到着
聖帝号がヤサトの結界に入ってからは速度を落とし、合計二十分ほどでクララたちはヤサトの街中に入る。
道行く人々は噂通りの極道者ばかりでどことなく香ばしい。
だが強盗行為も当たり前と噂されていたわりには彼らはクララたちを遠巻きに見るだけで干渉はしてこなかった。
パウロが神父の格好をしているので、GMだと見てわかるからであろうか。
「とりあえず教会に行こう」
パウロは教会に行けばその設備でマルメガネとも連絡が取れるし、聖帝号を整備する設備もあると考えていた。
教会の建物はどの街でも基本は同じなのだが、ガレージのシャッター前にパウロが立ったところで彼は異変に気づいた。
「何故だ? 開かないぞ」
「どういうことですか?」
ガレージのシャッターを開けるためにパウロは自分のコードを入力したのだが受け付けなかったのだ。
本来ならばコードからGMあるいは許可を受けている人間だと判断すればガレージに入れるのだがそれができない。
クララも聖帝号から降りて一緒にコンソールを見てみるのだがパウロの入力にミスはなさそうだ。
これはいったいと小首を傾げる二人は後ろから襲われてしまった。
「何奴!?」
嫌な気配を察したパウロが振り向くと、そこにいたのは三人の極道者。
黒い桃のようなプレートアーマーを着こなす剣士ブラクモ。
赤い肌を見せつけるような半裸で斧を持った大男マキンタ。
そして釣竿のような武器を持った長髪の男ウラシマ。
彼らは何者であろう。
「おっと……動くなよ神父サン」
マキンタは斧を振り上げており、下ろせばそのままクララの頭を割れる状態。
これは一目でわかる脅しだ。
「見たところ極道者のようだが、私たちを脅してどうするつもりだ?」
「俺らは出迎えだよ。脅しに見えたのならスミマセンね。コチラとしても本物の神父なのか、それともカタリなのかは区別をつける必要があったものでな。なにせ予定の人数よりも一人足りない。アンタらがフナバシから来た教会の人間ならば、もう一人はどこに行った?」
口では確認のためと言っているのだが、ブラクモたちは威嚇の姿勢を解かない。
これにはパウロも警戒を強める。
「もう一人……ハイジはあとから来る予定だ。ここに来る途中でトラブルがあって別行動中なんだ。
ところで、その口ぶりから察するにキミたちはヤサトのネオスドリフトなのか? だったらこんな冗談は止めにして、早くここの教会の代表に合わせて欲しいのだが」
「そのネオなんとかっての知らないが、俺らがグレイスさんの言いつけで動いているのはその通り。その車はこのウラシマに預けて俺たちについてきてくれ」
「だったらいい加減、隣の彼が構えているその物騒な武器はしまってくれ。手が滑ったらどうするつもりだ」
「フヒヒ。これはシッケイ」
ようやく斧をおろすマキンタを見てパウロは一つ深呼吸。
だがその一瞬を突かれて、パウロはブラクモの攻撃に悶絶してしまった。
素手で腹を殴るという単純な攻撃だがその一撃は重い。
魔法で防御していればよかったのだが、それはもう後の祭りだ。
「パウロさん!」
「おっと……お嬢ちゃんも大人しくしな」
さきほどまでパウロを殴りつけたと思っていたブラクロはクララが気づくよりも先に戻ってきて、この瞬間はクララの喉にナイフを突き立てていた。
いかにも不良的な雰囲気を見せるブラクモたち。
そしてあっけなくパウロを無力化した彼らの能力を前に、クララは完全に萎縮していた。
クララは静かに頷いて、言われるがままブラクモについていった先は檻の中だ。
中に入ると体が重く、そしてスキルを封じられたのか隠していた恐怖の顔がクララから溢れ出た。
その顔を見てケケケと笑うマキンタは異常な性癖を持つ男としてクララの恐怖を更に加速させていく。
怖いという感情にクララは何もできなくなっていた。
「これはどういうことだ?」
檻に入れられたことで代わりに拘束を解かれたパウロはブラクモにたずねた。
「さてね。俺らはグレイスさんの言いつけどおり、アンタらをここに押し込んだだけだ」
「なあブラクモ……あの子けっこうかわいいから、ちょっと遊んできてもいいか?」
「ダメだマキンタ。お前が粛清されるだけならまだいいが、俺まで連帯責任を取らされたらかなわん。どうしてもというのなら、グレイスさんに頼みな」
「フヒヒ。だったらグレイスさんにお願いするかぁ。それまで待っててくれよ子猫ちゃん」
マキンタのラブコールはクララにとっては侵略行為以外の何者でもない。
引きつった顔で去っていく彼らの後ろ姿を見るしかないクララは恥ずかしい染みを床に作っていた。




