」
「でも汚染度87%ですよ」
「その87%が俺たちには見えねえんだよ!」
そうだった。
大神官が。
咳払い。
「封印聖堂には」
続ける。
「古代邪神の一部が封じられていると伝わっています」
「邪神?」
「はい」
エルナが。
資料を開く。
「近年、王都では原因不明の病、魔物の凶暴化、地下水の汚染が増えていました」
「それが」
「封印聖堂から漏れる呪詛が原因である可能性が高い」
なるほど。
汚れが。
漏れてる。
「じゃあ掃除しましょう」
「お前の結論だけ異常に早いな」
ゼルガが言った。
「でも」
俺は。
地図を見る。
「放っておいたらもっと汚れますよ?」
誰も。
反論しない。
ヴァルグレンが。
俺を見る。
「レン」
「はい」
「行くつもりか」
「仕事なら」
「王国だぞ」
「魔王城じゃないと掃除したら駄目なんです?」
考えたことなかった。
俺。
魔王城清掃部。
出張。
あるのかな。
ガルド。
腕を組み――
いや。
腕は組まなかった。
よかった。
「規則には」
書類をめくる。
「城外清掃禁止とは書いてねえな」
「じゃあ大丈夫ですね」
「そんな理由で決めていいのか?」
いいんじゃない?
大神官が。
立ち上がる。
そして。
頭を下げた。
「レン殿」
「はい」
「王国へ」
深く。
「来ていただきたい」
「分かりました」
即答。
「軽いな!?」
エルナが叫ぶ。
「だって掃除ですよね?」
「邪神の封印です!」
「汚れてるんですよね?」
「それは……」
「じゃあ掃除します」
また。
沈黙。
その日の午後。
俺は。
魔王城正門にいた。
荷物。
着替え。
雑巾。
ブラシ。
洗剤。
アブソリュートモップ。
「……洗剤いるのか?」
ゼルガが聞く。
「念のため」
「邪神相手だぞ」
「油汚れだったら困るので」
「油汚れの邪神って何だよ」
知らない。
馬車。
用意されている。
王国調査団と一緒に。
俺も乗る。
ガルドが。
見送り。
「レン」
「はい」
「頼むから」
真剣な顔。
「王都を消すなよ」
「掃除ですよ?」
「だから怖いんだよ!」
俺は馬車へ乗った。
出発。
初めて。
魔王城の外へ。
草原。
森。
川。
新鮮。
「異世界なんだな」
改めて思う。
エルナが。
俺を見る。
「今更ですか?」
「魔王城からほとんど出たことなかったので」
「あなた」
一拍。
「転生者なんですよね?」
「みたいです」
「みたい?」
自分でも。
結構。
適当だと思う。
数時間後。
街が見えてきた。
大きい。
城壁。
塔。
家。
人。
王都。
その瞬間。
俺の視界。
真っ赤になった。
「うわ」
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《警告》
《大規模汚染領域へ侵入》
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「何です?」
ダリウスが聞く。
「いや」
街。
全体。
薄い。
黒い膜。
俺にだけ。
見える。
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《王都全域》
汚染度:34%
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「……全域?」
封印聖堂だけじゃない。
王都。
丸ごと。
汚れてる。
そして。
さらに。
表示。
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《緊急清掃クエスト発生》
対象:
王都全域
推奨清掃レベル:600
達成報酬:
???
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「600」
「また何か見えてるんですか?」
エルナ。
もう慣れてきた。
「王都全体」
俺は言った。
「掃除対象みたいです」
馬車の中。
静かになった。
「……王都全体?」
「はい」
「人口80万人ですよ?」
「そうなんですか」
結構。
多い。
「時間かかるかな」
「問題そこ!?」
でも。
アブソリュートモップなら。
広域清掃できる。
試しに。
窓から。
モップの先。
少しだけ出す。
「レン殿?」
「ちょっとだけ」
「何を――」
「広域清掃」
シュッ。
ブワアアアアアア!
光。
馬車から。
広がる。
街道。
城門。
周辺の家。
一気に。
包む。
「なっ!?」
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《王都外縁部を清掃》
《汚染除去》
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MP+520000
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「52万!?」
ピロロロロロン!
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LV143 → LV168
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「25上がった!」
エルナ。
顔を引きつらせる。
「何が25?」
「なんでもないです」
さらに。
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《王都全域》
汚染度
34%
↓
31%
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「3%しか減ってない」
俺は。
王都を見る。
広い。
相当。
広い。
でも。
逆に。
少し。
楽しくなってきた。
これだけ。
掃除する場所がある。
「よし」
俺は。
モップを握り直す。
「徹底的にやるか」
エルナが。
俺を見る。
「その顔」
「はい?」
「魔王城で地下牢を見つけた時も」
一拍。
「そんな顔してたんじゃないですか?」
「さあ?」
でも。
多分。
そうだった。
王都。
人口80万。
汚染度31%。
そして地下には。
推奨清掃レベル500の封印聖堂。
仕事。
大量。
俺は。
モップを肩に担いだ。
「まず」
城門を見る。
黒い。
「入口からですね」
こうして。
魔王城の清掃員による。
王都史上最大の大掃除が。
始まった。
お読みいただきありがとうございます!
レン、ついに魔王城の外へ。
そして王都へ到着した瞬間――
王都全域が清掃対象になりました。
人口80万。
推奨清掃レベル600。
レンは現在LV168。
次回――
王都を掃除していただけなのに、住民から聖人扱いされ始めました
清掃員の知名度までインフレします。




