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女性専用刑務所の面会室:一線を越えた【危険な女たち】の犯罪告白  作者: 熾星


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4.初めて人を殺した日

 久美子が初めて人を殺したのは、2013年だった。

 そのころ、彼女の結婚生活はすでに形だけになっていた。夫は県外へ働きに出たまま、ほとんど帰らなかった。のちには別の女性と同居するようにもなった。久美子は離婚せず、娘を連れて実家に戻り、両親と数人の子どもたちと暮らしていた。


 その子どもたちの中には、久美子の娘もいれば、妹や弟の子どももいた。周囲の人間は、彼女を見るたびに苦労していると言った。久美子は、それを聞いても笑うだけだった。

 あまり愚痴をこぼさなかった。

 その代わり、結婚の中にある温かさを、いつの間にか信じなくなっていた。


 2013年の春、妹の静香は夫の三浦浩司と離婚話でもめていた。

 浩司は村の未亡人と親しくしており、静香は耐えきれず実家へ逃げ込んだ。久美子は妹をかくまい、浩司に会わせようとしなかった。


 数日後、浩司が佐伯家にやって来た。

 その日の庭は風が強く、プラスチックの桶が転がっていた。浩司は玄関先に立ち、ひどく興奮していた。久美子が立ちはだかると、二人はすぐに言い争いになった。


「静香を出せ」


「会いたくないって言ってる」


「夫婦のことだ。あんたには関係ない」


「よくそんなことが言えるね」


 もみ合ううちに、浩司は庭に倒れた。久美子はそばにあったガラス瓶をつかみ、彼の頭部へ振り下ろした。


 十数分後、浩司は息をしなくなった。

 久美子は地面にへたり込み、凍りついたように動けなかった。人がこんなにも簡単に死ぬとは思わなかった。自分が本当に人を殺すとも思っていなかった。

 やがて、父が帰って来た。


 老人は地面に倒れた浩司を見て、灰色の顔をした。警察には通報しなかった。ただ、久美子を家の中へ入らせた。


「誰かに聞かれたら、あの男はとっくに帰ったと言え」


 その夜、父は浩司の遺体をどこかへ運んだ。数年後、父は病死し、浩司の遺骨のありかは誰にもわからなくなった。

 初めての殺人は、家族によって隠された。

 久美子は罰を受けなかった。

 そして、止まらなかった。


 二人目の犠牲者は、藤原雪乃だった。

 雪乃は久美子の弟の妻だった。若く、きれいで、明るい性格の女だった。県外へ働きに出ていることが多く、久美子は以前から彼女を好いていなかった。落ち着きがない、佐伯家の恥になる。そんな思いを抱いていた。


 2015年11月、雪乃は奥羽村に戻り、久美子に預けていた金を返すよう求めた。

 百四十万円だった。

 その金は、すでに久美子が使い込んでいた。子どもたちの生活費、学費、家の支払いに充てた。けれど心のどこかで、それが自分の金ではないと認めることを避けていた。

 雪乃は佐伯家で怒った。


「それ、私のお金だから」


「子どもたちだって、食べていかなきゃいけなかった。学校にも行かせなきゃいけなかった」


「だから何?預かってって言っただけで、使っていいなんて言ってない」


 その日、雪乃はひどい風邪をひいていた。口論のあと、久美子の家で眠り込んだ。

 久美子は布団のそばに座り、長いあいだ雪乃を見ていた。


 雪乃は深く眠っていた。鼻にかかった呼吸音だけが、部屋の中に残っていた。久美子は縄を手に取り、彼女の首へ回した。


 地下貯蔵庫は、そのとき初めて遺体を隠す場所になった。

 臭いをごまかすために、久美子は汚物や台所ごみ、生活ごみをそこへ捨て続けた。かつて冬越しの野菜をしまっていた場所は、誰も近づかない悪臭の穴へ変わっていった。

 その後、雪乃の携帯から家族へメッセージが送られた。


「外で働くことにした。しばらく帰らない」

 家族が電話をかけ直しても、二度とつながらなかった。

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