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女性専用刑務所の面会室:一線を越えた【危険な女たち】の犯罪告白  作者: 熾星


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【青いキャリーケースの女】彼女を殺したのは、恋人ともう一人の女だった 1.工事現場の砂山に埋まっていた青いキャリーケース

二〇一〇年五月八日の昼、海坂市郊外にある南沢町の再開発工事現場に、鋭いサイレンの音が響いた。


そこは、どこにでもある住宅地の再開発現場だった。昼休みの時間で、作業員の多くは仮設の休憩所で仮眠を取っていた。砂利の山のそばには、止まったままのショベルカーが数台あるだけだった。


その数分前、ひとりの作業員が一一〇番通報していた。

砂の中から、不審なキャリーケースが出てきたという。

通報した男の声は、ひどく硬かった。

壊れた角の隙間から、人の髪のようなものが見えていたからだ。


海坂中央署の刑事たちが到着したとき、青いキャリーケースはすでに簡易の規制線で囲まれていた。ケースは半分ほど砂に埋まり、割れた角から黒く濁った液体が染み出している。

液体は砂粒を巻き込みながら、ゆっくりと地面に広がっていた。


近づいた刑事たちは、ほとんど同時に顔をそむけた。

説明などいらなかった。

普通のごみの臭いではない。

死臭だった。


現場を見守っていた年配の作業員によると、そのキャリーケースは砂山の中に埋もれていたらしい。資材を片づけていた作業員のスコップが硬いものに当たり、何人かで砂をどかした。


最初は、誰も深刻には考えていなかった。

けれどケースの隙間から長い髪の毛がのぞいた瞬間、誰もが後ずさった。


秦野刑事は規制線の外に立ち、青いキャリーケースをしばらく見つめていた。

ケースは大きくない。

成人一人をそのまま入れられる大きさではなかった。

つまり、犯人は遺体を切断したうえで、複数の場所へ捨てた可能性が高い。


まもなく鑑識と法医学担当者が現場に入った。ケースを開けた瞬間、その場にいた全員が言葉を失った。

中にあったのは、女性の遺体の一部だった。

頭部はまだ確認できた。腐敗は進んでいたが、生前、その女性がかなり外見に気を遣っていたことは伝わってきた。

長い髪の毛。

毛先は赤みのあるローズ系に染められている。

右耳には、特徴的なピアス。

左上腕には黒い薔薇のタトゥーがあり、そのそばには古い傷跡のようなものも残っていた。


初期鑑定の結果、遺体は女性。年齢は三十歳から三十五歳ほど。身長は一六八センチ前後と推定された。

死因は、首への鋭利な刃物による重い損傷。

大量出血による死亡だった。

死亡してから、すでに数年が経過している可能性が高かった。

報告を聞き終えた秦野の顔が沈んだ。


遺体はキャリーケースに入れられ、再開発現場の砂山に埋められていた。

衝動的な犯行ではない。

まず突き止めなければならないのは、死者の身元だった。


警察は南沢町周辺を調べ、近年の行方不明者情報を洗い直した。同時に、報道機関を通じて身元確認の協力も呼びかけた。

しかし数日が過ぎても、その女性を名乗り出る者はいなかった。

彼女は、まるで街の隙間からこぼれ落ちた人間のようだった。

死んでも、すぐには誰にも気づかれなかった。


事件が動いたのは、キャリーケースを包んでいた編み袋がきっかけだった。

技術担当者が汚れを落とすと、袋の表面にかすれた文字が浮かび上がった。

茂原化学。

秦野はすぐに調査を指示した。


海坂市北部には、たしかに茂原化学という工場があった。しかし、その工場は二〇〇八年にすでに閉鎖されていた。警察は当時の従業員を探し出し、遺体のタトゥー、ピアス、その他の所持品の写真を見せて回った。

その中に、杉本という年配の元従業員がいた。

杉本は老眼鏡をかけ、写真を長く見つめた。

タトゥーには覚えがないようだった。

だが、ピアスの写真を見た瞬間、指が止まった。


「これは見たことがあります」


秦野は写真を少し前へ押した。

杉本は眉間にしわを寄せ、遠い記憶を手繰るように口を開いた。


「十字架の下に、小さな鈴が輪みたいについているんでしょう。昔、工場にいた女の子が、よくこれをつけていました。派手な子で、髪も染めていて。みんな、リカって呼んでいました」


警察はすぐにその女性を調べた。

松永美麗。

彼女は以前、源氏名として「リカ」を使っていた。健康ランド、リラクゼーション店、夜の店などを転々としていた時期もある。

三十三歳。

結婚歴があり、子どももいた。


数年前、夫との不仲を理由に家を出てから、家族とはほとんど連絡を絶っていた。


二〇〇七年五月、美麗は茂原化学で派遣作業員として働き始めた。

当時の同僚たちは、彼女のそばに「モリ」と呼ばれる男がいたことを覚えていた。


二人は夫婦のように暮らしていたという。

工場が閉鎖されたあと、海坂駅近くでモリを見かけた者がいた。そのとき、美麗の姿はなかった。

同僚が軽い気持ちで尋ねた。


「リカは一緒じゃないのか」


モリは、こう答えたという。


「田舎に帰って結婚したよ」


秦野はその記録を見て、机を軽く叩いた。

法医学上の死亡推定時期から考えれば、そのころ美麗はすでに殺害されていた可能性が高い。

彼女がどこかへ嫁いだはずはなかった。

モリは嘘をついている。

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