代価
第三十話
「ケイン先生! これ以上やったら、背中が折れると思います!!」
「黙れ、この寝ぼすけ! 泣いてばっかりじゃ、いつまで経っても成長しないぞ! それと、女性を『重い』なんて言うんじゃない!」
「ケイン先生! なんで『寝ぼすけ』ってあだ名、ずっと定着してるんですか!?」
「あんたがいつも、あと二回瞬きしたら寝落ちしそうな顔してるからだよ! さあ、あと24回!」
「ケイン先生! なんでサミュエルの背中に座らないんですか?! まあ、それだと重すぎ――」
「今のなし!! あいつ90度キープの拍手プッシュアップやってるから!! あいつの上に座れ!! っていうか、あたしもあいつの上に座ろうかな!」
「お前はケツ下げたままにしろ! しゃべってる分、余計にエネルギー使ってるぞ!」
うめく。
みんな、こんにちは、俺の名前はカイト。17歳で、趣味はゲーム、筋トレ、それに同年代の連中がやってるような何やかや。責任と役立たずでいることが嫌いだ。好きな食べ物はピザ。うーん、これ以上退屈じゃない自己紹介の仕方が思いつかない。
2ヶ月前、俺はある種の事故で死んだ後、この世界に送られた。それが正確に何だったのか、はっきりとは思い出せないが、殺されたということはわかっている。それ以来、俺は「チェックポイント」を設定し、殺されるたびにそこに戻る能力を保持している。それは「デス・デトゥア」、略してDDとして知られている。
俺には他にも超自然的なことがいろいろ起きているけど、それは自然と話に出てくるだろう。
それ以来、俺はセイブル・ヴェイルという名の傭兵集団に奴隷にされ、彼らのために働かされている。それは首の首輪からも明らかだ。
ヴァロス/ゴブリンの騒動全体から、もう2ヶ月ほど経つ。俺たちは指名手配のキングピンだったゴルスロ・ヴォララを、どこかの適当な刑務所に引き渡し、見られる前にその場を離れた。その結果、ヴァロスの人々との契約――ゴルスロを捕らえるという――を完了し、大金を受け取った。その報酬は、関わった全員でプールされた。
「俺たち」ってずっと言ってるのは自覚してる。
ヴァロス、というかノロヴィア全般について言えば、最後に聞いた話では、たくさんのことが起きているらしい。
腕の緊張を少し解き、体を下げる。汗が上半身裸の体を伝い、下の土に滴り落ちる。臭い。
まず、ヴォラリアン帝国は、あの一連の乱闘の後、ヴァロスの町全体を乗っ取ることに成功し、それを都市へと改造する計画を立てているらしい。もしかしたら、両方の名前に「V」があるからかもしれない。
だが、これはソラヤ政府とはうまくいかなかったようで、彼らは自分たちの土地から出ていくよう要求した。ヴォラリアはそれを拒否し、実質的にヴァロスをソラヤの残りの国から遮断することを決めた。だから彼らは事実上、ソラヤから一部分を切り取ったことになる。俺が理解している限り、ヴォラリアはスター・ウォーズの銀河帝国みたいなものだ。彼らには奇妙なナチス的な雰囲気があるが、「ああ、こいつらナチスだ」って言い切れるほどではない。それでも、鉄拳のような支配力があって、急速に拡大している。誰も彼らの目的を知らないけど。
ソラヤ政府については、実は驚くほど弱くて、それは予想外だった。でも今、ヴォラリアが基本的にノロヴィア――彼らの州――の3分の1を盗んだから、政府はそれに対して軍を動員しようとしている。問題は、ヴォラリアには同盟を組んでいる仲間の国々が大勢いることだ。だからもしソラヤが攻撃を決意したら、確実に押し潰されるだろう。
正直、なんとも滑稽な話だ、世界中に終末的な霧が渦巻いているのに、人間はそれでも互いに揉め事を起こす方法を見つけるんだから。まあ、なんで今こんなにソラヤのことを心配してるのか、よくわからないけど。
俺たちは今、ラゴミアと呼ばれる国にいる。
俺が理解している限り、南アフリカがアフリカ大陸の中にあるようなものだ。その「大陸」はヴォルティアで、それはこれまでで最大の王国のひとつの名前でもある。ラゴミアとヴォルティアの間には巨大な国境がある。おそらく、互いにそんなに仲が良くないんだろう。
まったく、この世界の王国と帝国の区別には、いまだに混乱させられる。セイブル・ヴェイルのメンバーの一人、コルスがそれを説明していたのを覚えているが、船の旅の間、俺は寝落ちしかけていた。
どんな船旅かって? まあ、ソラヤからラゴミアまでのやつだ。確か14時間くらいだった。あまり自信はない、もう1ヶ月くらい前のことだから。
『ソラヤを離れたなら、なんで今も同じ屋敷にいるんだ?』って聞くかもしれない。誰かが聞くのも当然だ。当然、その答えは、何らかの魔法の呪文と関係がある。どうやら、ガイドロス系の呪文――岩の呪文――に精通していれば、物体をより小さな版に圧縮できるらしい。
それが実際、セイブル・ヴェイルがどうやって移動しているかの方法だ、彼らは文字通り、自分たちの家を持ち歩いている。それは――
「遅くなってるぞ! それにケツ上げたまま、フォーム直せ!」
俺の背中に座っている、コートを首にかけている女性は、他でもない、セイブル・ヴェイルの事実上の隊長、カエリラ・ケインだ。まあ、少なくともこの特定の支部の――後で説明するけど、情報が多すぎる。
サミュエルが俺を見つめる、満足げな表情を顔に浮かべながら。首にタオルを巻いていて、両手でそれを握っている。彼は自分のトレーニングを終えている。サミュエル・ヴォララ、ゴルスロの息子。彼は人生のほとんどを、ゴルスロの息子として彼のもとで暮らしていたが、ある時点で絶え間ない快楽主義にうんざりし、セイブル・ヴェイルに加わりたいと思った。彼は自分の動機を俺に明かしていないから、なぜ加わりたかったのか、正直よくわからない。
もしかしたらいつか、彼は堂々と立ち上がって「火影になりたい!」って叫ぶのかもしれない。
トレーニング。それが、この20日間俺たちがやってきたことだ。他のどんな凡人もそれを「訓練」と呼ぶだろうが、ファンタジーの文脈から言えば、そういうものは、自分の力を強くしようとするような何かだろう。
俺たちはただ筋肉を鍛えているだけだ。ケイン先生によれば、俺には「引き締まった筋肉」が足りなくて、自分にとって「かさばりすぎ」だったらしい。だから、俺たちは自重トレーニングと有酸素運動をより多くやってきている。これは、もうすぐ発生するであろう状況において、より柔軟に対応できるようにするためだ。
なんで俺たちが訓練しているのか? 説明しよう。
「んぐぅぅぅっ!!!!!!」
歯を食いしばり、両手で地面を押しのけようとする。胸と上腕三頭筋が燃えている。
「ラスト一回、寝ぼすけ!」
腕が狂ったように震えているが、最後の力を振り絞り、なんとか自分を持ち上げる。それから大きく息を吐き、腹這いに崩れ落ちる。草が落下を和らげてくれて、少しの休息を得られる。
「チッチッ。まだ20日しか経ってないのはわかるけど、少しは改善の兆しを見せてもらわないと。あんた、これを望んでたんじゃないの」ケイン先生がため息をつき、俺の背中から降りる。
背中を転がして仰向けになり、見上げる。
今日は晴れている。ふわふわした白い雲が、明るい青空に縁取られていて、その姿がゆっくりと漂っている。彼らは浮かんでいる時間を楽しんでいる、俺たちがここでもがき苦しんでいる間に。呪われた雲め! お前らなんか呪ってやる!
ケイン先生が視界に入り込んでくる、彼女の顔が俺の視界に浮かび込む。
「ケイン先生、俺だってこれを望んでますよ、でも、あなたの『改善』の定義って、俺が超サイヤ人になるとか、そういうやつじゃないですか」あえぎながら言う。
「知らないもの引用するのやめて」彼女がため息をつく。
長い紫の髪が、さらに長いポニーテールにまとめられている。鋭く、それでいて疲れたようなアンバー色の瞳が、彼女の苛立ちを伝えているようだ。大きな黒いダスターコートが彼女の体の背後にたなびいていて、着ようともしていない。あとは長い刀さえあれば、彼女はユズリハだ。
口には煙を吐き出す煙草。肺癌がまるで――
「――ゴフッ!?!」
分厚いノートが俺の胸に落とされ、腹に溜め込んでいた空気がすべて押し出される。
「あんたのノート。必要になるから。返礼として、ついてきなさい」ケイン先生が言い、振り返って歩き去る。それから誇らしげな表情がその顔をよぎる、サムの方へと歩いていきながら。彼女は彼の肩を叩く、彼を驚かせながら。
「よくやった、サム。お前が持ってる潜在能力、マジで天井知らずだわ。行くよ」
サミュエルが俺の方を向く、彼の赤い目が俺の姿に突き刺さる。
「カイトはどうするんですか?」
ああ、俺はどうなるんだ? 俺はただ、嫉妬した赤ん坊みたいに地面を転がってるだけだ。友達を名乗る絶対的な天才に嫉妬しながら。こいつ、まるでサスケじゃないか、くそ!! それに、これで数分の間に三回目の引用だ!!
サムには、この奇妙な規律みたいなものがある。彼は誰も見ていないときでも、いつも練習している。一度、彼の部屋に入ったら、この怪物が机全体を持ち上げながら懸垂式の腹筋運動をしていた。彼は自分の決意に閉じこもっていて、どんなに詮索しても、そこから引きずり出せるとは思えない。
どんな決意かって?
じゃあ、遡ろう、カエリラ・ケインが二人の無名の人間を弟子にした、あの伝説的な話に。
―――――――――――――――――――――――
「うわあああああ!!!!! お願いします、ケイン先生!!」
その女性の脚に飛びついて叫ぶ、それが俺を土の上に引きずっていく。まあ、俺は気にしない。望むものが手に入るなら。
「俺も訓練してください! サミュエルは一発で受け入れたのに! でも俺のことをより長く知ってるじゃないですか!」
彼女の顔は見えないが、眉がぴくぴくしているだろうと想像する。だが、彼女は沈黙している。ふん、残念だったな、黙ってても俺がどこかに消えるわけじゃない。俺は永遠にお前にしがみつくぞ、どれだけ時間がかかっても。
「自分が奴隷で権利がないのはわかってます、でも、もしゲイザーになる方法を学べば、任務でもあなたたちを助けられます!」
ケイン先生が足を止める。
それが彼女を説得する決め手だったのか? セイブル・ヴェイルは工作員でいっぱいの組織全体だと思っていたのに、そんなに深刻に人手が足りないのか?
「ほら! 俺、本当に役に立ちます――」
その女性が振り返り、俺を見下ろす。彼女の目には、判断を下すような雰囲気がある、まるで俺の顔のあらゆる筋肉を査定しているかのように。彼女は俺の肌のあらゆる毛穴を調べている、まるで今にもそれを引き剥がして中を見ようとしているかのように。
「そんなことはどうでもいい」
彼女が俺を指差す。
「教えてカイト。なんでゲイザーになりたいの?」
俺の表情が固まる。両手を地面に置き、自分を持ち上げて、自分の両足で立つ。服についた土を払うことすらしない。俺はその女性への視線を返す。
「強くなりたいからです」
「……」
「その理由がどれだけ馬鹿げて単純か、わかってる?」
「十分すぎるほどわかってます」
「強くなりたい、なぜなら……」
人を助けたいから?
人を助け……たい……
人が……欲しい……
助けるのが好きだ。
それって、強くなりたい理由としては、いい理由だよな?
「……人を助けたい、から……です」
ケイン先生が俺にある表情を向ける。それはまるで俺を見透かしているような表情だ。まるで、そのおもちゃ屋が偽物だとわかっているのに、娘のためにそれでも本物であるかのように振る舞うような。まるで、このドアが本物じゃないとわかっているのに、誰かを笑わせるためにそれでも中に入っていくような。まるで、この患者が病気について嘘をついているとわかっているのに、それでも心の善意から助けてやるような。
わかっている。眼差し。
わかった上での眼差し。
「……」
「あたしが訓練を終えた後、あんたが何をするかなんて、あたしにはどうでもいい。あたしは人を訓練する、その後何をするかは、あたしの責任範囲じゃない」
「それに、行動を伴わない話は嫌い。あんたが初めて手を骨折したとき、その表情を保っていられるかどうかなんて、誰にもわからないもの」
驚く。
ケイン先生が振り返る、コートが背後に引きずられながら。
「2時間後、中庭に来なさい」
俺はそこに立ち尽くす、呆然として。
彼女は俺の動機に対して驚くほど無関心だった。最初、彼女が俺の動機に何か問題があるから拒否していたんだと思っていた。まるで、水に浸かる前に自分の意図を浄化しなきゃいけないみたいに。
でも、彼女は気にしない。
彼女は気にしない。
―――――――――――――――――――――――
さて、時を進めて、俺はゲイザーになるためにサミュエルと一緒に訓練してきた。
今、俺たちは、都合よく隣同士にある切り株に座っている。ケイン先生は向かいに立っていて、その隣には黒板がある。それは深い緑で、チョークは赤だ。うわ、ずいぶん違うな。
自分のノートを準備する。
俺のノート。
これをもう1ヶ月持っている。とはいえ、実際にはあまり多く書いていない。書いたのは、庭の道具の場所、部屋の位置、それに屋敷の一般的な地図くらいだ。ああそうだ、それに住人たちの食べ物の好き嫌いも。
うわ、今考えると、俺はしばらくこの敷地から出ていない。ここではずっと、ケツを酷使するか訓練するかしかしていない。スケジュールのせいで、他には何もしていない。
サミュエルは奴隷じゃないが、時々ホムンクルスの手伝いをしている。ホムンクルスって誰かって? 彼らは、俺たちの訓練セッションを手伝う、粘土でできたアンデッドのマッチョな連中の集まりだ。彼らはセキュリティとして機能しているが、どうやら筋トレとなると我慢できないらしい。
彼らのほとんどは実際、今まさにケイン先生の後ろにいる。その場で足踏みしていて、自分を鼓舞するために叫んでいる。彼らの「リーダー」は、他でもない、あの男、あの神話、あの伝説だ。ドリエウス、レオニダスの兄弟。そう、あのスパルタの王だったレオニダスと同じ、あのレオニダスだ。
こんなにねじれた世界でも、俺の世界からの神話と伝説が存在すること――もっとも、まあ、ねじれているが――は、とうの昔に確立されている。レオニダスの兄弟、ドリエウスについて考えるとき、人々は戦いを愛する、強いスパルタ人を思い浮かべるだろう。
ドリエウスは確かにそうした特質のいくつかを持っていたが、戦うことを嫌っていた。代わりに、彼は自分自身を限界まで向上させ、他者と協力することを信じていた。共に、全員が最大限の力を発揮し、共に働くことを。
ドリエウスは、ある時点でケイン先生に殺されたこともあり、それが彼が粘土の体で蘇ることに繋がった、それはケイン先生の能力に関係している。
能力と言えば……
「パターン」ケイン先生が始める、棒人間の周りに大きな円を描きながら。
「誰かこれについて知ってる?」彼女が尋ねる、口から煙草を落とし、それを下の地面に落ちるがままにしながら。彼女はそれを踏みつけ、残った燠火を足でひねり出す。
自分のノートをめくり、その定義を見つけようとする。それが何なのか漠然としたイメージはあるが、できる限り正確に答えたい。
「それはあらゆるものを取り囲み、構成しているものです」サミュエルが割り込む。
うめく。
「曖昧な答えだけど、その通り。あたしたちが呼んでる『パターン』は、宇宙の『ブロック』だと理解されているもの。その曖昧な名前の理由は、それが個人によって異なって知覚されるからよ」
ケイン先生が大きな円の中に多数の点を突く、その分布を気にすることなく。それから彼女は黒板にもたれかかる。
「パターンの中には『ホローポイント』がある。特定の個人によって攻撃されると、それらで構成されている物体は瞬時に破壊されるか殺される」
両手を上げる。
「じゃあ、その論理で言えば、その弱点があらゆるものを構成しているなら、何でも殺せるんじゃないですか?」
「いや、馬鹿な質問ね」
ため息をつく。
ケイン先生が続ける、チョークを回転させながら。「ホローポイントには『興奮』状態と『静穏』状態がある。興奮すると、大きさが増し、相互作用が可能になる。『静穏』だと、信じられないほど小さく、命中させるのが難しい。ほとんどの物体や無生物の場合、ホローポイントは静穏なままでいる。例えば誰かが壁を倒したいなら、単純に力ずくでやった方がいい」
サミュエルが手を上げる。
「ホローポイントは生物の方がより顕著で、状態を切り替えやすいと聞きました」
ケイン先生が頷く。
「そうよ。例えば、ワイバーンと戦ってるとしましょう。その知性の低さと異形種としての地位のせいで、そいつのホローポイントは興奮したままになってる。あいつはより馬鹿だから、怒ったままになる。殺しやすい。倒すのは簡単じゃないけど、より楽ではある。訓練された理知的種族と戦うよりはね。理知的種族の方が難しい、激しい戦闘中も冷静さを保てる能力があるから。あんたが他の男と戦うとき、興奮状態と静穏状態のホローポイントの比率は、だいたい1対40くらい」
彼女がチョークを回転させる。
「相手がパニックになり始めたり、怒り始めたりすると、その比率、つまりバランスが崩れ始める。興奮したホローポイントがどんどん増えていって、それがそいつの終わりに繋がる」
彼女が円を消し、棒人間だけを中央に残す。
「さて、ゲイザーになるための要件について話そう。ここが、俺たちがこれまでやってきたことが関わってくるところだ」
彼女が棒人間に向かって伸びる二本の線を描く。最初の方に、彼女はラベルを書く……ラベルを書く……
彼女が何を書いているのか、俺にはさっぱりわからない。俺は、俺がこの世界に送られたときに何が起きたのかは知らないが、セイブル・ヴェイルが話すラテース語を話せる、でも読み書きはできない。俺は実質的に文盲で、恥ずかしさから、誰かに教えてくれと頼んだこともない。もしかしたら、アザと一緒に学ぶことになるかもしれない、俺が意識を失っているとき時々送られる、あの邪神の領域で。
彼女が最初の線に何かをラベルし、言う――「フィジカル」。
それから二番目の線にラベルし、言う――「コウホウ」。
「さて、フィジカルについて見ていくわよ。他の大半のトレーナーはこれをあまり重視しないけど、あたしはする」
彼女がシャツをたくし上げ、彫刻のような腹筋の列を露わにする。マジで、あんまり鋭くて、あれで石を研げそうなくらいだ。いや、ナイフを研げるくらいだと思う。
「フィジカル、つまり体の訓練。これは持久力、柔軟性、スタミナとして現れる。ほとんどの場合、相手に接近することになるから、これが重要になる。あんたたち二人の訓練はまだ終わってないけど、大まかに言って、刺されても叫ばないくらいまでは持っていけたし、挑発に簡単に乗らないくらいにもなった」
「ケイン先生、なんで俺のことにらんでるんですか?」俺が言う。
「フィジカルフィットネスについては、これ以上説明する必要はないと思うわ。次はコウホウね」ケイン先生がチョークでそのラベルを指す。
「『これ以上』ってどういう意味ですか?! なんでそんなにすぐ話題を打ち切るんですか!?」叫ぶ。
「二つ目の要件:コウホウ。コウホウは、パターンの基本操作として理解されてる。『アルカナ』は、コウホウが動く『油』ね。それはほとんど専ら俺たちの体の中にある、散らばってはいるけど。もっと消化しやすく言うなら、泳ぎを覚えるときに水の中で足をパタパタさせるようなもの。あんたの足がコウホウで、脚の筋肉がアルカナ。コウホウの呪文は、それぞれの属性と割り当てられた番号で分類される。例えば――」
ケイン先生がチョークを置き、まっすぐに立つ。
それから彼女は自分の手首をつねり、唱える――「パイラエトン2、拡大」
炎が彼女の手首から溢れ出て地面に落ち、彼女が命じた通りに広がっていく。周囲一帯を包み込み、煙がその炎から立ち上る。それから彼女が手首を軽く振ると、周りの炎が消える。
「うわ」呟く。
サミュエルに目をやる。
彼は集中している。
ケイン先生に目を戻す。
「よし、まず一つ目。異形種相手には、コウホウの呪文を攻撃的に使える。これは、彼らのホローポイントが絶えず興奮状態にあって、より早く片付けられるから。でも、実際にホローポイントを見られるゲイザーだけがそれをできる。他の理知的種族相手のコウホウ呪文は、それほど効果的じゃない。実際の戦闘でコウホウを使う唯一の理由は、まったくの初心者か、実用目的の場合だけ」
「二つ目:コウホウの呪文は、初心者でも無闇に乱発できない。もしアルカナが尽きたら、重傷を負うか、それ以上のことになる。それに、物理的な犠牲も必要になるという事実も忘れないで。それどころか、パターンに何かをしたいなら、何かを差し出す覚悟をしておかなきゃいけない」
手を上げる。
「じゃあ、あなたたちの誰かが手を噛んだり指の関節を鳴らしたりしてるのを見たら、それは呪文を唱えてるってことですか?」
ケイン先生が頷く。
「キャストは、物理的な『捧げ物』とアルカナの『捧げ物』を組み合わせるときに起きる。指を噛んで、そこにアルカナを集中させるとかね。呪文の番号が数値的に下がるほど、税は大きくなる。これは『等価の法則』として知られてる。力はタダじゃない。最初は、コウホウの使い方に慣れることを学ぶことになるわ」
すごいな。ついに火の玉とか使えるようになるんだ。
「さて、ここから本題に入るわよ」
ケイン先生が線とラベルを消し、他に四人の棒人間を描く。それから彼女は全員にラベルをつける。最初のものに剣を持たせ、二番目の周りにオーラを描き、三番目の首を歪ませ、四番目に歯を描き、五番目にクエスチョンマークを描く。
「ゲイザー」
姿勢を正す。
「ゲイザーとは、大きな犠牲と引き換えに、自分の目を『開き』、パターンを『見つめる』ことに成功した者たち。それぞれが、ホローポイントとともに異なる知覚をするけど、機能自体は全員に対して同じように働く。ゲイザーは、自分の目の中のホローポイントを興奮させ、パターンを知覚できる。そのパターンは肉眼には見えない」
彼女がすべての棒人間を丸で囲む。
「ゲイザーの分類の中には、カテゴリー、つまり『パス』がある。断裂のパス、魔術のパス、体現のパス、天職のパス、それに信奉のパス」
彼女が最初のものを指す。
「これが断裂ゲイザー、あるいは断裂者。断裂者とは、力を宿し、ホローポイントを攻撃できる武器や物体のこと。その力は『機能』として知られていて、発動させるための要件がある。断裂者になる者たちは、大抵、途方もない個人的価値を持つ物を差し出す傾向がある。家族の家宝とか、親族の遺灰とか。断裂者には数字の『解放』があって、それが力を発動する要件をひとつ解放する。例えば、もしあたしが誰かを凍らせられる槍を持っていて、でも相手が2秒間その場に留まって、それを解放したときにだけ使えるとしたら、あたしの槍は、その要件なしで相手を凍らせられる、ただし時間とアルカナの代償を払ってね。でも、あたしの解放ウィンドウが切れたら、無防備で消耗しきった状態になる。こいつらはコウホウを使える」
彼女が二番目を指す。
「これがタウマイト。タウマイトは、体力の一部を差し出す代わりに、より強いアルカナの蓄えと、より少ない税でコウホウを行える能力、それに、より強力な呪文の解放を得る。タウマイトはまた、体中に散らばったアルカナを収集して圧縮する特別な臓器を持ってる。タウマイトもまた機能を持つけど、自分自身の体の中にね。タウマイトの機能は、断裂者の機能より大きな要件を必要とする、すでにより強力な呪文を持ってるから。タウマイトは進化もできて、ソーサラーの地位に到達する。ソーサラーは、単に、機能に大幅なブーストがかかった、より強いタウマイトのこと。こいつらもコウホウを使える」
ケイン先生が三番目を指す。
「これがアスペクター。こいつらはマジで珍しくて、あんたたちが頻繁に出くわすことはないと思う。基本的に、ある『概念』にあまりにも心酔しすぎて、文字通りそれに変わり、それを自分の機能として使う人たちのこと。ただし、その概念に一致する自分の人格の一面を、代償として常に活動させ続けなきゃいけない。もし切れたら、死ぬ。例えば、もし『解体』の機能を持っていて、それなのに硬直した、率直すぎる人間になったら、あんたは死ぬ。アスペクターは基本的にコウホウとか、他の何も使えない、だから、狂ってでもいない限り、多かれ少なかれ役に立たない」
「もしかしたら、サミュエルは氷とかそんな感じの機能を得るかもね。あいつ、めっちゃクールだから」
「あんたがその冗談を言う前に起きた瞬間のことを、俺はこの先の人生ずっと大切にするでしょう」
「うわぁ……」
「ほら、もうすぐ終わるから、あと二つ。退屈だと思うけど、あんたたち二人には覚えてもらうから」
ケイン先生が四番目を指す。
「これがシェイパー。この人たちは体の一部を差し出して、それが順に、自分の選んだ生き物――ホムンクルスとして知られる――に変わる。あたし自身、シェイパーよ。あたしが持ってるホムンクルスたちが、その証拠」
「どの体の部分を差し出したんですか?」サミュエルが尋ねる。
その女性が左手の手袋を引き剥がす。
それは機械だ。義手。彼女が指を内側と外側に曲げると、金属のカチカチという音が響く。
「うわ、全然気づかなかった」俺がさえずる。
「続けるわね、ホムンクルスたちが機能を保持してる存在。この機能は完全にサポート寄りで、シェイパーを支える役割を果たすけど、ホムンクルス自体も単独で戦える。ホムンクルスはアルカナを保存したり与えたりできて、シェイパーの代わりに攻撃を受けられる。それに、シェイパーはまだコウホウを使えるし、肉体的にも強くいられる、だから、自分自身に頼りたくないなら、これをおすすめするわ」
俺は絶対にそっちを選ばない。
ケイン先生が五番目、最後の棒人間を指す。
「これが信奉者。こいつらは全員の中で一番珍しい。それぞれの王国の中でも、最強の戦士たちだけが信奉者になる。信奉者は天体存在と取引をして、天体存在が何を取るかは、天体存在次第。その結果、天体存在は自分の力の一部を、信奉者に与えることができる、それは大抵、とんでもなくオーバーパワーなものになる傾向がある。でも危険な部分は、独自のパスであるにもかかわらず、信奉者は断裂者にも、ソーサラーにすらもなれるということ。何になれるかに制限がない」
ケイン先生がチョークを置く。
「これ全部を覚えるわけじゃないと思うけど、ここから持ち帰るべき一番大事なことは、自分が何を犠牲にする覚悟があるかによって、パスがあるということ。力は与えられるものじゃない、取引されるものよ。さて……」
チョークが俺の頭に投げつけられる。
寝落ちしかけていた。
「カイト。今まで学んだこと全部、要約して」
頭を掻き、ぶつぶつ言う。全部後で書き留めよう、それがノートに書いてない理由だ。まず、脳の底力を試してみよう。
「俺たちを取り囲む、パターンって呼ばれるものがあります。みんなそれぞれ違って見ています。パターンの中には、弱点でもあるホローポイントっていうものがあります。もしこのホローポイントを打って、かっこいいことをやりたいなら、物を犠牲にする方法と、自分の中のアルカナを管理する方法を学ばなきゃいけません。アルカナは、それを助ける燃料みたいなものです。アルカナはまた、体中に位置してますが、体の中だけです。基本操作、つまりコウホウをできるようになったら、ゲイジングを始められます。ゲイジングとは、目を発動させてパターンを知覚し、ホローポイントを見ることです。そこから先は、大きな犠牲を払わなきゃいけません。これは、ビデオゲームのクラス、つまり『パス』に従うことです」
「よし、サミュエル、続きを」ケイン先生が命じる。
「一つ目は断裂です。個人的な物を差し出す代わりに、機能、または断裂者として知られる能力を扱う武器を得ます。機能を使うには決まった要件が必要です。断裂者には『解放』があり、機能の要件をひとつ解放できます」
二本の指を上げる。
「二つ目は魔法!」
ダガーが俺に向かって投げつけられる。
「チョークはどうしたんだよ!?」叫ぶ。
「――二つ目は魔術です」サミュエルが始める。「体力の一部を差し出す代わりに、『タウマイト臓器』と呼ばれる特別な臓器を得ます、それは体中に散らばったアルカナをすべて収集し、新しい呪文へのアクセスと、体内蔵の機能を与えます。コウホウの等価の法則の負担も軽減されます。タウマイトは『ソーサラー』へと進化できます、それは基本的に、それぞれの機能により強いブーストを受ける、より強いタウマイトです」
手を上げる。
「三つ目は体現です!」また何かの猛攻を予期してひるむが、何も飛んでこないことに気づく。「……アスペクターは、概念と契約する代わりに、自分の自己認識の一部を差し出します。彼らはその概念を絶えず体現し続けなきゃいけません、さもなければ死にます! それに、めっちゃ珍しいです!」
ケイン先生が頷く、驚くべきことに。
サミュエルが手を上げる。
「四つ目は天職です。体の一部を差し出す代わりに、ホムンクルスとして知られる生物を受け取ります。彼らはどんな形にもなれて、大抵サポートタイプです。天職は最も簡単なパスと見なせます、シェイパーはまだコウホウを使えて、肉体的にも強いので」
ケイン先生が両手を組む。
「あんたたち、セイブル・ヴェイルに加わりたいんでしょ?」
俺は加わりたくない。ただ、逃げて自活できるくらい十分強くなりたいだけだ。
サミュエルと俺は頷く。
「じゃあ、ちゃんとしたゲイザーになりなさい! さあやるわよ! 申請が締め切られて、次の仕事が始まるまで一ヶ月しかないんだから、少なくともコウホウくらいはできるようになっときなさい!」
「はい、先生!!」
ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます。ご褒美として、ある出来事をお話しします。子供の頃、牛や山羊みたいに草を食べるのがかなりかっこいいと思っていました。それで、自分の家の前庭でしゃがみ込み、草にかじりつき――激しくむせ始めました。




