6.三人で眠った夜
事件当日、慎吾は酒を飲んでいた。
彼は美麗を連れて朱里の店へ来た。もう遅いから帰るのは面倒だ、今夜は奥の休憩室で寝ると言った。美麗は拒まなかった。
朱里も、拒まなかった。
休憩室は狭かった。
古いベッドが部屋の大半を占め、横には酒のケースや雑物の入った箱が積まれている。電球は黄ばんでいて、壁には期限切れの販促ポスターが貼られていた。
三人が同じベッドに入ると、空気は細い糸のように張り詰めた。
美麗は慎吾の隣に横たわった。
朱里は端に体を寄せ、ほとんど寝返りも打てなかった。
最初の数時間は、何も起きなかった。
美麗は眠っていた。呼吸は深かった。朱里だけが目を閉じたまま起きていた。
慎吾が本当に眠っていないこともわかっていた。
彼の指が一度、そっと朱里の手の甲に触れ、すぐに離れたからだ。
しばらくして、美麗が目を覚ました。
彼女は朱里がまだ硬くなって横たわっているのを見ると、口元に軽い笑みを浮かべた。
朱里は目を閉じ、眠ったふりをした。
美麗は見逃さなかった。
慎吾のほうへ体を寄せ、見せつけるように近づいた。多くは語らなかった。ただ、その一つ一つの動きが、朱里の胸に刃物のように落ちてきた。
朱里は横になったまま、ベッドの小さなきしみを聞いていた。
恥辱、嫉妬、恐怖が同時に押し上げてくる。
慎吾は最初、美麗を押し返した。
だが美麗が耳元で何かをささやいた。
朱里にはすべて聞き取れなかった。
聞こえたのは、通報、妻、子どもといういくつかの言葉だけだった。
慎吾の体がこわばった。
そして、もう美麗を押し返さなかった。
その瞬間、朱里は自分が完全に負けたのだと思った。
慎吾の子どもを産んだのは自分だ。
それでも自分はベッドの端で、別の女に踏みつけられるようにして横たわっている。
しばらくして、美麗が寝返りを打った拍子に、朱里の体を蹴った。
朱里はベッドから落ち、冷たい床に手をついた。
すぐには立ち上がらなかった。
視線の先に、ベッド下の雑物箱があった。
鉈は、その底にあった。
慎吾も、朱里の視線に気づいた。
部屋の中で、誰も声を出さなかった。
美麗はやがて、また深い眠りに落ちた。
彼女は自分が勝ったと思っていたのだろう。夜が明ければ朱里は完全に退き、慎吾はまた自分のものになると信じていたのかもしれない。
だが彼女は見ていなかった。
暗い部屋の中で、ベッドの端にいる二人が、どんな目を交わしたのかを。
慎吾は静かに起き上がり、服を着た。
朱里は雑物箱を開けた。
鉈を取り出し、慎吾へ差し出した。
慎吾は、背を向けろというように顎を動かした。
朱里は動かなかった。
青ざめた顔のまま、ベッドの上の美麗をじっと見ていた。
慎吾が鉈を振り上げた。
一撃目が落ちた瞬間、朱里の世界は真っ二つに裂けたようだった。
想像していたような痛快さはなかった。
あったのは、巨大な恐怖だけだった。
慎吾はもう一度、鉈を振り下ろした。
美麗は二度と目を覚まさなかった。
朱里はその場に立ち尽くした。
嫉妬も、屈辱も、憎しみも、死を目の当たりにした瞬間に消えていた。
残ったのは、逃げられない現実だけだった。
慎吾は遺体を奥の浴室へ引きずっていった。
朱里は休憩室に立ったまま、濃くなっていく血の臭いを吸い込んでいた。足を一歩動かす力もなかった。
どれほど時間が経ったのか、わからない。
慎吾が浴室から戻ってきた。
顔にも服にも血がついていた。
朱里は短く叫んだ。
慎吾がすぐに口を塞いだ。
その手は冷たかった。
そして、濡れていた。
朱里はその瞬間、自分がもう普通の人間の側へ戻れないことを知った。




