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女性専用刑務所の面会室:一線を越えた【危険な女たち】の犯罪告白  作者: 熾星


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【黒衣の女】独居老人を殺した夜の女は、かつて一家の希望だった 1.裸でベッドに死んでいた独居老人

2018年6月3日、海坂市東区の古いマンションで、鼻を突くような異臭が漂い始めた。


最初に異変に気づいたのは、同じ階に住む住人だった。大沢昭夫は何日も部屋から出ておらず、玄関先の新聞やチラシは郵便受けにたまったままだった。誰が呼び鈴を鳴らしても応答はない。管理会社も本人と連絡が取れず、警察に通報した。


海坂東警察署の警察官と消防隊員が到着し、三階の部屋のドアを開けた。

室内の臭いは、立っているのもつらいほど濃かった。


大沢昭夫は、裸のまま寝室のベッドで死亡していた。遺体はすでに腐敗が進み、シーツは乱れ、衣服は床に投げ捨てられていた。クローゼットや引き出しも荒らされ、誰かが


室内を物色したように見えた。

法医学班の初期判断では、死亡からおよそ四日。

死因は、鈍器で頭部を殴打されたことによる頭蓋内損傷だった。


昭夫の息子、大沢直人が現場に呼ばれると、父がふだん身につけていた金の指輪が消えていることに気づいた。状況だけを見れば、事件は空き巣目的の強盗殺人に見えた。独居老人、固定された年金収入、荒らされた室内、消えた貴金属。


すべての手がかりが、金目当てを示しているようだった。

しかし佐伯航平は、すぐに違和感を覚えた。


玄関の鍵にこじ開けられた跡はない。ベランダ側の窓も壊されていなかった。廊下の防犯カメラにも、不審者が無理に侵入する姿は映っていない。室内は乱れているのに、貴重品が計画的に持ち去られた形跡も薄かった。


まるで、誰かが去り際に衣服や雑物をわざと散らしたようだった。

これは、ただの窃盗ではない。

殺したあとで、盗難に見せかけた可能性が高い。

そうなると、問題は変わってくる。

誰が、独り暮らしの老人にそこまでのことをしたのか。

大沢昭夫の周辺調査は、すぐに始まった。


昭夫は若いころ、市内の機械工場で働いていた。退職後は厚生年金と少しの蓄えで暮らしていたが、気難しい性格で、近所付き合いもほとんどなかった。妻の千代は早くに亡くなり、次男の拓也も、何年も前に家庭内の確執をきっかけに命を絶っていた。


直人は昭夫の長男だった。


父との関係は悪かったが、部屋へ入ることはできた。そのため警察は、一度直人を重要参考人として調べた。だが事件当時、直人は会社に出勤しており、打刻記録、同僚の証言、防犯カメラの映像が一致していた。


直人の嫌疑は、すぐに消えた。

捜査は行き詰まりかけた。


犯人は出ていく前に現場を掃除していた。床は拭かれ、玄関近くにはモップが置かれていた。足跡を消すため、後ろ向きに部屋を出ながら拭いたようにも見えた。室内に残された指紋や足跡は少なく、使える物証は限られていた。


佐伯は寝室にしばらく立っていた。

ベッドの上の昭夫は、何も身につけていなかった。

その一点で、彼の視線が止まった。


独り暮らしの老人が、裸でベッドの上に死んでいる。

殺したのは、ただの侵入犯ではないのかもしれない。

もしかすると、昭夫が知っている女。


その考えが形になりかけたとき、聞き込みに出ていた刑事が新しい情報を持ち帰った。

向かいの棟に、出産して間もない若い母親がいた。産後で体調が戻らず、あまり外出できなかったため、子どもを寝かしつけるたびに窓辺に立って外を眺めていたという。


事件の数日前、その女性は昭夫の部屋に女がいるのを見ていた。

女は黒い服を着て、肩まである長い髪を下ろしていた。


昭夫とかなり近い距離にいて、普通の訪問客には見えなかった。

若い母親は少し気まずそうに目を伏せた。


「わざと見ていたわけじゃないんです。そのころはずっと家にいて、窓がちょうど向こうを向いていて……。その女の人、若い感じではありませんでした。でも、かなり目立つ格好でした」


黒い服。

長い髪。

女。

この三つの言葉が、事件の向きを変えた。


警察は昭夫の通話記録を調べた。すると事件前、北浜市にある小さな飲み屋の固定電話から、昭夫に電話が入っていたことがわかった。北浜市と海坂市はそう遠くない。高速バスを使えば一時間もかからない距離だった。


もし黒衣の女が北浜の夜の店と関係しているなら、二つの町を行き来するどこかに記録が残っているはずだった。


刑事たちはすぐに高速バスセンターの防犯映像を確認した。


事件の前後、目撃証言とよく似た女が、海坂から北浜へ向かうバスに乗っていた。黒い上着を着て、長い髪を肩に下ろし、歩くときには意識して顔を伏せていた。


数日後、警察は北浜市の歓楽街で一人の女を特定した。

彼女は小さな接客店といくつかの風俗関係の店を渡り歩いていた。

店で使っていた名前は、リオ。

本名は、浅倉梨央だった。

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