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女性専用刑務所の面会室:一線を越えた【危険な女たち】の犯罪告白  作者: 熾星


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12/24

6.法廷で裂けた血縁

 約二か月後、長野地方検察庁は、桐生明人と黒川美咲を起訴した。


 明人は、身代金を目的とした誘拐、殺人、死体損壊および遺棄などの罪に問われた。美咲は、誘拐計画に共犯として関与し、さらに子どもの死亡後の隠蔽にも重大な責任があるとして起訴された。


 事件は長野地方裁判所へ移り、数度の審理を経て、兄妹は法廷で完全に決裂した。

 被告席の距離は、それほど離れていなかった。けれど二人が互いを見る目には、もう血のぬくもりは残っていなかった。


 明人は、自分が悠斗を殺したことを認めた。殺人について責任を負うつもりだとも述べた。だが、計画のすべては最初から美咲が作ったもので、自分は利用されただけだと主張した。


 美咲は、偽装誘拐を考えたことは認めた。

 しかし、明人に殺人を指示したことは否定した。


「私は、蓮司を怖がらせたかっただけです」


 美咲は裁判長を見た。


「明人に子どもを殺せなんて言っていません。殺したのは、あの人がその場で勝手にやったことです」


 明人が勢いよく彼女を振り向いた。


「まだそんなことを言うのか」


 美咲は見なかった。

 傍聴席は静まり返っていた。


 その瞬間、血縁も、負い目も、遅れてやって来た兄妹の情も、すべて裂けた。中にあったのは温かさではなく、責任の押しつけと、憎しみと、恐怖だけだった。


 最終的に、明人は身代金を目的とした誘拐、殺人、死体損壊および遺棄などの罪で死刑を言い渡された。


 美咲は、誘拐計画を主導し、犯行の過程で明人を操り続け、真相の隠蔽を図ったとして、無期懲役を言い渡された。


 判決が読み上げられたとき、明人はうつむいたまま、肩をわずかに落とした。美咲は被告席に立ったまま、表情をほとんど変えなかった。


 閉廷後、二人はそれぞれ係官に連れられていった。

 沙也香は最後の機会を逃さなかった。


「ここまで来て、何か言いたいことはありますか」


 明人は足を止め、深く息を吸った。


「悠斗くんに申し訳ない。ご家族にも、本当に申し訳ないと思っています」


 声はかすれていた。


「自分の命で償います。妻にも、子どもにも、取り返しのつかないことをしました。美咲を罵りたい気持ちはあります。でも、言葉が出ません」


 彼は美咲のほうを一度だけ見た。


「それでも、妹なんです」


 そう言い終えると、明人は法廷の外へ連れていかれた。

 美咲はその背中を見ていた。

 何も言わなかった。

 沙也香は、美咲にも同じ質問をした。


「今、何か言いたいことはありますか」


 美咲はしばらく黙り、それからゆっくり口を開いた。


「悪かったのは、私です」


 その声は静かだった。まるで、普通の人生の反省を整理しているようでもあった。


「私は蓮司のことばかり見ていました。帰ってくるかどうか、女のところへ行くかどうか。そんなことばかりで頭がいっぱいでした。拘置所に入ってから、そんなものはどうでもよかったのだと思うようになりました。育ててくれた両親や、本当に世話をしなければならない子どもこそ、大切にしなければならなかったんです」


 彼女は長く語った。

 両親のことを話した。

 自分の子どものことを話した。

 失敗した結婚のことを話した。

 しかし、明人の名は出さなかった。

 悠斗の名も出さなかった。


 取材が終わったあと、沙也香はしばらく何も言えなかった。


 彼女は多くの罪を犯した人間を見てきた。泣き崩れる者もいれば、沈黙を続ける者もいた。最後まで自分を正当化しようとする者もいた。けれど、美咲から受けた印象は、単純な後悔ではなかった。


 それは、冷静な自己整理に近かった。


 美咲は自分の人生を並べ直し、間違いに名前をつけ、痛みを分類していた。だが、死んだ子どもの前に、本当の意味で立とうとはしていなかった。

 悠斗は、まだ九歳だった。


 大人の結婚の失敗を背負う必要などなかった。

 継母の恨みを受け止める必要もなかった。


 まして、狂っていった兄妹の血縁に巻き込まれる理由など、どこにもなかった。

 この事件では、誰もが自分の理由を語った。


 美咲は、結婚に追い詰められたと言った。

 明人は、捨てられた妹を守りたかったと言った。

 蓮司は、こんなことになるとは思わなかったと言った。


 だが、河川敷に横たわっていた悠斗には、何の理由もなかった。

 始まったばかりの命は、大人たちの身勝手さ、弱さ、怨みの中で灰になった。


 炎が消えたあと、河岸に残ったのは黒い焦げ跡だけだった。

 本当に焼け落ちたのは、彼らの中に最後まで残っていたはずの、人としての何かだった。

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