浄化
マスクをつけた男の声が、空っぽの廊下に轟いた。彼の頭蓋骨から、赤い「目」が光っている。彼の声は歪んでいた、まるで無線機に向かって話しているかのように。これは、恐怖を呼び起こすための意図的なデザインだった。
「S-2553。フラウ・シュニッターです」
小柄で華奢な、白髪の少女が答えた。彼女は15歳以上には見えなかった。彼女の声は静かなトーンだった、もし声を荒げれば起きるであろう結果を恐れているかのように。彼女はヴォラリアン帝国の市民なら誰もが見覚えのある、典型的な服装を身につけていた。深い黒のチュニックに、彼女の体格には大きすぎるように見えるグレーのズボン。
「シュニッター様、この地域の住民から複数の騒音苦情が寄せられています。発生源は、このフラットに追跡されました」彼の声が尋ねた、それでもなお威圧的だったが、どこか人間性のかすかな余韻を残していた。
粗雑に作られたパイプが蒸気を吐き出し、それがすでに狭い廊下に散らばっていく。いくつかのゴミの残骸が地面に散乱していて、それが警官の苛立ちの対象になっている。
「この家の住人は、市民怠惰行為に参加していますか?」
時間の浪費、あるいは「市民怠惰」と呼ばれるそれは、最大2000の罰金、あるいは逮捕にすらつながりうる行為だった。ヴォラリアン帝国は、そのような行為を好まなかった、市民には有用な活動を望んでいた。結局のところ、帝国はその技術力の高さで知られているのには理由があった。おそらくそれは、勤勉な帝国としての評判を維持したいという願望から生まれたものか、あるいは市民の福祉への純粋な懸念から生まれたものだったが、ヴォラリアは、市民の利益にならないエンターテインメントやその他のものを嫌っていた。
その少女は、体のほとんどをわずかに開いたドアで隠しながら、その質問を否定するかのように首を振った。
「い、いいえ、ですん。私と、おばあちゃんだけがここに住んでいます」彼女がか細い声で言う、緊張が顔に表れながら。
その警官は、その表情に気づき、この動揺の原因を調査することにした。結局のところ、何かを隠している者だけが、こんな感情を見せるものだから。ドアに手を置き、その男は優しく押した。
「調査させてください、シュニッター様」
その少女は、少し驚いたが、最終的に頷き、脇へと退いた。
ドアを開けると、ほぼ空っぽのフラットが現れた、散らばったわずかな家具だけがあった。壁は病的な灰色で、外の廊下の壁を模倣していた。窓は開いていて、迷い込んだ風のすきま風が中に忍び込んでいる。太陽光がガラスから差し込み、地面に沿って流れ落ちていた。
部屋の走査を終えると、その警官は次の部屋へと向かった。
この部屋は前の部屋よりも少し小さかったが、様々な文献の入った本棚があった。興味をそそられ、その警官はその棚へと足を踏み入れた。だが、よく見ると、これらの本はすべて、アルカナ研究、独自のセヴェラント、タウマイト生物学といった、特定の分野の学問に関するものだった。これらは有益な本であり、そのため、時間を無駄にするものではなかった。
「フラウ! 誰かお客さん来てるの!?」
年配の女性の声が、警官の背後から呼びかけた。その音の出所へと頭を向けると、彼は年老いた女性に出くわした、彼女は年齢を反映しているかのような古い椅子で、絶えず前後に体を揺らしていた。重装備をしたマスクの男が部屋にいるにもかかわらず、その女性は彼を無視しているようだった、おそらく年齢のせいだろう。そのような人物に驚かされたことに首を振りながら、その警官は本の調査を続けた。
その少女が真実を語っていたのだという理解が、彼の頭の中に落ち着いていった、視線が左右に動く中で。ひとつの事実がますます明白になっていった。これ以上の調査は不要だ。
まっすぐに立ち、その男は振り返った、視界が小さなシュニッターへと移動する、彼女は見つめ返していた。彼女はまだドアを開いたまま持っていた、まるでその警官が入った瞬間に早く出ていくのを期待しているかのように。
その警官は玄関へと堂々と戻っていった、直接彼女に向かって、彼女は彼の腰までの高さもなかった。彼は、その少女が単に彼の外見のせいで緊張しているだけで、何か違法な活動を隠している結果ではないという理解に至っていた。
「この一帯は問題ないようですね。調査を許可していただき、ありがとうございました」
その少女は頷いた、目は絶えず、男の顔にある明るい赤い光から逸らされていた。
『まあ、子供がこんな外見に怯えるのは当然だな』その警官は思った。
両手を頭に上げ、その男は、ヘルメットの後部と前部を繋ぐ小さなスイッチを外した。かすかなヒスッという音とともに、ヘルメットの前部が、かすかなポンという音とともに外れた。その男はフェイスプレートを外し、自分の顔を露わにした。
25歳以上には見えない男の若い顔だった。彼の髪は短く刈られた一種のバズカットで、おそらく、ヘルメットが彼の頭全体を難なく覆えるようにするためだろう。彼の目は鋭く、ヴォラリアンの警官に期待されるようなものだった。
片膝をついて、その男は少女の頭に手を置き、髪を撫でた。明るい笑みが彼の顔に自然と浮かび、口を開いた。
「読書と勉強を続けなさい、いいな? 無駄なことに時間を使うんじゃなくて、いつかヴォラリアの誇り高き戦士になれるようにな」彼が笑った。
ようやく彼の顔に集中できるようになり、シュニッターは頷いた、彼女の顔にも小さな笑みが浮かんだ。彼女の歯は、ほとんどが犬歯で構成されているように見えたが、かすかにその姿を現した。初めて、その少女は誰かに認められていた。彼女はこの感覚が好きだった、承認されるということが。彼女の努力と、彼女が学んでいることが、何かに繋がっていて、それを誰かが褒めてくれた。
一息つき、その男は立ち上がり、再びフェイスプレートを装備した、以前は死んでいた目が、あの見慣れた深紅に輝きを取り戻す。ヒスッという音とともに、彼は再びヴォラリアの労働者としての姿に戻った。
「改めて、家に入らせていただき、ありがとうございました」彼の声は、低く歪んだものへと戻った。
それから彼は素早く、ヴォラリアの敬礼を行った。
「ヴォラリアは秩序、秩序は人間性!」
その少女が敬礼を返した。
「ヴォ、ヴォラリアは……人間性」
その男は、その間違いに笑いながら、外へと足を踏み出し、背後でドアを閉めた。
久しぶりに、その男は自分の仕事のある側面を楽しんでいた。彼は自分の国を愛していた、そして次の世代を見ることが、彼の中に何か火花を灯していた。この火花は続いた、彼が4日後、ミミックに食い殺されるまで。
彼女の唯一の追従者の存在が消え、その少女はドアを見つめた。静寂が続いた、その存在を、消え去るまでの数瞬の間、必死に固定しようとしながら、周囲の部屋にその存在感を向けている。彼女の目が、剥がれかけた木材に据えられている中、物音が本棚の裏から湧き上がり始め、どんどん大きくなっていった。これは、この出来事が起きた初めてのことじゃなかったから、彼女の目はドアから逸れなかった。
もう少し、本棚が床を引きずられる音が続いた後、声が部屋に入り始めた。
「――ふう、危なかった!」
「――あのクソドローンども! ほっといてくれよな?!」
「――俺たちにずっと働けって言うつもりか!」
「――パーティーさせてくれよ、どけって!」
足音がすぐに続いた、声を伴いながら。十分な時間が過ぎた後、その足音は部屋中に散らばっていった。いくつかの声が笑い声へと変わっていった。
その少女の目は、決してドアから離れなかった。
様々な飲み物の栓を抜く音が、笑い声とともに続いた。笑い声が激しくなった。
「――ちょ、ちょっと! こ、ここじゃないって!」
「――いいだろ、もう我慢できないんだよ! 誰も気にしないって!」
「――うわ、ヨハンとエマ、やってるぞ」
「――俺たちも混ざろうぜ!」
「――まったく、いつもかっこいい奴らばっかりがヤらせてもらえるんだよな」
「――そうだな、あっち行こうぜ」
官能的な喘ぎ声が笑い声に加わった。
足音、喘ぎ声、飲み物。
いつも同じだった、毎日。
その少女はドアを見つめていた。
『帰ってきて。お願い、帰ってきて。私、自分の人生で何かしたい。ここにいたくない』
「――ちっ! このクソ本ども! 足の上に落ちてきやがった!」
「――は、なんで止まったんだよ……? ああ、もう蹴っ飛ばせよ。どうせここには誰も住んでないんだから」
その少女の目が、わずかに揺らいだ。
『目を逸らさない。目を逸らさない』
「――なんでフラウはパーティーに参加しないんだ?」
「あの子、すごく可愛いんだけど、隅っこで本読んでる方が好きなんだよ、そういうクソつまんないやつ」
「――俺たちを怠け者みたいに見せようとしてるのか!? ちょっと羽目外そうとしてる俺たちに気まずい思いさせる、あの道徳的優位ぶった奴らってマジで嫌いなんだよ!!」
「――まあ、あの子はまだ子供――いや、いいや」
これはネズミの部屋だ。害虫の。自由と欲望の檻。お前が誰であろうと、一度中に入れば、他の誰とも変わらない。
足音が、今度は少女に近づいてくる。
その少女は目を閉じた。
「――お前は罰を受けるべきなんだよ! 俺たちの視点をお前に見せてやるからな! 自分が俺たちより上だとでも思ってんのか?! このクソサイレンが!」
足音が、大きくなっていく。
「――あら、たまには羽目外しなさいよ、シュニッター」
『帰ってきて。お願い……』
大きな両手が、その少女を包み込んだ。
そして、それが彼女の目を覆った。
―――――――――――――――――――――――
あの警官がアパートに入ってから、4か月が経っていた。シュニッターは家を出ることができなかった、彼女が若く魅力的だという事実のせいで、他の警官たちが市民怠惰行為のさらなる調査をしないよう説得するために、絶えず利用されていたから。この同じ日課が、少なくとも他に三回繰り返されるだろう、そして、どういうわけか、毎回、調査は打ち切られた。全員が家を離れ、翌日戻ってきて、これを一週間続け、誰かが呼ばれ、尋問されると、シュニッターが彼らを「救う」のだった。
まともな人間なら誰でも、ここで何か疑わしいことが起きていると推測するだろう。シュニッターは、ヴォラリア内の高位の役人がこれらのハウスパーティーに参加していて、その結果、自分の権限を利用してこの物件へのさらなる調査努力を止めているのだろうと疑っていた。この時点で、彼女は、この一連の騒動を最初に始めたのが誰だったのか、それが彼女の「祖母」だったのか「両親」だったのか、思い出せなかった。
彼女が知っていたのはただ、ゆっくりと剥がれ落ちていく塗料の、灰色の陰鬱な壁だけだった。彼女が知っていたのはただ、絶えずアルコールやその他の汚物で散らかっている汚れた床だけだった。それらすべては、捜索が行われる前に、素早く掃除されなければならなかった――すべて彼女によって。それが、彼女が知っているすべてだった。
その少女は飲酒を許されていたが、周りの者たちが楽しんでいるように見える酔いの朦朧とした状態に、何の楽しみも見出せなかった。彼女は自分の選んだハンサムな男を誰でも追い求めることを許されていたが、一度もそうしなかった、たった一晩男を喜ばせるためだけの、ただのおもちゃになるという考えに嫌悪感を抱いていたから。悲しいことに、隅に追い詰められたときには、彼女は選ぶことができなかった。
シュニッターは社交することを許されていたが、彼女を取り囲む「捕虜たち」は皆、話題が「どれだけ長く続けられるか」や「どれだけ飲めるか」だけの会話しかできない、役に立たない害虫にすぎないと気づいた。彼らの互いの会話は、快楽主義と怠惰に根ざしていた。彼らは、パーティーの他の参加者の誰が魅力的かとか、その人物のどんな部分が魅力的かとしか話せなかった、しばしば極端な詳細にまで踏み込みながら。
彼女の本棚については、二冊の本だけが残っていた、いくつかのページは、残った「物質」を掃除するために他の者たちに引き裂かれていた。シュニッターは時々、隅にうずくまり、そのほとんどを読み返した、あらゆる一語一語を暗記するまで。ほんの3か月前、彼女は棚ひとつ分の本を持っていた――だが今、彼女は同じものを何度も何度も読み返すことしかできなかった。
その少女の心には、穴が存在していた。彼女は何かを、その穴を埋める何でもいいものを求めていたが、どこに目を向けても、無駄なものしか見つめ返してこなかった。その少女は、豪華で金色の牢獄にいたが、その外見にもかかわらず、それはただの牢獄だった。
学校という考えが、その少女の心にしばしば浮かんできた。
彼女にとって、それはより幻想的な土地のように思えた、知識が絶えず空気中に漂う場所。彼女と同年代の者たちが、学んだことを利用して、日常生活に応用する場所。それは、きっと素晴らしい気分に違いない。ついに、これほど多くの努力を注いだものを使えるということが。
だが、シュニッターにとって、彼女は役立たずだった。彼女は、絶えず自分を取り囲んでいる者たちと何ら変わらなかった。彼女の考え方が異なっていたにもかかわらず、彼女自身は何もできなかった。誰かが家を出るたびに、あのドアから走り出ることを考えるたびに、報復への押し潰すような恐怖が彼女を絶えず苛んだ。
今日、彼女は壁にもたれて丸まっていた、目はそのドアに向けられたまま。
今回、剥がれかけた塗料は4本の筋があった。それを知れて良かった。塗料って、正確にはどういう仕組みなんだろう? そもそも塗料って何なんだろう? 塗料は食べられるんだろうか?
疑問を抱くことは、人間の本性だ。自らの存在について熟考すること、周囲の世界に疑問を投げかけること。それは本質的に人間的なことだ。人類の遠征、科学的発見、そして功績はすべて、単一の疑問――なぜ?――によって集合的に燃料を供給されてきた。これらのマイルストーンに到達した者たちは皆、この疑問を抱いていて、それが自らの行動を導くことを許していた。
この疑問は、子供にとって特に重要だった。発達期が渦巻いているとき、この疑問は絶えず問われる。それは、彼らの周りの世界を測る指標として、そして因果関係を評価するために使われる。子供がめったに自分の疑問への答えを与えられないとき、それは周囲の大人たちへの不信を招く。これが、シュニッターの他者からの疎外の主要な要因のひとつだった。
『何かを知ることって、悪いことなの?』
『なんで、誰も私に教えてくれないの?』
『いや、悪いはずがない。気持ちいいもの』
『でも、大人たちがやってることも、気持ちいい』
『でも、後で気分が悪くなる……』
『「悪い」良いものと、「良い」良いものがあるの?』
その少女は、心の中で絶えずこの疑問の連鎖に自らをさらしていた。この疑問は、彼女がそれについて熟考する時間の負担に応じて、しばしば激化した。彼女がそれについて考えれば考えるほど、生産性と楽しさのどちらが優れているのか、ますます理解できなくなっていった。
これらの深い熟考の結果として、その少女は絶えず歯をガチガチと鳴らす癖を身につけていった。おそらくそれは、彼女にとってのしくじった形の娯楽か、あるいは単に彼女の心が滑り落ちているだけだったのだろう。どちらであれ、その癖はしばしば大人たちの注意を引いた。大人たちは通常酔っていて、その少女の運命は完全に彼らに依存していた。
その少女の頭が下へと傾き、歯がガチガチと鳴った。
塗料の起源についての考えが、野生のツタのように彼女の心に広がっていった。
突然、シュニッターの真正面でドスンという音が起き、彼女がその音の出所へと目を向ける。この環境ではこのような音はかなり一般的だったが、これほどの激しさのものは今まで起きたことがなかった、それが実際にその少女がその方向を見つめる原因となった。
二人の男。一人は20代前半に見え、もう一人はより太っていて、頭の禿げた部分から明らかに40代後半に見えた。シュニッターがその禿げた部分を見えていたということは、彼の背中が彼女の方を向いていたということだ。
状況をよりよく見ようと、シュニッターの目は、若い男の襟を掴む二つの手を捉えた。彼もまたドアに押し付けられていて、年上の男との肉体的な対立に巻き込まれているようだった。
「この野郎! あの子には手を出すなって言っただろう! よくもそんな汚らわしい手を、あんな純粋な乙女にかけられるな!!」
若い男の手が突然、年上の男の左腕を掴み、周りの布地を圧縮する。
「おい、デブ。お前は自分を何様だと思ってんだ、ヒーローか? マジで気味悪いんだよ、うんざりだ。お前の半分の年齢の女の子に自分の気持ちを押し付けやがって……」
彼の顔に笑みが浮かぶ。
「そもそも、ヒーローなんてこんな場所にいねえよ、あの女もな。あいつはただの娼婦だ、俺があいつをやってもキレるんじゃねえよ」
シュニッターはこの二人の名前を知らなかったが、年上の男には見覚えがあった。彼は若い女性を狙うことで知られていた、一種の捕食者だった。彼の不快な顔もまた、彼の忘れがたい外見の一因だった。彼はまた、ある種のねじれた騎士道精神を築き上げていた、自分をここに来た女性たちの「救世主」だと信じていた。まるで彼女たちが、そもそも救われることを望んでいたかのように。
彼は一度、シュニッターに近づいたことがあったが、その少女に何かをしたことは一度もなかった、その瞬間、彼は泥酔していたから。
その年上の男の顔は、彼が泣きながら、その本性を反映するかのように、忌まわしい混合物へと歪んでいった。
「お前! お前を殺してやる! いつだって、あの女たらしどもが女を堕落させるんだ!」
その太った男から突然のパンチが繰り出され、若い男の頬に命中し、彼はドアに倒れ込み、それが開いた。二人は地面に崩れ落ち、緊迫した乱闘がすぐに続き、見物人たちがその衝突に歓声を上げ始めた。
ネズミたちの間で、喧嘩が勃発していた。
その年上の男の体重のせいで、彼は効果的に相手を地面に押さえ込んでいて、大量の連打を浴びせることができていた。だが、攻撃者が見せる圧倒的な努力にもかかわらず、その「被害者」はほとんど影響を受けていないようだった、表情がわずかに変わるだけだった。
ドアは今、開いていた。
その少女の目は、ドアに釘付けだった。いや、世界に。
「――やれ、やっちまえ!」
「――ぶちのめせ!」
混沌がその後1分ほど続いた、廊下中に響き渡る、集団に属する大きな足音が鳴るまで。それぞれの足音が聞こえてきた、ブーツの合奏に貢献しながら。その「ブーツ」たちは全力で走っていた――混沌の源に到達しようとする彼らの必死の試みが、はっきりと感じられた。
「市民たちよ、直ちにこの行為から離脱せよ、さもなければ浄化を開始する!」
突然の声が湧き出た、そのトーンは深く、歪んでいた。それは、顔に装着されたフェイスプレートのようなマスクから明らかな、ヴォラリアン警察組織の一員に属していた。
12ユニットほどが、四方八方から二人の男を取り囲んだ、彼らの銃器や武器は二人に向けられていた。
先ほどまで衝突をさらに煽っていた、あの興奮した声は今や静まり返っていた、その権威的な存在感の結果だった。恐怖が部屋の中の感情を素早く殺し、その位置を奪ったことは明らかだった。
明確な警告にもかかわらず、その年上の男は攻撃を続けた、まるで相手を殴ることが自分自身の命よりも重要であるかのように。シュニッターはその瞬間、理解できなかったが、その男は、彼の脳を認識不能なまでに変えてしまう強力な薬物の影響下にあったのだ。
「最終警告! 直ちに離れよ!」
暴力だけが返答だった。
それから、一発の銃声が響いた。
その年上の男の側頭部が、血まみれの肉塊へと爆発した。脳漿が舗道に飛び散り、血がすぐに続いた。その男が叫んでいる最中に発砲されたため、彼は一瞬痙攣した、残された心のかけらが、痛みを処理できなかった。彼の唇は無駄にぱたぱたと動いた後、血が体の残りを伝い流れた。
ついに、その死体は後方に崩れ落ちた、膝がまだ曲がったままの状態で。死ぬにはひどい姿勢だった。
下にいた男は、そのような行為を予期しておらず、衝撃と混乱の叫びを上げた、それが頭蓋骨への刃を招き、迅速に彼の命を終わらせた。
もちろん、シュニッターはこの暴力的な決着に衝撃を受けていたが、別の考えが突然彼女の脳に浮かんだ。
この二人は、生きたように死んだ。彼らは害獣として生き、そのように死んだ。彼らはこの世界に何も貢献せず、貢献した者たちによって排除された。そのような死は、シュニッターが恐れ始めていたものだった。彼女はそのような無意味な終わりを恐れていた、それがおそらく、知識への彼女の欲求の背後にある理由すべてだったのだろう。
それはかなり詩的な光景だった――その少女にとってのみ。
自らの行動に誇りを持つ、鎧を着た誇り高き戦士が、汚れた服を着た、アルコールにまみれた老人の上に立っている。
この啓示が少女の中を駆け巡っている間、彼女の周りにいた者たちは、先ほどの前任者たちがしたのと同じくらい愚かな何かを、急いで計画し始めていた。
「――くそ! また戻れねえ! しかも今回はCIでだ! 俺は終わりだ!」
「――逮捕されるわけにはいかない! 家に子供がいるんだ!」
「――戦わずに倒れるつもりはない!」
「――俺たちは50人、あいつらは12人だ! いける!」
まともな人間なら誰でも、警官たちに突撃することが、ほぼ確実に迅速な死をもたらす決断だという結論に、すぐに至るだろう。武器を持たない者は特に、そのような無謀な決断を再考するはずだ。これらの部隊は、みすぼらしいナイフなど瞬時に打ち負かせる、適切な武装をしていた。
それでも、この者たちは、アルコールと、彼らの心を焼き尽くす謎の薬物の両方の影響下にあった、その狂気の表情が顔に明らかに表れていた。
小さな燠火が瞬く間に激しい業火へと爆発した、最初の愚か者が警官たちの喧騒の中へと突進していったから。警官たちは自分たちの側から一斉射撃で応じ、その「ゾンビたち」を引き裂いていった。
血が壁、天井、地面に沿って飛び散った。内臓もまた、崩れ落ちる死体と混ざり合い、その虐殺を際立たせていた。男も女も同じように、猫の顎の中へと突進するネズミのように突撃した。何人かは数秒間だけ全力疾走したが、すぐに体が崩れ落ち、短い喘ぎしか残らなかった。
この暴力の中を通して、その少女はドアを見つめていた、今や赤いペンキで覆われている。
それから彼女の目は、ヴォラリアン帝国の力へと移った、彼らの剣の任務を果たしている。帝国に何も貢献しない害獣を根絶する男女。これは戦いじゃなかった、対決でもなかった、これは浄化だった。これは、清掃業務だった。
最後の弾丸が、流れる血の中に沈んでいった、鉄の臭いが刺激的だった。残っていたのはただ一人、フラウ・シュニッターだけだった、死の中で生まれ変わって。彼女は自分自身の人生の目的を理解することになる。楽しみを排除し、生産性を促進すること。
兵士たちのブーツがその少女の方へと動き始めた、何人かが死体の中に座っている子供の姿に気づいたから。彼女の顔に笑みが浮かんでいた、その少女が小さな指を上げ、左の部屋を指し示す中で。
老女に属するすすり泣きが、その部屋の唯一の「存在」として残っていた。
その女性の完全な絶望をよそに、彼女は武器を手に持っていた。
「――やめて! お願い!」
その日、「ネズミの巣」――フロレンシアの第四地区にある、隠された市民怠惰クラブ――は発見され、住人たちの攻撃的な性質のせいで急速に浄化された。死体の中から、多くの高位の役人たちが発見され、政府内の腐敗について激しい議論が巻き起こった。そのクラブと繋がりがあり、当日不在だった役人たちも追跡され、逮捕された。
「悪魔の香り」として知られる薬物も、ネズミの巣の中で発見された。この薬物の使用は脳を大きく変化させ、それ以外なら合理的なブレーキとなる思考プロセスが省かれる結果を招く。
フラウ・シュニッターという名の孤独な少女が、この浄化の唯一の生存者となり、「死の病原体」として生まれ変わり、その後、帝国に大きく貢献していくことになる。
武器が老女に狙いを定めた。
―――――――――――――――――――――――
拳銃の銃口からの爆発が、一瞬路地を照らし出し、残っていた影を一時的に払いのけた。もう一発、そしてまた一発が続いた。
だが、どの弾丸も、標的に命中することはなかった。
「見た目より速いのね、害獣! 誉れ高き暗殺者にしては当然か!」シュニッターが叫んだ、喜びに満ちた薄笑いを顔に浮かべながら、明らかに相手との標的ごっこを楽しんでいる。その相手は壁沿いを疾走していた、一発ごとに近づきながら。シュニッターはこの事実を認識していて、後ろ足を床に食い込ませ、迫り来る攻撃に備えていた。攻撃者は五歩の距離にいた。
『あいつは速い、私の弾丸よりも速い。ふむ、何かの予知能力で回避してるのか見てみましょう。弾倉にはあと4発残ってるから、大丈夫なはず』その指揮官は思考した。
発砲する腕を空中に滑らせながら、その女性は、アサカワの明らかな軌道の真正面に一発を発射した。小さな疑いがシュニッターの心に湧いていた――この害獣は実際には速いのではなく、何らかの予知機能を通して未来を読み取れるだけなのではないかという考え。
「カーン!」
アサカワはその弾丸を斬り裂いていた、その飛翔体の突然の軌道変化に一瞬驚かされながら。弾丸が刀に衝突し、黄色い塵の閃光とともに発火し、すぐに地面へと消えていった。だが、そのような出来事が起きたにもかかわらず、アサカワは一瞬たりとも足を止めなかった。
4フィート離れている。
『この女、私に発砲するとき、いかなる動きも控えている。私を止めようとする試みが繰り返し無駄に終わっているにもかかわらず、彼女はその場に留まり、発砲し続けている。ゲイザーなのか?』アサカワは考えた。
3フィート。
『適切な距離に到達したら、すぐには攻撃してはいけない。もし彼女がゲイザーである可能性があるなら、私は重大な不利を被ることになる、彼女はおそらく、何らかの機能を発動するために私が近づくのを待っているはずだから』
『私は……』
『私は……』
2フィート。
『不意を突く!!』
『この害獣の不意を突く!!』
以下の出来事は、1秒の半分の中で起きた。
アサカワは最初、シュニッターの腹部を狙って水平に斬りかかる準備をしているという印象を与えていた。彼女は、軌道変更が不可能なような形で、彼女に向かって跳躍していた。ダッシュの間、彼女の後ろ足が後方へと飛び上がり、一種の矢のような印象を与えていた。
親指から血が引き出された、人差し指がその中に食い込んだから。
「グラヴィタス1、上昇」
アサカワの体がシュニッターの上空へと舞い上がり、まっすぐ上方、放棄された家へと向かった。空中で素早く振り返り、相手を観察しながら、アサカワは刀を構える準備をした。
『体全体をフェイントに使ったから、彼女は誤って機能を使ったに違いない。今こそ、自分の目で確かめるチャンスだ』
黒髪の少女の目が見開かれた。
彼女のトレードマークの笑みとともに、アサカワの真下で、シュニッターは拳銃をまっすぐ上に、アサカワではなく向けた。一瞬の無駄もなく、彼女の指が引き金を押し、その武器が発射された。
現実を歪める何かが起きた。
「Ḥ̸̳̬͇̅̽͛̕I̶̥̭̳̟͐̓̀T̷̤̖̑̎̉̈́……」
衝撃が突然アサカワの脳に入り込み、彼女は自分の足を見下ろした。
「?!」
深紅の液体が脚を伝い、下の地面へと滴り落ちていく。
この時点で、グラヴィタスの呪文は効果を失いつつあり、アサカワは近くの屋根に着地せざるを得なかった。無傷の脚を使い、彼女は素早く屋根瓦に着地し、しっかりと相手を見つめた。アサカワの目が開き、パターンが彼女に見えた。もしかしたら、彼女のホローポイントを見て、攻撃を組み立てられるかもしれない。
アサカワにとって、パターンは闇の集合体として見えていた。ホローポイントは通常、明るく輝く白い円として見えた。
残念ながら、シュニッターのホローポイントは、実質的に存在しなかった。それは、彼女の感情状態が制御されていたからだった。誰かの感情状態が渦を巻くとき、狂気であれ悲しみであれ、そのホローポイントはますます輝きを増す。アサカワはその凝視から抜け出し、ため息をついた。
シュニッターは気だるげに振り返り始め、拳銃を手にぶら下げながら。
『どうやって? 彼女は私を狙ってすらいなかったのに、どうやって私の脚に命中させられたの?』アサカワは考えた。
幸い、その弾丸は動脈や主要な体の部位には当たっていなかった。まだ痛かったが、永続的なダメージは受けていなかった。今のところ、左脚に頼るのは避けなければならない。
『でも、明らかだわ。彼女は私に、自分の機能を使わせて、私自身の機能を明かさせようとしている。最善のシナリオは、私の神懸かりの風を明かすことなく、彼女を仕留めることね』
神懸かりの風。
アサカワ・メイコのタウマイト機能。それは、「不発」の一撃で運動エネルギーを利用し、それを「真」の一撃へと蓄えるという能力だった。最初はセヴェラント機能と間違われるかもしれないが、それは真実からかけ離れていた。もしアサカワが数瞬の間、盲目的に空を打てば、そのサイズと重量に応じて、運動エネルギーが蓄えられる。それから、彼女の中指と親指が互いに押し当てられると、次の一撃が「真」へと変換され、蓄えられたエネルギーすべてを、単一の壊滅的な一撃へと解放する。
アサカワはこの能力のために好きなものを使えたが、その重量とサイズから、エネルギーが蓄えられやすい大きな刃を使うことを好んだ。
その機能の存在は一見強力に見えるが、タウマイトとして、彼女が苦しむ等価の法則も同様に負担が大きかった。彼女の機能が発動されると、アサカワの脳へと流れる血液の中に、およそ2時間持続する小さな血栓が形成される。もし再び発動すれば、その血栓はさらに大きくなり、というふうに続いていく。
このため、アサカワは呪文を使うことにより多く頼っていた、すべてのタウマイトがそうであるように。これは、タウマイトが自分たちのしばしば強力な機能に対して支払う代償だった――等価の法則は、他のどんなゲイザーよりも彼らに対して厳しかった。タウマイトはより高いアルカナの蓄えを持っていたが、それでも尽きることはあった。とはいえ、このシステムはいずれさらに深く掘り下げられるだろうから、今の時点でこれらの用語を覚えておく必要は必ずしもない。
重要なことは、こうまとめられる。アサカワは自分の能力を明かすことができなかった、二つの理由から。一つ、もし使えば、血栓が形成され、彼女の戦闘能力が危険にさらされる。二つ、もし使えば、相手が何が起きているのかを正確に理解し、その能力への対抗策を導き出すだろう。
アサカワは、タウマイトとしての段階2呪文への広範な知識に頼らなければならなかった。相手が持つ小さな拳銃を考えれば、彼女との距離を作ることはばかげているように思えたが、アサカワは、自分の負傷した脚のせいで、そして相手の能力を理解していないせいで、そのような行動を取らなければならないと推測した。
彼女は近接戦闘では優位にあると信じていたが、相手の機能を観察するために、後退しなければならなかった。彼女はタウマイトなのか、セヴェラント使いなのか、あるいはもしかしたらヴォケイターなのか?
相手を見上げると、シュニッターは完全に体を回転させた、拳銃の銃口からはまだ煙の房が立ち上っていた。火薬の匂いが彼女の周りの空気を満たし、彼女はもう一度笑みを浮かべた。おそらく、さらに敵を挑発するために。
「ストレス溜まってるみたいね、害獣! これが、秩序と正義のために戦う者と対峙するということよ!」
彼女は両腕を広げる。
「あなたのような、ただの傭兵には決して理解できないでしょうね! あなたたちは、最も高く払ってくれる相手のために能力を使い、金のために他人を見捨てることを選ぶ! 私の心は揺るがない、そんな世俗的な欲望のために戦うことは決してない!」
アサカワ・メイコが片手を膝に置き、体を押し上げて、シュニッターの視界にぎりぎり入る位置まで来る。
「自分の理由が個人的な楽しみとは無縁だと主張する割には、随分と笑っているようですね」
「ちっ。あなたには決して理解できないでしょうね」
素早い手つきで、シュニッターは弾倉を素早く外し、落下させた。それが落ちる間、彼女の左手は滑らかにポケットへと入り込み、新しい弾薬を取り出しながら、スライドを引いた。しっかりとしたカチッという音とともに、弾倉がスロットに滑り込んだ。
この一連の動きは、わずか1.5秒ほどしかかからなかった。
シュニッターは再び、アサカワにリズミカルに発砲し始めた、彼女は人差し指を鳴らして応じた。
「ガイアドロス13、包囲」
彼女は自由な腕を体の周りに半円を描くように振った。屋根の様々なタイルが自分たちの位置から引き抜かれ、銃撃からの盾を形成した。弾丸がその表面に跳ね返り、火花が爆発して地面に跳ね返った。何枚かのタイルが空中で弾き飛ばされ、下へと落ちていった。
『さっき、私に命中させたとき、彼女は「命中」という単語に似た何かを唱えていた』
『銃器に関連した何らかの能力を持っているのかもしれない。一種の「必中」機能を。彼女を武装解除することが、賢明な行動なのかもしれない』
「潜̶̢̖͔れ̸̧̱̣̥! く……!」シュニッターが叫んだ。
突然、弾丸によって弾き飛ばされていたタイルが、素早く軌道を変え、アサカワの足元、屋根の中へと向かった。凄まじい速度で、それらは下方へと投げつけられ、構造物の残りと衝突し、大部分が内側へと崩壊した。煙が一帯で爆発し、一瞬、中にいる全員を覆い隠した。
晴れた後、シュニッターは目を細め、相手を探した。彼女の幸運なことに、その相手はどこにも見当たらなかった。
『中に落ちたわね。奇襲は成功よ』
この特定の家には、二階建てほどしかなかった。すべての窓がシュニッターの方を向いていて、もしアサカワが脱出を試みれば、彼女の掌握の中へと落ちることになる。彼女は効果的に彼女を罠にかけていた。
膨大な数の足音が、シュニッターの位置の周りに集まり始めた。
「指揮官! 物音が聞こえました! どうお手伝いすればよろしいでしょうか?!」シェーラーの兵士が叫んだ。
建物への凝視を失うことなく、シュニッターは尋ねた、「下っ端の害獣どもは片付いたのか?」
「はい、閣下! 残った者たちはヴァロスの残りの一帯に散らばっていて、今この瞬間も他の部隊によって鎮圧されています! 私たちがここに来たのは――」
「シェーラー、こっちに来い! 対タウマイト陣形につけ!」その女性が叫び、片手を上げた。
素早く、彼女の周りのシェーラーが、一種の四角形に似た陣形を形成した。より軽装のセヴェラントを持つ者たちが前方に、より大型のセヴェラントは後方に。約4体のシェーラーがその陣形を構成していた。
「タウマイトども! 位置を確保しろ! もし誰かが窓から飛び出すのを見たら、即座に発砲しろ! 残りのイェーガーも、同じ命令に従え!」
「はい、閣下!!」
「行け、行け、行け!」
これらの命令が発せられると、グループは急速に正面玄関へと押し寄せた、シュニッターは中央で帽子を直しながら。
「突破!」シェーラーの兵士が叫び、大きなハンマーを振りかざしながら、後方の位置から前方へと移動した。ハンマーを振るう際の腰のひねりとともに、ドアの木製の土台が内側に崩れ落ち、破片や断片があちこちに散らばった。ドアはまだ蝶番についたままで、垂れ下がっていた、かつての姿の残骸として。
その重装のシェーラーは、それから元の位置に戻った。
二人の軽装シェーラーが、両方ともダガーを装備していて、素早く中へと突入し、部屋のセクター、あるいは「支配的な角度」を確保していった。シェーラーとして部屋を突破する際、拳銃へのアクセスはなかったので、速度が部屋を確保する上での主要な要素だった。視野は交差する形で形成されなければならず、速度は絶えず一定でなければならなかった。もし敵が発見されれば、どちらのユニットのセクターにより近いかに関わらず、まずそのユニットが対処し、次に二番目に近いユニットが続く。
軽装シェーラーが中に突入してから約2秒後、シュニッターが続いた、拳銃を掲げながら。重装シェーラーもまた続いた、二人ともハンマーを背後に引きずりながら。
『脚に命中させたことはわかってるから、彼女はおそらく負傷している。それでも、援護とともに完全に押し進むことは依然として必要ね。彼女はまだ自分の機能を明かしていない、だから私はまだ、わずかに不利なままよ。私はソブリンを発動せずに、盲目的に彼女に発砲していた、だから彼女は何かを明かせるかもしれない』
「クリアと思われます!」
「いや、階段がある、確認しろ」
部屋にいた全員が頭をその階段の方へと向けた。部屋の右端奥に、その対象が横たわっていた。まだ位置を保ったまま、軽装シェーラーはダガーを近くに構えたまま、ゆっくりと階段の方へと進んでいった、重装シェーラーが近くに続きながら。だが今回、シュニッターは中心から外れ、代わりに後方に留まっていた。
床板の下できしみ音が響き、全兵士が階段へと押し寄せる中。最初の階段は正面にあり、全員に見えていたが、問題は二段目の階段で、それは180度の曲がり角にあった。
「血だ!」一人の兵士が叫び、階段を伝う深紅の粘性の液体を指差した。それほど大量ではなかったので、それが早くに発見されなかった主な原因だった。それでも、それは警戒すべき光景だった。良い警戒なのか、悪い警戒なのか、判断はつかなかった。
「慎重に進め!」
その階段は狭かったので、その結果、各兵士が一列に並んで動かなければならなかった。最初の一人がその階段に入った、彼のブーツが血に触れ、接触点からわずかな飛沫が生じた。
最初の兵士が動く中、彼は目を階段沿いの手すりに釘付けにしていた。緊張が神経に食い込んだ。もし敵に遭遇すれば、処刑は迅速でなければならない、わずかなためらいが死を意味する――
待て。
何かが彼の目を引いた。
二段目の階段の頂上に――黒髪の少女が座っていた――大きな鞘に収められた刀を握りしめながら。彼女の左脚から血が滴っていた、それがおそらく、階段に飛び散った深紅の原因だろう。汗の玉が彼女の顔の周りに溜まり、彼女の歯は食いしばられていた。彼女の黒髪の房も顔に張り付いていて、彼女が負傷しているという事実をさらに際立たせていた。
「――う、動くな!!」その兵士が叫び、ダガーを女性に向けた。
この特定のシェーラーのセヴェラントは、彼の視界を一瞬犠牲にすることで、その先端から雷の光線を発射することを可能にしていた。
もし彼女が一筋の筋肉でも動かせば、彼は電撃の激怒を彼女に解き放つだろう、その激しさは彼女の強さによって決まる。だが、彼にとって完全な絶望となったことに、彼女は彼の命令にもかかわらず、動きを止めないようだった。その兵士の、自分自身のためらいへの困惑が、まるで触手のように彼の脳に絡みついた。
彼は何年も訓練してきた、クラスのトップだった。彼はヴォラリアン帝国内の数少ないシェーラーの一人だった。だからなぜ?! なぜ彼はこんな気持ちになっているんだ?! なぜ恐怖が彼の神経に、彼の血流に注入されているんだ!? 彼は精鋭兵士だった! なぜ今、ためらいが存在しているんだ?!
その男のマスクの奥にある目に映る少女の反射が、どんどん大きくなっていき、理解不能な存在へとねじれていった。ヘルメットの側面のダイヤルを回し、そのシェーラーは自分の凝視を発動させた、体が言うことを聞かない原因を確かめようとしながら。
彼の視界が切り替わった瞬間、彼は理解した。
このシェーラーには、パターンが糸の集大成として見えていた。それが彼の知覚の仕方だった。ホローポイントは彼にとって、残りから切り離された、破れた糸として形成された。彼が凝視すると、すべてが、そしてすべてだけが糸になる。
だが、彼の前には、何もなかった。
彼が動けなかったのは、まさにその「何もない」ことのせいだった。
彼は、何もないことに恐怖していた。
虚無エントロピーが彼の姿を掴み、彼は動けなくなった。
「おい! S62、どうした!? 見つけたのか!?」もう一人の軽装シェーラーの仲間が叫んだ、困惑しながら。残りのユニットは、その階段の狭い性質のせいで、仲間の目の前に何があるのか見る方法がなかったので、呼びかけが必要だった。今、最初の一人以外の全員が暗闇に取り残されていて、自分たちの主要な兵士に何が起きたのか理解できずにいた。
兵士たちが罠にかかった蝿のように苦戦している間、アサカワはゆっくりと立ち上がり、刀の柄を握りしめた。極めて正確な動きで、彼女は刀を抜き始めた、両腕を伸ばしながら。
「くそ!! コンラート! 押しのけろ! あいつを助けなきゃ!!」重装シェーラーが叫んだ、彼の友人らしき人物のようだった。彼の友人に対するダメージが、彼にこたえているのは明らかだった、彼はますます必死になっていた。
「動くな! 俺たちは位置を維持しなきゃならない!」
他の二人のシェーラーは待機していて、自分たちの位置から撤退すべきか、押し進むべきか、引き裂かれていた。彼らの指揮官は、たった今起きたこの緊迫した状況を担当していた。だが今、シュニッターは最下部にいて、何が起きているのか見ることができなかった。
「いや! お前は――」
「神懸かりの風」
その言葉が発せられると、階段にいた全ユニットが即座に、そうだ、即座に、真っ二つに切断された。
深紅が階段から爆発し、肺、内臓、臓物が深紅とともに壁に飛び散った。まるで血の津波が壁に叩きつけられ、それを赤いペンキで覆ったかのようだった。彼らの死体の残骸は階段を転がり落ち、ほぼすべてがシュニッターの足元に落ちた。脳漿がいくつかの死体からゆっくりとこぼれ出し、そのピンクが惨状に加わった。
その指揮官の目が見開かれた、部下全員の突然の殲滅にショックを受けながら。
『あんな狭い空間で全員を捉えて、それから一撃で全員殺した?! これが彼女のセヴェラント機能に違いない!』
シュニッターがこの凄惨な結末を解釈しようとしている間、階段からきしみ音が湧き上がった。影が壁に沿って自らを投げかけ、ゆっくりと降りてきた。一歩一歩が、前の一歩より大きく感じられた。
そして、アサカワ・メイコが姿を現した、その漆黒の刃から血が滴っている。
シュニッターは驚いて、部屋の中へと後方に跳んだ。
家への突破の前、アサカワは自分の刃をおよそ150回振っていて、すべての運動エネルギーを内側に蓄えていた。一度蓄えると、彼女は階段の頂上、たまたま狭い場所に座り、犠牲者たちを待っていた。
彼らが全員彼女のために整列したところで、彼女は振るい、自分の機能を解放した。
「あなたは、私についてひとつ誤解しています」
彼女の腕が気だるげに上へと動き、刀がシュニッターに向けられる。
「私は世俗的な理由のために戦っているわけではありません。快楽や金銭的利益のために戦っているわけでもありません。私が戦うのは、私の内側には何もないからです。私は虚無、私は空洞です。何かを得るかどうかは、私にとって重要ではありません」
「セイブル・ヴェイルのメンバーになるという道は、たまたま私が最初に出くわしたものでした。もしそれが起きていなければ、私は周囲のすべてを殺していたでしょう」
シュニッターの目が、まだ血を噴き出している相手の脚へと動いた。
『あれだけの出血をしながら、本気で押し進んでるの?! いつ崩れてもおかしくないわ!』
「くぅっ!! 勝ったみたいな口を利くな、害獣!」
腕を上に振り上げ、シュニッターはアサカワに向けて弾丸の集中砲火を放った、そのすべてが命中したが、その少女の刃によって逸らされた。これに気づき、4発の後、シュニッターは素早く腕を後方に振り、自分の背後に発砲した。
「Ḥ̸̳̬̅i̶̥̙͐t̷̤̑」
その速度がアサカワを混乱させた、彼女はシュニッターが発砲していたリズムに適応しつつあったから。逸らすことは選択肢になく、その少女は弾丸を避けざるを得なかった。
『あの命令を唱えたとき、彼女は歯を食いしばっていた、まるで痛みを感じているかのように。急いで彼女の機能を突き止めないと、私は急速に血を失っている。今のところ、それが彼女の言葉に何か関係があることはわかっている。彼女は明らかに、私が最も予期していないときに命中させるよう、弾丸を曲げている。私が突き止める必要があるのは、彼女の限界で、それを対策として使うことだ』
シュニッターへと駆け出し、アサカワはもう一度水平の一閃のために武器を構えた。これに気づき、電撃指揮官は後方に宙返りし、朽ちかけたカウンターの上に着地した。
その刃は標的を外し、代わりに木のカウンターを斬りつけ、ほぼ真っ二つに切り裂いた。
外れ。
相手の失策を利用し、シュニッターは一発を発射した、それにアサカワは素早く頭を反対側に振った。以前の一撃の勢いを利用し、その傭兵は腕を引き戻し、それから上向きに突き上げた、相手の腹部を貫こうとして。
シュニッターは慌てて腰を横にひねり、辛うじてその一撃をかわした。刃に打たれた空気からの熱が、かすかに感じられた。
外れ。
手首をひねり、アサカワは突きから、シュニッターの方向への水平斬りへと切り替えた。不運にも、シュニッターはすでにカウンターから降りていて、今はアサカワの右側にいた、彼女の銃口は相手の頭蓋骨に直接向けられていた。
舌を噛みしめ、アサカワは素早く唱えた、「グラヴィタス1、上昇」
その指揮官の腕が一瞬わずかに持ち上がり、弾丸は標的を外し、代わりに天井へと発射され、破片と木片が下へと落ちる結果となった。
アサカワの蓄えは尽きかけていて、それがその呪文の効果を弱めることに貢献していた。彼女の負傷もまた、その欠点に特に大きな役割を果たしていた。
歯を食いしばり、アサカワは回転し、シュニッターに後方蹴りを繰り出した。だが、この攻撃はダメージを目的としたものじゃなく、別の何かのためだった、それは命中したときに素早く明らかになった。シュニッターの手への蹴りの勢いは、弱いグラヴィタスの呪文と相まって、その女性の銃器が部屋の反対側へと吹き飛ばされる結果となった。
大きなカチンという音が、それが地面に衝突したときに響いた。
「?!」
踵で後方に跳ねながら、アサカワは初期の構えに戻り、刀を掲げた。
相手の動きを反映するように、シュニッターは後方に跳び、拳を上げながら、それでも組み手の構えを取った。
『じゃあ彼女はタウマイトなのね』
『彼女はもう、私がタウマイトだって知ってる。くそ。銃を取り戻さないと』
タウマイトの機能は体内に潜在しているため、ほとんどが武術に精通していた。シュニッターの構えから判断すると、彼女は明らかに近接戦闘に精通していた、彼女が絶えず行っていた回避を考えれば言うまでもなく。
今、アサカワはある意味で優位に立っていた。彼女は武器を持っていて、相手は持っていなかった。
二人は静止したまま、互いの距離を測っていた。
それから――
アサカワが前へと突進し、しゃがみながらの斬撃に入り、上向きの斬りを試みた。
シュニッターは右へと体をずらし、それから左の拳を引き戻した。一撃が今にも起きようとしていた。
外れ。
その一撃を避けられず、アサカワはその拳が左下腹部に命中する中、歯を食いしばった。もう少し高ければ、その一撃は肝臓に命中し、それは悲惨な結果になっていただろう。
衝撃の一帯周辺の皮膚が数瞬歪み、それから元の形へと波打つように戻った。命中した感覚を捉え、シュニッターは二発目の拳を引き戻し、前へと突き出す準備をした。今回は、アサカワの顔を狙っていた、それでこの対決が終わることを願いながら。
だが、彼女の驚いたことに、アサカワは再び剣を引き戻し、シュニッターへと突き出した。風がその一撃の周りで歪み、音がすぐに続いた。
絶えず一撃をかわし続けることに疲れ、シュニッターは素早くその刃を前腕で受け止め、それ以上の動きから封じた。今、彼女の相手もまた武装解除されていた。勝利は保証されていた、その少女は明らかに負傷しすぎていて、彼女の唯一の勝利の形――あの長く届く刀――が失われたのだから。
『彼女のセヴェラントを捕らえた。もし後ろに引こうとしたら、手を離して、ソブリンで剣を強制的に押し戻して、殺してやる』
突然、起こるはずのないことが起きた。シュニッターがまったく予期していなかった何かが。それは、たとえ外側からこの戦いを観察していたとしても、誰も予期しなかったであろう可能性だった。
アサカワ・メイコが、刃を手放した。
そして、風にはためく帆のように、彼女は上へと舞い上がった、髪がリボンのように後ろへとなびきながら。伸びる準備をしたコイルのように、彼女は拳を後方に引いた。獲物に照準を合わせる捕食者のように、彼女の目が細まった。
いや、彼女の目は、何の感情もなかった。
「神懸かりの風」
その詠唱とともに、アサカワ・メイコは今まで蓄えてきたすべてのエネルギーを、その拳へと解き放った。
それは空間を歪めながら突き進んだ、今までのどんな一撃よりも二倍の速さで。それを避けるという考えすら、それが命中する前には不可能だっただろう。
「ひぐっ!? 外̸̢̖͔れ̸̧̱̣͎た̵̢̺͕̭̗̫͕̭͚̺̳͍̀͌̍̃!!」
その拳は、明らかに指揮官の顔に命中しようとしていたにもかかわらず、標的を外し、代わりに床と接触した。地面は完全に爆発し、破片と煙のぼろぼろの塊と化した。衝撃点から壁まで、あらゆる方向に亀裂が走り、すでに危険な状態にある放棄された家の構造を、深刻に脅かした。きしみ音が響き渡り、木材が互いにこすれ合い始めた。
『彼女は何度も外して、それでこんな結果に!彼女には武器が必要なかった! 彼女はタウマイトだ! 彼女の能力は――」
「あなたのことは、見抜きました」アサカワが呟いた、自分が作った穴から手を引き抜きながら。
落ちた刃の方へと大股で歩み寄り、それを拾い上げ、彼女はそれをシュニッターに向けた、彼女は倒れ込んでいて、帽子が脇に転がっていた。
それから、それを肩に上げ、アサカワは突きの準備をし、空いている手を刃の上に浮かせた。彼女の腕が前方へと滑り、刃をその目的地へと導いた。
「外̸̢̖͔̕れ̸̧̱̣̥た̵̢̺͕̭̗̫!!」
その刃は標的を外した。
それでも、シュニッターに痛みが押し寄せた、まるで打たれたかのように。
なぜだ?
命中したのか?
いや。
アサカワが、それを空中で止めていたのだ。
血の奔流がシュニッターの口から噴き出し、彼女の衣服を汚した。すでに刺激的だった鉄の匂いが、二倍に強まった。
「――ぐはぁ!!!」
『外れたはずじゃ――?! どうやって――?! いや、確かに外れた!!』
「あなたの機能。動いているものに、あなたの命令に従うよう命じることができる、でも、それが可能性の領域内にあるときだけ。もし『不可能』なら、あなたに負担がかかる」
彼女は正しかった。
フラウ・シュニッターの「ソブリン」。それは彼女の声に顕現するタウマイト機能で、彼女がサイレンであるという事実によってさらに強化されていた。物理法則の「可能性」の領域内に収まる物体は、絶対的に命令できる。だが、物理学から大きく逸脱した物体は、彼女の声帯により大きな負担をかける。
例えば、もしボールを上に投げて、「落ちろ」と唱えたなら。その命令には負担がかからない、ボールが下に落ちる――速いとしても――ことは依然として可能性の範囲内だから。だが、もしボールを前に投げて、「後ろへ」と唱えたなら、それは負担をかけるだろう、物理学的にそれはほぼ不可能、あるいは稀だから。
だからこそ、シュニッターは拳銃を使うことを選んだのだ。近くにある弾丸に「命中」と唱えることは、可能性の領域から外れていないから。
アサカワは、自分自身の機能を発動したときに、この能力の性質に気づいていた。彼女が神懸かりの風を発動したとき、その一撃はすでに、確実な命中のための適切な力と速度を持っていた、だからそれが避けられ、シュニッターの血まみれの咳へと繋がったとき、それはアサカワにとって何かを突き止めさせた。
そのような一撃への明白な違反のせいで、シュニッターは代償を被った。
『くそ! 彼女はすでに気づいて、刃を途中で止めて攻撃しなかった! 私は、命中しないはずだったものを強制的に外させたから、罰を受けたのよ!』
刃がシュニッターの喉元に向けられた。
「あなたの部隊を外に撤退させなさい。上官に、ヴァロスは腐敗から解放されたと伝え、ヴォラリアに戻りなさい。ここには何も起きていません」
「あなた――!」
「シュッ!」
細い血の筋が引かれ、下へと滴った。
「頼んでいるわけではありません。あなたにとって、ここには何もありません。立ち去りなさい」
アサカワが後方に一歩下がり、シュニッターが立ち上がることを許した。その指揮官は、明らかに怒りに満ちた様子で、帽子に手を伸ばし、それを払った。それから彼女はそれを頭に乗せた。
もしアサカワが凝視すれば、相手がホローポイントで満ちているであろうことは確実だった。だが、もし彼女を殺せば、さらなる面倒を生むことになるだろう。
帽子を頭に整え終えると、シュニッターは相手を見つめた、今やこの戦いから勝者として立ち上がった相手を。彼女の目は、何の感情もなく、完全に空虚だった。彼女は生きても死んでもいなかった。彼女は単に「存在」していた。彼女の口だけが、体の唯一動く部分だった、他には何もなく。
シュニッターには理解できなかった。
自分と同年代のこの少女は、いかなる外的理由のためにも戦っていなかった。じゃあなぜ、彼女は傭兵として戦うことを選んだのか? なぜ、世界に何も貢献しない、道徳的に堕落した人物たちと自分を結びつけることを選んだのか? もしこの少女がヴォラリアと共に戦っていたら、彼女は秩序と平和にどれほど多くを貢献できただろう。
世界の誰もが欲望を求めていたはずだろう? 自分に利益をもたらすものを求めることは、人間に本質的に備わっているものだったはずだろう、そうだろう? そして、シュニッターのように、より高次の目的を求め、懸命に働く者たちもいたはずだろう?
じゃあなぜ?
なぜこの少女は、そのパラダイム全体の外に存在しているんだ? なぜ彼女は、秩序からも耽溺からも離れた場所に存在しているんだ?
シュニッターには理解できなかった、彼女が振り返り、背中をアサカワに向ける中で。彼女の手が、先ほど彼女が突破したドアの、砕けたドアノブに触れた。彼女が戦闘員として入った家は、今、彼女が敗者として出ていく家になっていた。
「あなたは……」
「あなたは一体、何なの?」
「答える義務はありません。立ち去りなさい」
「……」
その白髪の女性が外に出た瞬間、アサカワは兵士たちが彼女に話しかけているのを耳にした。
「――閣下、何があったのですか!? ご無事ですか?!」
「ええ。敵対勢力の鎮圧に成功したわ」
「――失礼ですが、閣下、一緒に入られた兵士たちは? もしかして――」
「敵は始末したと言ったでしょう。それ以外のことは重要じゃないわ。治療が必要よ」
「――了解しました! 衛生兵!」
その声が耳から遠ざかっていき、夜の中へと消えていった。
アサカワ・メイコは静止したまま立っていた。
彼女は、自分の脳が繰り返し熱した鉄で刺されているかのように感じても、気にしなかった。
彼女は、もう自分の脚を感じられなくなっても、気にしなかった。
彼女は、自分の服が血でパリパリになっていても、気にしなかった。
彼女は、吐き気を催す衝動があっても、気にしなかった。
彼女は虚ろだった。
彼女は、自分が死んでも、気にしなかった。
彼女は、村人たちがゴルスロの掌握から決して自由になれなくても、気にしなかった。
彼女は、自分の友人たちが自分のために泣いても、気にしなかった。
彼女は何も持たず、まるで何も存在しないかのように、この瞬間に存在するだろう。
アサカワ・メイコは冷たい地面に崩れ落ちた、彼女の体が床板に衝突した際にわずかに跳ね、鈍い音が響き渡った。
足音がすぐに聞こえてきた、どんどん大きくなりながら、アサカワの体の方へと向かって。それは、ゆっくり動いていても聞こえるようになるまで続いた。
「アサカワ!!」男性の声が叫んだ。それはコルスのものだった、彼は戦闘の音を耳にしていて、彼の心配が沸点に達していた。彼はこれ以上自分を抑えられなかった、必死に仲間の様子を確認する必要があった。
驚いたことに、彼の頭蓋骨の頭は、もはや存在していなかった、今は、逆立った黒髪が流れていた。彼はまた、実際の人間の顔を持っていた、緑の目とその他の、人間にふさわしい特徴とともに。
しゃがみ込み、彼はその少女を持ち上げ、背中に乗せた。
「よく戦ったな。行こう」




