激痛
体が激しく地面に叩きつけられるが、そのまま転がりながら受け身を取る。首を折らないよう、体を丸め、顎を引き寄せる。
何も骨折しなかった唯一の理由は、単純な事実にある。
飛ばされた方向が真上ではなく、前方に角度がついていたことだ。その勢いのおかげで、致命的な部分を折らずに済んだ。
キュロスとナヴィの前方に着地する。
二人は一瞬のうちに追いつく。キュロスは全力疾走で、ナヴィは鞘に手をかけながら。
言葉は交わさない。時間がない。
振り返る。
機械は減速していない。
その手足は液体のように動く。つっかえもなく、遅れもない。ほとんどの生物よりも滑らかに動き、その滑らかな触手が、まるで怪物じみた蜘蛛のように自らを前方へと投げ出す。普通、機械であればA地点からB地点へ移動する際に何らかの停滞した動きがあるものだ。それが自然なはずだ、他の生命体によって作られた「生命体」という機械の性質を考えれば。
「前だ、カイト! 次の層に通じる洞窟がある!」キュロスが叫ぶ。
視線を前方へと戻す。
あった。
丘の麓に刻まれた、暗い開口部。この完全な混沌からの避難場所。洞窟は数メートル先だが、このペースを保てば辿り着けるはずだ。他の二人も、なんとか間に合ってほしい。
あと数歩だ。
心臓が高鳴る。パニックが薄れ始める――
上を見上げるまでは。
青いレーザーが、洞窟の入り口にまっすぐ照準を合わせている。ビープ音が再び高まっている。より大きく。より速く。
入り口を撃つつもりだ。
俺たちを閉じ込めようとしている。
歯を食いしばり、脚に無理やり速度を上げさせる。光の脈動がさらに明るくなる。目がぎゅっと閉じる、風が眼球の隙間を引っ掻いていく速さのせいで。
脚がアドレナリンで爆発する。だが、悲しいことに、遅すぎる。
必死さが、胸の中を這い上ってくる。
何か、何か方法があるはずだ、何か手段が――あの一撃が着弾する前に――
呪文だ。それが、この状況を切り抜ける唯一の方法だろう。頭の中で、ナヴィが風の呪文で木を切り倒したときのことが蘇る。エアロ何とか。彼女はそう呼んでいた。
ついに洞窟の入り口にたどり着き、足を滑らせながら体を無理やり止める。振り返り、全身を混沌の方へと向ける。
肩越しに視線を送る。彼女には機械との間に十分な距離がある。呪文を放つには十分な距離だ。
「ナヴィ!!! お前の風の呪文で、あの木を切り倒せ!!」
叫ぶ。息を切らしながら、呼吸のたびに唾が口から飛び出る。
ロボットに直接使えとは言わない。もし彼女がそれを試していないなら、何か理由があるはずだ。効かないとわかっているか、あるいは、それを確かめたくないかのどちらかだ。
彼女はためらわない。踵を返し、ナヴィが親指で人差し指を弾く。ひとつの、自信に満ちた動作。まるでガンマンが銃の撃鉄を起こすかのような。
「エアロニス2、斬!!」
その詠唱が、刃のように放たれる。彼女の指先に、白い弧が瞬時に形成され、空気が一点に収束していく。圧力が高まり、ゆっくりと充填されていく。
そして、それが発射される。
一瞬の残像。空を切る閃光。木々に向かって、目で追えないほどの速さで突き進んでいく。
これは賭けだ。すべてがこれにかかっている。木々は特定の角度で倒れなければ、ロボットの照準を塞いだり逸らしたりできない。理想を言えば、完全にその上へと崩れ落ちてほしい。
ナヴィはわかっている。彼女が狙うのは幹そのものではなく、右上――その倒れる角度を調整するための一点だ。
もし少しでも外せば……それで、すべて終わりだ。
一滴の汗が、俺の手を伝う。
キュロスがついに追いついてくる。俺の隣に滑り込み、目はこの展開している瞬間に釘付けになっている。
それはほんの数秒の出来事なのに、緊張によって引き伸ばされていく。時の刻みひとつひとつが、前より重くなっていく。ロボットは前へと突進し続ける、その目的は俺たちを殺すことだけに定められている。
そして――
森から、深く裂けるような呻き声が響き渡る。5本の木が震え、傾き始める。
それらは、まさに機械の目の前にある。だが、機械はそれらを通過するまで、あと数フィートもない。
「頼む……頼む……」呟く。指が、見えないサイコロを転がそうとするかのように震えている。
すべてはタイミング次第だ。百万分の一の賭け。
いや、ただの博打だ。
そして――
ドガアアン。
木々が倒れる。激しく。5本の巨木が一斉に崩れ落ちる。轟音とともに、大地を揺るがす衝撃が空気を伝わっていく。土埃と折れた枝の雲が、着地点から噴き上がる。開けた場所を、煙の柱が覆い隠す。
一本のビームがそれを切り裂く。最後の必死の一撃。近くの木を貫き、粉々に爆発させる。
脚が、地面に溶けていくような感覚がある。押し込んできた疲労が、ついに脳へと押し寄せてくる。
完全に疲れ果てている。
だが、首を振る。休んでいる場合じゃない。まだだ。まだ立っている。それだけが重要だ。
「よし、行こう、ここで時間を無駄にしてる場合じゃない!」
隣でキュロスが頷く。
振り返り始める――そして、止まる。
何かがおかしい。
何か、極めて重要なものが欠けている。
振り返る。ナヴィが足を引きずっている。洞窟からはるかに遠い。あまりにも遠い。
視線が彼女の足へと落ちる。それが見える。
血だ。
濃い赤の筋が、脚から地面へと伝い、光の中で濡れたように光っている。
そして、それに気づく。
ギザギザの木片が、彼女の脛当てと足の間に食い込んでいる。完全に貫通している。深く。あらゆる意味で不運な一撃だ。
彼女の背後で、歯車が回る音が再び響き始める。
軋み。唸り。
そして、警報が鳴る。
『「船体、損傷確認。健全性:98%。作戦、再開」』
歯を食いしばる。
「頼む、ナヴィ。急いでくれ」
だが、彼女は頑張っている。よろめきながら前へ、自分自身を引きずるように進んでいる。その足取りは痛々しい。傷があまりにもひどい。彼女は間に合わないだろう。
洞窟の方へと視線を戻す。
逃げることもできる。今すぐ逃げられる。俺とキュロスなら。間に合うだろう。
奴隷の首輪を俺に付けた人間のために、本当に命を懸けようとしているのか?
首元の金属の輪に手が触れる。俺を繋ぎ止め、支配する、あの輪に。
彼女に、何か借りがあるのか? チャンスすら与えられる前に、俺の自由を刈り取った人間に?
可愛くても、可愛くなくても。優しくても、優しくなくても。彼女は俺に対して、間違ったことをした。
彼女が崩れ落ちる。
その顔がすべてを物語っている。無言の苦痛。
地面で震え、腕を前へと伸ばしている。まるで、その哀れな這うような動きが、自分を運命から救ってくれるとでも言うかのように。
くそったれ。
「キュロス、ここにいろ」吐き捨てるように言う。
彼はためらう。「急いでください、カイト。あの生物、起き上がろうとしているようです」
一度頷く。それから、覚悟を決める。
必要なのは、突然のエネルギーの爆発だけだ。頼む、体よ。今までにないくらい血を送り出してくれ。この障害を越えなければ。誰かを助けるんだ。俺を裏切るな。
頭が痛い。脚が疲労で震えている。先ほどの衝撃で腕が痙攣する。
深く息を吸う。この痛みには対処できる。それは消えないだろうが、吸って吐いてを繰り返せば、辛うじて耐えられるレベルになる。
そして、今、俺に手に入るのは「辛うじて」がすべてだ。
動く。
後ろ脚が、弾丸のように前方へと俺を打ち出す。背中を弓のように、C字型に反らせる。体が突き進む。腕が振れる。神経が発火する。すべてがかかっているかのように走る。
実際、すべてがかかっているんだから。
煙の背後で、機械が立ち上がる。倒れていない。今や、以前の倍ほど怒っているように見える。手足が、俺を殺そうと必死な蛇のように振り回されている。
それが、俺を見る。
その一つ目が俺に固定される。おそらく、俺を最優先の標的として指定したんだろう。それから、それが走り始める。
ナヴィは、機械からおよそ8メートル。俺からは4メートル。
このロボットがナヴィを攻撃していないのは、単に、この時点で彼女がまったく脅威にならないと認識しているからだろう。
俺の最速なら、1メートルを0.3秒足らずで進める。つまり、彼女に到達するには1.12秒。
だが、あいつは俺より速い。
同じ時間で、俺の倍の距離を進める。
俺は機械と競争している。
またしても。
まあ、この時点でもう止まれるほど余裕はない。ここから先に進むしかない。
脚が大地を叩く。肺が空気を求めて悲鳴を上げる。世界がホワイトノイズになっていく。フォームが崩れ、両手が必死に前後に振れる。
あと数秒!
機械がさらに近づく、今やナヴィからわずか2メートルの距離だ。警報が鳴り響く、まるで彼女に迫る破滅を俺に警告しているかのように。
歯を食いしばり、脚をさらに押し出すために自分の全てを使う。
ついに、彼女に近づく。
不利な状況にもかかわらず、彼女に届く。届いたんだ。
だが、まだ終わっていない。乗り越えるべき障害がまだある。
今度は、戻る道を走らなければならない。
少女は倒れ込み、弱々しく、震えるような荒い息を口から漏らしている。血が脚の周りに溜まり、その赤い輝きが太陽よりも眩しく燃えている。
「カ……」
彼女が言えたのは、それだけだった。
彼女を抱え上げる。左腕を膝の下に、右腕を背中に。
彼女は重くない。
俺を止めるほどには。
再び、走り出す。今しかない。もし一瞬でもよろめけば、二人とも死ぬ。
魔法と驚異に満ちたこの世界でも、俺は結局のところ、ただの息を切らした人間に成り下がり、最終的には純粋な力と生命力だけを頼りにしている。
人間というのは、絶望的な状況に直面したとき、みんな結局この最も原始的な本能へと戻っていくものなんだろう。
どんな技術を手に入れても、あるいはこの場合は魔法でも、俺たちは結局、これらの基本的な感覚へと戻っていく。ある意味、それは目からウロコが落ちるような発見だ。俺たちの時代の年寄りたちが、正しかったんだと知って。
スマホが動かなくなったら、俺たちはどうやって連絡を取り合うんだ? 銃が詰まったら、どうやって戦うんだ? あるいは、この場合、魔法が解決策にならないとき、どうすればいい? それはすべて、たったひとつの単純なことで答えられる問いだ。
棍棒を振り回す、あの愚かな生き物へと逆戻りすること。
粗野だが単純な解決策だ。俺を見てみろ、魔法で俺を何千切れにも切り刻めるであろう少女を抱えて、巨大なロボットから逃げている。
ある意味、なんとも詩的だ。何の能力も持たない男が、二つのファンタジーの世界の間の中間点にいるなんて。
呼吸がぎざぎざになっている。服が糊のように体に張り付いている。汗が油のように肌にまとわりつく。世界が回転している。
だが、止まらない。
頭の中で、すべてがひとつの文に煮詰められる。
ナヴィを安全な場所へ運べ。
洞窟にたどり着け。
ナヴィを運べ。
走れ。
走れ。
腕が今、血にまみれている。彼女の脚から。ズボンへと滑り落ちる、熱くねばついた血。
一瞬、視線が下へと落ちる。
少女の表情は、まるで消えていく寸前の誰かのようだ。目がゆっくりと閉じていく、俺のシャツを握りしめながら。小さな喘ぎが、口から漏れる。
くそ。動脈に当たったかもしれない。
震える手を使い、木片を安定させようとする。これ以上の損傷を防ぐために。
背後の警報が再び鳴り響く。より大きく。より鋭く。機械的に。
ビープ。ビープ。ビープ。
標的、ロック。
照準。
キュロスが洞窟の入り口に立っている。待っている。おそらく、俺たちが無事に辿り着けるよう祈っているんだろう。
もうそんなに長くは待たせない。
入り口が見える。もう少しだ。
だが、またしても、現実は俺の願いに従わない。最後のビープ音が鳴り響く。レーザーの甲高い叫びが空気を切り裂き、洞窟の頂上を撃つ。
「くそ!」
洞窟が震える。天井にひびが入り始める。小石が転がり落ちる。崩落が来る。
もう時間がない。これ以上走り続ければ、間に合わない。くそ、くそ。
残された選択肢はひとつしかない。これに失敗すれば、俺は死ぬ。
最後の一息を吸う。
そして、跳ぶ。
脚がバネのように押し出し、残った力のすべてを、たった一度の跳躍に注ぎ込む。空中で体を丸め、ナヴィをしっかりと抱きしめる。
洞窟が、まるでずっと息を止めていたかのように、俺たちの背後で爆発する。
石が凄まじい波となって崩れ落ち、土埃が洪水のように押し寄せる。外の世界がその向こうに消え、一瞬の暴力的な動きの中で封じられる。
俺たちは激しく地面に叩きつけられる。
岩の床を滑り、腕と肘の皮膚が裂けるが、ナヴィを離さずにいる。彼女が俺と一緒に地面に叩きつけられないように守りながら。
俺が顔を上げる間もなく、キュロスはすでに俺の傍らにいる。一言も発さず、彼はナヴィをそっと俺の腕から取り上げ、近くの岩に寄りかからせて横たえる。俺の腕はだらりと脇に垂れ、無理に酷使したせいで痙攣している。
彼が俺の方を振り返り、指を差す。
「カイト……あなたの、腕……」
そのとき、それが襲ってくる。
激痛が脳をまっすぐに貫く。白熱していて、容赦がない。叫びすらできない――体があまりにもショックを受けすぎて、反応できないかのようだ。
視線を下げる。
前腕の皮膚が、あちこちで剥がれている。緩んで裂け、濡れた紙のように垂れ下がっている。その下では、生々しい肉が脈打っている、暗いピンク色で、摩擦によってらせん状にねじれている。何箇所かでは、筋肉から脂肪が泡立って盛り上がっているのが見える。骨の白さが、残酷なオチのように覗いている箇所すらある。
……恐ろしい。
それが全部、たった一度の衝撃から。彼女を岩にぶつけないよう守ろうとしただけで。
激痛が走る。吐きそうだ。
軽く自分の頬を叩く。今はそんなことをしている場合じゃない。今、自分を憐れんでいる余裕はない。
「俺のことは気にするな」あえぎながら、言葉を絞り出す。胸が大きく波打つ。体が今にもシャットダウンしろと叫んでいるが、その許可を出す気はない。今は、純粋な本能だけで動いている。
背後の瓦礫から、また轟音が響く。柔らかく、リズミカルに。ほとんど……催眠的に。
振り返る。
ロボットだ。掘り進もうとしている。だが、これだけ崩れ落ちた量を考えれば、すぐには入ってこられないだろう。
「持ちこたえるはずだ」呟き、ナヴィの方に向き直る。「確信してる」
天井の亀裂から、見るのに十分な光が差し込んでいる。十分とは言えないが、足りている。
キュロスが彼女の脚のそばにしゃがみ込み、すでに脛当てを剥がし、自分のマントの一部を爪で引き裂いている。その動きは慎重で、正確だ。熟練している。
「彼女、大丈夫か?」尋ねるが、答えはすでに彼の動きに表れている。
彼は首を振り、まだ作業を続けている。今までにないほど集中している。それに気づく。
ナヴィが痛みにうめく、彼が傷を調べる間。彼女は音を立てないようにしているが、その顔が本心を裏切っている。全身が、巻かれたバネのように緊張している。
ようやく、傷をきちんと見る。
木片――いや、まるで杭のようなものが、彼女の脚に埋まっている。周囲の皮膚は黒ずみ、紫と赤に腫れ上がっている。血がふくらはぎを伝い、彼女の下の岩に染み込んでいる。
「キュロス……」ゆっくりと切り出す。彼の爪が浮いているのを見つめながら。「これ、引き抜いても大丈夫なのか?」
「もし大丈夫なら、すでにそうしています」彼が、俺の方を見ずに答える。「ですが、私の手は――」彼はそれをわずかに持ち上げる。
「――滑らずに掴むことができません」
そうか。彼の爪はあまりにも鋭く、あまりにも柔軟性がない。曲げることはできても、人間ほどには曲げられない。
木の角度も不自然だ――少しでも間違った動きをすれば、引き抜く際にさらに筋肉を裂いてしまうかもしれない。
ためらう。これから何を頼まれようとしているのか、わかっている。そして、それを失敗したらどうなるかも、わかっている。
彼には知識がある。俺には手がある。二人で協力できれば、この状況全体が過去のものになるだろう。
それでも……
「俺にできると思うか?」
キュロスはしばらく無言だ。それから、ゆっくりと頷きながら、ついに言う。「できるでしょう。ですが、どうか慎重に。しっかりと固定してください。ひとつ間違えれば、出血が悪化する可能性があります。動脈に達しているようです」
頷き、ナヴィのそばに膝をついて前へと進む。
近づくほど、状況は悪く見える。腫れがひどい。皮膚が熱い。彼女の体がすでに震えているのを感じる、もうすぐ熱が出るかもしれない。
彼女の顔をちらりと見て、すぐに目を逸らし、えずく。
今でも、彼女と向き合うのは辛い。それが嫌だ。彼女が苦しんでいるとき、その顔を見ることにトラウマがある。
「悪いな、ナヴィ」呟きながら、視線を傷へと移す。「これ、痛いぞ」
反応はない。ただ、眉のかすかな痙攣と、食いしばられた顎だけ。
袖の端を裂き、ねじり、彼女の口に押し当てる。
「噛んでろ」
彼女はかろうじて口を開く。弱々しく、震えながら。優しく押し込む。
息を吸う。
木片を手で包む――そして即座に後悔する。小さな棘が何十本も手のひらに刺さるが、離さない。握りを固定し、木を安定させる。むしろ、それが握りを助けてくれる。
抵抗が凄まじい。
引っ張ったときの音、それは湿っている。濃厚だ。ゆっくりと軋むような吸引音、まるで泥の中でクラッカーを砕いているかのような。
彼女がうめき、目に涙が浮かぶ。すぐに顔を背ける。
引っ張り続ける。
もう片方の手で彼女の脚を固定し、動かないようにする。彼女の筋肉のあらゆる震えを感じ取れる。彼女が俺の肩を掴む。弱々しいが、それは彼女がまだここにいて、まだそれを感じていることを俺に伝えるには十分だ。
「もう少し……」呟く。
木片は思ったよりも長い。簡単には抜けない。骨をかすめ、筋肉の奥深くまで沈み込んでいるに違いない。
血が今、腕を伝っている。彼女の血が、俺の血と混ざり合いながら。
「頼む」歯を食いしばりながら唸る。
最後の一引き。
木が最終的に引き裂かれると同時に、突然の血の噴出が溢れ出る。彼女が発する音は生々しく、痛みに満ち、ほとんど原始的だ。
キュロスが準備万端で、布を強く押し当て、包み、封じ、驚くほど優しく圧力をかける。
手の中のものを見下ろす。
木片は、ほぼ30センチもある。
信じられない思いで、それを見つめる。
彼女の脚を完全に貫通していてもおかしくなかった。貫通しなかったのは、奇跡だ。
それを脇に投げ捨て、痛みにうめく。腕が本格的に俺に重くのしかかり始めている。世界が踊り出し、感覚が麻痺していく。
頭が右へ左へと揺れ、安定させようとする。
めまいがする、息が切れる。あらゆる頭痛の母だ。
くそ、すべてが一気に追いついてくる。
体を後ろに倒し、痛みを和らげようとするが、悪化するばかりだ。頭を抱え、目の前の光景を見つめる。キュロスがナヴィの脚の包帯をきつく締め、血圧を止めている。
顔に一陣の風が当たる。まるで、空を飛んでいるかのような感覚だ。
ああ、そうか、俺の頭が落ちていってるんだ。
世界が、暗くなっていく。




