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女性専用刑務所の面会室:一線を越えた【危険な女たち】の犯罪告白  作者: 熾星


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女子寮を覗いた教師】少女と前妻が、同じ男を殺した 1.1.男子更衣室で死んだ教師

2010年5月11日、午後六時半。


県立青峰体育高等学校の体育館棟から、最後まで残っていた部活の生徒たちの声が消えていた。廊下の照明が一つずつ点き、白い光が古びた床を照らしている。昼間よりも、ずっと冷たく見える光だった。


青峰県内でも知られた体育の強豪校で、体育科と複数の専門競技クラスが置かれている。多くの生徒は校内の学生寮で暮らし、昼は通常授業と専門練習、夕食後は寮の自習室で勉強する。そんな時間の体育館棟に、人影はほとんどなかった。


内田誠は校門まで来たところで、運動着を男子更衣室に忘れたことを思い出した。


午後、一年生にバレーボールの授業をしたあと、職員室で資料を片づけることに気を取られ、着替えをロッカーに入れたままにしていた。内田は暮れかけた空を見上げ、仕方なく体育館棟へ引き返した。


廊下は静まり返っていた。


校舎のほうから聞こえていた生徒たちの声も遠ざかり、残っているのは自分の足音だけだった。


男子更衣室は体育館棟の二階にあり、女子更衣室とは短い廊下を挟んで向かい合っていた。内田は扉の前に立ち、古い引き戸に手をかけた。

扉はびくともしなかった。


男子更衣室は普段、鍵をかけない。

中で誰かが着替えているのかと思い、内田は軽く扉を叩いた。


「誰かいるのか?」


返事はなかった。

廊下に響いた声は、すぐに消えた。


内田は眉をひそめ、もう一度強く引いた。扉は中から何かに押さえられているように動かない。仕方なく一階の事務室へ向かい、施設管理担当と宿直の職員を呼んできた。

施設管理担当は予備鍵を持って駆けつけたが、鍵穴を確認して首をかしげた。


「鍵はかかっていませんね」


何人かで代わる代わる試しても、扉は開かなかった。

結局、彼らは引き戸をレールから外すしかなかった。

扉板を持ち上げた瞬間、鼻を刺すような臭いが流れ出した。


男子更衣室の床に、一人の男が横たわっていた。


顔は入口に背を向けている。学校指定の教職員用ジャージを着たまま、腹部には一本の槍が斜めに突き刺さっていた。その光景だけで、その場の全員の視線が釘づけになった。

誰もすぐには近づけなかった。


内田は比較的気の強い男だったが、それでも数秒、足が動かなかった。ようやく遺体の前へ回り込み、顔を確認した。

高瀬悠馬だった。


高瀬は体育科の保健体育教師で、やり投げ専門クラスの指導者でもあった。内田ははっきり覚えている。最後の授業が終わったあと、廊下で高瀬とすれ違った。あのとき高瀬は教案を手にして、まだ器具の確認に行くような足取りだった。


二時間も経たないうちに、彼は遺体になっていた。

宿直職員がすぐに110番した。

青峰中央警察署の刑事課が到着し、その後、県警捜査一課も合流した。学校は封鎖され、体育館棟二階には規制線が張られた。寮の自習室にいた生徒たちも、それぞれの場所に待機するよう指示された。


司法解剖の初期結果は、その夜のうちに捜査本部へ届いた。

高瀬悠馬の死亡推定時刻は、午後六時以降。

しかし直接の死因は、腹部に刺さった槍ではなかった。


槍は腹部に刺さっていたものの、致命部位には達していない。表面から検出された明確な指紋も、高瀬本人のものだけだった。彼を死に至らせたのは、猛毒性の化学物質を吸い込んだことによる急性中毒だった。


現場近くでは、一枚のハンカチも見つかった。

そのハンカチからも、同じ反応が検出された。


佐伯刑事は男子更衣室の前に立ち、現場写真を見下ろしていた。この事件は、最初から奇妙だった。腹部に槍を刺された体育教師の死因が、毒物中毒だったのだ。

さらに奇妙なのは、ここが密室のように見えたことだった。


男子更衣室に窓はない。

出入口は、あの古い引き戸一つだけだった。


扉自体に鍵はかかっていない。それなのに、内田は外から開けられなかった。佐伯が扉の枠とレールを調べると、内側のレールにもう一本の槍が見つかった。槍は扉の縁とレールの間


に斜めに挟まり、支え棒のように内側の扉を押さえていた。

その槍がある限り、外からいくら引いても扉は開かない。

一見すると、中からしか作れない閉鎖状態だった。


もし高瀬が中毒後に自分で扉を塞ぎ、もう一本の槍を腹部に刺したのなら、現場は自殺に見せかけたものとも考えられる。

だが佐伯は、すぐにその可能性を消した。


高瀬の職員室の机には、書きかけの授業計画が広げられていた。参考書は閉じられておらず、赤ペンは翌日の授業で扱うページに挟まっていた。机の隅には、明日の練習で使う器具の確認表も置かれている。


自殺する人間の机には見えなかった。

むしろ、誰かに呼び出されて職員室を出たように見えた。

佐伯は現場で、その引き戸を何度も動かしてみた。


槍をあらかじめ内側のレール付近に斜めに置き、外側から扉を閉める。すると槍は扉の動きに引かれて滑り落ち、レールと扉の縁の間に挟まることがある。中からしか塞げないように見える扉を、外からでも作れるのだ。


この発見で、事件は密室自殺から偽装殺人へ戻った。

二本の槍には、どちらも高瀬の名前が貼られていた。


青峰体育高校では、教師が自分の常用する器具に名前のラベルを貼ることがある。学校の共用器具と混ざらないようにするためだ。つまり犯人は、適当に槍を選んだのではない。

高瀬の器具を選んでいた。


現場は、最初から彼のために作られたようだった。

高瀬の死は、不自然すぎた。

そしてこの密室は、あまりにも作為的だった。


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