7.奪命の恋人たち
死刑が確定したあと、海斗は莉奈にもう一度会いたいと申し出た。
それは普通の恋人同士の別れではなかった。
共犯となった二人が、それぞれの終わりの前で、最後に向き合う時間だった。
沙也香は先に莉奈と会った。
莉奈は囚衣を着て面会室に座っていた。二十歳のころに見せていた、軽く構えるような表情はもうなかった。資料写真よりも痩せ、目の下には濃い影が落ちていた。
沙也香が最初の事件について尋ねると、莉奈は長く黙った。
「最初は、殺すなんて言っていませんでした」
声は低かった。
「お金を取るだけだと思っていました」
沙也香は何も言わなかった。
莉奈の指が、膝の上で絡まっていた。
「でも、そのあと知りました。知っていたのに、言いませんでした」
彼女は目を閉じた。
「あのときには、もう戻れないと思っていました」
沙也香は彼女を見た。
「二度目は?」
莉奈の肩がわずかに震えた。
今度は、何も知らなかったとは言わなかった。
「文香さんは、私に優しくしてくれました」
長い沈黙が落ちた。
「だから、余計に自分が許せません」
取材が終わると、莉奈は面会室から連れ出された。
一分後、同じ椅子に海斗が座った。
沙也香は彼の腕の刺青を見た。
KAITO WA IKINOKORU。
RINA。
文字はまだそこにあった。
けれど、もう誓いには見えなかった。
遅れて届いた皮肉のようだった。
沙也香は尋ねた。
「あなたは彼女を愛していたと言いました。では、あなたは彼女に何を与えたと思いますか」
海斗の指が動いた。
戒具が、かすかな音を立てた。
「俺は、莉奈と生きたかったんです」
沙也香は彼を見つめた。
「でも、あなたが連れて行った先は無期懲役でした」
海斗はすぐには答えなかった。
長い沈黙のあと、頭を下げた。
「俺が、莉奈を駄目にしました」
その言葉は、懺悔のように聞こえた。
だが沙也香には、もうその懺悔を信じることが難しかった。
すべての罪が始まる前にも、海斗は同じように優しい言葉を口にしていたからだ。
金が入ったら、一緒に帰ろう。
この件が終われば、もう大丈夫だ。
俺が生き残ったら、お前を守る。
けれど彼の言う「そのあと」は、いつも誰かの命の上に置かれていた。
海斗は莉奈の名前を腕に刻んだ。
それでも、彼女を本当に守ることは一度もなかった。
莉奈が最初に獲物を扉の前まで連れてきたとき、まだ恐怖はあったのかもしれない。
二度目には、すでに嘘を覚えていた。
それが、二人の愛が最後にたどり着いた形だった。
片方は欲を守るためだと言い換えた。
もう片方は沈黙を忠誠だと思い込んだ。
最後に、二人は互いを深い闇へ引きずり込んだ。
桃井文香が失踪した数日間、隆司は何度も彼女の携帯へ電話をかけた。
電源はずっと切られたままだった。
彼は、文香が怒っているだけかもしれないと思った。どこかで麻雀をしているだけかもしれないと思った。もう少し待てば戻ってくるのではないかと思った。
しかし、つながらない電話の向こうには、すでに取り返しのつかない結末があった。
三年前、宇田川大介があの古い1Kの部屋へ入ったときも、ただ曖昧な誘いに乗っただけのつもりだった。
彼は知らなかった。
扉の向こうで待っていたのが、強盗と死だったことを。
二つの事件の間には、三年という時間があった。
けれど本当に二つを隔てていたものは、時間ではない。
一度逃げ切ったあと、二人が自分たちの手で育ててしまった侥幸だった。
最初の事件のあと、彼らが自首していれば、すべてはそこで止まっていたかもしれない。
莉奈が真実を知ったあとに海斗から離れていれば、文香は死なずに済んだかもしれない。
海斗が刺青に刻んだ言葉のように、本当にただ生き残りたかっただけなら、働き、借金を返し、やり直す道もあった。
けれど、二人はその道を選ばなかった。
より早く手に入る金を選んだ。
より都合のいい嘘を選んだ。
誰かを部屋へ誘い込み、内側から扉を閉める道を選んだ。
海斗は最後に死刑へ向かった。
莉奈は無期懲役の鉄扉の向こうに、残りの人生を置いた。
そして腕に刻まれたその名前は、二人の罪深い愛に残された、最後の墓碑銘になった。




