表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女性専用刑務所の面会室:一線を越えた【危険な女たち】の犯罪告白  作者: 熾星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/82

2.四つの遺体

警察が山へ入る準備を進めていたころ、一人の男が黄瀬町警察署を訪れた。

森下拓馬。

彼は、自分は青山美咲の夫だと名乗った。


拓馬によれば、美咲は鹿喰集落から逃げる前に、二人の娘である小春を殺し、さらに近所に住む三人の老人を殺したという。数日間迷った末、彼は警察へ届け出ることにした、と語った。


話を聞いた当直の刑事は、表情を変えた。

美咲は病院での聴取で、殺人について一度も語っていなかった。

警察はただちに大黒岳へ向かった。


鹿喰集落は、山の中腹に隠れるようにあった。十数戸ほどの家が点在しているだけで、コンビニも診療所もない。最寄りのバス停は山のふもとにあり、携帯電話の電波も安定しない。冬に雪が降れば、山道は簡単に閉ざされた。


住民の多くは、椎茸小屋や栗園の管理、林業の手伝いなどで細々と暮らしていた。

森下家の古い木造家屋は、集落の端にあった。

警察は、その家の裏手と物置の周辺から四つの遺体を発見した。

一人は幼い子ども。

三人は老人だった。

子どもは、美咲と拓馬の娘、小春だった。


老人たちは鹿喰集落の住民で、千代、富江、房枝という名だった。三人とも身寄りがなく、山の中で一人暮らしをしていた。集落の人間によれば、三人は森下家へ頻繁に出入りし、いつも何かを見物するように美咲の周囲へ集まっていたという。


拓馬は、自分は何年も家を離れて県外の工事現場で働いており、数日前にようやく鹿喰集落へ戻ったのだと話した。

家へ入ると、小春はすでに死んでいた。


美咲は窓辺に座り、何が起きたのかわからないような顔をしていた。


拓馬が問いただす前に、美咲は鋏で彼を刺し、山の中へ逃げた。追いかけたが、姿は消えていた。三人の老人の遺体も、その後で見つけた。

筋は通っているように聞こえた。

だが、司法解剖の結果が、その一部をすぐに崩した。


法医学者は、小春の死亡時期が三人の老人より三日ほど早いと判断した。

三人が殺害されたころ、美咲はすでに鹿喰集落を離れ、山道を逃げていた。

戻ってきて殺すことはできない。


取り調べの中で、拓馬の顔色は少しずつ変わっていった。

刑事が解剖結果を机の上に置いた。取調室は、長いあいだ沈黙に包まれた。やがて拓馬はうつむいた。


「三人を殺したのは、俺です」


刑事はじっと彼を見た。


「なぜ美咲さんに罪を着せようとしたんですか」


拓馬の肩が震えた。


「見つからなかったんです」


誰も口を挟まなかった。

拓馬は顔を上げた。目は赤く充血していた。


「小春を殺して、逃げたんです。探しても見つからなかった。警察に探してもらうしかなかった。憎かった。でも、見つけたかった」


刑事は続けた。


「では、なぜ三人を殺したんですか」


拓馬は両手で頭をつかんだ。


「あいつらが追い詰めたんです。美咲を、あそこまで追い詰めた」


鹿喰集落が長く沈黙の奥に隠してきたものが、ようやく彼の口からこぼれ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ