瞬き
俺たちの足音が、果てしなく続くかのような廊下に響き渡る、その反響が絶えず自らの存在を主張しながら。ランタンが、どこまでもどこまでも続いている。俺たちの手が左右に揺れ、体はほとんど歩調を合わせるように動いている。
「父の部屋にまっすぐ向かう。こんな緊迫した状況でも、一人で対処できると信じている、アリヴィア、そうだろう?」サミュエルが尋ねる、彼の位置は俺の前、アリヴィアのすぐ後ろだ。彼の両手は緊張しているようで、拳を握りしめたり、緩めたりを繰り返している。
アリヴィアに目をやると、彼女はまったく問題なさそうに見える、緊張の兆候はまったくない。
実際、その場で跳ねているようにすら見える。
正直、これから起きることに、少し不安を感じている。特に、少し前に起きたことを考えると。建物全体を実際に揺るがすほどの、深刻に気になる量の銃撃があった。それに、俺たちの進む方向とは反対に走っていく、同じくらい気になる数の下っ端たちにも気づいた。
サミュエルに何が起きているのか尋ねると、彼の答えは、近くの幽谷から発せられている気になる量の轟音と、ソラヤを包み込むように感じられる奇妙な圧力のせいで、多くの近隣王国が、一体何が起きているのか確かめに来るのが良い考えだと判断したから、というものだった。
これはサミュエルの側の推測にすぎない、父親宛の手紙にアクセスできるわけじゃないから。彼によれば、この戦闘は、何らかの敵対勢力がゴルスロの町への犯罪的影響力を発見した結果、勃発したに違いないという。
要するに、俺たちは捕まる前に、本気で急いで逃げなきゃならないということだ。
傭兵が標的と対峙するときの手順がどうなっているのか、俺にはよくわからないが、他国の政府に捕まりたくはないだろうと想像する。それは法的に、絶対的な悪夢になるだろう、特に、おそらく法的限界ぎりぎりまで絞り尽くしていたであろうゴルスロの場合はなおさらだ。
「対処しなきゃいけない人間はいるのか? 警備とか、そういうやつ」アリヴィアが尋ねる、手は自分の長剣に置かれたまま。それはまだ鞘の中で彼女の背中で跳ねているが、いつでも抜ける準備ができているのは明らかだ。
アリヴィアの能力、いや、機能が何なのか気になる。
「カイトは自分の身を守れるか?」サミュエルが尋ねる、俺の方向に視線を送りながら。「この建物のあらゆる出口は知ってる、でも、もし俺たちがはぐれた場合、自分の身を守れることを確認しておかないと」
彼はジャケットの中からナイフを取り出す、その輝きがその位置を明らかにする。
「ああ、彼は――」アリヴィアが始める。
「俺は自分の身くらい守れる。心配してくれてありがたいけど、俺は十分に対処できる」
「……」
「そうか」サミュエルが折れ、再び前を向く。「急がなければ」
俺たちの足が、急いだペースを刻み始める、足音の速度が二倍になりながら。この廊下がここまでこんなに広かったことに、正直驚く。もう20分くらい動いているような気がするのに、意味のある進展をまったくしていない。
「あとどれくらいだ!?」叫ぶ、疲労が体に染み込み始めている。もう永遠に感じられるくらい眠っていないし、今のところ食べたのは何かのグラノーラバーだけだ。これ以上、こんな激しい活動を続けられる状態にはない。
爆発の音が響き渡り、俺たち三人全員がその方向へと頭を弾かせる。一連の震動が体中に響き渡る、爆発に続いて。待て――違う。地面が前後に揺れている。
何かを倒すほどではないが、それでも気づくほどだ。俺たち全員、それを近隣諸国の侵略の結果だと結論づけているんだと思う、様々な地域を爆撃しているんだろうと。もちろん、そんな状況は悲惨だが、今は、ゴルスロを捕らえることが優先事項だ。
ついに、サミュエルが、大きな鮮やかな黄色の両開きの扉に到達する。刻まれた模様は、まるで蛇の群れが互いに絡み合っているかのようにねじれている。この特定の扉のデザインは、他の同種のものとは異なっていて、それが重要性と権威を示唆している。
「ここが父の部屋だ。俺がこの言葉を発するまで、中で待っていてくれ――」
―――――――――――――――――――――――
外の混沌を見つめながら、ゴルスロは、差し迫った破滅の予感が自分の神経に突き刺さっているのを感じていた。月が周囲の混沌を反射する中、奇妙な自覚が彼の骨に染み込み始めていた。もしかしたら、これは自分に向けられた、何か残酷な神の裁きなのかもしれない。
彼は最初、他の政府に、ヴァロスの中では何も起きていないと説得しようと全力を尽くしていたが――この状況が示す通り――それは結局、無駄に終わっていた。彼の帝国は、彼の周りでゆっくりと崩れつつあった、彼の強欲が、周囲の者たちによって上回られながら。
他のハゲタカたちが、彼が貪っていた死骸の匂いを嗅ぎつけ、自分たちのための分け前を欲しがっていた。
そのハゲタカたちは自らを獰猛な鷲として描いていたが、彼らはただのハゲタカにすぎなかった。
彼の顔に汗の玉が伝う中、彼はスーツケースのジッパーを開け、蓋を上に持ち上げた。中には、事業設立書類、税務ID(しばしば偽造されたもの)、そして事業小切手が入っていた。
彼はデスクの上を見渡し、法的にも個人的にも重要と称する、残った品物がないか探した。彼のデスクは、彼の評判を――これ以上ないほど傷つけられているにもかかわらず――さらに損ないかねない品物、それに、彼の居場所や個人情報に繋がりかねない品物から、すでに一掃されていた。
彼は自分の給料を払っている者たちに、そうした情報を焼却するよう指示していた。それに、叫び声と爆発の音から判断すると、彼のもうひとつの命令も実行されたようだった。彼の命令とは何だったのか? それは、彼の部下たちに、最後の大金を払うと約束し、桟橋で迫り来る敵軍と対峙するよう伝えることだった。誰よりも、ゴルスロは自分の下っ端たちが、まともな戦力にすら太刀打ちできないことをよく知っていて、迅速に片付けられるだろうことも承知していた。
これもまた、彼の計画の一部だった。もちろん、「従業員」たちにそんな大金を約束する際、彼は法的に契約書に署名する義務があった、さもなければ誰かが彼を当局に通報しかねないから。だが、もし片方の当事者が、たとえば早々に死亡したら、契約は無効になる。たとえ何人かの従業員が捕らえられても、ゴルスロは彼らに個人情報を明かさないよう、十分に注意していた。
要するに、ゴルスロは自分の「資産」をすべて海へと投げ捨て、現場から逃げ出そうとしていた。
だが、彼の財産は、すでに長い間ソラヤ全土を通じて、ヴォルティアへと送金され続けていた、そこは大量の資金移動を詮索しない政策で知られていた。
彼の目が空っぽになったデスクサイドを見渡すと、それは一枚の写真立ての上に留まった。
バッグのジッパーを閉め終え、ゴルスロは歩み寄り、その孤独な画像をさらに観察した。デスクに到達すると、彼はそれを掴み、自分の顔まで持ち上げた。
その額縁の中には、小さな少年がいた、12歳以上には見えない、30代のやたら陽気な男の隣に立っている。その小さな少年は笑っていなかった、代わりに冷たい態度を保っていた。彼の父親は、写真を撮っている間、なんとか少年を笑わせようと面白い顔をしていたが、それは決して実を結ばなかった。
この少年は絶えず無感情だった、まるでこの世に何ひとつ彼を感動させるものがないかのように。彼は、おもちゃでも、食べ物でも、娯楽でも、望むものは何でも手に入れられたが、そのどれも彼を驚かせなかった。ゴルスロは、自分の一部がその写真から目を背けようとするのを感じた、その中の少年の視線を避けるために。だが、その考えに従い、写真を下げると……
写真の中の少年が、彼の目の前に実体化した、今や17歳になって。
何も変わっていなかった。少年の態度も、彼の父親の耽溺も。
「こんにちは、父上」
「こんにちは、サミュエル。出発の準備はできたか?」
「……」
「父上、ひとつ聞いてもいいですか?」
「何だ、サミュエル?」
「俺がこうなった理由を知っていますか? 実の息子であるにもかかわらず、俺があなたを常に距離を置いて扱ってきた理由を知っていますか?」
「……」
「いや」
「嘘をついていますね、父上。あなたはその理由を正確に知っている。あなたが言葉にできないことを、俺が代わりに言葉にしましょう」
その少年は、孤独なワインボトルを見つめる、その深紅が彼の目の色を反射している。
「あなたは快楽主義者です。自分の望むものに耽溺し、他者を単なる踏み台としか見ていない。それでも、それでいいのだと自分に言い聞かせている。あなたはそれが間違っていると知りながら、自分の道徳の羅針盤が叫んでいるにもかかわらず、そのような生き方を追求することを選んでいる。それだけじゃない、もし唯一の息子に良い父親であろうとすれば、それが自分のあらゆる罪を上書きしてくれるとでも思い込んでいる」
「――いや。それは違う。俺は……」
壁への一撃。サミュエルがそれを殴りつけていた。
「何が違うんですか? 何が違うんですか!? この時点で、あなたが唯一嘘をついている相手は自分自身だけです!! なぜ、その体に染みついた汚れがあるのに、自分を清らかであるかのように見せようとするんですか!? 教えてください、父上! いや――教えてください、ゴルスロ! あなたは矛盾の塊です、明らかに正常な思考ができるくせに! じゃあなぜ、それでもなお、自分を内側から蝕むものにしがみつくんですか!?」
サミュエルの拳が握りしめられる。
「俺があなたのそばに留まり続けた唯一の理由を知りたいですか、俺の存在すべてがそれに反対だと叫んでいたにもかかわらず?! なぜ俺がまだ女たちを連れてきていたのかを?!」
その少年は自分の「父親」を指差す。
「俺は、俺の人生における唯一の存在、俺の『父親』が、いつかはうんざりするだろうと信じていたからです! いつか父がうんざりして、俺にこう言ってくれることを望んでいた――『サミュエル、俺の息子よ、俺は自分のやり方を後悔している! 俺は良くなりたいんだ、サミュエル!』と。あなたが部屋を出るたびに、その目に浮かぶ表情を見てきました。あなたの顔に浮かぶ後悔を、まるで日中のように、はっきりと見てきました! あなたがうんざりするまで餌を与え続けられると思っていたのに、あなたは決して満たされなかった!」
「それが理由で、俺はまた気づいたんです、たとえそんな理由であっても、他人をそんな風に搾取することは決して許されることではないと!」
ゴルスロ・ヴォララは沈黙を保っていた。
「あなたは成功している! あなたは有名だ! あなたは外側では、それらすべてを手に入れている! でも内側では、あなたは死んでいる! あなたは、他人から搾り取ることに退屈を覚えるほどの境地に達している! あなたにはもう、これ以上の金なんて必要ないんです! 慈善という考えが頭をよぎったことはありますか?! 自分の富を手放すという考えが、頭をよぎったことはありますか!? 息子のための良い手本になるという考えが、頭をよぎったことはありますか!?」
「……」
「あるはずです、あなた自身、それをわかっている! これがいつか自分に降りかかってくると考えたことは?! 自分の頑固な自己認識が、いずれ試されることになると?!」
サミュエルが息を切らす、次の一撃のための息を整えながら。
「もし俺が、あなたに最も近い存在が――いなければ……あなたは決して直面させられることはなかったでしょう。あなたは幸せに、周囲の不幸に無知なまま、生き続けていたでしょう。あなたより下にいる者たちは決して声を上げない、あなたの目には、彼らはただの虫けらにすぎないから」
「俺が日々絶えず経験してきた認知的不協和が、ゆっくりと俺を蝕んでいきました。それでも、俺は前へと進み続けました、俺が持つ唯一の家族と、どうにか繋がろうと必死になりながら。そして、その繋がりのせいで……俺は、これらの犯罪の幇助者になっていることに気づきました。いずれ、その代償を払うことになる何かに」
「でも一番ひどいのは……一番ひどいのは……他人にとって、あなたは暴君です。他人にとって、あなたは黒幕の怪物です。でも俺にとって、あなたは俺の父です。父らしくない父です」
「父らしくない父」という言葉が発せられた瞬間、サミュエルの背後のドアが軋みながら開いた。
その少年は決してそれを口にしないだろうが、彼の「父親」が彼の父であるという理由から、個人的な恨みを超越した家族の繋がりが残っていた。その少年は絶えず父親を非難し、冷たくあしらっていたが、それでも彼のそばに留まっていた。
サミュエルには何の規則もなかった、彼は単に、近隣国へと船で渡ることもできたはずだった。
それでも、彼は決してそうしなかった。
二人の人影が部屋に足を踏み入れた。一人は少年で、撫でつけた黒髪をしていて、奇妙な白いチュニックを身につけていた。それに、もう一人は少女で、彼女の流れる赤髪はポニーテールにまとめられていて、明るいサファイア色の瞳によって際立たせられていた。その少女は手に長剣のようなものを持っていて、ゆっくりとゴルスロの位置へと歩み寄っていた。
「俺は限界に達した、そして今、セイブル・ヴェイルに加わることを求める。俺は決して、ただの籠の中の鳥として満足することはない。もし別の組織が俺を見つけていたら、そこに加わっていたかもしれない、でも、セイブル・ヴェイルだけが、たまたまその唯一の存在だった」
普通なら、ゴルスロはそのような決断に抗議し、なぜ裏切られたのか困惑していただろう。だが、心の奥底では、あの「豚」の隅々を超えたところに、理解があった、その理由への。彼は自分の息子を責められなかった。
ゴルスロ・ヴォララは、写真の中の少年へと目を戻した。その男は、目に奇妙な、湿った物質が形成されていくのを感じることができた。この時点まで沸き立っていた「何か」が、表面に浮かび上がり始めた。「何か」が、その男の腹から、肋骨へ、気管を上って、ついに口へと旅した。
「……俺は、お前の父親じゃない」
「……」
部屋が静まり返った。
「たとえそうだとしても。それは、あなたがこのままの生き方を続ける言い訳にはなりません。残念ながら、俺はまだあなたを俺の父だと見ています」
奇妙なことに、小さな笑みがサミュエルの唇に浮かぶ。
自分の敗北がついに目の前に実体化したことに気づき、ゴルスロは膝から崩れ落ちた、因果応報の波が彼を洗い流していく。ある意味、彼はこれを予期していたが、同時に、していなかった。
「――くっ……俺はお前の父親じゃない……」
「……俺はお前の父親じゃない……!」
「俺は。お前の。父親じゃ。ない!!」
その男はすすり泣きに崩れ落ち、彼の仮面が粉々に砕け散った。
「うわあああ!!」
「俺はただの泥棒だ、身代金として、ある女からお前を盗んだんだ! 俺が今まで見た中で一番美しい女が俺のものになることを拒否したから、その結果として、俺は彼女の第一子を盗んだ! 俺は彼女の息子を盗んだ! でもしばらくして、しばらくして、俺は情が湧いた! 変わりたかった、本当に変わりたかったんだ、くそっ! この子を自分の子として育てたかった! 俺とは違う、立派な青年として育てたかったんだ!!」
その男は両手を地面につき、その泣きわめく嗚咽が部屋中に響き渡る、涙が茶色い絨毯に染み込んでいく。
「でも俺は失敗した!! ひどく失敗したんだ!!」彼の顔が歪む、皮膚が顔の輪郭に沿って巻きつく。
「俺は当然の報いを受けるべきだ! 全部、俺は当然受けるべきなんだ! 俺は毎回、自分を止められなかった! 自分に止めろと言い聞かせようとしたのに、俺の欲望はその警告を無視した! 俺は空っぽの人間の抜け殻だ、中身なんて何もない!! ただその瞬間気持ちいいものを追いかけて、それからすぐに後悔するだけだ!! 全部持ってるのに、同時に何も持ってない!!」
「すまない、サミュエル!! すまない、お前を失望させた!! それも俺を蝕んでいたんだ、どれだけ隠そうとしても!!」
サミュエル・ヴォララは、ゴルスロという名の男の方へと歩み寄った。
黒幕の養子であるサミュエル・ヴォララが、父親の方へと歩み寄った。
絶えず豪奢さに囲まれていた養子であるサミュエル・ヴォララが、父親の方へと歩み寄った。
その父親は、町全体を乗っ取り、支払いを強要した男だった。その父親は、何百人もの女性と寝て、彼女たちを見捨ててきた男だった。その父親は、あらゆる意味において、悪だった。
サミュエル・ヴォララは、その悪い男の肩に右手を置いた。
制御できずにすすり泣いている、その悪い男の肩に。
「父上。今この瞬間、あなたにできる最善のことは、自首することです。もしかしたら未来のいつか、俺たちはそれぞれふさわしい罰を受けることになるかもしれません。でも今は、俺たちにできるのはただ、自分自身を変える努力をすることだけです。あなたにとって、その罰は服役することになるでしょう。俺については、いずれ来るでしょう」
父親がその提案を即座に拒絶することを予期しながら、サミュエルは目を閉じ、猛攻に備えた。
だが、その猛攻は決して来なかった。代わりに、頷きが実体化した。自己満足の防壁を自ら築き上げてきた男からの頷きが。絶えず自分自身と周囲の者たちに嘘をついてきた男からの。意味のある人間関係も、自分が持っていたことすら知らなかった可能性も、その男の傍らを通り過ぎていった。すべては単なる耽溺のせいで。
だが、少なくとも。少なくとも今、その男はついにその防壁から引きずり出され、真剣な自己反省を強いられていた。彼は「息子」に向かって両手を差し出した、理解しているような表情を顔に浮かべながら。
―――――――――――――――――――――――
「うわ、金持ちの気取り屋にちょっと同情しかけたわ」ため息をつき、両腕に頭を乗せる。
今、俺はアリヴィアの隣にいる、彼女は長剣をまっすぐゴルスロの背中に向けている、彼を護送しながら。まだ足取りには多少の元気があるが、以前ほど速くはない。正直、なぜかはよくわからない。まだ周りに敵はいるし、文字通り、彼らが欲しがっているものを今、俺たちが持っているのに。
自分の耽溺を制御できない? うーん、それが腐敗した政治家全員が抱える問題なのか? あまりよくわからない。俺個人としては、自分の生活環境に満足していたから、望むものをすべて手に入れるってどんな感じなのか、決して理解できない、だからよく理解できない。
「奴隷さん、金持ちで孤独なのと、貧乏で人気者なの、どっちがいい?」
「その質問、そもそもどこから来たんだ? それに、今はもっと大事な問題に集中すべきだと思うけど」
サミュエルは俺たちの前にいて、父親と何かについて話している、俺にはよくわからない何かについて。彼が俺たちを裏切るとか、そういうことは特に疑っていない、ここまで来たことを考えれば。あの感情的な会話も、それなら筋が通らない。
「奴隷さん、答えてくれないの? あんたが二つ目の選択肢の、人気者じゃない方だってのはわかってるけど、仮定の質問に答えるくらい、別に痛くないでしょ」
「人を侮辱して会話に引きずり込むもんじゃないだろ! この爆弾ポップめ!」
アリヴィアが突然、俺に向かって眉をひそめる。
「うわ、知らなかったわ、奴隷さん。あんた、隷属にどっぷり浸かりすぎて、今の自分以外の立場にいる自分を想像できないのね」
彼女が手で口を覆う。
「それって誰のせいだよ?!」
「宇宙のせいね」
「宇宙って赤髪で、アリヴィアって名前なのか?!」
「あ、そうだった。ロブのせいだわ」
「ロブって一体誰だよ?!」
うめきながら、髪をこすり、頭を後ろに反らし、天井を見つめる。
「俺だって、今の自分を超えて成り上がりたい志はあるんだよ。夢だってあるんだからな」
「んー……それを達成するために何が必要? お金、地位、仲間? 何が欲しいの?」
俺の目標への彼女の関心に驚き、アリヴィアに目をやる、彼女のサファイア色の瞳が俺の姿を反射している。彼女は……俺に投資しようとしているのか?
彼女、金持ってるよな? 傭兵だから、それなりのキャッシュを持ってるはずだ。
「まあ、まず最初に……」彼女に目をやり、瞬きする。「まず、奴隷から解放される必要がある。それから、どこかの都市に移住して、誰かに訓練を頼むための、かなりの額の金が必要になる。その後――」
アリヴィアが自分の上腕をぴしゃりと叩き、閉じた唇から舌を突き出す。
「あんたならできる!」
「あの罠に引っかかった俺は、処刑されて当然だ!!」
アリヴィアがくすくす笑い、それからため息をつく。俺たちの足音はまだ、廊下に響き渡っている。彼女に目をやると、彼女が突然口を尖らせているのに気づく、片方の頬を膨らませて。彼女は、俺があの質問を忘れたと思っているんだろう。
その膨らんだ頬を人差し指でつつくと、それがしぼみ、少女が閉じ込められていた空気を吐き出す。
「で、あの質問だけどさ?」尋ねる。忘れてなんかいない。
「あ、そうだった。で、どっちがいい?」
顎に手を当てる。
「正直、金持ちで孤独な方が全然マシだと思う。悪く聞こえるかもしれないけど、自分の目標を達成したら、他人のことをそこまで心配する必要はない。人間は社会的な生き物とかそういうのはあるけど、他人がそこまで重要だとは思わない。ある程度は重要だけど、あくまである程度だ。それに、その質問自体、根本的に欠陥がある、結局、金持ちか強ければ、誰でもあんたを好きになるから。それが俺の立場だな」
アリヴィアが地面に目をやる、彼女の剣はまだゴルスロを指したまま。
「あ。そう。あんたはどっちにしろ、人に囲まれてるってことね」
「そうだな」
彼女は困惑した表情を浮かべている、俺にすら読み取れないような。悲しみと喜びの間のクロスのように見える。まるで、幸せなことが悲しいのか、悲しいことが幸せなのか。変な奴だな。
歩いていると、左の窓から何かが目を引く。外の世界を見せる大きな窓で、昇りゆく太陽が見える。うわ、もうそんなに時間が経ったのか?
だが、水面の上に昇る太陽を無視して、奇妙な黒い物体がゆっくりと大きくなっていく。空中を漂っているように見える、速度は不明だ。UFOか何かを思わせる。
あれは何だ?
目を細める。
黒い塊が大きくなっていく。
大きく。
大きく。
「待て、サミュエル、あれは何だ?」その塊を指差しながら言う。
その男が立ち止まり、頭を左へと向ける。
アリヴィアも立ち止まり、俺たちの興味の源へと目をやる。
その塊は今、最初の10倍の大きさになっている。さらに目を細めるが、その真の姿に気づかないまま、ついに目が見開かれる。手のような大きな四肢が二本、外側に伸びているのが見える。塊が前方へと急速に迫る――
「――!!」
世界が暗くなる、まるでテレビの電源が抜かれたかのように。
―――――――――――――――――――――――
「クゥフッ…… ボリッ!」
「ボリッ! クシュクシュクッ――ボリッ!」
「ボリッ! クシュゥフックッ……」
瞼がゆっくりと開く。
世界が色を取り戻す。だが、以前とは何かがわずかに違う。そうだ、以前は、世界には多くの色があった。青、緑、黄、赤。だが今は、ひとつの色だけが支配的だ――灰色。
瞼が半分開くにつれて、灰色がゆっくりと角ばった形へと変わっていき、単調な色の上に、少しずつ細部が刻まれていく。目を開けば開くほど、周囲についての情報が吸収されていく。ぼやけが徐々に鮮明になっていく。
燠火と鉄の匂いが空気を刺し、鼻孔へと入り込む。
奇妙な音が周囲一帯を満たし、俺の混乱をさらに深める。
もう数瞬経った後、目がぱっと見開かれる。
情報のゆっくりとした流入が終わり、完全に俺を洗い流している。
頭を持ち上げる、まるで石のように感じられるそれを、周囲を見渡しながら。俺の周りには、瓦礫、石、破れた布が大量に散らばっている。天井は内側に崩れ落ち、壁も同様に崩壊している。以前は炎を灯していたランタンが、地面のあちこちに散らばっていて、この混沌にさらに拍車をかけている。日光の筋が瓦礫を通して部屋に降り注いでいて、それが今、昼間だということを教えてくれる。
何が起きたんだ?
右を見る。
俺の腕は瓦礫に覆われている。
歯を食いしばり、素早くそれを引っ張る。驚くほど簡単に、それは飛び出す、岩の下にあったにもかかわらず。
立ち上がろうとし、右手を地面につく。だが奇妙なことに、崩れ落ちるのに気づく。目立った痛みが体中に響き渡り、腕を見つめるよう促す。
折れている。
ああ、折れている。
しかも、紫色だ。
腐り落ちかけているような気がする。
正直、十分な力をかければ、それを引きちぎれるとすら感じる。
同じく、なぜ今、痛みで叫んでいないのかわからないが、喜んで受け入れる。
すべてがひどくぼやけていて、まるで夢の中にいるような気がする。
もし今の気分を表現するなら、頭にラップを被せられているような感じだと言うだろう。
左手に切り替え、それで自分を地面から押し上げる、死んだ四肢が無駄にぶら下がりながら。
今、両足で立ち、折れた腕を抱えながら、周囲を見回す。左腕はすり傷だらけだが、機能はしているようだ。シャツは破れていないが、右側に乾いた血の跡があるようだ、おそらく腕が折れたときのものだろう。頭は、まるで誰かがハンマーで絶えず殴り続けているかのような感覚がある。過去の考えについて筋道立てて考えようとすると、空気を掴んで練ろうとするような感覚がある――あまりにもぼやけていて、あまりにも霧がかかっている。
何かが、これ以上長ければ、自分は健忘症になっていただろうと教えてくる――明らかに脳震盪を起こしている。少なくとも、自分が誰で、どこにいるかはわかるから、それはよしとしよう。
目の前に、周囲の瓦礫にほとんど塞がれていない小さな回廊がある。それが唯一の出口のようだから、そっちに向かおうと思う。この情報がすべて、ゆっくりと心に流れ込んでくる中、ひとつのことが絶えず俺を蝕んでいる。
「――クグッグッグ…… ボリッ!!」
「ボリッ!」
この噛み砕く音。
目を覚ましてからずっと鳴り続けている、音量的に、その激しさが衰えることなく。
まるで誰かが卵の入った樽に手を突っ込んで、それを潰しながら、その黄身で遊んでいるかのような音だ。ぐちゃぐちゃという音は特に大きくはないが、それでも非常に目立つ。
これらの音もまた、その回廊から発せられているようだ。
他に行くところがないので、腕を抱えながら回廊へと向かう。
痛みが体中に広がり始める。
歩きながら、視線は前方だけに固定しておく、他の方向に逸らそうとすると首が張り、さらに痛みが増すから。前しか見ていないので、足が何かにぶつかったとき、驚いてしまう。
その物体は特に重く感じられる、スイカを蹴っているような感覚だと言えるだろう。足でそれを探り、正確に何なのか確かめようとする。驚いたことに、凹凸があって、足が少し沈み込む。
まあ、見なきゃいけないだろうな。
体をかがめてその謎の物体を調べようとし、目が見開かれる。
ゴルスロ・ヴォララの切断された頭が、地面に転がっている。
血がその周りに溜まり、まるで中央にあるその桃色の物体を溜め池に沈めているかのようだ。切断は雑な仕事だったようで、奇妙な糸のような物体が頭の底から突き出ていて、それに桃色の管のようなものも一緒に。
彼の右目が眼窩から飛び出していて、視神経に繋がっている。実際、彼の頭は文字通り眼窩から叩き出されたようだ、よく見ると、顔の右側が深い紫色で、変形しているように見える、何か透明な液体が漏れ出していて、血と混ざり合って桃色の塊を形成している。筋肉のいくつかが露出していて、奇妙な網目状のものを形成している。歯のいくつかも破壊されていて、口の奥深くにしっかりと根付いている、まるでそこに叩き込まれたかのように。
これがなぜ見えているかについては、彼の顔は叫んでいるような姿勢に固定されているようだが、片方の目が反対方向を向いているので、彼がどんな感情を伝えようとしていたのか、判断するのは難しい。
なんで俺はこれをこんなに普通に観察できているんだろう?
胃の中身が突然上へと突き上がり、喉へと強制的に押し込まれる、体が二つ折りになりながら。手でその汁を止めようとするが、無駄で、手全体に吐瀉物をぶちまける結果になる。手は今、黄色い塊と緑の液体で染まり、地面へと滴っている。
「――グクッ!!」
唾液の細い糸だけが残るまで、吐き続ける。
かなり気分は良くなるが、この胃の底にある穴のような感覚は、どこにも消えていかないようだ。
服で手を拭い、口へと持ち上げ、液体を拭い取る。
くそ。ここから出なきゃ。コルスがこの出来事の展開にどう反応するかはわからないが、今は、生き延びることが最優先だ。
決意を固め、頭のそばを通り過ぎる一歩を踏み出す、目の前の地獄のような光景を避けることを選びながら。
歩いていると、噛み砕く音がさらに大きくなっていく、それに新しい音も加わって。それはより律動的な性質を持っていて、楽器のようなものが伴っているようだ。これは音楽なのか? さらに回廊の奥へと進んでいく、日光の小さな亀裂が視界から完全に消えていく。
残っているのは、暗い回廊だけだ、時折、松明の揺らめく燠火に照らされながら。瓦礫はまだ見えるが、視界は大幅に減少している。一歩踏み出すたびに視界が悪化していき、目を細めざるを得なくなる。
噛み砕く音の隣にある楽器の音が、大きくなるにつれて、それが実際何なのか気づく。
俺の着信音だ。
この明るいアップテンポの曲、高い声で歌う女の子。
俺のスマホだ。
こんなところで一体何をしているんだ?
角を曲がる、その音がこの時点でこれ以上大きくなりようがない。
そして、そこに……
そこに……
――アリヴィアがいる。
彼女の背中の上半分は倒れた石の上に広がっていて、深紅が体を縁取っている。体の残りは地面にあり、傷とダメージがあちこちに見える。俺のスマホが、着信音選択画面が開いた状態で、彼女の胸の右側に置かれている。だが、俺の注意を最も引くのは……
あれは何だ?
でかい、ほとんど彼女の体全体を覆っている。明らかに人型だが、上半身が下半身に比べて比例的に大きく見える。細部までは見えないが、皮膚の接合部と金属が、その姿にまとわりついているのがかすかに見える。背中には筒のようなものも埋め込まれているようだ。
「あ……あ……」
彼女の名前を呼ぼうとするが、できないことに気づく。恐怖からなのか、崩壊した喉からなのか、判断がつかない。
今、俺はこの状況にもかかわらず、信じられないほど落ち着いているようだ。深刻な脳損傷を負っていて、それがこの状況の処理に深刻な影響を与えているのかもしれない。それが正確に何が起きているのか確信はないが、頭蓋の周りに絶えず霧が形成されていることから判断すると、それは大きな指標だ。
視線がゆっくりと、その生物が正確に何をしているのかへと動く。
ああ、なるほど。
彼女の右腕が、その口の中にある。
音楽がクレッシェンドする。アップテンポで、目の前の地獄のような光景を完全に裏切っている。
その噛み砕く音は、彼女の腕の骨がその顎によって粉々に砕かれている結果だ。ぐちゃぐちゃという音は、それが歯を動かして肉を引き裂いている結果だ。だが、彼女はこれをこのまま続けさせるつもりはなさそうで、自由な方の腕を使って、傷ついた拳をその生物の頭に、ゆっくりと打ちつけている。とても激しい、それでいてゆっくりとした光景だ。彼女の抵抗はまだ存在していて、消し去られることを拒んでいる。
彼女の髪は、彼女の姿に対する深紅の血と溶け合っていて、髪の房が液体と一緒に溶けている。
彼女の顔はほとんど無傷だが、以前は清潔だったその姿には、明らかなダメージの兆候がある。アリヴィアは肌が綺麗だから、傷や火傷の跡があると、本当に目立つ。表情については、疲れた様子と痛そうな様子の中間のようなものだった。目は細められていて、まるで何か遠くのものを見ようとしているかのようだ。
彼女の口が何かを呟いている、聞き取れないが、唇が周期的に離れているのがそれを示している。口から血も流れ落ちている、もしかしたらただ喉が詰まっているのかもしれない。彼女を観察していると、彼女が俺を見る、そのサファイア色の瞳が動いて俺に焦点を合わせる。
この間ずっと、その生物は彼女の肩を噛み始めている、彼女の腕全体がその腹の中にある。その歯が彼女の三角筋に食い込み、以前より多くの血を引き出す。
その下顎が前方に動くと、それが皮膚と筋肉を引き裂き、それから内側へとそれを引きずり込む。奇妙なことに、電話の方向を噛みちぎろうとしているようだ。一口ごとに、決まった方向へと動いていくたびに、それは口を調整し、鳴り続けるスマホの経路――アリヴィアの胸に置かれていた――を齧っていく。
俺の登場に彼女が少し驚いているのがわかるが、その表情はすぐに消え、以前の表情に戻る。彼女は痛みがひどすぎて、完全には何も認識できないんだろう。
この二体は、重傷を負いながら、それでもなお必死に互いを殺そうとしているんだと思う。
――――――ボリッ。
――――――――ドスン。
――――――――――ボリッ。
――――――――――――――ドスン。
頭の周りの霧がさらに濃くなり、視界がちらついては消える。それぞれの音とともに、それが急上昇し、視界がわずかに残る。
苦痛の讃美歌。
――――――――ボリッ。
――――――――――ドスン。
――――――――――――ボリボリッ!!
――――――――――――――――ボリボリッ!!
――――――――――――――――――――ボリッ。
今残っているのは、噛み砕く音だけだ。
アリヴィアの頭が消えている、彼女の体はその生物の口の方向にねじれていて、ほとんど吸い込まれそうになっている。かつて頭があった場所には、内臓の残骸だけがある。
アリヴィアも消えている。今そこにあるのは、ただの死体だけだ。目の前に人間はいない。
その生物が彼女の体の残りを噛み砕き、彼女の肋骨のところで止まるのを見つめる、その病的な、人間じみた歯に乾いた深紅の血が飛び散っている。頭の中の霧はますます濃くなり、脳が目の前にいる者たちを「人」として認識すらできなくなるところまで、視界を覆い隠していく。
今あるのは、小さな赤い塊の上に座る、大きな黒い塊だけだ。
黒い塊が立ち上がる。
血を吐く、先ほどの負傷の代償が今、姿を現す。その塊が俺の方向に急に動く、まるでピンポイントの精度でその音を聞き取ったかのように。
それが一歩、俺の方へと踏み出す。
それから、もう一歩。
もう一歩。
その塊が俺の真正面にいる。
顔に何かが垂れているのを感じる。
赤い。
何かが素早く俺の方に近づいてくる。
腕だ。
それから――
ポンッ!!!!
何かが俺の頭を打つ。
弾ける音。
╔════════════════════════════╗
||生 命 消 尽|| 「BLUNT_F0RCE」 ╚════════════════════════════╝
―――――――――――――――――――――――
骨が砕け、繋がり合う音。鼓動。鼓動。鼓動。
目がぱっと開く。
あえぎ、深く息を吸う。いや、まったく吸えない。ただよろめくだけで、呼吸という行為すらまともにできない。
目が眼窩の中で震え、今にも飛び出しそうになる。
さっき……
さっき、俺は死んだんだよな?
くそ、自分の死の正確な詳細を思い出すのが、あまりにも難しい。脳震盪を起こしていたと思う、だから何が起きていたのかまともに処理できなかった――
――――ドオンッ!!!
「ぶがぁッ!?!?」
――――――――シュルッ……!
腹が陥没していくのを感じる、何かが入り込みながら。神経のアドレナリンが脳へと爆発的に噴き出し、体が過剰稼働へと押し込まれる。
それから……
痛み。
最初ははっきりしない、まっすぐ保てない小さな線のような感覚だけだ。それから、ゆっくりと、その線が高まり始め、どんどん均一になっていく。腹が、これまでの人生で味わったことのないほど痙攣し始める、それに、燃えているような感覚と対になって。何かが中で、内臓をパズルのように並べ替えているのを感じる。見上げる――
痛み。痛み。
すべてが白色へと変わっていくような感覚がある。麻痺していくような感覚がある。胆汁が喉に込み上げてくるのを感じる。
苦悶にもかかわらず、俺の目は目の前で起きていることに気づく。
セオン・ウ、彼の金色の目が俺の目に突き刺さる。
「瞬きしたな」彼が唸る。
彼が手を前に押し出す――
痛み。痛み。痛み。電気。熱い。液体。
前後に激しく身をよじる、体が必死にえずこうとしながら。
「カイト!」アリヴィアが叫び、剣を大きな弧を描いて抜く。
セオン・ウの攻撃は、この時点まで彼女がまったく認識できないほど速かったのか?
ああ、頼むから助けてくれ、アリヴィア。俺は――
痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。
シャツの下が温かく感じられる、まるで瓶から液体が漏れ出ているかのように。それが体を伝う。それがすべて血なのか小便なのか、判断がつかない。
何かが重要な何かを掴む。それがわかるのは、突然爆発した鋭い痙攣のような感覚のせいだ。
アリヴィアが前へと突進し、剣の刃をセオン・ウの頭に向けて構える。
「カーン!」
ビリが半ばで彼女の攻撃を受け止め、彼の大きな大太刀がその一撃を逸らす、接触点から火花が飛び散る。あまりにも速くて、彼がどうやって彼女の前に来たのか、俺にはわからない。
アリヴィアの腕が、勢いが別の場所に集中してしまったせいで、揺らされる。
歯を食いしばりながら、彼女は指を切り開き、唱える――「アンブリオス3、抜――」
電話くらいの大きさの物体が空中を飛んでいく、深紅の軌跡がそれに続く。
それは彼女の手だ、彼女の手が切断されている。
その手と一緒に、それまで握られていた長剣も弾き飛ばされ、地面に大きなカチンという音とともに衝突する。
この切断の結果として、呪文が誤作動を起こしているようだ。それまで手の形をした影として結んでいた結果が、素早くその形を失っていき、その源へと後退する中、判読不能な塊へと変形していく。
アリヴィアがサミュエルの隣によろめきながら戻る、彼は他の誰よりもショックを受けているように見える。
普通なら、誰かが、まして女の子が、こんな攻撃を受けた後には痛みで叫び始めるだろうと予想するところだが、そうはならない、アリヴィアはそれをまったく気にしていないようで、左手で小さなダガーを抜くことに切り替える。
彼女はそれから――
俺の腹の中のこの痛みに慣れかけていたちょうどそのとき、俺のシステムの中にあるその異物が自らを引き抜く、その過程で臓器を引きずり出しながら。まるで誰かが何らかの発電機を始動させようとしているかのようだ。
喉に押しとどめられていた液体が溢れ出し始める。
後ずさりする、両手が無駄に、取り除かれた何かを中に戻そうとしながら。まだ前後に体をよじり、叫ぼうとしているが、決して出てこない。それだけじゃなく、ただ後ろへと歩いている、何とかこの状況から逃げようとしながら。臓器がゆっくりとこぼれ出ていくのを感じる、以前の型が砕けていく中で。
視界が、電池切れ寸前の懐中電灯のようにちらつく。目の前に集中しようとするが、また、ひどくぼやけていく。先ほどの白熱の痛みは、ゆっくりと陰鬱な黒へと変わっていく。
「はぁ」セオン・ウがため息をつき、髪に手を通す。「さっきは超かっこよかったのに、何があったんだ? 顔にできたそのシワ全部のせいで、老けて見えるぞ」
「はぁ……はぁ……」あえぎながら、後ろに倒れ込む、脚が崩れながら。
死なないよな?
いや、死なない。
『E』が助けてくれるよな? あいつが前にそうしてくれたじゃないか。タイロクスが俺を殺そうとしたとき、Eが助けてくれた。Eが助けてくれるよな? いや、いや、俺はまた死ぬ。俺はまた死ぬ。
「んがぁぁ……」
血が顎を伝い落ち、唾液と混ざる。
「カイト!」
叫ぶのをやめろよ、このバカ女。助けに来て救ってくれ。お前、何かのスーパー魔術師傭兵だろ? 助けてくれ。こいつら二人を排除してくれ。
目がゆっくりと閉じていく、乱闘の音が最後に聞こえるものになる。
╔════════════════════════════╗
||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
―――――――――――――――――――――――
目がぱっと開く。
骨が砕ける音。鼓動。鼓動。
待て。待て。ここにチェックポイントがある! つまり、いつでも攻撃されるってことだ。このクソチェックポイント、なんでここに設定されてるんだ?!
本能的に体を左へと弾く、なんとかセオン・ウの顔からの掌握から抜け出す。
もしかしたら、もしかしたら、また死ぬのを避けられるかもしれない――
手が俺の左肩を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「――?!」
「クシュッ!!」
何かが喉を貫く、痛みが体中に広がる、まるで雷に打たれたかのように。刃が喉からバターのように滑り出る前に、その攻撃を処理することすらできない。その攻撃には、とんでもないレベルの熟練さがある。
「ガクッ――!!!」
「カイト――?!」
くそ、くそ、また刺された。また死ぬ。何回起きても、慣れない。この、心が体の残りから切り離されていく感覚。この、目の端から色が失われていく感覚。この、体中にアドレナリンが急上昇する感覚。この、圧倒的な恐怖の感覚。
「瞬きしたな」
後ずさりする、役に立たなくなった喉を掴みながら、それが蛇口のように指の関節に血を噴き出している。
セオン・ウが優雅な形をしたダガーを俺の頭上に持ち上げ、それから俺の顔へと振り下ろす。一瞬、何かが頭蓋に入り込むのをかすかに感じる、世界が暗くなる前に。
╔════════════════════════════╗
||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
―――――――――――――――――――――――
骨が砕ける。
鼓動。
目が開く。
俺はここに永遠に閉じ込められるのか? 俺は――違う! 動かなきゃ! この場から逃げなきゃ!
出せる限りの力をすべて使い、それを脚に押し込み、後方へと自分を推進する。もし俺たち二人の間に距離を作れば、うまくいけばアリヴィアかサミュエルが俺を守る時間ができるはずだ。
後方へと跳ぶが、無駄で、俺の顔は殺人者の掌握の中に残ったままだ。
夜空に縁取られた月が、一瞬、その黄色い輝きを失う。人影が、それを完全に遮る。以前放たれていた輝きが、素早く再び湧き上がる、今度はその人影の正面から。
「待て! 待って!」
「瞬きしたな」
何かが額に入り込む。
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||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
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骨が砕ける。
鼓動が打つ。
目が開く。
これは一体何なんだ?! 考える時間がほとんどない!? まったく考えられない!
あいつは、俺を殺す前にいつも俺が瞬きしたって言い続けてる、じゃあそれって、俺がDDを使うたびに、反射的に瞬きしてるってことか?!
くそ、今まっすぐ考えようとするのは、頭の上でボールのバランスを取ろうとしているような感覚だ。ストレスがひどすぎて、今にも逃げ出しそうな気がする。汗が滝のように流れ、歯がガチガチと鳴り止まない。
どうやって自分を止めればいい、どうやって自分を止めればいいんだ?! また死ぬ、それに――今、瞬きした。この感覚、この、迫り来る自分の死を知っているという感覚。何をしても、それを止められない。
彼の手は俺の口の上にある、俺は文字通り彼の掌握の中にいる。
彼の動きに適応することもできない、あまりにも速すぎる。いや、いや、黙れ、カイト。お前は自分が意気地なしのクズであることを、正当化しようとしているだけだ。
お前はただ、死ぬのが怖いだけだ。何回起きても、慣れることができない。適応できない、強くなれない。ただ自分の死を受け入れろ。
壁が俺を嘲笑う。
いや、いやだ! そうしたくない! 痛いんだ! 痛くしたくない!!!
何が痛いんだ? みんなが俺に向ける顔か、それとも肉体的な痛みか?
俺は弱くない! 俺は特別だ! 俺はもっと強い! 俺は天才だ!
いや。お前は――
「瞬きしたな」
刺すような感覚が胸に注ぎ込まれる。世界が暗くなる。
―――――――――――――――――――――――
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||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
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||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
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||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
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||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
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||生 命 消 尽|| 「TRAUM3TICな穿孔」 ╚════════════════════════════╝
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骨が砕ける。鼓動が打つ。
俺の目は……
開いたままだ。
開いたままでいなければならない。
もし開いたままでいなければ、俺はまた死ぬ。死にたくない。
俺は、できることすべてを使って、目を開けたままにしなきゃならない。
すべて大丈夫なふりをしなきゃならない。
完璧に見せなきゃならない。
自分の認識を修正しなきゃならない。
もしそうしなければ、俺は崩れ落ち、二度と立ち上がれなくなるから。
これが「元の」時間軸なのか? 死んだカイトは何人いるんだ? これは現実なのか? 俺の現実の認識は間違っているのか?
セオン・ウを見つめる。彼の青白い肌が、彼の金色の目を際立たせている。それらは両方ともドリルで、ゆっくりと俺に██████を、カイトじゃない何かを露わにしようとしている。いや、いや、俺は見つめ返す。俺は大丈夫だって見せてやる。俺は俺だって。
彼の指が俺の顎を強く握りしめる、俺が見つめ返す中で。
頭の中の仮想のボールが、どういうわけか山頂でバランスを取っている。信じられないほど強力な風がそれを押し、落とそうとしている。いや、俺はそれをバランスさせ続けなきゃいけない、何があっても。
顔が引きつる。
ボールが山頂の左端に危険なほど近づく。
瞼がさらに大きく開き、見つめる。
ボールが再び中央へと転がる。
一秒一秒が、千年のように感じられる。
汗の玉が額を伝い落ち、塩辛い跡を残す。
ボールが右へと転がる。
くそ、くそ。
刺された感覚が脳の壁に反響する。
ボールが転がり続ける。
落ちる! 瞬きしてしまう! ストレスがひどすぎる!
深く、それでも震える息を吸う、目はその位置に固定されたまま。それでも、瞬きするのを止めるには十分じゃない。ストレスが増す。
頭の中の鳴動が10倍に増える。金属が皮膚に深く沈み込み、筋肉を貫通する音が、絶えず響き渡っている。
瞼が閉じ始める。
ボールが端の半分を越える。
いや、いやだ!
「セオン・ウ、やめろ!」サミュエルが叫ぶ。
「――パ?」
突然、俺の口にかかっていた万力のような掌握が素早く解放され、ついに、この長い時間の後、俺は解放される。大きく息を吸い、ついに瞬きする。その行為自体が、天からもたらされた行為のように感じられる。
「冗談だって! 冗談!」
セオン・ウが笑う、その声が廊下に響き渡る。それから彼は手を叩く、まるでただの猿が彼のためにパフォーマンスを終えたかのように。彼は笑う、彼という蛇そのもののように、俺の不運を。
俺は何も言わない。ただ見つめ続ける。見つめ返し続ける。なぜか? もう答えは明らかなはずだ。彼は決してその理由に気づかないだろうが、俺は知っている。その知識は永遠に俺の中に留まるだろうが、彼にとっては、まるで何も起きなかったかのように、去っていくだけだ。まあ、ある意味、実際、何も起きなかったんだ。
彼の笑いが素早く収まり、俺から目を逸らす。俺の表情に気づき、彼の以前は喜びに満ちていた目が変わる。彼は何か奇妙なものを見ている。そうだ、彼が7回以上殺した少年が、見つめ返しているのを。
今この瞬間、自分の顔にどんな感情が浮かんでいるのか正確にはわからないが、それがひとつの――
俺は気にしない。今、俺は何も気にしていない。
俺は生きている。
俺は生きている。
その男が髪に手を通し、ため息をつく。その殺人者がため息をつく。
「はぁ、疲れたな」彼が笑い、仲間の方を向く。「よお、ビリ、聞いたバーに行こうぜ。どうやらヴァロスに、いい酒があるらしいんだよな」
ビリが頷き、仲間に同意しているようだ。
セオン・ウが踵を返し、自分の犠牲者を置いて去っていく。彼の体は完璧なまでのカジュアルさで歩いていく、あらゆる原子にくつろぎが染み込んでいる。まるで、ほんの数瞬しかかからなかった無駄な会話を終わらせたかのように歩いていく。数瞬後、彼とビリはすでに視界から消えていて、彼らの姿が廊下から去っていく。俺はただそこに立ち、見つめ続けている。
この呪われた野郎ども。この呪われた殺人鬼ども! どうやって?! どうやって?!
どうやって彼らは、まるで何も起きなかったかのように、平然と歩き去れるんだ?! なぜ彼らは、自分たちの一日をそのまま続けて、この重荷を俺に残りの人生ずっと背負わせて去っていけるんだ!? それでただ終わるのか?! 彼らの行動が、何の報いも受けずに続いていくのか?! なぜ彼らは去っていけるんだ?!
まあ、少なくとも俺は生きている。俺はあの地獄の穴から出た。俺はもうそこにいない。
だが、まだ何かが残っている。
二人が俺の視界から消えると、壁の方を向く。
それから、拳を持ち上げる。
―――――――――――――――――――――――
カイトの拳が壁に衝突する、ドスンという音がすぐに続く。実際、あまりにも激しく、もし俺の顔に当たっていたら、何かが折れていただろうと確信する。彼がただ絶望的な状況にいただけだということは理解している。彼の命は、強力なゲイザーであるセオン・ウの手の中にあったばかりだ。だが、彼の反応は、今起きたこととは不釣り合いに見える。
「チェックポイントを設定しろ!」彼が叫ぶ、おそらく自分自身に向かって。
カイトが再び拳を持ち上げる、壁にもたれかかりながら。
「設定しろ!!」
彼の顔にはシワが刻まれていて、苦悩が彼を蝕むほどに、まるで歳を取っていくかのように見える。もし彼の感情を表現するなら、正気を失った狂人を見ているような感じだ。
アリヴィアに目をやる、彼女は少年に近づいている。彼女の顔には心配げな表情が浮かんでいる。アリヴィアは彼の友達のようだから、当然、そんな生々しい反応を心配するだろう。俺個人としては、カイトを長く知っているわけじゃないから、彼のこうした反応が普通のことなのかどうかはわからない。
「設定しろ!!」彼の絶え間ない叫びが繰り返される、壁への一撃とともに、一語一語をはっきりと発音しながら。まるで壁が彼と激しい口論をしていて、無言で彼を呪っているかのようだ。俺は今まで、これほど怒っていて、それでいてこれほど恐怖している人間を見たことがない。
以前は撫でつけられていた彼の髪が、顔にかかり始め、世界から目を隠していく。まるで、目の前にまったく違う人間がいるかのようだ。今、目の前にいるのはもうカイトじゃない、「まったく別の何か」だ。
アリヴィアが少年に向かって手を伸ばす。
「カイト!」彼女が笑顔で始める。「かっこよく見せたい気持ちはわかるけど――」
―――――――――――――――――――――――
それを叩き払う。
この手。これは俺を破壊するためのものだ。この手は俺の皮膚を引き裂こうとしている。世界に俺をさらけ出そうとしている。
「うわ、あんた、めっちゃ情けないわね」アリヴィアがくすくす笑う。「見て、まるで泣いてる赤ちゃんみたい。もっとかっこいい人だと思ってたのに」
すぐに彼女の方へと頭を向ける。彼女は笑っている。そんな目で俺を見るな!
ボールが端から転がり落ち、下の地面へと真っ逆さまに落ちていく。
「ぐっ――!」
「黙れ、このクソ女!! 黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ!! そのバカみたいな甲高い声、黙らせろ! それが、誰もお前のことなんて気にかけない理由だ! それが、お前が他の誰とも同じように忘れられる理由だ! それが、お前が誰の目にも何にもなれない理由だ!! 俺を攻撃するな、くそが!!」
image
瞬きする。
世界が変わる。
目の前にいるのは、無感情に俺をからかおうとするいじめっ子じゃない。
むしろ、明らかに傷ついた少女だ、叩き払われた手を握りしめ、涙が今にも溢れそうな目をしている。
待て、でも彼女、俺をからかったばかりだよな? あれが彼女だった、だろ? アリヴィアはたった今、俺の評判を壊そうとした。だろ? 俺があんな風に爆発したことは、間違ってなかった、だろ? 俺が正しい方だ、だろ?
いや。いや……彼女は何も言っていない。彼女はただ、俺が……大丈夫かって聞いただけだ。
我に返る。まるでバケツいっぱいの水を浴びせられたかのように。世界がその陰鬱な色を失っていく。待て、なんでみんなそんな目で俺を見てるんだ? 俺の評判だ。台無しになる。守らないと。
胃が沈む、その気づきが染み込んでいく。昇る太陽のかすかな一片が、ゆっくりと昇り、少女をその背景の中に縁取る。
「ま、待って、なあ、アリヴィア……」俺たちの目が合う。俺の目は後悔でいっぱいで、彼女の目は「何か」でいっぱいだ。彼女のまつ毛がどんどん大きくなっていくように見え、以前は大きかった目を覆っていく。彼女の下唇が震えているのに気づく。
「本当に痛くはないよな? お前は歴戦の傭兵だろ、こんなことで本当にダメージなんて受けるわけないよな。ほら、俺はただストレスが溜まってただけなんだ、それだけ……」
アリヴィアに向かって手を伸ばす。
彼女ならわかってくれるよな? 本気じゃなかった。約束する、本当に本気じゃなかった。
その手は、決してその目標に届かない。
ただ無駄に空を掴むだけだ、少女が歩き去っていく中で。それはそこに留まる、一人で。ほんの一瞬前、掴むべき何かがあった。だが今、この瞬間、「何か」は「何もない」へと変わっている。
「アリヴィア……」
「あ、あんたとナヴィの間に何があったのか、なんとなくわかった気がする」
「くっ! いや! 俺はただストレスが溜まってただけで――本気じゃ――」
彼女は俺の肩にかかっていたポンチョを掴み、それを引き剥がし、自分の体に装着する。
「急がなきゃ」彼女が遮り、廊下を歩いていく。彼女の足音は静かだが、俺の心の壁に大きく響き渡る。
骨が砕ける音。チェックポイントを設定した。DD発動。
くそ。
歯を互いに食いしばる。待て。サミュエルがここにいる。彼はこの惨事全体を一人で目撃している。彼は俺を見ている。俺は彼にとって、道化なんだ。
素早く彼の方を向く、必死な表情を浮かべながら。ここで起きたことを、決して口にしないでくれというメッセージを伝える顔。おそらく俺は狂って見える、狂って見えるんだろう、だろ? 狂って見えたくない。
サミュエルの顔にわずかに軽蔑の色が見える。だが、俺自身の表情に気づくと、彼の表情が和らぐ。
世界が音を失う。影が俺を嘲笑い、壁に目が生える。
サミュエルの指が痙攣する。
「……あなたを長く知っているわけではないので、あなたについてあまりよくは知りません。ですが、いずれ、あなた方二人は仲直りするだろうと信じています。言い争うのは普通のことです、特にあなた方のように親しい者同士なら」
でも……
いや。大丈夫だ。大丈夫。彼女が去りたいなら去ればいい。結局、彼女は、俺の今の状況に加担した者の一人だ。この首の首輪。もし彼女が仲直りしたいなら、俺のところに来ればいい。でも今は、俺は追いかけない。
俺の目標はみんなを幸せにすることじゃない、最強になることだ。それが、俺が生きていくつもりの現実だ。もし誰かが邪魔になっても、彼らの機嫌を取ろうと自分の背中を折ったりはしない。ただ彼らの周りを歩いていくだけだ、この川の流れの上を。もし彼らが水の中に落ちても、それはそれだ。
俺はすでに、目の前に自分の目的地を設定している。この流れに、俺は一人で立ち向かえる。
でも……
頷き、顔からよだれを拭う。それから髪を後ろへと撫でつけ、額を露わにする。
「よし、行こう」
サミュエルが驚いた表情を俺に向ける。こんな表情を彼から見たのは、初めてだ。
何だよ? 一度嫌な出来事があったからって、俺がずっと陰気でいるとでも思ったのか。
―――――――――――――――――――――――
サミュエルは父親にまた怒鳴り終え、あの感情的な騒動全体は終わった。だが、まだこの場所を、先ほどのあの生物が何であれ、それを避けながら脱出しなければならない。俺たちはゴルスロの部屋から走って戻る、俺たちの足取りには少し急いだ調子がある。太陽が背後で昇り、下の町の混沌を輝かせ、照らし出している。
物理的な世界の混沌と、俺の心の奥底の混沌。
いや、俺は実際、大丈夫だ。先ほど起きた地獄のような拷問にもかかわらず、俺はまだ俺自身だ。俺はまだカイトだ。あんなことを経験した後で完全に大丈夫でいるのは、狂ってなんかいない。それは普通のことだ。そうだ、この怪物と魔法の世界では、それは普通のことだ。
みんなに目をやる。
窓を粉々にして俺たち全員を殺す、巨大な未知の生物がいることを伝えなきゃならない。まあ、それを伝えたところで何も変わらない、どうせ無視されるか、信じてもらえないかだから。全部あの馬鹿げた「裏切りの真実」の呪いのせいだ。まるで世界からの個人的な「くたばれ」だ。未来の知識があるのに、誰にも伝えられない。
俺にできる最善のことは、それが見えたら、すぐに叫ぶことだ。俺の側からの即座の反応が、俺たちの生存に不可欠だ。それに、戦う必要すらないと思う、ただここから逃げ出す必要があるだけだ。どれくらい強いのかはわからないが、最初の時間軸を考えれば、アリヴィアがなんとか対処できるはずだと推測する。あいつの姿を見たとき、それは傷だらけで、目に見えるダメージの兆候だらけだった。
みんなは前方に視線を向けている。だが、俺の目は左の窓に釘付けだ。俺は死なない。何があっても、二度と死なない。慣れることができない。何回死んでも、慣れることができない。窒息する感覚、体が内側に押し潰される感覚。息が内側に吸い込まれる感覚。俺は死なない。
30秒後、遠くに小さな黒い点が漂っているのに気づく。
「何か来る!!」叫び、迫り来る黒い点を指差しながら。まるで自分が窓の前に立って見つめていなかったかのように、驚いたふりをする。
全員の頭が素早くその出所へと向く、驚いた表情がその表情を覆いながら。数瞬のうちに、俺は前へと飛び出す、窓が終わる場所へと、潜在的な正面衝突から自分を救いながら。
アリヴィアが長剣を抜く、刃が光の中できらめく。
それから――
ガシャン!!
ガラスが千の破片へと砕け散り、それぞれが光の中できらめき、それぞれが針のように鋭い。黒い塊が今、中にいる、体を丸めている。以前と同じ人型だ。前のループで見たのと同じもの。
それが上に立ち上がり、その全貌を明らかにする。
単一の目が備わっていて、明るい赤に光っている、サイクロプスを思わせる。唇はまったくないが、歯茎と歯を備えていて、両方ともそれぞれの色に驚くほど清潔に輝いている。体は明らかに筋肉で張り詰めているが、病的な紫色で、他の特徴と比べて腐敗しているように見える。だが、その体格を別にすれば、おそらくこの生物の最も印象的な側面は、体内に組み込まれた膨大な量の機械だ。まるで、自然への嘲笑であるかのようだ、人間によって作られた、周囲のものを模倣しようとする病的な試みとして。奇妙な液体で満たされた円筒形の容器が、絶え間なくガスをその生物に送り込んでいる。皮膚の接合部が、それを繋ぎ止めているようだ、まるで今にも崩れそうであるかのように。
それが深い、しゃがれた呼吸を吐き出す、まるで狂った馬のような音で。
部屋を見渡し、それは俺と、俺の仲間全員を観察している、彼らも同じようにそれを見つめ返している。俺たちは誰一人、一寸たりとも動こうとしない。誰も動かない。
容器が体内に投与される音のヒスッという音とともに、その生物が突然、ゴルスロの方向へと動く。
その男もその動きにひるむ。
突然、アリヴィアが長剣を容器のひとつに振り下ろす、その物体が粉々に砕け散り、閉じ込められていた液体が自由に漂う。その「原因」とともに、「結果」がゆっくりと続く、それは、その生物が彼女の方向を向くという形で。
それが深い轟きを発する、明らかにその攻撃に怒っている。
「ここから出て。俺がこいつの相手をする」その少女が宣言する、目を細め、その生物からの攻撃に備えて刃を構えながら。
頷き、サミュエルとゴルスロは無駄な時間を費やさず、廊下を散っていく。「ご無事で、アリヴィア様!」サミュエルが叫ぶ、彼の声が消えていく――ゆっくりと彼の足音の音に置き換えられながら。
その生物がすぐさま、少女の方向に左のジャブを放つ、彼女はその一撃を長剣で逸らすことでかわす。それは速い、本当に速い。あまりにも速くて、俺の視点からはその攻撃がぼやけて見える。まるで顔の前で手を振ったときのようだ、ただし、この場合の「手」は完全にその形を失い、わずかに変形する。
髪に風が吹きつけるのを感じる。
アリヴィアが体を回転させ、その生物の頭の側面への突きで締めくくる。彼女は明らかに、その巨大な光る赤い目を狙っている、それがそのモンスターの唯一の視覚手段であることは明らかだから。もしその手段が乱されれば、それを片付けるのはずっと容易になるだろう。
その生物は、そのような試みに気づき、頭をわずかに右へと弾く。それは完全にその攻撃を回避するわけじゃないが、辛うじてその急所を打たれることを避ける。
俺には、以前に何が起きたのかの知識がある。
俺は、アリヴィアがこいつに死ぬことになったのを知っている。
彼女はかなりのダメージを与えたが、それでも、それに命を失った。
よし、あの最後の時間軸の他の詳細を覚えておかないと。彼女が死んだという事実にだけ反芻するわけにはいかない。頼む、すべての詳細について考えようとしなきゃ。考えろ。考えろ!!
今、アリヴィアがその右側にいるので、その生物はすでに伸ばしていた腕を使って、その方向に振り払い、少女を叩き落とそうとする。だがアリヴィアはこれに気づき、しゃがみ込み、その一撃をかわす。
彼女の剣が地面をこすり、わずかな擦れる音を立てる。その音を聞いて、その生物は素早くその方向を攻撃する、まるでそのかすかな音が何らかの聴覚的攻撃であるかのように。
彼女はこれを生き延びられない。今すぐ逃げることもできるが、俺たちの唯一の防御手段を死なせるわけにはいかない。
考えろ……考えろ、考えろ。
着信音の音。
目がぱっと見開かれる。
その怪物が最初アリヴィアを噛んでいたとき、それが特に、鳴り続けるスマホを狙おうとしていたことに気づいた。それはゆっくりと彼女を噛んでいた、なぜなら、おそらくダメージがひどすぎて、実際に立ち上がってそれを止めたり破壊したりできなかったから。それに、それが俺を殺したのも、俺が咳をしたからだけだった。
もし俺が正しければ、こいつはコボルドに似ている。
「アリヴィア、俺の――」
俺のスマホがすでに俺の方向へ投げられる、わずかに上向きに。
「?!」
エネルギーの爆発を足に集中させ、跳び上がって蹴り、スマホをキャッチする。元の位置に戻り、スマホに目をやる、もう2週間近く手にしていなかったそれの、着信音選択画面を開く。
どういうわけか、この時間すべてを経ても70%残っている。
戦闘の音が目の前で轟く中、設定をいじる。
着信音選択画面が見え、人差し指で強くタップする。
最初に目に入る着信音は、「仮面のエゴ」と表示されている。
それをタップする。
伴奏が始まる、アリヴィアの攻撃よりも大きく。エレクトリックキーボードの音とともに、その生物がスマホの方へと注意を向ける。それに続くモンスターの行動は、俺の方向への大きな跳躍、それに右の拳を振りかぶることだった。
「――!?」
「アエロニス1、突風」アリヴィアが唱える、その声が言葉を追い越すように速く響く。
風の突風が、まるで何もないところから作り出されたかのように、その生物の方向で爆発する。その風の一撃は、その生物を右へと押し出すのに十分な力を持っていて、窓の方向へと放り投げ、それが外へと落ちる結果となる。
ガラスが砕け、昇る日光の中できらめきながら地面へと落ちていく。日光の筋が、今の時点でガラスがなくなったせいで部屋に溢れ込み、アリヴィアの上に投げかけられる。
くそ、俺は本当に馬鹿だ。あの生物がそれに引き寄せられるとわかっていたのに、大きな音を鳴らすなんて、一体何を期待していたんだ? 何をしようとしていたんだ? もっとよく考えるべきだった、頭から突っ込む代わりに――
アリヴィアが俺の脇を通り過ぎて駆け抜ける。
振り返る。
そして、彼女はいない。
みんな、いない。
そこにいるのは、カイトと俺だけだ。
―――――――――――――――――――――――
俺たちは今、外にいる、太陽がついに完全に外に出ていて、世界にその姿をさらけ出している。
あの怪物は、俺たちの周りの他の敵に気を取られたようで、建物から落ちて以来、俺たちを追いかけるのをやめている。ある意味、俺の一部は、それに復讐できなかったことを密かに悼んでいる。結局、俺はそれによって殺されたんだから。それでも、こんな環境にのんびり留まっている時間はない。
俺たちがいる通りは、ダメージと死体にまみれている。垂れ下がった街灯、蹴破られたドア、石の瓦礫。あらゆる角から煙が湧き上がり、上へと昇っていく命を落とした者たちの魂と、優しく溶け合っている。
俺たちはほとんど脱出している、この一帯には見覚えがある。あと数歩で、ZVPが見える。
爆発が続き、兵士たちが俺たちの脇を走り抜けていく、俺たちのことを完全に無視しながら。これは、アリヴィアが唱えた「アンブリオス:外套」の呪文のおかげだ。彼女が指を噛みちぎる代わりに、俺たち全員にヴェールがかけられている。
「カイト、肩掴む力、ちょっと強すぎる」
「はは、悪い、なんか暗くて」
俺は暗闇が嫌いだ。
何人かの兵士たちが、奇妙なスチームパンクのような鎧を身につけていて、驚くほど先進的に見える銃器や武器の類を持っている。何人かの兵士たちは巨大な刃、ハンマー、槍、それに壮大に見える鎧を身につけている。
まるで、異なるジャンルのフィクションからやってきた兵士たちが、この特定の町で衝突しているかのようだ、一種のクロスオーバーだ。だが、彼ら全員を繋いでいるひとつのことは、緊急性とパニックの感覚だ。
「ヴォラリア、アトモス、ラゴミア。なぜこれらの王国と帝国全部が、ここで衝突しているんですか、父上?」サミュエルが尋ねる、彼の声がヴェールの中で反響する。
「この場所の北にある幽谷のせいだ。そのような土地は例外的に稀有だ。虚無地帯の起源が、その深くに潜んでいる、もしかしたら異形種の起源すらも、と理論づける者もいる。これらの王国は、金銭的にだけでなく、神秘的にも利用したいと望んでいる。それが、俺がここに引っ越してきた理由のひとつだ、だが自分の耽溺の問題のせいで、俺は大きな進展を遂げられなかった」
「虚無地帯?」
全員が俺の方を向く、前にいるアリヴィアを除いて。
「知らないのか?」サミュエルが尋ねる。
首を振る。
「俺、すごく遠くから来たんだ」
「なるほど」
「虚無、一部の者には『飢餓』としても知られているそれは、理解不能な『霧』のようなもので、ゆっくりと世界を蝕んでいて、その過程で天体存在たちを殺している。異形種もそれと何らかの繋がりがあるが、それは今は関係ない。虚無はゆっくりと王国を蝕んでいる、信じられないほどゆっくりだが。天体存在を悪魔へと変貌させ、以前の彼らの姿の、おぞましい混合物へと自らを押し込ませる。幽谷は――父がちょうど言ったように――この『霧』を世界に漏らす『通気口』だと考えられている」
「うわ、それは本当にひどいな」
「確かにそうだ。だが、そのような劇的な世界規模の出来事は、俺たちのような者が止めるためのものじゃない。俺たちよりも高位の者たちのためのものだ。俺たちはただ、待つことしかできない」
自分のことを言え。俺は座って待つつもりはない。
「着いた」アリヴィアが宣言し、俺たちの上のヴェールを持ち上げる、太陽の光が今、俺たちを覆う。突然の明るさに目を細める。周囲を見渡し、それを吸収する。ヴェールが解かれたことに嬉しくないと言えば嘘になる。
俺たちは今、ヴァロスの入り口に戻っている、大きな門と、その両脇のZVPからそれとわかる。今回は多くのことが違っている。まず、両方のZVPが破壊されていて、上部が内側に崩壊している。金属の瓦礫が底に溜まり、煙が残りのダメージを覆い隠している。両方とも、おそらく爆発によって破壊されたのだろう。
その破壊された構造物を観察していると、声が呼びかける。「おい、そこの四人!」
俺たちがその出所へと振り返る。
ヘルメットをつけた兵士、そのヘルメットは古代ギリシャのコリントス式に似ている。彼の鎧に明らかなスパルタの影響があるにもかかわらず、彼の体は皮革と金属の鎧に覆われていて、それでもなお、あの「ゴシック」美学に従っている。
彼は長い槍を手にしていて、それをまっすぐアリヴィアの喉に向けている。
つい先ほど、サミュエルはアトモスが侵略している帝国か王国のひとつだと言っていた。それはギリシャ語のように聞こえるから、論理的に考えて、目の前にいる兵士――スパルタ人のように見える――は、アトモス人の兵士なのだろう。
そのアトモス人の兵士が近づいてくる、槍をどんどん突き出しながら。彼は明らかに、アリヴィアを最も標的にしている、彼女が明らかに武装している者だから。
「お前ら全員、傷つきたくないなら――」
何かが突然、彼の喉に投げつけられ、中に突き刺さる。
「クガクッ!?」
血がヘルメットの底から流れ出し始める、鉄の匂いが空気を貫く。ドスンという音とともに、彼の槍が地面の土に衝突する。彼の両手が無駄に自分の首を掴み、ヘルメットも取り除こうとする。
彼はえずき、後方によろめく。
アリヴィアがその男に歩み寄る、その足取りは、投げすぎたボールを取りに行く人のようにカジュアルだ。彼の脇を通り過ぎながら、彼女はダガーを掴み、素早くそれを引き抜く、薄い血の線がそれに続きながら。その行動は素早く、ほとんど苦労なく行われる。
その男が地面に崩れ落ちる。
あれはアリヴィアじゃない、傭兵だ。あるいは、もしかしたら、あれがずっとアリヴィアだったのかもしれない。
「見つめてないで、行くよ」彼女が呟き、上腕でダガーを拭う。ナイフを回転させ、素早く鞘に収める。
俺、サミュエル、それにゴルスロ全員が互いに顔を見合わせる、目に衝撃を浮かべながら。俺はこの時点まで、アリヴィアが誰かを殺すのを見たことがなかった、ましてこんな残酷で効率的な方法で。わかる、彼女は怒っているけど、本当にこんな大げさなことをする必要があるのか? 彼女は歴戦の傭兵だろ、絶えず殺人者やモンスターに対処してる人間だろ、なんで彼女は、まるで小さな女の子みたいに癇癪を起こしているんだ? 誰かが彼女に怒鳴っただけで?
首を振りながら、アリヴィアの後をついていく、その血まみれの死体が、彼女のような人間の中に潜む、純粋な残酷さを思い出させる存在として。その光景にひるむが、最終的には歩き続ける。
俺たちは今、チェックポイントを通り過ぎている、以前歩いた草原が再び俺たちを迎えている。涼しい風がそれに吹きつけ、水面の波のような印象を与える。太陽は今、空の半分にあり、鮮やかなオレンジ色の輝きを落としている。俺たちは地獄のような光景から脱出し、天国の一片を垣間見ている。だが、俺たちの旅はまだ終わっていない。
俺たちはまだ、この長い道の終わりにある森に到達しなきゃならない。俺たちはまた、開けた場所にいる、もし見つかったら――
ドカン!
土埃と煙の雲が俺たちの目の前で爆発する。両腕を顔の前に投げ出し、その猛攻から身を守ろうとする。俺の服が前後に揺れ、その凄まじい速度で引き裂かれそうになる。
塵が落ち着くと、目を開ける。
以前と同じ生物が、俺たちの目の前に降り立っている、その目的を完遂する準備をして。
その歯は、唇がまったくないにもかかわらず、一種の笑みを形成しているようだ。その単一の目が俺たちに細められる、まるで最大限の努力を尽くす準備ができているかのように。その指が丸まったり開いたりする、いつでも攻撃する準備ができている。
それから、それは腕を体とともに前方に振り、それから両脇へと引き戻し、口を開く。金属が鋼にこすれ合うような、金属質の咆哮が、口の中身をさらけ出しながら解き放たれる。
俺も身震いする。
こいつ、明らかに俺たちに激怒している。
お前だけじゃないぞ、相棒。お前は俺の頭をぐちゃぐちゃにしたんだからな。俺の方が、お前よりずっと多くの恨みがあると思うぞ。
それが後ろ足を押し出し、その怒りの源――アリヴィア――に向かって跳躍しようとする。
その時、一発の銃声が響く。
弾丸が空気を切り裂き、容器に衝突する。それが破片へと爆発し、完全にそれを破壊する。その生物がよろめき、空気を求めてあえいでいるようだ。
「ドゥーム・アンド・グルーム」
コルシャク・フォン・ヴィルヘイムが言う、その声はバターのように滑らかだ。
その生物のよろめきが止まり、体の元の動きを逆再生する、元の位置へと戻っていく。まるで誰かがリモコンの巻き戻しボタンを押したかのようだ。
それが完全に動きを止める。
コルスが、彼の体を覆っていたその生物の前に歩み出る。彼の背中には、アサカワが休んでいる、明らかに意識を失っていて、様々な傷を負っている。彼の足が草に接触し、かすかな擦れる音を立てる。
待て。
あれはコルスなのか? 彼はまったく違って見える。骸骨の人物だと思っていたのは、今、20代くらいに見える男だ、逆立った波打つ漆黒の髪をしている。彼の目は緑玉色で、頭蓋骨の紋章がついた奇妙なヘッドバンドを頭に巻いている。
「アリヴィア!」彼が呼びかける、どこからともなく光沢のあるリボルバーを装備しながら。それから彼は、利き手に持っていた方をアリヴィアに投げる。これは、彼がアサカワを背負っているせいで、両手を使えないからだ。投げられた銃器が空中を飛んでいく、その重い重量のせいで回転しながら。
コルスは素早くリボルバーを空にする――シリンダーを開放する――弾薬が地面に落ちる、それぞれが静かなドスンという音を立てながら。凄まじい速度で、彼の手が後ろポケットへと伸びる。指の間に、彼は4発の弾丸を握っている。それから弾丸を装填し、シリンダーを弾いてはめ込む。
その生物はまだ動けない。まだ4秒しか経っていないんだから。
アリヴィアがその生物へと歩み寄り、自分のリボルバーの銃口を、その生物の開いた口の中に押し込む。コルスは自分の銃口を、その生物の頭蓋骨の右側に押し当てる。両方の武器が信じられないほど近い。
――それとともに、二人とも引き金を繰り返し引く。
バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン! バン!
――残っているのは「頭」じゃなく、金属と骨と血の塊だ。
その生物の頭は完全に粉砕され、見つけられるあらゆる小さな穴から液体が流れ出ている。その処刑とともに、それは地面に崩れ落ちる、完全に「生」という状態にいることが不可能になって。
アリヴィアがリボルバーをコルスに投げ返し、彼は素早くそれを再びホルスターに収める。それから彼は二丁目もホルスターに収める。
「グラフトか。なんとも非人道的な。ヴォラリアン帝国には本当に限界がない」彼が冷たく唸り、死体を確認しながら。「こんな生物にすら、こんな死は名誉あるものだろう」
コルスが体勢を整え、滑り落ちかけているアサカワの体を跳ね上げ、彼女の体をより良く自分の上に乗せる。彼の緑玉色の目が、それからゴルスロとサミュエルの方を向く。
「なるほど、お前たちはゴルスロを捕らえることに成功したんだな。もし彼が何の枷もつけられていないなら、彼はお前たち全員に自発的に従っているに違いない」それから彼はサミュエルに目をやる。
「で、お前は?」
「サミュエル・ヴォララです、閣下」
「彼の息子か?」
「その通りです。俺はセイブル・ヴェイルに加わりたいと思っていました」
「ふん、今この瞬間、見ての通り、お前をさらに尋問することは、俺たちをさらに危険にさらすことになる。今この時点の状況は深刻だ」
誰もが、それが深刻な状況であることをわかっただろう。俺たちの背後の町の混沌であれ、コルスの背中の意識を失った少女であれ。そのワイト、いや、男が、俺とアリヴィアの方を向く。
「カイト、アリヴィア、サミュエルを信頼できるか?」
俺たち二人とも頷く。
「よし。俺たちがきちんと落ち着いたら、詳しく話し合おう」彼が振り返る。
「も、もし俺を突き出すつもりなら、どうか西ノロヴィア刑務所に送ってください! 俺には――」ゴルスロが突然言うが、一瞬遮られる。
「静かに。それは後で話し合うと言った。お前が見捨てて、利用してきた市民たちが、あの森の中で、早くに奪われた人生に戻ることを待っている」
その男は視線を下げ、その傭兵に従う。
「よし、急がなければ」
グラフトの脇を通り過ぎるとき、その腕の下側に取り付けられた小さな物体に気づく。
青いテディベアだ。
―――――――――――――――――――――――
ナヴィ・ハイアーガルドが、そのグラフトの切断された頭を地面に落とす。この特定の個体は、彼女と森の中の残りの避難民たちを攻撃していた。その生物の頭が転がる中、カルシファーがその顎でそれを拾い上げる。
グラフトは対処しやすかった。
必要なのはただ、絶えずそれを熱することだけだった。それらは金属で構成されているから、十分なパイラエトン系の呪文があれば、迅速に片付けられる。彼らの体の75パーセント以上を占める成分が加熱され、それが順に、彼らに「命」を与えていた容器の中に閉じ込められた液体を沸騰させる。
グラフトはほとんどが、あまり多くの攻撃には耐えられないダメージタイプだった。もし対処する際に自分自身に気をつけていれば、容易く対処できた。
だが、そのモンスターの死体の中に、赤いテディベアが見つかったのは、少し驚きだった。
息を呑む声が続く中、ナヴィは振り返り、頭の後ろを掻き、サーベルを鞘に収める。
彼女の周りにいた者たちは、グラフトの突然の出現と、ナヴィがそれをいかに素早く片付けたかの両方に衝撃を受けていた。
この瞬間、ナヴィは軽い苛立ちを感じていた。彼女はこの7時間、人々がヴァロスに再入場できるようになるのを待っていた。だが、これ以上長くなりようがないと思っていたちょうどそのとき、町全体が炎に包まれて爆発した。
舌打ちしながら、その少女は馬車にもたれかかる、周囲の者たちの間の囁きが彼女の姿を包み込む中。カルシファーはもたれかかる彼女の傍らで、グラフトの頭を噛んでいた。
今、彼女はただ考えることしかできなかった。
自分とあの人物の間に何が起きたかを考えて。
なぜ自分が心を開くことを選んだのかを考えて。
その後に続いた結果を考えて。
誰も本当に自分自身に対して誠実じゃなく、ただそう見せかけているだけだという事実を考えて。
だがナヴィは考えることが好きじゃなかった。
茂みが揺れる音が突然湧き上がり、その少女が片目を開かせる。近づいてくる人影のうち最初に気づくのはアサカワだ、目を閉じている。アサカワはコルスの上に横たわっている、彼は今、人間のような姿をしている。どうやら、コルスにとって、その時が来たようだ。
次の人影はアリヴィアだった、奇妙に距離を置いたような表情を顔に浮かべながら。アリヴィアがどこかに存在するとき、彼女のサファイア色の瞳はいつも明るく輝いていて、彼女の性格を反映していた。彼女の体もまた、いつも上下に跳ねているようだった。だから、その少女からそのような態度を見るのは、かなり異例だった。
彼女に何が起きたんだろう?
三番目の人影は、ナヴィと同年代くらいに見える少年で、金色の肩までの長さの髪をしていた。彼の目は鮮やかな赤だった。ナヴィはこの男が誰なのかわからなかったが、他の仲間たちが彼がここにいることに何の問題もないようだったから、味方に違いなかった。
四番目の人影は……
ゴルスロだった。
あのクソデブが。
町人たちから発せられる罵倒の連射が、そのキングピンへと向けられていた。「クソ野郎」「クズ野郎」「冷血な怪物」。それらすべてが、その男の体を突き刺し、深く沈み込んでいった。彼がこの状況に居心地悪そうにしているのは明らかだったが、何か奇妙なことが起きていた。彼には、強いエゴを持つ男の顔が欠けていた。
それでも、ナヴィはこれ以上彼を見つめたくなかった。
そして、最後の人影。
ナヴィは目を逸らし、コルスに注意を集中させる、彼が叫び始める。
「みんな! 我々は標的、ゴルスロ・ヴォララを見つけ、捕らえた! 契約は完了した!」
「――でも私たちの家は!?」
「――これからどこに行けばいいんだ?!」
「――助けてください、置いていかないで!!」
「――追加で払います!!」
町人たちは、状況を処理しながら、自分たちの生活へと安全に送り返してほしいという意図を明らかに伝えていた。彼らは家に帰りたかった、この無意味な争いを避けるために。だが……
「申し訳ない……」コルスが厳かに呟く。「だが、あなた方の町は完全に危険にさらされていて、それに対処することは俺たちの手を完全に超えている」
沈黙が世界を覆った。
傭兵の仕事は、人々を助けることでも、無償で命を危険にさらすことでもなかった。結局のところそれは仕事であり、道徳は単なる追加のボーナスにすぎなかった。それはオプションだった。これらの人々を助けることは、セイブル・ヴェイルの義務の範囲内にはなかった。この視点にどれだけ反対する者がいたとしても、世界はそういうものだった。
それでも、何かがナヴィに助けを促した。
「ヴァロスの南東に、別の町がある。ジルタンって名前だ。あんたたち全員、問題なく馴染めるはずだ。結局、あんたたちの人数はそれほど多くない」彼女が言った。
「……」
ヴァロスの人々は呆然と見つめた。
「あんたたち、本当にここで死にたいの、それとも生きたいの?! 一体何を見つめてるの?! 行け!!」
それとともに、ヴァロスの人々は事実上のキャラバンを形成し、全員が森の北東へと殺到した。彼らの足音は雷鳴のようだったが、驚くほど統一されていた。セイブル・ヴェイルのメンバーたちは、彼らが全員反対方向に逃げていくのをただ見つめていた。もちろん、彼らが自分たちの町を取り戻すのを助けたいという衝動は空気中に漂っていたが、混沌の匂いがあまりにも強すぎた。
何人かは死ぬだろうが、残念ながら、できることはあまりなかった。
馬車の方へと振り返り、ナヴィは全員がすでに位置についていることに気づく。あの「人物」、それにゴルスロという名の金髪の少年、それにアサカワが中にいて、アリヴィアとコルスが手綱を握っている。
話す時間はない。言葉は後だ。今、彼らは標的を確保しなければならなかった。
少なくとも、彼らはそれを確保していた。
馬車が出発し、後に一筋の跡を残していく。
ヴァロスでの爆発は続いている。




