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女性専用刑務所の面会室:一線を越えた【危険な女たち】の犯罪告白  作者: 熾星


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2.消えた女

警察は、あらためて月見丘の別邸の購入経緯を調べた。


慧子と透がこの家を買ったとき、二人に十分な余裕があったわけではない。郊外とはいえ、庭と建物に独特の価値があり、価格は決して安くなかった。最終的な購入価格はおよそ三千二百万円だった。


慧子は一千七百万円を出し、透は四百万円を出した。

残りの大部分は住宅ローンでまかなった。


それとは別に、引っ越しや改装のため、二人はいくつかの知人から短期の借り入れもしていた。

表向きには、夫婦で買った家だった。


だが、借用書に名前を書いていたのは、ほとんど慧子だった。


彼女は弁護士である。署名の意味を知らないはずがない。その借金は、いずれ自分が背負うものになる。銀行口座の記録を調べても、結婚後に借金を返していたのは慧子だった。


金は彼女の仕事の収入から出ていた。

透の収入とは、ほとんど関係がなかった。


和江がその話をしたとき、声には長年押し込めていた不満がにじんでいた。


「慧子はいつも、大丈夫だって言っていました。稼いでいるほうが多く出せばいいだけだって。でも、家のことはほとんどあの子が支えていたんです」


誠一は何も言わなかった。

妻よりも口数の少ない彼は、すっかり冷めた紙コップを握りしめていた。

警察は、岩崎翔平も債権者の一人だったことを突き止めた。


翔平は透に五十万円を貸していたが、まだ返済されていなかった。一年前、別邸を購入したころ、透はもともと二十万円だけ借りるつもりだった。改装費と引っ越し費用の足りない分を埋めるためだった。


だが翔平は、古い同級生の前で小さく見られたくなかったのか、最終的に五十万円を渡した。


事件の少し前、翔平は配送中に高級輸入車と接触事故を起こし、高額な修理費を請求されていた。


彼にとって、それはとても抱えきれない額だった。

佐伯は現場の状況をもとに、最初の流れを組み立てた。


3月12日、翔平は月見丘の別邸を訪ねた。


目的は、透に貸した五十万円の返済を迫ることだった。慧子が死んだあと、透に安定した収入はない。返せる金もなかった。二人はまず言い争いになり、その後、手が出た。

体力仕事を続けてきた翔平に、透はかなわなかった。


透は取り押さえられ、翔平のトラックにあった鎖で二階につながれた。

その後、翔平は透を殴り、金を出せと迫った。

翔平自身の死は事故の可能性があった。


足跡と転落位置から見ると、翔平は事件前、二階の吹き抜け廊下の縁に立っていた。ちょうど透が鎖につながれていた場所の近くだった。殴られている最中、透が頭で翔平に体当たりしたのかもしれない。


その拍子に翔平は足を滑らせ、一階の居間へ転落した。

後頭部を打って死亡した。

この推理は、一度はとても自然に見えた。

だが、法医学班から届いた一つの物証が、その流れを崩した。


透の遺体の周囲に残された汚物の中から、使用済みのコンドームが見つかったのだ。


検査の結果、中の精液は水原透のものだった。

では、相手は誰だったのか。


警察はまず岩崎翔平を疑った。しかし、司法解剖の結果、翔平の体には性行為を示す痕跡はなかった。法医は佐伯に、精液の排出が必ずしも通常の性行為によるものとは限らないと伝えた。


死者に特殊な性的嗜好があった可能性もある。

佐伯は、その説明をすぐには受け入れなかった。

彼は捜査員に主寝室をもう一度調べさせた。


まもなく、寝室のシーツから、透にも翔平にも属さないDNAが検出された。

女性のものだった。


事件現場には、第三者がいた。

そしてその女は、警察が到着する前に姿を消していた。


現場周辺から、第三者のものと見られるはっきりした足跡は見つからなかった。


別邸の外にはいくつか防犯カメラがあり、表の道につながるルートも確認された。だが、不審な女が出ていく姿は映っていない。現場周辺を再確認していた新人刑事の小野寺遥斗が、主寝室の窓の外の草地で、ごく浅い足跡を見つけた。


足跡は完全な形ではなかった。


かかとの後ろ半分だけが泥に残り、上から草に隠れていた。小野寺がしゃがみ込み、横から見なければ、誰も気づかなかっただろう。

佐伯は窓の外に立ち、二階の主寝室を見上げた。

小野寺が草地を指さした。


「窓から飛び降りて、かかとから着地したなら、こういう跡になると思います」


佐伯は、野地へ続く細い道を見た。


庭を抜け、雑草の茂る空き地を越えると、古い木造住宅の並ぶ一帯に出る。そこにはカメラも少なく、常住している住人も多くない。

消えた女は、そこから逃げたのだ。


警察は、透がこの半年どのように生活していたのかを調べ始めた。


慧子が死んだあと、透には仕事の収入がなかった。それでも彼は別邸に住み続けていた。生活するには金がいる。慧子の両親は、娘が亡くなる前に複数の生命保険に入っていたことを話した。


両親が契約していたもののほかに、透が慧子のために追加した保険もあった。

受取人は、すべて水原透だった。


当時、事故は単独の交通事故として処理されていた。保険会社は調査を経て、死亡保険金を支払った。だが透は、その金を住宅ローンや借金の返済には使わなかった。


彼は銀行窓口で予約し、死亡保険金を三回に分けて現金化した。

佐伯は銀行の防犯映像を取り寄せた。


三回の取引すべてに、同じ若い女が映っていた。


女は二十五歳前後に見えた。柔らかい顔立ちで、丸い大きな目をしている。透のそばに立っていても目立つわけではない。けれど、必要な場面になると自然に書類を整え、手続きに慣れているように振る舞っていた。


顔認証の結果はすぐに出た。

新堂奈緒。

二十五歳。

東島市出身で、四年前に海坂へ来ていた。


透の表向きの交友関係に、その名前はなかった。

しかし奈緒は、保険金の現金化に立ち会っていた。

そして、月見丘の別邸から消えた第三の人物である可能性が高かった。


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