6.洗濯場で終わった八年
事件は裁判へ移り、検察は藤原詩織を殺人、死体損壊、死体遺棄の罪で起訴した。
法廷で、詩織は蓮太を殺した事実を認めた。遺体の処理についても、細かい弁解はしなかった。彼女はただうつむき、検察が証拠を一つずつ読み上げるのを聞いていた。
莉央は、長く法廷にいることができなかった。
体調がそれを許さなかった。のちに提出された意見書の中で、彼女は詩織を恨み、恐れたことがあると書いた。だが同時に、あの鍵がなければ、あの通報がなければ、蓮太の本当の姿は永遠にわからなかったかもしれないとも記していた。
この事件の複雑さは、そこにあった。
詩織は人を殺した。
遺体を損壊し、隠した。その手段は残酷で、許されるものではない。
しかし、彼女が殺した相手は、長く女性をだまし、恋愛感情と家柄を利用して上へ行こうとしていた男でもあった。詩織は莉央を救いたかったと言った。だがその方法は、最終的に彼女自身を戻れない場所へ連れていった。
判決の日、福岡地方裁判所の法廷は静まり返っていた。
裁判長が判決を読み上げる間、詩織はずっと下を向いていた。
殺人、死体損壊、死体遺棄の罪により、無期懲役。
判決を聞いても、彼女は泣かなかった。
顔も上げなかった。
職員に連れられて法廷を出るとき、詩織は一つだけ頼んだ。
「両親には、知らせないでください」
誰も答えなかった。
取材の最後、沙也香は詩織に尋ねた。
「もし時間を戻せるなら、いつに戻りたいですか」
詩織は長く黙った。
カメラの中で、手錠をかけられた手が膝の上に置かれていた。荒れ、形の変わったその手からは、かつてピアノを弾き、大学の教科書をめくり、両親が用意した未来を握っていたころの面影は見えなかった。
「子どものころに戻りたいです」
加工された声から、元の響きはわからなかった。
「あのころは、お父さんもお母さんもまだそんなに忙しくなくて、家にいてくれました。もう二度と、離れたくありません」
沙也香は、それ以上何も聞かなかった。
取材ノートを閉じた。
白石莉央と藤原詩織は、もともとどちらも大切に育てられた娘だった。金に困っていたわけではない。それでも、長く安定したぬくもりには飢えていた。
一人は孤独の中で、見知らぬ男の優しさを信じた。
もう一人は意地と未練から、自分の人生を詐欺師に預けてしまった。
娘は大切に育てるべきだと、人はよく言う。
だが、大切に育てるとは、金をかけることだけではない。
本当に誰かに見てほしいとき。
理解してほしいとき。
手を引いて止めてほしいとき。
そのそばに、誰かがいることなのだ。
詩織は莉央を救いたかった。
けれど本当は、八年前、愛だけですべてを越えられると信じた自分を救いたかったのかもしれない。
彼女が殺したのは、恋愛詐欺師の男一人だけではなかった。
八年かけて育ててしまった幻も、そこで殺した。




