過信
「よぉっ! 右だ、ヘッドバンドの同志よ!」ウォールが叫び、その方向を指差す。霧は濃いが、影の動きは目に見えて明らかだ。
「敵発見!」
スティルが目に手をかざし、ウォールが指し示したものを正確に確認しようとする。だがよく見ると、それはただの――
「枝だ。枝だぞ」
彼が振り返り、仲間の方を見る。実際のところ、あの形をどうやって人型と間違えられるのか、まったく理解できない。ため息をつく。
「ああ! 敵が枝に変身したに違いない!」ウォールが叫ぶ。
「間違えたって素直に認めろよ……」
「そもそも枝がどうやって人間に似てるって言うんだよ?」
「まあ、木の後ろから突き出た腕には見えるかもな。ほら、あの長細い感じの」ウォールが答える、崩れた柱の上に立ちながら。
二人は今、古いソラヤの構造物のような場所にいる。柱が上へと伸びている、というより、その残骸が。その古さは一目で明らかだ。何百年、あるいはそれ以上。それぞれの柱がそれぞれの形で崩れていて、時の重みがその形をきつく締め付けている。
残っているのは、汚れた白い亀裂と、かろうじて機能している頭上の天井だけだ。
スティルが息を吐く。「この隠れる者を見つけるまで、あと40分くらいだ。こんなことに時間を無駄にすべきじゃない」
「もし何か怪しいものを見つけたら、大声で叫ぶ代わりに、指を鳴らせよ」彼が提案する。仲間が頷く。
二人は前進を始める、スティルの心は周囲の細部を捉えながら漂っていく。
「スティル、K男の首についてた首輪、気づいたか?」ウォールが呼びかける、高い位置から降りながら。
「ん? 気づいた。あれは電撃首輪だ」
「あいつが奴隷だとは思わないか?」
「まあ、ファッションでつけてるわけじゃないだろうな」
「まあな」
ウォールが首の後ろに手をやり、伸びをする。「あんまりそれについてコメントしたくなかったんだよね。ちょっと無神経な気がして、わかるだろ?」
「お前が『無神経』って言葉を使うの、なんか違和感あるな」
ウォールがニヤリと笑う。「誰だって変われるさ、我が同志よ。俺たちは古い皮を脱いで、新しい、より良い皮を身につけるんだ。進化することこそ、人間であることだ!」
「……」
「うん。今のはやりすぎだったな」
スティルが立ち止まる。
「あまりにもやりすぎだった」
「はいはい。とにかく、あいつのこと、ちょっと気の毒に思うんだよね。あいつ、基本的に今、二重奴隷だろ。タイロクスの兵士たちが軍用グレードの電撃首輪でも配布し始めてない限りは」
スティルが頷く。「あいつの状況について聞いておくべきだったな。少なくとも興味本位でも。もしかしたら、俺たちが助けになれたかもしれない」
ウォールがため息をつく。
「まったく、俺たち完全にやられたよな? ヴァルティアの騎士団が、ゴブリンの群れに奴隷にされるなんてさ」彼の足取りが重くなる。「マジで恥ずかしいな」
「忘れるなよ、このゴブリンたちは、とんでもなく知的なオークに率いられてる。連携すれば、ゴブリンは意外に頑丈な兵士になる。さらに悪いことに、この幽谷にいる連中は、地上のゴブリンたちよりずっと知的に見える」
「知的なのはお前の勝手だけど、俺のセヴェラントの一撃で真っ二つだからな。――なんでさっきから止まってるんだ?」
スティルは歩き続ける。
「気にするな」
彼が手を上げる。「知性を決して過小評価するな。たとえ弱くても、その事実を利用すれば、大きなことを成し遂げられる」
「それはわかるけど、想像してみろよ、お前がワイバーンと同じ部屋にいたとして。他には何もない。武器もない。どうする? 簡単だ。何もできない。お前は死ぬ」
「それは人工的なシナリオだな。常に何か手立てはあるものだ。何もない部屋にワイバーンがいるなんて、実験室の実験みたいな話だ。俺が言ってるのは自然な状況のことだ」
「ただの仮定だよ」
「馬鹿げた仮定だな。何かを出し抜く方法は、常にある。人間であるということは、頭の中にあるもの――脳の力を使うことだ」
「それに、そのシナリオは現実からあまりにもかけ離れすぎてる」
「もっと現実的な例を挙げるなら……」
スティルが右に頭を向ける。
「二人の被害者が話し込んでる間、木の後ろに隠れてるとかな」
すぐ隣の木の後ろから、鋭い息を呑む音が漏れる。
ウォールがくすくす笑い、そちらを向く。「誰かにこっそり近づきたいなら、自分の足元にはもっと気をつけるべきだな」
木の陰から影が歩み出る、光の中に入るまでほとんど見えなかった。
一体のゴブリンが目の前に立つ。普通のゴブリンじゃない。いや、「普通」からは程遠い、ほとんど人間ほどの大きさで、筋肉質な体に黒い縞模様が走っている。右前腕には見覚えのある紋章がある。他のゴブリンとの違いを最も明確に示す特徴といえば、その顔についた、フェイスプレートのような装飾だろう。
「カイトが前の隠れる者で見たのと同じやつだ」ウォールが呟く。
「隠れる者だな」
「なるほど。お前は定期的に立ち止まって、俺の背後にいる、あの乱れたリズムの足音を聞いてたわけだ」その体はほとんど滑らかだが、それでいて筋肉質だ。
「まあいい。お前ら二人。降伏しろ」
「それが、タイロクスがやってたことか……」スティルが静かに言う。
視線が、そのゴブリンの手に握られた武器へと移る。大きな触手のような刃で、丸まって拘束されていて、その本当の間合いは判断不可能だ。白い縞模様がその長さに沿って走っていて、そのゴブリンの模様の逆の配色になっている。
「あのクソ野郎、セヴェラント使いのゴブリンを作ってたんだ」ウォールが締めくくる。
本来、異形種はセヴェラントを扱うことはできない、他の道についても同じことが言える。彼らは生まれつき与えられた能力しか扱えない、それ自体がひとつの分類だ。それが自然の摂理だった。だがここで、タイロクスはそのルールを破壊し、ゴブリンの交配能力を人為的に利用して、セヴェラント使いらしき者たちと交配させ、ハイブリッドを作り出していた。そして、最も危険な部分は? この幽谷にいるゴブリンたちは、すでに十分に知的で、ゴブリンの子孫は親よりもはるかに知的であることで知られている。
「これで二度目の警告だ。三度目はない」そのゴブリン――いや、ハイブリッドが言う。
押し潰すような圧力が空気を満たす。恐怖があらゆる方向から押し寄せ、すべてを崩壊させようとしている。
このハイブリッドの能力が何であれ、それは強力だった。
『こいつを今すぐ倒すのは論外だ。あの能力を見極めなきゃいけない。だが、俺たちが何か効果的なことをするのを妨げている唯一のものは、無効化フィールドだ。俺たちのアルカナの蓄えをまったく使えない』ウォールが考える。
彼がスティルに目をやる。
『ちょうど21分が経過した。タイロクスは、無効化フィールドが30分後に解除されると言っていた。残り9分』スティルが計算する。
ハイブリッドが武器を持ち上げる。
「処刑まで5秒の猶予をやる、降伏しろ」
スティルが一瞬ウォールと目を合わせ、それから右を見る。
「5」
ウォールが視線を合わせ、それから左へと動く。
「4」
二人は沈黙を保つ。
「3」
ウォールの足がぴくりと動く。
「2」
スティルの両手が握りしめられる。
風が期待とともに吹く。
「1」
その瞬間――そう、その瞬間――「走れ」という言葉が二人の心に刻み込まれていた。
「走る」ことだけが、切り倒されずに生き延びる唯一の方法だった。
だが、これは自分の命を守るための試みではなかった。
二人は反対方向へと跳ぶ、スティルが自分の方向へ、約2.5センチほど先んじて。
触手の刃が、ウォールに向かう攻撃の途中で止まる、そのハイブリッドの腕がそれを掴んで止めたのだ。
二人はすでに、反対方向へそれぞれ2メートルを移動していた。
『なるほど』ハイブリッドが考える。『同時に切り倒されるのを避けるために、反対方向に逃げてるんだな。時間を稼いで、能力が戻るのを待ってる。それだけじゃない、俺の《自然の冒涜》がどれくらいの長さと距離まで届くのかを、測ろうとしている』
そのハイブリッドの顔に粗野な笑みがよぎる、黄色い歯が光の中で見える。それが表現すべきすべてを表現している笑みだ。
『無駄な試みだ。この家畜どもを潰すのに、8分もあれば十分だ』
そう考えると同時に、それがウォールの方向へと飛びかかる、強力な後ろ足がその男自身よりも遠くへと自分を押し出す。土埃があたりに舞い上がり、それから押し戻される。
そのハイブリッドが木へと飛び込み、脚を使って体を安定させてから別の木へ、さらに別の木へと発射される。
動きながら、それは回転する。その動きを要約するなら、それは壁に跳ね返る弾丸のようだ。
『白髪の男を追う。あいつはさっき、部下に知性より力の方が重要だって主張してた。それだけで、あいつを攻撃するには十分な理由だ。あいつの方が単純に馬鹿だ』
強烈な速度で突進する中、風がその体を押し、霧をバターのように切り裂いていく。この生物は、完璧な殺戮機械となるよう設計されていた。セヴェラント使いの父親から生まれたことが、その力をさらに強調していた。
2分後、ある人影が現れる、ハイブリッドとは反対方向に走っている。白い髪が、それがウォール――その獲物であることを明らかにする。
ずる賢い笑みがその顔をよぎる、両腕を後方に引きながら。
『あいつは俺が後ろにいるとわかってる。それなのに、自分の限界の間合いに自信を持ってやがる!』
ウォールの両腕が均一に前後に動き、フォームが維持されている。2分以上全力疾走を続けているにもかかわらず、疲労の兆候はまったく見られない。彼のフォームは完璧だった。
『俺とスティルが跳んだとき、あれはだいたい2メートルだった。あいつは俺たちを攻撃しようとすらしなかった。あいつの限界は少なくとも2メートルのはずだ!』
そのハイブリッドの顔に浮かんでいた笑みが、合理的な限界を超えて広がっていく、ほとんど悪魔じみたものへと。
『この間抜けな虫けらめ!! 俺の限界は少なくとも4メートルだ!!!!』
触手のような武器が、まるで生きているかのようにうねり始める、肉を引き裂くことを予期しながら。もしかしたら、この生物は実際に生きているのかもしれない。
そのハイブリッドがついに、ウォールから約3メートル離れた地面に着地する、その高さから体が跳ねる。だが、その勢いはまったく損なわれていない。
ついに、それが腕を前方に発射する、甲高い笑い声がその喉から湧き上がる。それに続いて触手からの甲高い音が続き、ウォールの背中へと発射される。
「ギャハハハハハアアアアアア!!!! 貴様の胸腔に新しい穴を彫ってやる!!!!!!!」
「!!」
突然、茂みが揺れる音が響く。そのハイブリッドはそれが何であるかを把握する間もなく、ある人影がその首に飛び乗る。
――バシッ!!
石がその頭に打ちつけられ、何百もの破片へと粉砕される、土埃が散っていく。
大したダメージにはならないが、数瞬の間、視界を完全に奪うことに成功する。腕を振り回し、背中に乗っている何かを取り除こうとするが、何にも届かない。攻撃してきたものは、とっくにその場から離れている。
まだのたうちながら、そのハイブリッドは、背後からスティル・エフェットの声が響くのを聞く。
「お前のセヴェラント……」
ついに残留物を拭い去り、そのハイブリッドが激しく振り返る。スティルが後方宙返りで離れ、両足で着地する。
「使用者に近い方だけを追いかけるんだろ?」スティルが尋ねる。
「俺はウォールよりも約1.25パーセント速い、だからお前のカウントダウンの間に跳んだとき――」
触手がスティルに向かって発射され、彼は素早くそれをかわし、それが近くの木の幹に食い込む。
「対象を切り替えたせいで、勢いが乱された! これで、こいつをかわすのがずっと楽になった!!」
「――俺はウォールより遠くにいた、彼が追われる標的だったから。それだけじゃない、お前がその交戦中に腕でその軌道を止めていなければ、俺はその結論に辿り着けなかっただろうな」
「くっ!!」
「真実を隠そうとして、それをより明白にしたんだ」
「上だ!!」
そのハイブリッドが振り返ると、宙に浮くウォールの姿が目に入る、両腕を上げ、右脚が強力な蹴りを繰り出す準備をしている。素早い胴体のひねりとともに、世界が右へと回転する。
「バシッ!!」
一撃がハイブリッドの顔面に叩き込まれる。
触手がウォールへと発射を試みるが、彼は素早く横に身をかわしながら、それとともに後方へ跳び、距離を作る。地面から噴き上がる草が、彼の移動を示している。
突然の肘打ちが首の後ろに叩き込まれる、それはスティルによるもので、彼の腕への負担を最小限に抑えている。
触手が再び標的を切り替える、勢いを犠牲にしながら。スティルがそれをかわす。
手のひらの一撃がハイブリッドの後頭部に叩き込まれる。
触手が発射される。ウォールがかわし、距離を作る。
スティルが接近し、その背中を蹴る。
触手が発射される。スティルがかわし、距離を作る。
再び。そしてまた。
繰り返し。
『こいつら、絶えず接近と離脱を繰り返しながら俺を攻撃してきて、《自然の冒涜》の注意を引きつけ、その勢いを乱してる! こんなの、普通の理知的種族のはずがない! こいつら、超人だ!」
ウォールが後方へと跳び、足が土の中を滑る。
『そんなに疲れてないけど、ウォールが少し遅くなってきてる。あと必要なのは、この動きを続けることだけ――』
『――あと4分間だ』スティルが考える。『大したダメージは与えられてないけど、ただ走るよりはマシだ。ただ、能力が戻るまで時間を稼げばいい。もっとも、あいつもそれを知らないと考えるのは愚かだろうけど……』
そのサイクルがさらに2分ほど続く。
触手が発射され、ウォールがかわし、それから――
「がはっ!?」
『こいつ、投げやがった!?』
そのセヴェラントがウォールに向かって投げつけられる、触手が彼に向かって伸びるとき、喜びに悲鳴を上げながら。彼は予期して両手を上げるが、それはあっという間に彼の脇をかすめる。
いや、刺したのか?
ウォールにはわからない。
いや、彼の「知覚」が、単にかすめただけなのか攻撃されたのかを判断できない。まるでその触手の存在が、ずっとそこにあったかのように、まるで自分の舌が自分に繋がっているという感覚と同じように。
肩に目をやったとき、ようやくその答えを得る。
「!」
そのハイブリッドが素早く方向を変え、スティルの喉を掴む。それを地面から持ち上げ、窒息したような喘ぎ声が湧き上がり始める。
『こいつらは危険だ! できるだけ早く、できるだけ効率的に潰さなきゃならない!』
だが素早い動作で、スティルが両脚を後方へと素早く連続して振り、その勢いを利用してハイブリッドの腕の上を越えて発射し、その顔面を打つ。
それがよろめき、彼を放す。
その少年が地面に落ち、喉を掴む。彼は数メートル離れた場所にいる仲間に目をやる、肩を掴んでいる。
ウォールの肩の中には、大きな穴が開いていることが明らかになる、鎖骨がわずかに露出していて、うごめく肉とかすかな黄色い脂肪とともに。
だが、最も明白なのは、噴水のようにほとんど噴き出している大量の血だった。筋肉すらねじれているように見える。
『《自然の冒涜》が標的に打撃を与えるたびに、その標的の体の知覚を操作する。体はその傷を何らかの異物だと思い込み、それを不自然な形で排除しようとする。すべてがねじれ、変形するだろう。あいつは死んだ!』
歯を食いしばりながら、ウォールはその傷を無視し、床に横たわり彼へと急速に伸びてくる触手の危険に集中する。
『速い! 今すぐかわさなきゃ!!』
ウォールが両腕を上げ、再びダメージを最小限に抑えようとする。
ウォールとスティルが能力を取り戻すまで、あと30秒。
スティルが投げた石が、その触手の軌道を素早く乱す、結果としてそれが標的の中心からわずかに逸れる。だが、それは止まる、困惑しながら、それから再びウォールへと目をやる。
この瞬間、スティルはそのセヴェラントに向かって走り始めていた、その注意を引きながら。
『もし俺が近づけば、注意はこっちに向けられる、俺がその攻撃の矢面に立てる! ウォールがもう一度直撃を受けるのは、たぶん無理だ!』
15秒。
ウォールが振り返り、その体が背後をさらけ出しながら、その触手から走り去るリスクを冒す。その動きは、スティルがその注意を逸らせるようにするためだった。彼は自分の命を守るために走っているんじゃなく、むしろ、スティルの立てた計画を実行するために走っていた。
『あいつはそっちに走ってる、じゃあ俺は逃げるふりをするか!』
その触手が再び始動しようとする、今度はウォールを正確に狙おうとしている、彼は約0.5メートル離れたところにいる、その距離のほとんどは彼が跳び退いたことによるものだ。
『10秒!』サングラスをかけた男が推測する。
突然、何かがスティルの服を掴み、後方へと引きずる。
『あいつの注意を逸らさせない!』
そのハイブリッドは、彼がそのセヴェラントの注意を逸らすのを止めようとしていた。
「こっち来い!!」
その触手はすでに、ウォールから約60センチのところまで迫っていた、彼の背中に打ち込む準備をして。もし彼が以前に負傷していなければ、容易くその触手から逃れられていただろう、あるいは少なくとも、もっと時間があっただろう。
『3!』
30センチ。
『2!』
12.7センチ。
『1!!!』
5センチ――
突然の閃光が空中で爆発し、一瞬の間、あたり一帯を包み込み、そのハイブリッドの目を眩ませる。
グロテスクな押し潰す音が響く。突然、その触手が真っ二つに分かれ、床に落ちる。
ハイブリッドが頭を上げ、それに向ける、与えられたダメージを察知しながら。
『そんな!』
敗北という重苦しい感覚が、ハイブリッドの体に牙を沈め始める。もう、それをまとめておくことができない。
『いや、パニックになるな、まだ俺はあいつを掌握してる――』
そのハイブリッドが自分の腕に目をやるが、そこには何もない。
そうだ、何も存在しない。腕さえもそこにない。真っ二つに切断され、黒い血が制御された噴出とともにこぼれ出し、緑の草を染めていく。鉄の悪臭が空気を覆う。
「ギャアアアアアアアアアアアギャアアアアアアアア!!!!!!!!」
そのハイブリッドが草の中でのたうち回り、もはや自分の体に属していない腕を掴もうとする。
「こいつ、かなりの手間だったな。まあ、俺一人でも対処できたけど」ウォールの声がハイブリッドの背後から響く、彼はゆっくりと振り返る。この状況で、迅速な視線の移動などとても間に合わない。
絶望。二人の姿を目にした瞬間、そのハイブリッドが感じられるのは、それだけだった。
「肩の穴が、その言葉に反論してるけどな」スティルが切り出す。「まあ、しばらく能力を強化するための訓練が必要だったのは事実だけど」
スティルの右手には、不自然な形をした湾曲した槍がある。それが剣なのか槍なのか、誰にも判断できないだろう。武器の複数箇所から鋭い刃が突き出ていて、まるで棘のような印象を与えている。
「デミス」スティルが言う。
ウォールの手には、大剣としか表現できないものがある。白を基調とし、金の装飾がその形を際立たせている。複数の刃が植物のように外側へと湾曲していて、それでいて人工的な印象を与えている。
「俺はセヴェラント使いじゃない。タウマイトだ、だから基本的にプラズマを使って、これに形作ってるだけなんだ」ウォールがくすくす笑う。
『今、プラズマって言ったのか!?』
「……」
「俺たちの能力、こいつに見せてやる?」ウォールが尋ねる。
そのハイブリッドが膝をつく、相手の慈悲に委ねられて。そのセヴェラントはすでに破壊されていた。
『この虚無エントロピー!! こんなに強いのか!! あいつらのホローポイントがほとんど見える!!』
「なんでそんな馬鹿なことしなきゃいけないんだよ」スティルがため息をつく。
ウォールがメガネを少し押し下げ、目を相手の姿に向ける。ウォールの知覚が、影のような形のパターンを捉える。他から際立つ白い形が、ホローポイントとして知覚される。
「まあ、あいつのホローポイント見えるし、どうせこいつ殺すつもりだし!」
「ちょっと待て。こいつはもしかしたら、新種のゴブリンかもしれない、いや、まったく新しい異形種そのものかもしれない。アラト博士のところに連れて行けるかもな」
ウォールが切り離された前腕を持ち上げる、その隠れる者の紋章がついたままの。
「これで十分なサンプルになると思うぞ」
「うーん。まあ、それで十分だろうな」
「よし、お前のエゴを満足させるために能力を見せてやれよ」
「よし! 『必然の情熱』、俺のタウマ機能は、物質の4つの状態のどれでも生成できる。ただし、いくつか欠点がある」
彼が指を一本上げる。
「一つ、それを発射したり、攻撃的に使ったりはできない」
もう一本の指。
「二つ、もし感情の制御を失ったら、大半のタウマイトと同じで、体に大きな負担がかかる」
「そして三つ目は……いや、なんでもない」
その言葉がハイブリッドに届くにつれ、それは歯を食いしばる。
『こいつら一体何言ってるのか、さっぱりわからない。どうでもいい! まだ俺には勝つチャンスがある。《自然の冒涜》が作ったあの空洞は、これからも自壊し、変形し続けるはずだ!』
「お、死ぬ直前にしては随分嬉しそうだな」
スティルがウォールの方に顔を向ける。
「あの空洞、あれどうしたんだ?」
「ああ、焼灼したよ。正直、プラズマで何かを焼灼するのは相当難しいけどな」
「!!!!!!!!!!!」
「俺のセヴェラント、デミスは、一定の時間制限の後、発動すると、俺が受けたダメージを全部相手に反射する。欠点は、その間、俺は倍のダメージを受けるってことと、死亡リスクが上がることと、ひどい疲労が伴うことだ。第二形態の説明は、まあ面倒だからやめとくよ」
「殺してやる!!」そのハイブリッドが叫び、スティルに向かって手を伸ばす、両腕を伸ばしながら。土壇場の防御。最後の試み、その――
首のない死体が地面に崩れ落ちる。
「ああ。思ってたよりぐにゃぐにゃだったな」
二人の手にあった紋章は、今や消え去っている。タイロクスが使っていたあの仕組みによって焼き付けられた印は、もう存在しない。
「じゃあ、これでもう脱出できるってことだな」スティルが結論づけ、自分の手に目をやりながら。
「まったく、隠れる者どもと結局戦うことになるだろうとは思ってたよ! やっぱり、そんな単純な話じゃなかったな!」ウォールがうめく。
『お前は全然わかってなかっただろ』スティルが考える。彼が首を振り、それから仲間に目をやる。
「アラックスとカイトが危険な状態だ。今すぐ逃げるのは控えて、二人を助けに行こう」
「よし、急ごう、俺たちにも制限時間があるからな!」




