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潜入

「あー、ゴルスロ、あいつのこと忘れてた!」奇妙な干し肉を頬張りながら叫ぶ。正直、それが何の肉かなんてどうでもいい、腹が減りすぎてる。


「あなたがまるで、この作戦全体に関わっているかのように振る舞ってますね」アサカワが平坦に述べる。「あなたはただ、この状況に巻き込まれただけです」


「……そうだな」目を回しながら、もう一口かじる。


今、セイブル・ヴェイルは全員、みんなに愛されているコボルド、カルシファーの背中に乗っている。彼はどういうわけか、ライオンほどの大きさしかないのに4人を乗せている。それに、彼はどちらかというとゆっくりしたペースで動いていて、そのおかげで俺――奴隷――は、グループの残りと一緒に歩ける。俺たちの後ろには、ヴァロスの町の人々が続いている。俺たちは実質、人々の群れを故郷へと導いている。


今、あたりはかなり賑やかで、多くの人々が互いに話し合っている。


「――まったく! 家に帰ったら、うちのカミさんに殺されるぞ!」


「――あんたの旦那さん、たぶん待ってるんじゃないの?」


「――このかすり傷見てくれよ!」


その話し声に、何百人もの足音が重なる。実際、こんなにも大勢の人々の中にいるのは、かなり久しぶりだ。人見知りとかそういうわけじゃないが、少し驚く。


視線が斜面を伝い、傭兵たちの姿を網膜に焼き付ける。それから振り返り、後ろの人々を見つめる。


複雑な気持ちを抱かずにはいられない。


こいつらは、この人々を助けているのは、単に報酬を払ってくれるからなのか?


もしそうじゃなかったら、代わりに何が起きるんだろう? 彼らを見捨てて、運命に委ねていたんだろうか? もちろん、そんな質問をすれば、セイブル・ヴェイルを怒らせるだろうから、この疑問は墓場まで持っていかなきゃいけないかもしれない。だがそれこそが、傭兵の核心じゃないのか? 金で買われた道徳。


こんなことを考えるのは、間違っているんだろうか?


しばらくして、金色の光に縁取られた木々の群れから光がこぼれ出しているのが見える。その向こうには、間違いなくヴァロスがある。あの丘を越えれば、開けた場所に出る。


丘の頂上にたどり着くと、コボルドが突然、歩みを止める、それに続く全員が同じ動きをする。前方にいたコルスが振り返る。それから、両手を口の周りに丸める。(彼には口がないのに。)


「みんな! ゴルスロの手下たちが村を包囲してる!」


群衆から息を呑む声が湧き上がり、それに続いて困惑からの囁きが起きる。


「なるほどな」隣の男が仲間に言う。「数日前のあの圧力、たぶん国中が感じたんだろうな」


彼の仲間が頷く。


「それに、闘技場が破壊されたことも忘れちゃいけない。あの震動で、あの脂ぎった野郎の手下たちが警戒態勢に入ったんだろう」


それは理にかなっている。最初の男が言っている「圧力」というのが何なのか、俺にはわからないが、あの闘技場がどういうわけか崩壊したのは知っている。おそらく地下何十万フィートにあるにもかかわらず、あの構造物はそれでもヴァロスに一番近かった。じゃあ、それがどれだけ巨大だったのかという疑問が湧いてくる。


ため息をつく。この人々全員を今、どうやって中に入れるんだろう。あの脂ぎった野郎、手下どもをあちこちに配置しちまったな。


それに、もし軍隊を持つ他の国々があるなら、彼らはここで起きたことに興味を持つんだろうか? それに、あのデブゴルスロは指名手配犯じゃなかったか? たぶん軍隊は、セイブル・ヴェイルが彼を突き出す前に逮捕するだろう、それは彼らにとって大きな損失になる。もっと有利な結果は、他の連中が来る前に何とかして彼を捕らえて、突き出すことだと思う。


結局、セイブル・ヴェイルの本来の目標全体が、彼を捕らえることだったんだから。


目の前の二人の男の間を優しく割り込みながら、丘を這い上がる。アリヴィアが奇妙な双眼鏡を使ってあたりを偵察していて、ナヴィはカルシファーの上に座り、指でサーベルをタップしている。彼女から急いで視線を逸らす。


アサカワが木にもたれかかり、コルスを見つめている、彼は手に持った町の地図を調べている。おそらく彼は、危険じゃない代替の町への入り口を探しているんだろう。


近くの木の幹に手を置くと、骨が砕ける音が体中に反響する。突然の衝撃がその存在感を示し、思わず歯を食いしばる。急いで手を置いていた場所を振り向くと、見慣れた光景が目に入る。あの同じ白い円、中央に頭蓋骨があり、俺に微笑みかけている。そうだ、これはチェックポイントだ。


この地点に来る前に、何も保存していなかったのか? もし死んでいたら、俺は……


いや、そんなことは考えられない。今重要なのは、新しいチェックポイントを作ったということだ。もし死んだら……いや、なんでそもそも死について考えてるんだ? それは、今一番心配すべきことじゃない。首を振り、コルスの方へと歩いていく。


「俺たち五人だけなら、町に入るのはずっと簡単だっただろうが、それが今の状況じゃない。今、この圧倒的な人数の多さが、俺たちを大きく不利にしている」彼が顎をタップしながら呟く。


「連携の欠如が、最大の問題です」アサカワが口を挟み、地図を覗き込みながら。


「あ! ゼロビューの防壁が二基設置されてる!」アリヴィアが目を輝かせる。


「ゼロなんとかって何だ?」尋ねながら、赤髪の少女の隣へと歩く。


「アルカナの結界よ」彼女が答える、目はまだ双眼鏡に焦点を合わせたまま。「ゴルスロは町を完璧に支配したいから、ゲイザーたちを自分の警備として置いておきながら、それ以外の彼と無関係な人間は全員無力にしてる。たぶんそういうことだと思う」


魔法の結界。基本的なファンタジーの要素だ、対魔法の。


くそ、この情報を全部書き留めるノートがやっぱり必要だ。ただランダムに放り込まれて、理解しろって言われてる。この世界のルールを全部まとめて教えてもらうときに、もっと聞くことにしよう。


コルスが地図を見つめるのをやめて立ち上がり、アリヴィアの側へと向かう。それから双眼鏡を求めるように手を差し出し、アリヴィアはそれに応じる。実際、驚くほど素早い動作だ。


「……俺たちのほとんどは、セヴェラントを持っているか、タウマイトであるという事実のせいで入れない……これは、厄介なことになる」


「提案がある」


全員が俺の方を向く。


「俺が行ったらどうだ? 俺は何も使えないし、あいつらは平均的な男が敵と関係あるなんて疑わないだろう」


全員が互いに顔を見合わせ、俺の言葉を検討する。実際、アサカワとナヴィの表情から判断すると、二人とも反論したくてうずうずしているが、コルスがいるせいで控えている。


「問題は、あんた首輪つけてるってことよ」アリヴィアが指摘する。「奴隷は自由に歩き回ることを許されてないから、絶対に怪しまれる」


首元の金属の物体を掴み、前後に揺らす。「それは、そもそもお前が原因でこうなったんだけどな……」呟く。


「何それ? 電気食らいたいの、奴隷くん?」彼女が言い、俺に身を乗り出しながら、片手を耳に当てる。


うめく。


「奴隷くん、あんた――」


「アリヴィア、お前が彼と一緒に行ってはどうだ?」コルスが突然遮る。


「――は!? でも――!」


「お前は実際にはゲイザーじゃないだろう、そうだな? 彼をお前の奴隷だという建前を使えば、忍び込めるはずだ」


彼女がゲイザーじゃないという事実に思わず目を見開く、俺の推測では、それが魔法の類を全部使える人間を指す用語だと思っていたのに。だが彼女は魔法を使っていた、いや、コウホウを! それに、彼女は強い、それは確かだ。


「彼はそこまで強い方じゃないが、お前が一緒なら安全なはずだ。それに、俺はカイトの戦術的能力にも、かなりの自信を持っている」


「ハハ、ありがとよ」


頭を掻いている間、アリヴィアの横目が頬に穴を穿つように突き刺さってくるのを感じる。マジで痛い。これが邪視ってやつか?


「一度中に入ったら、二人でZVPを破壊して、俺たちの残りが後に続けるようにしてくれ」コルスが付け加える、腕を組みながら。「もっとも、破壊した後、のんびり待っていてはいけないぞ」


「ハアアアア……」アリヴィアがうめき、アサカワの方を向き、酔っぱらいのようによろめきながら彼女に歩み寄る。「アサあああ……あいつと行きたくない、あいつ絶対あたしに何かしてくる!」彼女が懇願する、もう一人の少女の肩に両手を置きながら。


「いつから俺は性犯罪者になったんだよ?!」叫ぶ。


しまった、大声すぎた、群衆の中の何人かの視線を引き寄せてしまった。


「見て、あいつ何か性的なことだと解釈したよ、あたしが美人な若い女の子だから! たぶんあいつを殴るとかそういう意味で言ったんだけど!」


「自己描写がそれ以上ナルシストになれるか?! それに『たぶん』ってどういう意味だよ?! それって、俺と同じように解釈してたって意味じゃないか!!」


「……精神的虐待! 助けてえ!」


「ただ俺の言ったことが理解できなかったって言えよ!!」


ついに、少女の泣き声が終わった後、アサカワがアリヴィアに身を寄せ、膝をつく。それから彼女はアリヴィアの涙のひとつを拭い、友人の窮状を理解しているかのように目を閉じる。彼女は明らかに共感している。


「アリヴィア」


「すすり泣き はい?」


「彼が薄汚い寄生虫で、モンスターで、性犯罪者であることは理解しています……」


アリヴィアが頷く。


「……そして、あなたが本気で自分の安全を恐れていることも」


俺は今、イースター島のモアイ像みたいな顔をしていると思う。


「私はあなたの友達です、あなたが嫌がることを無理強いしたりはしません。だから――」


アリヴィアの顔に希望に満ちた表情がよぎる、見上げながら。彼女の友達は本当に、こういう……


「――彼にあなたが組み敷かれるとき、私の顔を思い出しなさい」


嫌がってる! それが文の結末だ!


「彼女、俺のことを許すんじゃなくて、突き落とした!!」叫ぶ。


アリヴィアが素早く丘の下へと押し出され、転がりながら悲鳴を上げる。実際、そんなに急な斜面じゃないんだが、なぜ彼女がこんなに大げさに反応してるのか、よくわからない。世界の不思議だ。


アサカワに目をやると、彼女もこちらを見返してくる。友人を裏切ったにもかかわらず、彼女の顔は完全に無感情だ。彼女のような無情な怪物にふさわしい顔だ。


「なあ、俺に同意してるなら、褒めてくれてもいいんだぞ」


その少女がさりげなく手を上げ、町の方向を指差す。


「行きなさい、薄汚い性犯罪モンスター、あなたを吹き飛ばす前に」


言葉全部混ぜたな!


「はい、お嬢さん!」叫びながら、草の上に身を投げ出し、丘を転がり落ちていく。


―――――――――――――――――――――――


散らばった書類が床に落ちる中、混沌が湧き上がる。以前は整然としていたこの部屋は、今や自分自身の混乱した影にすぎない。そしてその中心で、爪を噛んでいるのは、他でもない――


「ゴルス――えっと、ヴォララ様、アイギス軍団のソレン大尉から手紙が届いています。あなたがヴ――」


グラスが、ローラの右側で砕け散る。その女性はちょうど部屋に入ってきたばかりで、数瞬のうちに、物体が彼女に投げつけられていた。


彼女の足元で、地面が光を反射する破片できらめいている。


ゴルスロは机の中央に立ち、その姿には慌てふためいた様子が染み付いている。男の歯はガチガチと鳴っていて、残った髪もパニックで縮れている。服も乱れていて、それがさらに、彼がパニックに陥っていることを裏付けている。


数日前にあの震動が起きて以来、外の世界からの絶え間ないメッセージが続いていた。それらすべてが、ゴルスロのヴァロスの町への支配について疑問を投げかけていた。彼らは全員、彼が町長だと想定していて、入る許可を求めていた。


問題は、ゴルスロが実際には町長じゃなかったことだった。


彼が代わりに支配していたのは、署名を必要とするすべてのことだった。


ヴァロスは、二つの計り知れない価値のある資産の間に位置していた――丘の下にある豊かな金脈と、ソラヤ共和国の半分を養う漁業ルートだ。ゴルスロは自分の富を使って、この両方の産業に紐づく周辺の土地を合法的に取得し、所有権を数十の登録区画へと分割した。それぞれの区画には、独自の入場要件、手数料、書類手続きが伴っていた。


書面上、何ひとつ不合理なものはなかった。


実際には、その過程は息苦しいものだった。


彼は規制システムを導入した。許可証、更新、検査があった。それぞれが技術的には任意だったが、違反せずに操業するには必要だった。その文言は難解で、正確で、平均的な漁師や鉱夫には理解不能だった。ほとんどの者は、長期的な義務を理解しないまま署名した、自分たちが作業を遅らせ、生産量を制限し、決してどこにも進まないように見える車輪に自分たちを組み込む制約に同意していることに気づかないまま。


生産性は、この遵守の重みの下で崩壊した。それが、町の人々の空っぽの財布が嘆いていたことだった。


そのとき、ゴルスロが代替案を提示した。


彼は自治体パートナーシップを提案した――もしヴァロスが彼を行政権限者として認めれば、彼が周辺の土地への監督と、アクセスの合理化をまとめて行う、と。もう許可証はいらない、もう検査もいらない。すべてが内部で、スムーズに処理される。その申し出は、支配ではなく効率として枠付けされていた。法的には、町は自治を保持することになる。だが機能的には、そうはならなかった。


減っていく資源に追い詰められ、町の人々は同意した。ゴルスロは、その称号を一度も保持することなく、ヴァロスの事実上の支配者になった。


そこから、彼は独占的な取引契約を制定した。地元の商人たちは、彼の経路を通じて供給される承認済みの商品を扱うよう奨励され――それから要求されるようになった。価格は規制され、「市場安定化」や「物流経費」といった偽名の下で徐々に調整されていった。


住民たちがそのコストに気づいた頃には、彼らはすでに契約上、縛られていた。


最終手段は、執行だった。


兵士ではなく、遵守取締官と私設警備員だった。これらは、暴力ではなく署名済みの合意から権限を得ている個人たちだった。抵抗は罰せられるのではなく、罰金を科されたり、停止されたり、それが止むまでアクセスを拒否されたりした。


法的には、ゴルスロは何も間違ったことをしていなかった。


まあ、いくつかのことは違法だったかもしれないが。


町への同化の過程の中で、指名手配犯としてのゴルスロの立場が再び彼を蝕み始めていた。ソラヤ共和国のわずかに残る警察組織は、彼の首に懸賞金をかけるだけの価値があると判断していた。


もっとも、ソラヤの軍事警察は、崩れゆく帝国にしがみつく間抜けどもにすぎず、狂信的なならず者たちのただの取り巻きだった。彼らの組織には資金が明らかに不足していて、それをゴルスロが利用していた。


おそらく数十万ほどで済んだのだろうが、MPからの絶え間ないメッセージは、ほぼ即座に止まっていた。この時点で、ゴルスロは真に自由な男だった、何でも好きなように耽溺できる。


だが今、この瞬間、これがすべて崩れ落ちようとしていた。


彼の首を狙う容赦のない傭兵たちだけじゃなく、地域一帯の犯罪者を一掃するような連中がメッセージを送ってきていた。もし彼らが彼の支配の真の性質を知ったら、正義が下されるのは明らかだった。


「うわあ、どうすればいい、どうすればいいんだ?」


法制度をその限界まで捻じ曲げる能力のある頭脳を持っていたにもかかわらず、ゴルスロは自分の時間を浪費していた。彼は自分の欲望に耽溺していた――女、食べ物、快楽。今回、彼を破滅させたのは、彼自身の無力さだった。


権力の座にいるとき、人間は常に他の何よりも自分の快楽を満たそうとする。これは人間の本性に本質的に備わっているものだ。力は腐敗させ、弱さは謙虚にする。


その太った男の首が、彼が崩壊していく様子を観察していたローラの方へと向く。


「ローラ……もっと警備を雇え! それに、ハリントン判事に手紙を送って、彼の恩義を返す時が来たと伝えろ!」


その女性は戸口の前に立ち、自分のリーダーがこんなに慌てふためいた状態にあることを見て、その代償を払っていた。


「一体何やってんだ?! 行け、走れ、このビッチ!!」


素早く頷き、その女性が急いで部屋を出ていく。大きな音とともにドアが閉まり、突然の突風でばらばらの書類が押しやられる。


ゴルスロは自分の机の周りを百回目のように回る、自分が置かれている困難の圧倒的な量に、心が押し潰されている。今、彼の命が危険にさらされている。セイブル・ヴェイルが彼の玄関先にいる、それに、近隣王国の軍隊も来るかもしれない。


突然、ドアノブがカチッと鳴る。


その男は激しく身をすくませる、終わりのことだけが頭にある。暗殺者が彼の命を奪いに来たのだ。


「こんにちは、父上」


だが、彼が安堵したことに、彼の息子が戸口に立っていた。サミュエル・ヴォララ。笑顔が浮かんでいたが、注意深く見れば、かすかな嫌悪の色がうっすらと見えた。


ため息をつき、その男は自分の席に崩れ落ちる、それが大きくきしむ。その重みで椅子も曲がっている。眉間をこすりながら、ゴルスロは席で後ろにもたれかかる。おそらく、恥ずかしさがこの動作の核心だったのだろう。


それから、ゆっくりと息子の顔に浮かぶ笑みに気づき、その男の眉が大きく開く。


「サミュエル、大丈夫か?」


まことに、そのような表情は、少年の表情のリストの中で、極めて珍しいものだった。笑うという行為は、ゴルスロが観察してきた限り、サミュエルの人生で二度しか行われたことがなかった。これは間違いなく、普通じゃなかった。


「大丈夫です、父上。実際、素晴らしい気分です」その男は一瞬、息子を見つめ、その明白な幸福の理由を探ろうとした。だが、その男の頭には何も浮かんでこなかった。


「あなたは逆のようですね、父上。明らかにストレスを感じているようです。絶え間ないメッセージにお疲れですか?」


「ああ、息子よ――」


「息子」という言葉を使ってしまったことに気づき、ゴルスロは再び身をすくめた。サミュエルがその呼び方をひどく嫌っていることを忘れていた。不幸にも、彼の息子は彼を心の底から憎んでいた。だが、ゴルスロはその理由をよく理解していた。彼は自分の欠点を自覚していたが、それに屈していた。名ばかりの父親、その言葉自体の忌まわしい鏡像。それが、サミュエルにとってのゴルスロだった。


だが、驚いたことに、相手側からの反応は何もなかった。


ただ、その笑みだけが持続していた、その形を崩すことなく。


「砂時計の底が、ほぼ満ちてきましたね、父上」


「わかってる、わかってる……こうしよう、町へ行って、女を何人か連れて帰ってこい。できれば、この町を訪れている、外から来た者たちを」


「ああ、快楽のためですか?」


「いや、今回は違う。いざとなれば、その女たちを人質に取って、身代金を要求する。交渉の間に、俺たちは時間を作って、一緒にここを脱出する」


その少年が、快楽主義の父に微笑みかけた。


「承知しました、父上」


―――――――――――――――――――――――


「なんであたしいっつも貧乏くじ引くの……?」アリヴィアが口を尖らせる、俺たちが都合よく形作られた小道を町へと下っていく中で。太陽が今、沈み始めていて、オレンジ色の輝きを生み出し、それが俺たちを囲む緑の平原と混ざり合っている。ヴァロスの右手には青い広がりが横たわっている、海だ。それに、その左と後ろには、絶えず空へと螺旋を描いているように見える、山々の不協和音がある。


前にもここに来たことがあるが、この光景を眺めるのはやっぱり素晴らしい。


「まあ、お前はいつも陽気に振る舞ってるから、それがいじめられる理由なのかもな」


その少女がこちらを向き、目を細める、敵意が明らかだ。それから、一瞬の後、深呼吸とともにその態度を解く。彼女の動きが普通に戻り、髪を払う。


沈黙が一拍続く。俺が破らなきゃいけない沈黙だ。


「じゃあお前、ゲイザーじゃないのか、アリヴィア? ずっとそうだと思ってた」歩きながら、頭の後ろで腕を組みながら言う。


「部分的にはそうよ。パターンは見えるけど、コウホウを使って基本レベルでしか操れない」


よし、それは後で、この世界のルールをおさらいするときに聞く質問にしよう。今はただ頷いて、「そうか」とだけ言っておく。


「じゃあお前のセヴェラントは? 待て、そもそもセヴェラントなのか?」


「まあ、それをセヴェラントって呼ぶ人はほとんどいないけど。でもあたしにとってはそうなの! それはホローポイントを切り裂く! でもパターンには実際には繋がってない。でも強力な武器なの! でも解放がないんだけど……」


「どっちなんだよ!?」


アリヴィアが目を閉じ、微笑む。手が背中の長剣へと漂う。


「心配しないで、ジョナサン、他の誰が何と言おうと、あんたはあたしのセヴェラントよ」


「自分の剣にジョナサンって名前つける奴、一体どこにいるんだよ?!」


「うわ! 落ち着けよジョセフ! あいつ悪気ないから!」


「お前の剣、ジョースターなのかよ!?」


まったく、ツッコミ役をやるのは本当に骨が折れる。


再び沈黙が戻ってくる、俺の顔を笑いながら。背景で草がざわめき、俺たちの周りの虚無を空虚な音で満たしている。まだヴァロスからかなりの距離がある。


「ふむ、これが初めてだな、俺たちだけで一緒にいるの」目を正面に向けたまま言う。


「……」


思わず少女に横目を送ると、彼女の顔に嫌悪の表情が浮かんでいるのに気づく。上唇が天まで上がり、眉がほとんど互いに擦れ合っている。彼女は俺に対して気味悪がっている。


「俺、お前にとって病原菌か何かなのか?!」


彼女の顔が突然、通常の形に戻り、くすくす笑い始める。動くたびに、ポニーテールが跳ねる。それから彼女は大きくため息をつく。


「冗談よ、冗談。ユーモアの心を持たなきゃ、わかる? そうじゃないと、人はあんたと一緒にいたいとは思わなくなるから」


「お前のユーモアは、俺を苦しめることで構成されてるみたいだけど、それは俺があまり好きじゃないことなんだが」


「全部冗談よ、あたしは生まれつき表現豊かな人間なの」


「ああ、それはわかる」


冗談ね、はいはい。俺にしたことを忘れるなよ。俺の首に電撃首輪をつけて、それから俺に電流を流し続けた。今でもお前の言葉を覚えている。


『ただの道具』


ああ、お前と話すよ、冗談も言い合うよ、でもそれで、お前に対する俺の気持ちは変わらない。結局のところ、俺はこの呪われた首輪から抜け出そうとしている。それを考えるたびに、お前らのことが頭に浮かぶ。


アリヴィアの明るいサファイア色の瞳が、夕焼けの深いオレンジ色と混ざり合い、目に心地よい融合へとねじれていく。彼女の髪は明るい炎のような赤で、肌の他の部分と綺麗な対照を成している。あんなにずっと表現豊かなのに、彼女のまつ毛は実際、前方へと綺麗にカールしている。彼女の顔全体の調和が良くないと言えば、嘘になる。


彼女は微笑んでいる。


どうして彼女は笑えるんだ? わからない。彼女は、この世界で俺にこれほど多くのことが起きた原因なのに、それでも俺と一緒に冗談を言い合っている。彼女は、俺の首の首輪を見て、何の罪悪感も感じないのか? どうやって、あんなに平然と俺に話しかけられるんだ? これは、この世界の普通のルールなのか?


彼女を憎んでいるわけじゃない、たぶん、俺はただ困惑しているだけなんだと思う。どうして彼女は、俺みたいな人間とこんなに普通に話せるんだろう? 彼女は文字通り俺に電流を流して、俺を「道具」って呼んだのに、それでも俺を友達みたいに扱ってくる。


わからないよ、アリヴィア。


その少女に再び目をやる。彼女の頭は今、垂れ下がっている、まるで深い思考の中に沈んでいるかのように。


「……それに、もし誰にも好かれなかったら、消えちゃうから」


「ん?」


俺のその独り言に気づき、その少女が突然頭を上げる。


「なんでもない」


その瞬間、彼女が何か個人的なことを言ったのは明らかだから、これ以上詮索しようとする試みは、俺の範疇を超えているだろう。これ以上は掘り下げない。


「……」


「カイト」


「おう」


実は、彼女が俺の名前を呼んだのは、これが初めてに近いんじゃないかと気づく。初日から俺のことを「奴隷くん」と呼んでいたから、当然、これには少し驚く。それでも、まだ困惑している。


「あんたとナヴィ、しばらく話してないでしょ?」


肩がこわばる。


「なんでわかるんだ?」


「ナヴィは、あんたが来る前はいつも静かだった。なぜか、あんたが現れてから、たくさん話すようになったの」


「俺には……」


彼女の手が握りしめられ、それから緩むのに気づく。


「まあ、それはいいや。あんたたちの間に何があったの?」


再び肩がこわばる、自分でも驚くほど。いや、本当に驚いているんだろうか? もし理由を正確に知っていたとしたら?


「何もない。ただ、ちょっとした意見の食い違いがあっただけだ、それだけ。それに、彼女が仲直りしたくなったら、いつでも俺のところに来ればいい。今は、たぶん、ただ距離が欲しいだけなんだろう」


「そう……」その少女が呟く。


「ヴァンパイアってたまにそうなのかもね」


「いつも不機嫌だからってヴァンパイア呼ばわりするのは、ちょっとイカれてるけど、まあいいよ」


「表現じゃないわよ、ナヴィは本当にヴァンパイアなの」


思わず頭が真っ白になる。


「待て、何だって?」


「ナヴィ・ハイアーガルドが吸血鬼なのか?」


「ナヴィ・ハイアーガルドはヴァンパイアなの」


人差し指と中指で鼻をこする、突然の啓示がその代償を求めてくる。普通なら、俺の立場にいる人間なら、こう言うだろう――『ああ、何言ってるんだ? これは現実だぞ、吸血鬼なんて存在しない! それに、お前言い方間違ってるぞ!』


残念ながら、俺はこういうものが日常茶飯事の世界にいる。


「彼女の部屋のカーテンを開けようとしたとき、彼女が即座に閉めたのを覚えてる」


「お前、彼女の部屋にいたのか……?」


「呼ばれたの」


「まあいい、それに、彼女の肌もかなり青白いよな」顎に手を当てる。「それに、あの明るい黄色い目が普通じゃないってのも、わかってた」


ナヴィが吸血鬼だという啓示を処理していると、アリヴィアが突然、両側のズボンの裾を握りしめる。生地が彼女の指の周りでかすかな音を立てて圧縮される、それが小さな虫のように動いている。


「どうやって……」彼女が切り出す。


「……」


彼女が突然俺を見つめる、憧れの表情が顔に刻まれている。彼女の目の中に自分の姿が見える、俺自身の顔にも衝撃を受けた表情が浮かんでいる。


「……どうやって彼女にあんたと話させたの?」


その少女の目には、憧れの色がある。


「――え? お前、彼女の友達だろ?」


「あ、ああ。そうだよな、悪い」


俺たちの前には、ヴァロスの町が広がっている。だが、ひとつ大きな問題がある、あの奇妙な見た目のレーザーグリッドのようなものが、俺たちと居住区を隔てている。この防御を展開している装置は、俺たちの頭上にそびえる、あの奇妙な三叉槍の形をした柱だ。


そしてZVPの前には、二人の、おそらくゲイザーだろう人物がいる。一人は上半身裸で、顔には頭蓋骨のマスクを、それに、残った胸を覆うマントを身につけている。だが彼の姿の最も奇妙な特徴は、頭蓋骨から突き出た、鹿のような角のペアだ。


もう一人は普通のバラクラバをかぶり、ぼろぼろのフードがそれを補っている。彼の体はマントできつく巻かれていて、時折、体の防具が布地にきつく押し当てられている。


頭蓋骨の男の脇には、かなり大きな斧がある。細部はわからないが、危険そうに見える。彼の相棒については、武器を持っていないようなので、おそらくタウマイトだろう。


「おい、お前、用件を言え」頭蓋骨の男が吠える、斧を肩に持ち上げながら。「あと5秒で、腕がなくなって家に帰る羽目になるぞ」彼がくすくす笑いながら俺の顔に身を乗り出し、俺の額を弾く。


頭が後方に反り返り、歯を食いしばる。


「ゴルスロ様が雇ってるって聞いたんです!」アリヴィアが前に出る。「長いこと仕事を探してたので、この機会を聞いて本当にほっとしました!」


フードの男が少女に近づく。


「へえ、どこから流れ着いてきたんだ、お嬢ちゃん? お前にはもっといい仕事があると思うぜ、かなり稼げるやつがな。使うのは、その体だけでいい」


彼の目が少女の体を這う。


その少女はこれに気づき、それから口走る:


「あ、レスリングにも挑戦してみたことあるんですけど、あんまり自分に合わなかったんです!」


彼女、状況を完全に誤解してる!!


両方の男の目が見開かれ、それから互いに顔を見合わせる。二人とも、少女がこんなに明確な誘いをどうやって誤解できるのか、衝撃を受けている。体勢を立て直し、フードの男が咳払いをし、それからアリヴィアを見つめ直す。


俺も驚いてないと言えば、嘘になる。


「よし、ボスに雇われたいんだな」彼の目が少女の背中の長剣へと動く。「まず一つ、お前はゲイザーか?」


その少女が首を横に振る、ポニーテールが揺れながら。


「え? ゲイザーでもないのにゴルスロ様の下で働きたいのか? じゃあ何をしたいんだ?」


「人事です!!」


お前、犯罪組織に入ろうとしてるんだぞ!!


再び、二人が困惑しながら互いに顔を見合わせる。


くそ、こいつら俺たちを怪しむだろう。捕まる。そうなったら何が起きるかわからない。何か言い訳を考えなきゃ、何でもいい。


こんな返事を怪しむのは明らかだ。誰も、ある黒幕の縄張りに入っていって、人事担当として雇ってくれと頼んだりしない、それは馬鹿げてる! こいつらは、表面的なことや道徳なんて気にしてない!


「うわ、この子、かなりのもんだな……」頭蓋骨マスクの男が仲間の耳元で囁く。


実際、かなり大きな声で囁いている。


「そうだな、彼女は……」


「人間を資源として使うつもりなんだな!」


こいつらを雇った奴、完全にべろんべろんに酔っ払ってたに違いない!!!


頭蓋骨の男が頷き、それから俺に目をやる。彼の視線に、突然顔がこわばる、それが俺の顔を貫くように感じられる。何か聞かれる、それはわかる。


「こ、こいつは何だ? こいつは誰だ?」


「あたしの奴隷です!」


彼女はそれを、あまりにも笑顔で言うので、仮に「奴隷」という言葉を「犬」に置き換えても、その光景に心温まるだろう。二人の男の背筋にぞくりとする感覚が走るのが、目に見えてわかる。一言も発さずに、二人は脇へと退き、それからZVPを拳で叩く。それから、反対側で連続して足音が響く。


「お、お前ら二人、通っていいぞ」


アリヴィアが先にそのグリッドを通り抜け、それから俺が続く。通り抜けるとき、体にわずかな熱の感覚があるが、耐えられないほどのものじゃない。


目を開ける、今、町の中だ。


最初に気づくのは、前回に比べて人が少ないことだ。歩き回っているのはほんの一握りだ。奇妙なことに、彼らは心配そうな表情をしている。それに、「歩き回っている」という表現も撤回する、彼らは何かを避けるかのように、せわしなく動き回っている。


何人かが俺とアリヴィアに目を貼り付け、それから逃げるように散っていく。


チェックポイントから数歩離れたところで、両手を顎に置き、深く息を吸う。さて、考える時間だ。アリヴィアも今、俺と同じことをしている。


「よし、入った。でも今度は、注意を引かずにこれを破壊する方法を考えなきゃいけない」


アリヴィアが頷く。


「ZVPの後ろ、俺たちがいる側に二人の警備がいて、ZVPの前にもう二人いる。もし俺たちの側の二人を排除しようとしたら、前の二人がいずれ気づくだろう。おそらく彼らは定期的に互いに確認し合っているはずだから。だが、大きな問題がある。もし結界を無効化すれば、それがオフになって、全員の注意を引いてしまう。唯一可能な解決策は、誰にも気づかれずに4人の警備全員を排除することだろう。いや、内側の二人は町の人々の周辺視野に入っているから、彼らは俺たちのことを告げ口するのに何のためらいもないだろう、それは彼らのせいじゃないが。うーん、もしかしたら俺たち――」


「うわ、あの雑貨屋の中に、めっちゃおっぱいでかい女の子がいるぞ!」アリヴィアが突然、低くしゃがれた声で叫ぶ。


そして俺のまったくの困惑と驚愕と驚嘆をよそに、警備たちはそれぞれの持ち場から、まさにその雑貨屋――俺たちのすぐ右手にある――へと猛ダッシュする。何人かは互いを乗り越えてまで、その猛進は衰えることがない。こいつら動物なのか? いや、ここで大きな疑問は、これがどうやって効いたのかということだ。


まあ、野良犬の群れを家の見張りに雇ったなら、誰かが肉のかけらをぶら下げて見せたときに驚くべきじゃないんだろうな。警備としては、まあ、そんなもんだ。


アリヴィアがポニーテールを払い、それからZVPの方へと歩いていく。


それから彼女は人差し指を噛み、それからその手をZVPの表面に置く。「パイラソン3、破裂」その詠唱とともに、小さな爆発が構造物の内部から湧き上がり、フィールドがちらついて消える。


その少女はそれから手を口元へと持ち上げ、まるで煙を上げる銃のように人差し指を吹く。今、彼女の顔には、まさに得意げという表情が浮かんでいる。


「まあ、それでいけるんだな」あの三叉槍のような構造物を見上げながら、思わず口を開けて見つめる。この状況の深刻さが、瞬時に俺に襲いかかり、首を振らせる。


「でも、逃げた方がいいな、あいつらに見られたらまずい」急いで付け加える。


町の方向へと踵を返し、全力疾走に移る、その少女も後に続く。


「はぁ、はぁ……」あえぎながら、両手を膝についている。「たぶん、もう……安全な距離まで来た」


アリヴィアは、俺たちが今行った激しいダッシュにまったく影響を受けていないように見える。彼女は町の集会所を見つめるのに忙しい。まあ、常に戦闘をしていれば、スタミナなんて大した問題にならないんだろう。


今、俺たちは町の集会所からほんの数メートルのところにいて、それが俺たちの上にそびえている。それは白い建物で、周囲の他の建物と比べて、明らかに構造にもっと手が込んでいる。巨大な金のドームが頂上を覆っていて、沈む夕日にきらめいている。その建物のガラスの扉の前には、二人の警備員――というより、彼らの服装から判断すると、チンピラと言った方がいいだろう――が立っている。


正直に言うと、この場所を今見て、最初はもっと多くの人がいるだろうと思っていた。だが今、この場所はゴーストタウンにすぎない、かつての姿の影にすぎない。ゴルスロの影響が、その原因かもしれない。


都市の中の黒幕は、決して良いものじゃない。彼は正直、寄生虫と何ら変わらない。彼はおそらく引っ越してきて、自分の資金を使ってゆっくりと同化し、最終的にこの町を乗っ取ったんだろう。卑劣だ、本当に卑劣だ。


まっすぐ立ち、町の集会所を見上げる、頭がその構造の形をたどろうとしてほとんど落ちそうになるほどだ。それから一歩踏み出し、その建物へとまっすぐ向かう。


「よし、他のみんながここに来るのに、たぶんしばらくかかる。その間に何かしなきゃ。ただ座って待ってるだけなのは嫌だ」


アリヴィアが頭を上下に動かしながらついてくる。


「あたしたちだけで中に入って、ゴルスロを捕まえろって言ってるの?」


顎をタップする。


「うーん、そう言いたかったわけじゃないけど、でも……」


「……まあ、それしか今できることはないよね。あんたなら、チンピラ数人くらいは対処できるんでしょ?」


その少女が頷く。


「でも、具体的にどうやってそれをやるつもりなの?」アリヴィアが立ち止まりながら考える。「あたし、普通に中に突入することもできるけど」


「うーん……それだと注目を集めすぎる」


「――聞いた? どうやら今、この辺出身じゃない女の子を探してるらしいわよ……」


数メートル先の女性が仲間に呟く。彼女は正直、あまり秘密を守るのが上手じゃない。今気づいたが、化粧をしてめかしこんだ女性たちが大勢、外に立っている。


「――今回は選ばれるといいな……前回は運が悪くて」


「――何時頃彼が来ると思う?」


彼女らの方向へと身を寄せ、耳がぴくりと動く。「女の子を探している」という言葉が重要な要素だ。彼女らの、この建物への明らかな関心が、俺の興味をさらに引く。


「アリヴィア、たぶんあいつら、若い女性を探してるんだと思う」少女の耳元に身を寄せながら囁く。「正確な理由はわからないけど、これがチャンスだ」


「うわ、あたしをあの脂ぎった老人に売り渡すつもりなの!?」


急いで少女の口を両手で塞ぐ、通行人からの恐ろしい視線をぎりぎりでかわしながら。


「違う、くそ! 考えろよ、お前はここの出身じゃないだろ? もし俺たちが、誰かスカウトが来たときにお前をそう宣伝すれば、それは敵の拠点への無料チケットになる」


見下ろす。


「それに、もし俺が思ってることが起きれば、お前はゴルスロを倒せる立場に立てるはずだ」


その少女が頷く、俺の手はまだ彼女の口を塞いだまま。ため息をつき、手を離し、脇に下ろす。彼女がもう計画を理解してくれてるといいんだが。


その少女が手の甲で口を拭う、口を尖らせながら。彼女の目が俺の目を貫き、思わず視線を空へと逸らす。うめく。


「悪い、俺の人格に対する世間の評価が、深刻な危機にさらされてたんだ」ため息をつく。


「女の子を壁に押し付けるのはそれより悪くないっていうの?!」


「ああ、それも悪かった」


彼女が強力な横目を俺に飛ばし、ため息をつき、それから再び町の集会所の方を向く。「じゃあ、ここで待って、その『スカウト』の一人が来るのを待つべき?」


頷く。


―――――――――――――――――――――――


俺の父は、快楽主義者だ。


彼は女、名声、快楽に耽溺している。


道徳的に破綻した人物だ。


寄生虫だ。


それでも、これらすべての否定的な側面にもかかわらず、彼は俺の父だ。


部外者から見れば、当然のことながら、彼はただの退廃した寄生虫にしか見えないだろう、自分よりも経済的に恵まれない者たちを抑圧する暴君に。他人の快楽よりも自分自身の快楽に耽溺することを選ぶ、道徳的に堕落した人物に。


それでも、繰り返すが、彼は俺の父だ。


俺の足音は、周囲を取り巻く喧騒の海の中の、単なる水滴にすぎない。両手が左右に揺れる、永久機関のように。目が周囲の人影を観察する、彼らも皆、自分たちの視線を返してくる。


彼らは家畜のように並び、待っている。この過程は、月に一度行われる。俺の完全に嫌悪すべき父が、自分のおもちゃに飽きて、俺を新しいものを探しに送り出すときに。


この事実を持ち出すのは気が進まないが、周囲の者たちによれば、俺はかなり端正だと見なされているらしい。俺が父と共有している唯一の類似点は、金髪だ。これが呪いなのか祝福なのか、俺には判断がつかない。


角を曲がる、村人たちがまだ、俺が自分たちを選ぶかもしれないという希望を込めて見つめてくる。彼らは、俺が自分たちの一人を花嫁として選び、その結果として、相当な富を彼らに与えるだろうと想定している。もっとも、この言い訳は一度しか使えないが。


俺はこれらの通りを何十回も通り抜けてきた。心の奥底の小さな囁きが、この人々はすでに自分たちに何が待ち受けているかを知っていながら、無知を装うことを選んでいるのだと告げてくる。貧困の巻雲が、個人にこのような極端な決断を強いるのだろうと推測する。これは、彼らが想像を超える富を得るためのチャンスなのだ。


なぜ俺は父を手伝うのかと、疑問に思う者もいるかもしれない。


なぜ俺は、根底にある、いや、表面に浮かんでいる問題を知りながら、それでもまったく問題がないかのように、それを続けるのか?


それは、単純な答えだ。


俺には、わからない。


おそらく、答えは、この男が俺の知る唯一の血縁者であるという事実の中にあるのだろう。俺自身、この男の私生児だが、捨てられる代わりに、そばに置かれ続けた。おそらく、その残り続ける感謝の念が、俺が父を助ける理由なのかもしれない。数多くの潜在的な答えがあるが、俺の思考プロセスの中で唯一の不変の事実は――


俺は、いずれかの形で、この状況から抜け出す。


再び、視線が周囲をたどる。今日は違う。この女性たちは、おもちゃとしてここにいるんじゃない、人質として使われるためにここにいる。彼女たちは、自分たちの運命にすら気づいていない。見てみろ、まるで俺が天国へと連れて行く天使であるかのように、皆微笑んでいる。お前たちは、自分を待ち受ける地獄すら知らない。


「――どこに行くつもりだ、ハンサムさん?」


声が空気を切り裂く。左から発せられている。普通なら、これは俺には関係のないことだと想定するだろう、だが、それはどういうわけか、頭が振り向くほど俺の注意を引く。


左には、路地の入り口がある、湿っていて暗く、緩んだ配管が地面に水を漏らしている。ゴミが散乱していて、その路地の暗い性質をさらに際立たせている。その路地の真ん中に立っているものが、俺の注意を引く。


俺と同じくらいの年齢の少年がいて、その手は壁に押し当てられ、かなり真剣な表情を浮かべている。壁沿いには、明らかに怯えた若い少女がいて、彼女の唯一の逃げ道は、その少年の手によって塞がれている。


その少女自身は、外国人のように見える。明るい赤髪をポニーテールにまとめていて、大きなサファイア色の瞳が特徴だ。だが、かなり奇妙なのは、彼女の体にフィットした鎧で、白いポンチョに覆われている。彼女はまた、背中に鞘に収められた刃を持っている、まさにこの状況で使えるはずの武器を。


だが、その少年は、まさに不良の生き写しのように見える。彼は濃い青のアンダーカットスタイルの、後ろに撫でつけた髪をしている。彼の目は、極端に怠惰な人物の印象を与える、まるで眠りに落ちる寸前であるかのように。彼は、農民が着ているようなものを身につけている――茶色いぼろぼろのシャツと、汚れたズボン。


「あんた、この辺の出身じゃなさそうだな。ちょっとしたツアーをしてやろうか?」彼が得意げに言う。


彼の首に何かが目に入る。円形の、リング状の物体がきつくフィットしている。電撃首輪だ。


なんとも奇妙なことだ、奴隷が、おそらくゲイザーであろう相手を脅すとは。あまり見かけない光景だ。彼女は自分を守ろうとすらしていない。彼女のポンチョについた奇妙な紋章も、俺の注意を引く。


突然俺の存在に気づき、その少年がこちらを向き、頭を上へと弾く。彼の上唇の右側が上がり、眉がほとんど互いに融合しそうになる。それから彼は鼻を鳴らし、俺の方へとどうやら歩み寄ってくる。


「あん? お前は誰だ? 自分のことに口出ししてろよ、二枚目」彼が唸る。彼の体は言葉のたびに近づいてくる、その境界線を押し広げながら。


「この辺でこの女、見たことねえから、俺のもんだ、わかったか? さっさと消えろ!」


奇妙なことに、先ほどまでその少年に脅されていたにもかかわらず、その少女は彼のすぐ後ろにいて、俺を覗き見している。彼女は俺に見えていないと思っているのだろうか?


「ああ、そんな素敵なカップルの邪魔をしてしまって、申し訳ない」


―――――――――――――――――――――――

彼、完全に状況を誤解してる!!


「もし迷惑じゃなければ、セイブル・ヴェイルに加わりたいんだが」


アリヴィアが呆然として俺を見る。


俺も唖然としてアリヴィアを見る。

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