6.今度は逃げ切れなかった
二人は間違っていた。
今回は、警察の動きのほうが早かった。
文香の夫である隆司が届け出たあと、海坂中央署はすぐに通話記録と周辺の防犯カメラを調べた。莉奈が最後に文香と一緒にいた映像が見つかった。さらに、コンビニATMの出金記録が海斗を再び捜査線上へ引き戻した。
海斗は出金時、変装していた。
帽子を深くかぶり、マスクで顔の半分を隠し、服装も変えていた。だが体つきと歩き方までは変えられなかった。
隆司は防犯カメラの映像を見て、ほとんどすぐに言った。
「これは海斗です」
刑事たちは調べを続けた。
アパート周辺の防犯カメラ。
コンビニまでの経路。
小型トラックの借用記録。
水無瀬ダム方面へ向かった車の動き。
一つずつの線が、二人を囲んでいった。
莉奈が語った「三日前に別れてから会っていない」という説明も、映像と時系列によって少しずつ崩れていった。
海斗は逮捕後、まもなく認めた。
莉奈は最初、それでも冷静でいようとした。
しかし刑事が最初の事件の資料、今回の防犯カメラ映像、文香のカード利用記録を並べたとき、ようやく顔色が変わった。
彼女が取調室に座るのは、初めてではない。
けれど今回は、その椅子から出ていくことはできなかった。
海斗は、強盗殺人、逮捕監禁、死体損壊・遺棄などの罪で起訴された。
莉奈もまた、誘い出し、アリバイ工作、犯行への協力により、共犯として起訴された。事件は地方裁判所へ送られ、裁判員裁判として審理された。
二つの事件。
二人の被害者。
繰り返された誘い出しの手口。
そして犯行後の遺体処理。
法廷の空気は、息苦しいほど重かった。
判決の日、海斗はずっと下を向いていた。
莉奈は別の席に座り、彼を見なかった。
地方裁判所は、佐伯海斗が二件の強盗殺人を主導したと認定した。手口は残忍で、計画性があり、一度逃げ切ったあとに再び同種の犯罪を行った点はきわめて重いとされた。
海斗には死刑が言い渡された。
望月莉奈について、裁判所は、直接被害者を殺害したわけではないとしながらも、二件の事件で誘い出しと隠蔽の役割を担ったと認めた。特に二件目では、海斗が強盗や殺害に及ぶ危険を知りながら、文香をアパートへ誘導し、自分のアリバイまで作っていた。
莉奈には無期懲役が言い渡された。
二人は控訴した。
高等裁判所は原判決を維持した。
最高裁判所が上告を退け、海斗の死刑判決は確定した。




